魔法少女のマスコットみたいなのが異世界転移して悪の邪賢者に協力を求めたがダメ人間であった 作:バード鳥鳥
「ははは、邪賢者が驚くのは珍しいな。まあ、驚くも無理はないな。彼女はハーフゴーレム――人間とゴーレムの子だからね」
「は、ハーフゴーレムっ⁉ いや、構造的にあり得ないだろう! ゴーレムに子は成せん!」
「うむ、そのはずなんだが、13年前ほどか、人間側の天才魔導士がゴーレムの子を産みたいということで、何かして産んだらしいのだ」
「天才ではなくもう変態だな……絶対スケベだ……間違いない……いやそうであれ」
「それは邪賢者も一緒なので、基本的なものかと思っていたのであまり驚かなかったな」
「ぬうっ……」
自分でも少し自覚あるので少し言葉につまる。
「だが、その存在を人間たちは許さなかった。故に……」
「ちょっと待ってよ!」
アーマーナイトが話していこうとしたとき、急にクソキメラが声を大にして割り込んできた。
「なんだクソキメラ、話の邪魔をするな」
「いやいやいや! 意味も分からずおっさんに殺されたんだけど! それを気にせず話を続けるなんて気が狂ってるとしか思えないよ!」
「お前に言われたくないんだが」
「なんで⁉」
全然自覚ないとかやっぱヤバいなコイツ……。そして、なんか普通に蘇ってる。
「いや、てっきり気にしてはいけないと思って」
「普通気にするよ! おっさんはスケベおっさんだからしょうがないけど、君のような鎧マンは何か言ってくれると思ったのにこのザマさ!」
「鎧マン…………いや、ていうかあの魔剣で斬られて蘇ったこのキメラ……」
困惑するアーマーナイト。いいぞ、もっと困惑しろ。なんかあのクソキメラをアイツの隣に一生置いておきたい気持ちになってきた。とか思うと俺の方へ振り向いて長い耳を人差し指っぽい形状に変形させて指を差すように向けてきた。きもっ!
「第一なんだよあの剣! いいじゃないか! 僕にカオスイビルちゃんを紹介してくれたくせに、まだあんないい子を隠し持っていたなんて……! 名前教えてよ! もっと僕をバラバラにしてって伝えて! 早く!」
「お前ほんと酷いな……存在が」
行動以上に内心が気持ち悪いを超えておぞましいレベルになってやがる……。
「全然酷くないよ! 魔法少女がみんな僕を可愛いっていうぐらいファンシーだよ! ほら早く! 名前!」
「で、さっきお前が続けて言おうとしたことだが……」
「無視! このヤロー!」
アーマーナイトと話しなおそうとした俺をボカボカ殴って来るクソキメラ。ノーダメ。無視。
「アレだろ、そのハーフゴーレムを魔王軍側に逃がし、人間の魔導士は逃げるときにスカートをヒラヒラさせつつこけた時にパンチラをし、切られた時に豊満な胸をはだけさせつつ、呼吸を荒く胸を上下に動かして殺され、親ゴーレムはその仇を討とうとして人間に討伐されたわけだろう? ……馬鹿な魔導士だ……」
「いや、その人間の魔導士が人間側を全員ぶん殴り説得したらしく、事なきを得たらしい。って女の魔導士に対して無駄に詳細だな邪賢者!」
「野蛮かその女……! 絶対胸が揺れてたな……!」
「ええーっ、大人ども全員皆殺しじゃないのかー」
「うわあ、二人ともろくでもないぞ……キメラはより酷い発言だ……」
「酷くないよ! あとずっと言わなかったけど、僕キメラじゃないからね! 全然違うよ愛らしさが! 本当大人どもは目が節穴オブ節穴! マヘマヘ!」
またウザい怒り方をする畜生キメラ。さっきまで四足歩行だったのに2本の足で立って歯茎見せながらプンスカ怒り始めてる。もう魔法少女のマスコット枠無理だろコイツ。
「で、その子供がなぜここに」
「うん、まあなんやかんやあってその魔導士も邪賢者同様に魔王軍側に入ってな、いい年になったこのハーフゴーレムについては私に一任されたのだ。色々と経験を積ませてほしいとな。何故か色々とを二回念押しされたが……。
まあ、そこで今、邪賢者が旅に出ると聞いていい機会と思ったのだ。まさに経験にもなるし、抑止力にもなってくれる、ピンと来たわけだ。破壊できないだろう、女の子は」
「……うぐぐっ……おのれアーマーナイト……!」
ヘルムで隠れていても得意げな顔が見える……! おまけに体つきも俺の好みではないのがまた……! 白い髪に碧眼、褐色ポニーテールというのは好きなのに……!
