魔法少女のマスコットみたいなのが異世界転移して悪の邪賢者に協力を求めたがダメ人間であった   作:バード鳥鳥

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こう邪賢者的にはなー、もっとセクシーサキュバスとかウィザードエルフとか連れて行きたかったんだよなー。そしたら絶対R18だった。で、勇者倒して取り巻きに好かれハーレム。そんなR18が良かったのにクソが!

「ほら、大冒険だよ! 行くよおっさん! ハムちゃん!」

 

 第34基地から離れた俺たちは、現在近くの34番平原を歩いていた。風になびかれて草原があれだ、草原してる。

 そんな草原を、頭を潰されてもやはり平然と蘇る未確認生命体キメラは、その先陣に立ち意気揚々と駆けていた。猛獣に食われればいいのに。

 

「誰だハムちゃんって。キメラ仲間か、お前の邪悪な意思が呼び出した冥府の生命体の名前か」

 

 食べ物のハムに目や口がついて宙に浮いてるような感じだろうか。いや、コイツの仲間ならそんな浅い存在ではないだろう、もっとグログロしい感じのはず。

 

「違うよ! なんだよ邪悪って! 聖なる存在だよ僕は! ハムちゃんっていうのはハーフゴーレムちゃんのことだよ! 略だよ略称!」

 

 また耳をキモくトランスフォームさせてハーフゴーレムを指さすロリキメラ。当のハーフゴーレムはヒラヒラ飛んでる蝶に吸い寄せられるようにフラーっとボーっと歩いている。愛いやつだ。もう少し年齢高ければMAJIで恋する5ミニットだった。

 

「ハーフゴーレムでいいだろ、なあハーフゴーレム」

「はい。不本意ですが、構いません」

「えっ、不本意⁉」

 

 感情が希薄とか言ってたから気にしないと思ったが、意外だ。

 

「ほらー! おっさんはこれだから女の子のことを知らないダメなスケベおっさんなんだよ! もう、ゴミ!」

 

 そしてここぞとばかりに調子に乗るクソキメラ。昨日考えた無詠唱の爆氷魔法でも内臓に食らわせてやろうか。

 

「ねっ、ハムちゃんがいいよね!」

「誠に遺憾ですが、構いません」」

「あれ⁉」

「ぶふっ!」

 

 思わず噴き出した。偉そうに言っておいて俺より不評ではないかあのクソキメラめ。

 

「そ、そんな……あのスケベおっさんより不評だなんて……あっ、この世界と僕の世界では言語の意味がちがうんだ! うん!」

「くっくっく、残念ながら一緒だぞ不評キメラ。伊里君と話していて大体その辺りの意味は一緒だと聞いたからな」

「また伊里君か! もう、彼のせいで世界観おかしい言語出ても大体彼に聞いたで済むじゃないか! 異世界転移者なんてやっぱりゴミだよゴミ! 生態系のバランスを崩す、百害あって一利なしだよ! マヘマヘ!」

 

 コイツ、前に異世界転移きたー! みたいなこと言ってたくせになんて手のひらの返しようだ……おまけにコイツ自身異世界から転移してるから余計にどの口が言いやがる感が半端じゃない。

 

「ゴミですか」

「そう、大人の人間も異世界転移した人もひとしくゴミ!」

「なるほど、わかりました」

「いや、わかるな!」

 

 何を学ぼうとしてるんだこのハーフゴーレムは!

 

「ではゴミとはなんですか、邪賢者」

「そりゃあ決まってる、カップルだ。十代から二十代のカップルな。あと、カップルじゃなくてもモテる男はクソ。ちなみにピンク色の上級魔本級のことしてる連中は等しく皆殺しにしていい」

「なるほど、わかりました」

「うわあ、いたいけな子にろくでもないこと教えてるこのスケベおっさん……」

 

 呆れるような顔で言ってくるクソキメラ。お前のすり込もうとした内容よりはマシかと思うが。

 

「ろくでもなくない。これは魔王軍側として覚えておかなければいけない基本事項だ。どうせあのアーマーナイト隊長殿は品位だのなんだののせいで正しそうなことしか教えて無さそうだからな」

「それは人間としてマシなことなんじゃあ……ひどいなぁこのおっさん……」

「さっき大人をゴミ扱いした魔法少女見つけて平和を取り戻すくんに言われたくないが」

「マヘク! それは当然のことだからいいんだよ! 普通だよ!」

「いーや、普通じゃないぞ冥府の化け物」

「僕を冥府出身みたいな扱いにするのやめてよ! マヘマヘ!」

「そろそろその変な怒り口癖こそやめろや!」

 

 俺とクソキメラがにらみ合っていると、右手を平手にし、左手でポンっと平手を叩くハーフゴーレム。俗にいう、なるほど、わかったポーズだ。

 

「隊長、邪賢者、亜種キメラ、三者から学んだことを総合し、理解しました」

「亜種キメラってまさか僕⁉」

「亜種なんて生易しいものじゃないがな」

「マッヘー! まだ言うかおっさん!」

 

 ここに来てまた新しいムカつく怒り口調し始めたぞこのクソキメラ……!

