魔法少女のマスコットみたいなのが異世界転移して悪の邪賢者に協力を求めたがダメ人間であった 作:バード鳥鳥
あのクソキメラを切り刻んで数分後。やはり何事もないかのように戻ってきた。興奮していたのが何か嫌だった。
仕方ないので先ほど言いそびれた理由のため、俺は塔を出た。1階では伊里君がスマホゲーして一喜一憂していた。多分ガチャしていたのだろう。
そんな伊里君を見ながら外に出て歩き始めると、クソキメラが俺の歩く反対方向へ耳を振った。
「おいおい、出口はアッチだよおっさん? 大冒険の始まりはアッチさ!」
「いやお前言っただろ、条件があるって」
「条件はクリアしたよ! さあ行こう!」
こいつまだ言うか……!
「おい、いい加減にしろこの触手萌え淫獣。お前がその調子だと何も進まないんだよ……!」
「ええー、もう、人間の大人は面倒くさいなあ。子供はすぐ頷いてくれて扱いやすいのに……」
「コイツクソキメラすぎる……いや、魔獣としては正しく邪悪な思考だが……」
「魔獣じゃないよ! 失礼だな! マヘマヘ!」
邪悪な思考っていうのは拒否しなかったなコイツ……。
「それで、じゃあその条件って言うのはなんなんだい?」
「それはだな……この基地の隊長に聞いてOKを貰ったらだ」
「えっ、意外と普通だ……スケベおっさんなのに……スケベスケベな条件にするかと思ってたよ……」
「お前が美少女か美女ならそれもありだったが、キモキメラ畜生じゃそんなの期待できないしな……」
「キモくないよ! 愛されお供枠ナンバー1だよ! 地獄の番犬みたいな名前のお供枠にだって負けないって!」
「いや、大敗するのは目に見えている」
と言うと、怒るようにまたマヘマヘ! とか言う。口癖封じの魔法でも編み出すかそろそろ。
そして基地へ向かう道すがら、ゴブリンやオーク、スライムにスケルトンたちにすれ違い挨拶する。
今度飲み行こうだの、可愛い子見つかったかとか、そのキメラキモイなとか女騎士が最近俺に付きまとってくるとかキモさあふれるキメラだなとか、最近超可愛い僧侶ちゃん見つけて襲い掛かったけど殺されかかったとかいっていたので詳細に情報を聞くと、俺好みの水色髪ロングヘアー、気が弱そうだけど頑張り屋さんで巨乳というもう可愛いかわいい羨ましいからお前を俺が代わりに殺してやるオラぁとかしようとしたら周りに止められたとか、邪悪にキモイキメラ連れてるなとか言われつつ、俺は隊長の元へたどり着いた。
「憎しみ……憎しみで魔物を皆殺しにできればいいのに……大人の人間だけじゃない、魔物もやはり皆死ねばいい……この世界滅べ……子供以外塵も残らず滅べ……」
そして当のキモキメラは呪詛を吐いていた。1話で俺が吐いた台詞なんて目じゃないほど世界に対して邪悪に呪詛を吐いていた。こいつのことを冥府の怪物なんて言っていたが、伝説の冥府の魔獣かもしれない。子供だけでこの世界生き延びろと言うのかコイツ。
「よく来たな邪賢者よ。ピンク色の魔本はアレしかないぞ――ん、なんだその極悪非道そうなキメラは」
黒い甲冑とヘルム――えっと、西洋兜を纏う魔物、そしてこの基地の隊長であるアーマーナイトは魔物ながらもどこか気品を持った立ち振る舞いをしながら俺に問うてくる。こういうとこは女にモテているので嫌いである。
「見ての通り子供を食い物にする悪逆非道、冥府の怪物、無限に再生する人間に対する恐怖の権化、魔法少女を見つけて平和を取り戻すくんだ」
「マヘク! 全然違うよ! なんだいその凶悪の中の凶悪みたいな名称! いや最後は本名だけど!」
「そ、そうか……流石は邪賢者……いや、なんか趣味悪いぞ……ちょっとスカッとしないっていうか……子供だけ狙うのはちょっと……」
「まあ、俺もそう思う。でも、お前隊長として甘いんじゃあないかその考え、スカしやがって、このモテ野郎」
「も、モテ野郎⁉」
「もっとお前はこのクソロリ触手萌えキメラを見習い、悪逆非道の限りを尽くすべきではないかと言っているんだ。これだから魔王軍34基地は微妙とかいろんな基地で評価されてるんじゃないか……?」
「し、しかしそんな外道の極みみたいなキメラのような真似をするのは品位に欠ける気が……」
「品位? そんなものは魔王軍には不要だ、喜ぶのは人間どもと女どものみ。魔王様が望むのは勝利だけだ、女にええ恰好しいするのはもう止めろ。モテない道を歩むんだ。そこのクソキメラと同様にな」
