ホテルの事件から数日後 東京某所の路地裏
ヒーローとは見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない。しかし今の世の中 今のヒーローはどこもかしこも偽物だらけ
贋物が跋扈する世の中でこの俺がそれを正す。
ヒーローとは偉業を成し遂げた者のみが許される称号
その名前に泥を塗り自らの名声と地位 金に執着する拝金主義者の偽物どもを粛清する。この世が自らの過ちに気が付くその時まで 俺は現れ続ける。
彼 ヒーロー殺し ステインは次のターゲットをこの街に定めていた。
日は既に落ち この薄暗い路地裏を僅かな照明だけが照らしていた。
ターゲットを捜しに路地裏を後にしようとしたその瞬間 路地裏の奥 ゴミ溜めしかないようなその場所に何かが蠢いているのを彼は感じた。
「んっ こいつは!!」
それはまるで獣が獲物を貪るような咀嚼音 肉を貪り骨すら砕いているような音であった。
目を凝らすとそこには地面に血だまり 倒れこんだ人間に覆いかぶさるようにもう一人 異様な雰囲気の人物が存在したのだ。
その見た目はまるで映画に出てくるアンデッドそのもののようだった。
こいつ...人間を食っているのか
ステインは自らの得物である日本刀を構え戦闘態勢に入った 奴は危険だと彼の今までの戦闘経験がそれを知らせていた。
「貴様ァ この俺の食事を見たな 貴様の脳みそと軟骨もしゃぶらせろ 軟骨がうめんだよ 軟骨があ!」
いきり立ったアンデッドのような男がその場から高く跳躍 こちらに飛び掛かってくる
その見た目に反して奴の動きは軽快 予想以上に素早かったが反応できないほどではない
すれ違いざまに胴体を斬りつけさらに奴の足の腱を切断する これで奴は動けなくなるはずだ。
奴はその衝撃でゴミ溜めに突っ込むが平然と起き上がる。
「ッ!!馬鹿な!?」
「ウッシャシャ 貴様の脳みそを食べさせろぉ!」
こいつ 痛みを感じていない...?
俺は日本刀に付着した奴の血液をなめ個性を発動させようとする しかし舌を日本刀に近づけたその瞬間 俺の体に電撃が走ったような感覚 この血液を舐めてはいけないという直感が働いた。
何だというんだ...なぜ俺は今 奴の血液を舐めるのを躊躇った?
しかしならば奴のその頭 斬り落とすまで
狙いを頭部に定め 日本刀を奴の首になぞるように斬りかかる。
いとも簡単に奴の頭部は切断され嫌な音とともに地面に落下した。
「ウリィリィ...ウギャギャ」
頭部だけになっても奴は生きていた 俺はその脳天に日本刀を突き刺し頭部を破壊する。こいつが映画に出てくるゾンビやアンデッドの類だとしても頭部を破壊すれば死亡するはずだ。
今度こそ奴は沈黙したようだが頭部を失った体のほうはまだピクピクと動いているようだった。
こいつは一体何なんだ?異形型の個性か?
しかしこいつがもしゾンビのような存在だとしたら...
ステインのその予感は見事に的中することになる
あのアンデッド男が貪っていた死体 それがおもむろに起き上がったのである。