雄英高校 保健室
※緑谷出久視点
放課後...あれから僕はシーザー先生にこの波紋法についての説明を受けていた。
波紋呼吸法、体を流れる血液をコントロールして生命エネルギーを生み出すというこの技術は本来は医療技術のようであるが攻撃にも転用可能というなんとも汎用性の高い技術であるらしい。特に自分の怪我を治癒させることが出来るのならこの僕にとっては願ってもない素晴らしい技術であることは間違いない。
だけれどその修業は極めて過酷...だが波紋法の修行は同時に己の肉体の修行にもつながるらしくそれは僕にとってワン・フォー・オールを使いこなすためのトレーニングや調整にもなるはずだ...つまりは一石二鳥だと思う。
しかしこの呼吸法矯正マスクを着けながら生活するのはとても苦労する...装着して何とか今は呼吸できるようになりはしたがこのまま授業を受けたり体を動かしたりするのはとても困難なように感じるの...しかしこのマスクを装着して修行するのが一番効率がいいらしいので仕方がない。
「そうだ、リズムを整えろ。それが一番大事なことなのだ。たとえ戦闘中であろうと...いやだからこそ呼吸のリズムを整えることが重要なのだ。それが出来なければ波紋呼吸法は使えん。」
矯正マスクとはその名の通りで少しでも呼吸を乱すと酸欠に苦しむことになる...つまりはこれから食事と歯を磨く時以外はずっと修行をしているということになる。
そんな時だった、保健室の扉が勢いよく開き例の留学生であるジョディさんが入ってきたのは...いやジョディさんだけじゃない。もう一人この保健室に入ってきたのは...正確に言えばジョディさんがそのもう一人を背負ってきたのだけれど。
その生徒は口田甲司という生徒だった、しかしジョディさんはすごいな...身長が180cm以上ある口田くんを背負って汗もかかずにいるのだ。その動きは自らより大柄の人間を背負っているとは思えないほどに軽やかであった。確かにあの時の個性把握テストでは好成績を残していた...自分の個性が有効ではない種目でも成績が良かったということは身体能力が高いということである...しかしこの状況は一体どういうことなのであろうか?
「おや、また怪我人かね?...確かこの子はシーザー先生の弟子のひとりだったかね?」
「ええそうです、どうしたジョジョ?何があった?」
「...えっとすいません。シーザー先生...例の件です。二人だけで話せませんか?」
何やらとても神妙な面持ちで話し始めたジョディさんと例の件という言葉を聞いて急に表情が鋭くなったシーザー先生...一気にこの場の雰囲気が重くなるのを僕は感じていた。
「そうかい、どうやら私たちはお邪魔のようだねぇ...でもその伸びてる生徒はここに置いていってもらうよ。人に聞かれたくない話ならよそでしてもらおうかね。」
「...しかしこの件には口田君も...正確には口田君の体が関わっています。」
「一体どういう事なんだジョジョ?」
「これなんです...」
そういうとジョディさんは口田君のおでこの辺りを指さした...そこには何やら肉片のような謎の物体が存在していて動いているようであった...あれは何かの生き物なのだろうか?
「これは...そうか、なるほど...これが洗脳の方法だったとは...出来るのでないかと思ってはいたが嫌な予想は当たるものか...」
暫くの沈黙...何やらとても重い話だったようであり僕があまり関わってはいけない話題のような気がした。
「しかしこれが洗脳の方法であるならば...少なくともこの緑谷は信用できることになる。あとは弱い波紋を流したことがあるリカバリーガールも信用できるだろう...ジョジョ、何があったか話してくれ。」
「シーザー先生がいいなら分かりました...」
その後ジョディさんから語られた事件のあらまし...放課後に口田君から襲撃を受けたこと...そしてその口田君を操っているであろう者の名前、その名はDIO...間違いなくその名はあの時速人君が名乗った名前であったのだ。その名前は聞いたとき僕は思わず反応してしまった。
「DIO!?今ジョディさんは確かにDIOって言ったよね!?」
「えっ!?...君は確か緑谷君だよね?...それより君はDIOを知っているの?」
「いや待てジョジョ!それよりも今はこの生徒を何とかしなくては!この口田という生徒の脳天に植え付けられているのは恐らく吸血鬼の細胞のようだ...早急に除去しなくては...それには君の力が必要になる!」
「...話がよくわかりませんシーザー先生。これが吸血鬼の...DIOの細胞の一部が変化したものであれば波紋を流せばそこだけ死滅するんじゃないんですか?」
「いや、もしこのまま普通に波紋を流し込めば恐らくこの生徒の脳に重い障害が残る可能性が高い!...それだけで済むならまだマシかもしれんな。最悪の場合死亡することもありうる。」
「...!!それじゃあ手術か何かで摘出するしかないってことですか?」
「それも不可能であろう...大人しくこの吸血鬼の細胞が摘出されるとは思えない。そこでだジョジョ!!今からこの生徒に二種類の波紋を流し込む!君と俺とが協力してはじける正の波紋とくっつく負の波紋を流し込む!...俺の以前の経験から言えば恐らくはそれで人体のダメージ0で細胞だけを死滅させることが出来るはずだ。」
ジョディさんとシーザー先生の会話の内容の殆どは今の僕には意味不明であった...黙って事の成り行きを見届けているリカバリーガールも僕よりは知識があるんだろうけど口を出さないということはやはり専門外の事案と言うことなのだろう。
「いいかジョジョ!俺は今からこの生徒の脳に一点集中してくっつく波紋を流し込む!ジョジョは体全体にはじける波紋を!呼吸は俺に合わせろ!タイミングが肝心だ!」
シーザー先生はそういうとジョディさんと呼吸を合わせ口田くんの頭部に手を当てる...それと同時にジョディさんも口田君に手をかざしたのだ!二人が口田くんに流し込んだのは正と負の二種類の波紋...後から聞いた話ではああすることで人体への波紋エネルギーのダメージを0にすることが可能らしい。
波紋を流し込まれた口田君の頭部に取りついていた謎の肉片は一瞬にして砂状に変化して死滅したようだ...
しかし今の僕には分からないことだらけである。今の一連の話の流れから推察するにDIOは...速人君はこの二人から吸血鬼扱いされていた。吸血鬼と言うワードが言葉通りの意味であるならば速人君は...