悪をなぞる   作:NY15

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悪の救済

死穢八斎會本拠地 組長の屋敷

 

 カチコミだッッ!!  

 

 

 いきなりの怒号 まさかと思った 

 

 このご時世 ヒーローの隆盛によりヤクザ組織は次々と摘発・解体され既に時代を終えていた 生き残ったのは極少数 死穢八斎會もその中の一つだった

 

 ヴィラン組織自体の抗争ですら珍しい そのご時世にだ...まさかこの組長の屋敷が襲撃を受けるなど誰が想像できたことか 例の計画が本格的に始動した後ならばまだ襲撃されるのも分からないでもない しかしそれはまだ 今は準備段階なのだ...まさか外部に例の情報が漏れたのか?しかし奴は一体...

 

 地下通路への道など瞬時に見破られた 奴を止めるために戦いを挑んだ組員はほとんど抵抗も出来ず瞬殺されている ひどい有様であった。

 

 本部長のミミック 入中常衣がブースト薬を使用して足止めを試みたが数分すら奴を止めることは叶わなかった 

 

 なんとしてでも奴を止めなくては そのために例の未完成の試作品である弾丸を装填した回転式拳銃を音本に装備させている 本来なら今ここで使うのは避けたいがもしここが落ちるようでは元も子もない 

 

 彼 クロノスタシスこと玄野針は焦っていた 奴の目的には見当がついている...いや十中八九間違いない

 

 しかし奴の個性は一体...監視カメラの映像を見た限りではあれは肉体強化系ではあるらしいというのは直ぐに分かった...下っ端の組員が奴に触れられただけでまるでバターをナイフで切るように千切れて人間だったものに変えられていくのがハッキリと確認できたからだ だが不可思議なのは奴が超能力のような個性も使用しているということだ。

 

 いや そんなものは関係ない あの銃弾さえ命中させればいかに強力な個性であろうとも...

 

 

 しかしその希望も無に帰した 酒木と音本のコンビなら奴にあの個性を一時的に消すことが出来る銃弾を命中させられるはずだと思っていた 酒木泥泥の個性『泥酔』なら奴に銃弾を命中させることのできる隙を生み出すことが出来る筈であった。

 

 しかし奴 あの全身黄色の服装に黒のインナーの男はまるで『泥酔』の影響を受けていないように見えたのだ。

 

 目の前の二人がやはり他の組員と同じ運命をたどる だが奴があの二人を殺った瞬間 玄野は妙な感覚に襲われていた 

 

 まるでこの場にいる奴以外の全員の動きが止まったような感覚 自分も体を動かせず声すら出せない...それは恐怖などから来る精神的なものとはハッキリと異なっており本当に...物理的に体を動かせなかったのだ。 しかし意識はある その止まった世界の中 奴だけが動いていて酒木と音本の胴体に風穴を開けたのだ。

 

 奴の個性はまさか...

 

 

 その時だった 致命傷かと思われた音本が最後の力を振り絞り銃を奴に向けて発砲した

 

 「まだだ...私はこんなところで 私は若に必要とされている!!こんなところで!!」

 

 しかし命中したはずの弾丸はその効果を発揮することは無かった 奴の超パワーもあの能力も消えることは無かった。 

 

 

 ありえない...完成品ではないとはいえ一時的になら完全に個性を消失させることが出来る弾丸 実験では間違いなくその効力を発揮した弾丸は奴には全く効かなかった。

 

 奴は蚊に刺された程度の反応しか起こさなかった いやそれ以下かもしれない

 

 そして再びまるで世界が停止するような感覚が私を襲う 奴は音本に止めを刺し私に迫ってくる 私がやられるわけにはいかない...この後ろには壊理の部屋があるのだから 

 

   だがこの奴の能力には...

 

 奴がこちらにナイフを投げつけてくる そしてそれは私の目の前で完全に静止した まるで空間に固定されているように

 

 そして次の瞬間 世界は再び動き出す ナイフに与えられていた運動エネルギーは再びその活動を再開して無慈悲に襲い掛かってきた 

 

 

 その時に私の疑念は確信に変わった 奴の能力の正体が分かってしまった なぜ私にだけあの時に意識があるのか...いやもはやそんなことはどうでもいい

 

 いつの間にかこの場に若も駆けつけていた 警告しなくては...奴にはたとえ若であっても...

 

 

 

 

 「若!...廻...来ないでくだせぇ 奴に近づいては...距離を取って...離れてくだせぇ...」

 

 

 

 「玄野!?」

 

 

 せめてヒントを 私は懐から拳銃を取り出し壁に掛けてある時計を撃つ

 

 奴に勝てないとしても若になんとか知らせなくては...せめてこの場は逃げてなんとか...

 

 「奴には...か...かなわ...な...い...」

 

 最後の力を振り絞っての警告 しかしそこまでだった そこで私の意識は途切れた 永遠に 

 

 

 

 

 

 

 

 

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