 

「まず、人をゴミとかクソとかいうのはよくありません。言った奴がそういう存在なんだ、と隊長が言っていました。あっ、邪賢者にはそれ教えると後が怖いから内緒で、とも」

「ほう、成程」

 

 つまり俺のことをアイツはクソと思った訳か。ふふふ、帰ったらアイツにマヒスライムの枕を用意してやろう。それも19体分を凝縮した奴をな……!

 

「その理論から、邪賢者はクソ、クソキメラはゴミ、という結論に達しました」

「いや、達するな!」

「ははは! スケベおっさんはクソ! ヒュー! クソ!」

「お前自分はゴミと言われてるの気づいてるか?」

「えっ? ――――っていうか今僕ハムちゃんにクソキメラって言われた⁉ おっさんのせいで変な呼び名がハムちゃんに伝わったじゃないか!」

「ゴミって呼び名はいいのか」

「クソキメラがいたらゴミだからそれはいいんだよ! 僕はクソキメラじゃないからセーフ! 認識が誤ってるってすぐに訂正できるし!」

 

 いや、訂正は難しいと見た。

 

「ええい、いいかハーフゴーレム。クソキメラはそれでいいが、俺に関しては違う。ていうかアーマーナイトから教わったことは何もかも忘れろ、俺の言う事だけ聞いていればいいんだ」

「あっ、それいい人側の方に寝返られるパターンだね。魔法少女大好きな僕にはよくわかる」

「バカ、R18なら上手くいくからセーフ」

「じゃあ全年齢のこの作品ではアウトだね」

「メタいこと言うな、作品に没入できなくなるだろ」

「今さら言うそれ⁉」

 

 サブタイトルだとかなんとか言ってたやつがそれ言うか! とかわめくクソキメラ。何のことだかさっぱりわからん……相変わらず変なクソロリキメラだ……。

 

「とりあえず訂正だ訂正。俺は邪賢者、アイツはクソキメラ、それでいい」

「わかりました」

「よくないよ! 僕はマヘク! マヘクだからね!」

「わかりました、魔法少女見つけて平和を取り戻すくん」

「だからマヘ――――うううっ!」

「どうした、キモイ声を出して」

「キモくないよ! かわいい苦悶の声さ! 理由? 聞かなくてもわかるだろ! ハムちゃんにくん付けされるだけで自分の名前が許せるような気がしてきているんだ!」

「なんだそれ、気持ち悪いなお前……クソが!」

「おっさんに言われたくないけど⁉ ていうかなんでクソって言われたのさ僕! もう! 憎い!」

 

 マッヘ―!マッヘ―!とプンスカし始めるクソキメラ。つい創現し、邪剣・ブラッドクラスターでそれを消し炭にしてしまう俺。クソがぁ、美少女にくん付けされるとかキメラ畜生風情がぁぁ……! ハーフゴーレムは別に好みではないが可愛いから、貴様風情がくん付けされるなどと許されねえ……! 後で絶対殺す……!

 

「迷いなく殺害する極悪さ。流石は邪賢者ですね」

「何のことだ? 俺は何も殺してないぞ……? まあ後でクソキメラは殺すが」

「成程、理解していない。これは災厄」

「急に何を失礼なこと言うんだお前は」

 

 俺は血の如き赤き光る刀身をした、振るだけで赤光が敵に向かっていき、対象を抹消する邪剣を消去しつつ、そう言う。全く何を――――あっ、そうか、今なんとなくクソキメラを抹消してしまったんだった。いやー、忘れてた忘れてた、ハハハ。

 

「流石は歩く災厄です、魔王様が畏怖するだけあります」

「おいおい、言いすぎだ。俺はただカップル抹殺装置になれるだけの邪賢者だよ。第一あの魔王様が畏怖するものか。」

「いえ、アイツ本能が思考よりあっさり動くから怖いと言ってました」

「ははは、お前中々冗談うまいなー」

 

 魔王様は俺よりおっさんでクソが! と思ったりもするがその実力は強大。俺もかなり強いが、恐怖を抱くなんてことはあるまい。

 

「さて、長話が過ぎたな。まずは町を目指すか」

「はい」

「ああ! 大冒険の始まりだよハムちゃん!」

 

 そして案の定蘇るクソキメラ。だが姿は見えない。まあいい、ほっとこう。

 

「えーっと、創現だっけ? 誰にしようかなー、やはりカオスイビルちゃんかなー、それとも僕を四分割したあの子――あっ、魔剣デモンズイーターちゃんかー、名前いただき! それとも今僕を抹消した――えーっと、邪剣・ブラッドクラスターちゃんか! ひゅー! 迷っちゃうよー!」

 

 何をごちゃごちゃ言って――て、待て。コイツどこから喋っている? ていうかなぜ口に出していない創現武具の名前をコイツが知って――って!