「くそう、さっきの魔剣ちゃんに気を取られて気づかなかったけど、僕好みなのに魔法少女レーダーが反応しない……! したい、魔法少女にしてお供になって魔物と大人どもを抹殺したい……! 異世界だからセーフだし……!」
そして思わぬところでも抑止力になっていたらしい。この短い間に凶暴性を隠さなくなってきたなコイツ……。
「という訳で私からの条件らしい条件と言えば、この子を連れて大賢者を探す旅をしてくれと言ったところだ。頼めるか?」
「……ふん、いいだろう。こんな半人半岩の美少女可愛い、岩の皮膚をした美少女もまんざら悪くないっていうかちょっとドキドキしてくる程度の同行、許してやると言うかありがとうございますアーマーナイト隊長」
「……そこまで気持ち悪いとちょっと同行させるのに不安だが、連れて行かせない方が不安だからよろしく頼むぞ」
不安げに手を差し出すアーマーナイトの手を俺は両手でつかむ。どうやらピンク色展開はアウトらしいが、正直嬉しいこと限りないのは間違いない。このクソロリキメラとの二人旅だったらろくでもないこと間違いなかったからな。
「うっひょー! 来たぁー! やっぱスケベおっさんはキモイ! 気持ち悪いんだよねー! ヒュー!」
こんなムカつくこと言うしな……!
「という訳だ。急で悪いが、邪賢者と危険キメラと旅に行ってくれ。両方とも災厄が具現化したようなものだからしっかりと見張ってくれ、本当に頼むぞ」
「承知しました、隊長」
と言ってアーマーナイトに敬礼するハーフゴーレム。結構堅物そうだな。
そして俺の方を向くハーフゴーレム。起伏はないスレンダーな身体だ。あと数年だな。
「よろしく、頼みます、邪賢者殿」
「おおっ、よ、よろしく」
と言って、俺は右手を差し出す。
「あっ、邪賢者! それは――!」
「はい、よろしく」
と言って俺の手を握り返すハーフゴーレ――って!
「アダダダダダダァァァァ! 骨がぁぁぁ!」
バキバキバキバキっと、右手が全身骨折した音がぁぁぁ!!
おまけにこのハーフゴーレム、掴んだまま離してくれねえ! 握力計る奴を握るようにめっちゃ握ってくるぅぅ!!
「すまん、言い忘れていた。ハーフゴーレムはゴーレム族同様物凄い怪力の持ち主なんだ、おまけに自我が薄いのでちゃんと言わないと放してくれないことが多い。まあ、その辺の感情も学んでほしく旅に同行させたいと思ったわけだが」
「り、理由語らず放させろ早く! 早くぅぅ!」
「うわあ、おっさんが苦しんでるの結構見苦しい……」
こ、このキメラ野郎なんてこと言いやがる……! 絶対後で殺す……!
「あっ! は、ハーフゴーレム、放してやってくれ」
「はい」
とアーマーナイトが言ってようやく手を放すハーフゴーレム。即回復魔法で粉砕骨折を回復させる俺。ゆ、融通が利かないにもほどがある……!
「だ、大丈夫か邪賢者……」
「……お前、今度ポイズンスライムをベッドにして眠らないと許さん……」
「いや、それは流石に勘弁してくれ……」
ばつが悪そうにいうアーマーナイト。だが絶対それやらないと許さん……。
「やれやれ、ようやく茶番は終わったみたいだね! さあ、無駄な時間はもうおしまいさ! 僕のために大冒険へ出かけようじゃないか! うずくまってる場合じゃないよおっさん! もう! ゴミ!」
それに比べコイツは……! 少し俺と同じ目に合わせないといけないな……!
「……おい、ハーフゴーレム」
「はい」
「アイツの頭を掴め」
「死ぬと思います」
「構わん」
「わかりました」
と言って、スタスタとクソキメラの方へ歩いていくハーフゴーレム。
「ん? おやおや君は僕の愛らしさが分かるみたいだね! さあ、そんな君には頭をなでなでさせ――ってぎ、ギギャアアアアアアアっ! ず、頭蓋がへこむ! これなでなでじゃない! つ、つぶされ――!」
そして、その場には少量の血の雨が降った。
皮肉も、うわっ、と引くような声を上げたのは表情をうかがえないアーマーナイトだけだった。