東京 とあるホテルの一室
ジョージ・ジョンストーン 彼は一家の主であり4人の子供を持つ父親である。
仕事はまじめでそつなくこなす 誰が見ても幸せな家庭を持つ 部下からも慕われ順風満帆な人生を送っている。 だれがこの男のこれから起きる悲劇を予想出来ただろうか
そして一つ 説明しておかなければならないことがある。彼の一族には奇妙な身体的特徴があるのだ。首の付け根に中々の大きさの痣が存在するのである。それもきれいな星型の痣が
その特徴は子供たち全員に遺伝しており恐らくはこれからも続いていくことであろう。
しかし彼にはその星型の痣が世界を 次元すら超越した因縁の因子であることを理解しているはずもなかった。
そしてホテルのドアをノックする音が一室に響いた それこそまさに彼ら一族にとっての運命の転がる音であった。
その運命の音が響いたちょうどその時 夫婦は自分たちの宿泊する部屋に行く前に子供たちの部屋に立ち寄っており一部屋に家族が集まっている状況だった。
なぜだかは分からない 首元の痣が妙に疼く こんなことは今まで初めての体験である。
ジョージがその痣に手を伸ばした時、娘のジョディがいつも首からぶら下げている彼女にとっての幸運のコインを繋いでいるチェーンが千切れベッドの下に転がっていくのが確認できた。
ジョディはそれを取ろうとしてベッドの下に潜り込む ちょうどその時にドアをノックする音が聞こえてきたのだ。
何だろうか?思い当たる節は無いので恐らくはホテルのボーイだろう...
ジョージは警戒することなく扉を開けてしまったのだ ドアアイを覗くことはしなかった。 だが覗いていたところで結局扉は開けただろう。
なぜならその扉の前にいたのはどう見てもジョディと同年代の日本人の子供だったからである。
しかしジョージはその子供の瞳を覗いた瞬間 背筋が凍り付いた 理由は分からない しかし自らの生存本能が危険を知らせていた。
彼の意識はそこで途切れることになる 最後に目に入ってきた光景はその子供が高く跳躍しその手が私の首に迫る光景だったのだ。
私の幸運のコイン 幸運の25セント硬貨 イギリス人の私が何でこんなものを身に着けているのか不思議に思う人もいると思う。実際のところ自分でも理由はよくわかっていない。 いつの時からかこのコインを私は持っていて 幼い私はこれが幸運をよぶコインだと思い込んでいたのだ。笑っちゃう話かもしれないけど私は今でもこのコインを肌身離さず身に着けている。
だからこのコインのチェーンが千切れたときは何か嫌な予感がした。コインがベッドの下に転がるのがなぜかスローに見えた。
コインの転がった先 ベッドの下に私は潜り込むとコインがキラリと輝きを放った
それに私は手を伸ばそうとしたその時 コインの近くに何かあるのが確認できた
それは球体 異質な雰囲気を放つ球状の石
「ッッッ!!!」
その石は彫刻のようであった 彫ってあったのは私のパパ 首から血を流しているようなパパの彫刻
私は反射的に腕から個性を Thornは出現させ彫刻に絡みつかせる こいつは危険だ 破壊しなくてはならないという考えが私を突き動かした。
絡みつかせた私の茨は容易くその彫刻は引きちぎる 私のこの個性Thornはその気になれば鋼鉄すら引き裂く力がある。
その石は脆くも崩れ去り砂状になってしまった。これは一体...
しかし私の意識は石から離れてしまうことになる それはこの部屋に起きた異変 それをベッドの下から目撃することになるからだ。だからその後 石が変化して 私を除いた家族全員の顔の彫刻に変化していることなど気が付きもしなかった。
その煌びやかなホテルに似つかわしくないサイレンの音が辺りに鳴り響く ホテルには規制線が張られ野次馬とマスコミ、それを静止する警察官で溢れていた。
部屋には既に鑑識が入っており現場のゲソコンや写真を撮り始めていた頃であった。
刑事である塚内直正警部はまだその現場には踏み入れることは出来ないが部屋の外からでも今回の事件の異様さは感じ取ることが出来た。
「一人だけ生存者がいます...しかし錯乱状態にあるようで...ひとまずは病院に送ってありますがあの分だとすぐに事情聴取は不可能だと思われます。」
外見は猫そのもの 玉川三茶から生存者の報告を受ける 錯乱状態...それも仕方がないだろう。
被害者 死亡した4人のうち母親以外の3人は全身から全ての血を抜かれていたのである。
被害者一家はイギリスから来た旅行者 そして死亡したのは母親とその子供3人 生存者はベッドの下に隠れていた次女で父親は行方をくらませている。
思い当たる節といえば数年前から取り沙汰されている吸血鬼事件 その件に関しては情報統制が敷かれており一般には公表されていない(しかし一件だけは第一発見者がマスコミ関係者であり血が抜かれた死体の怪事件として報道されてしまっている)
しかし今回の事件はそれら事件群とは決定的に異なっているように思われた。
例の吸血鬼事件 被害者は路地裏のチンピラや娼婦のような存在でありその全身から血を抜かれ路地裏で発見されることが多かった 数年前からポツポツとそのような死体が発見されることがあり捜査がなされていたがいまだに犯人の手がかりを掴むことは出来ていなかった。
被害者は大抵裏の人間であり恐らくは死体が発見されていないケースも多いだろう 実際の被害者は警察が掴んでいるよりも多い可能性は高い。
自警団のような組織 非合法のヒーロー活動をしている組織の犯行ではないかと警察内部で囁かれたこともあったが今回の事件と今までの吸血鬼事件が同一犯であるとするならば...そうではないことになる。
今回の被害者ジョンストーン家はそういった裏社会の人間ではない もちろん犯罪歴も存在しない 一応裏付け捜査を行われるであろうが今までの被害者達とは明らかに異なっている。
それに父親が行方不明...この時点で一番怪しいのが彼だろうが...
この事件現場となった部屋の前の監視カメラは恐らく犯人によって破壊されていた。
その他の廊下やホテルのフロントの監視カメラにはその父親と同じ服装 背丈の人間がキャリーケースを引きずりながらホテルから出ていく姿が確認されてはいたのでまず彼が犯人の可能性は高い。深く帽子を被っていたので顔は確認できなかったのだが...
しかしそれ以外にも怪しい人間が存在していた。 まずホテルの周りをウロウロしていたこれまた外国人風の男が一人目撃されており監視カメラにもその姿が捉えられていた。
そしてもう一人 ホテルの受付で何やら中学生くらいの男の子が受付嬢と話をして階段を上がっていく姿も確認されたのだ。 それだけなら怪しくもなんともないのだが...その男の子が階段を上った後が問題なのである。 階段を上ったのだからどこか上の階層に向かったのだろうがその姿がどのフロアの監視カメラにも映っていなかったのである。ホテルの宿泊客にそのような人物は存在しなかった...つまり彼は忽然と姿を消してしまったことになる。
考えられるとすれば彼が自らの個性を使用して何らかの方法でホテルから消えたということである...
さらに彼の対応をしていたホテルの受付嬢すらも姿を消している 聴取を行おうとしたときには既に行方が分からなくなっていた。
今の時代 オールマイト以後であっても個性を使用した凶悪犯罪というものはそこまで珍しくはない しかし今回の事件は何もかもが異質 塚内警部にはそう感じられたのだ。