 

「ど、どわああああああああっ⁉」

「うるさいよおっさん! どうしたんだよ!」

「どうしたもクソもあるか! お、お前――なんで俺の右手になってやがるんだ!」

 

 俺の右手が白くなって変な耳っぽいのと顔っぽいのが出てる! 本格的に気持ち悪いってか、こ、これ、き、寄生されてるじゃねぇか! げっ、目が俺の方向いた!

 

「ふふん、驚いたかい? これが僕の特技、マジカル・ぱらさいと(ひらがな)さ! これは本来、気絶した魔法少女にぱらさいと(ひらがな)することで無理やりにでも戦わせるために使える技なんだ!」

「お前ひらがなにしたからってえげつなさが緩和されると思うなよ!」

「そしてぱらさいと(ひらがな)している間はその人の能力も使えるし、記憶も吸い出せるんだ! これで魔法少女となった子の甘さとかを知り、戦いを嫌がるなんて甘い考えを緩和、ないし叩き壊して戦いから絶対逃がさない話術をすることが出来るんだ!」

「こ、コイツ本格的に危険すぎる……!」

「あっ、勘違いしないでよ! 子供は生命力溢れてるからちょっと一定期間動けなくなるだけだし子の技はセーフ! 大人はまあ、生命力微妙だし僕が離れた瞬間死ぬか廃人になるだけだしセーフ!」

「どこがセーフだテメェ!」

「ふふふ、僕を3回も殺したんだからセーフさ……ふふふ……」

 

 怪しく笑うパラサイトキメラ。く、クソがぁぁ……! ヤバい、邪賢者として存在してから、初めて生命に危機を感じているぞ俺……! おまけに今も知識や記憶が吸い出されている感覚が……!

 

「くそっ! 浄化魔法・フェアレーション!」

 

 浄化魔法・フェアレーション。自己についた良くないものを蒸発させる魔法だが……!

 

「ぷっ、何やってんのおっさん。あっ、オリジナル魔法ってやつ? いきなり厨二じみたことするなんておっさんは全く、今さら僕に幼い心持ちアピールしたっておっさんだし、女の子じゃないから無駄だよ?」

「こ、コイツ……フェアレーション! フェアレーション! フェアレーション!」

「うわあ、なんかおっさんが必至だ……怖っ」

 

 魔法少女がされたら泣き叫びそうな風貌な奴が怖いとか抜かしやがる……! ていうか効かない……! もう自身の一部扱いになってるせいかこの冥府の寄生生物が浄化されない……!

 

「成程、クソキメラくんも災厄の名を持つだけありますね」

「クソキメラくん⁉ やめてよハムちゃん! 嫌と嬉しいが混同してるよ! ヒャックゥゥゥ!」

 

 おまけに何よりウザい……! ていうかハーフゴーレムのやつ、この状況で顔色も声色も一つ変えない辺り神経の図太さは物凄い。

 ええい、右手どころか右腕の感覚は完全に奪われていて、皮膚に同化しているから引きはがすのは無理だ! だったら……!

 

「オラオラオラぁ! 何してんだテメェらぁ!」

「よっしゃ生命体いたぁ! 部分転移魔法・コンゼルスセイム!」

 

 瞬間、俺の右腕はパラサイトキメラごと消失した。

 

「再生魔法・リジェレイド!」

 

 そして自分の右腕を瞬時に再生。パラサイトキメラの痕跡は残っていない。ふう、焦った……。

 

「器用ですね」

「まあな、ったくあのクソキメラなんておぞましいことしやがるんだ……くそ、本当に生命力が奪われている感じがする……」

 

 くらっとする頭を押さえる。おそらく、魔力すら無い普通の人間がアレに乗っ取られたら、十秒以内に切り離さないと本当に死ぬな……。これは今後あのクソキメラを殺害する時には気を付けないといけないな……。なるほど、自分以外の命を大事にしなければいけない理由の一端が少し見えた気がする。

 

「オラオラオラァ! 無視するなオラぁ!」

 

 ……おっと、そうだった。なんか生命体が話しかけていたな。

 声のする方を向くと、そこにいたのは。

 

 眼帯をつけた筋肉質のオーク――の頭に、白いキモイ腕がついた奇怪な存在であった。


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