「う、ううう……でもええ恰好しいしてるつもりないのに……」
考え込むアーマーナイト。いいぞ、苦しめ。モテる奴は苦しめ。
「呪詛を吐け、もっとこのクソ変態キメラと同じく人を憎み正義を憎みすべてを憎むんだ……! この邪悪の権化のように……!」
「って、いやいやいやいや! 待ってよ! もうさっきから聞いてたら僕が外道魔道みたいな扱いされるの両者ともに完全に同意見みたいなの本当止めてよ! 僕魔法少女のお供だからね! 正義の権化、正義とともにありな、聖なる存在だから!」
「いや、それは嘘しかねぇな」
「ああ、それは嘘だろうな」
「ご、ゴミどもが……! 滅びろ……!」
アーマーナイトに同意して頷く俺たちに呪詛をまた吐いてきた。その発言が邪悪側の生物だと何故この怪生物は気づかないのか……。
「ま、まあ考え方についてはまたいつか考えるとして……何の用があって来たのだ邪賢者」
「ああ、そういえばそっちが目的だったな。このクソキメラが大賢者を探したいというので、しばらく塔を留守にしていいかという相談だ。勇者が来る予定があるのに悪いとは思うが……」
「ああ、そういう相談か……まあいいぞ。勇者いつ来るかわからないしな……」
あっさりと承諾してくれたアーマーナイト。いいのか。
「……意外だな、いいのか。俺がいないと勇者に勝てないかもしれないんだぞ」
「伊里君もいるし、まあなんとかなると思ってな」
「ああ、伊里君か……まあ、確かにそうだな」
「えっ、自宅力全振りの自宅転移者になんでこんな信頼感?」
ロリキメラは疑問に思ってるが俺たちはそんな疑問は抱かない。伊里君の実力は十分に知っているしな。
「だが、不安なところもあるな」
「ん? 何が不安なんだ。このクソキメラが世界中の子供を魔法少女洗脳することか?」
「えっ、そのキメラそんなこと出来るのか。怖い……」
「出来ないよっ⁉ 捏造止めてよ! ちょっとたぶらかすことしかできないよ!」
「ええっ……魔法使わない分余計こわっ……」
触手大好きキメラに引いてるアーマーナイト。やれやれ。
「何が怖いだ。これが真の邪悪な存在。お前が甘ちゃんだということだ」
「ぐっ……!」
「ぐっ、じゃないよ! だからその邪悪な扱いムーブ辞めてよゴミども! 地に埋もれ消えろ!」
「いちいちツッコミが怖っ、このキメラ……」
完全に冥府の怪物に気おされるアーマーナイト。こんなロリキメラ程度に押されるとは甘ちゃんすぎるな……。
「余計不安が増えたぞ……いや、本当は旅の途中にお前が人間のカップルに出会った瞬間消し炭にしそうだなという不安があってな……お前元々人間なのに魔王軍側より殺意高いから……」
「いや、するよ。純愛ラストシューティングした、しそうな奴は皆殺すよ」
「駄目だろ⁉ いくら我々魔王軍が人間に悪意を持って戦うとしてもそんな浅い考えの殺し方は魔王様への品位に関わる!」
「そうだよ! 殺していいのは子を産んだゴミ大人だけだよ! 親のいない子供はつけこみやすいから!」
「それも駄目だ! このキメラ極悪すぎるな本当!」
「えっ、全然極悪じゃないよ! 普通だよ!」
畜生キメラのその発言に、ええっ……と本気で引いてるアーマーナイト。でも俺も引いてる。いや外道とは思ってたがここまでとは……。
「……ひ、品位など殺戮は不要だ。それを分かれ隊長殿」
「いや、まあそうだが……いや、でもその理由で納得するのはちょっとアレか……いややっぱりそれは後で考える。ていうかお前もちょっと引いてるじゃないか邪賢者」
「いや、そんなことはない。で、そんな不安要素に対するなんらかの対策として俺に何かくれるというのか」
「察しが良いな。その通りだ。まあ、物というより同行者だが……来い、ゴーレム!」
と言うと、ズシンズシンと足音が聞こえてくる。岩の魔物ゴーレムか、無駄無駄。そんなものは邪魔をすればぶっ壊しておくから無意味だというのにバカなアーマーナイト――。
「ただいま、到着しました、隊長」
「うむ、ありがとう」
って、な、なにぃぃぃぃっ⁉
「お、おまっ、なっ……!」
俺は驚きのあまり指を差す。白い髪に碧眼、可愛らしい顔、人型の見た目、そして似合いすぎるポニーテール。何せアーマーナイトが呼んだゴーレムは見まごうことなく、
女、そのものだからだ。
あまりの驚きに、俺は魔剣・デモンズイーターを創現し、クソキメラを四分割してしまった。