飛び降りた出久がザラゾスに蘇らされて意識を取り戻したところから始まる。
すでに性格が違う。
注意!!
緑谷出久は、暗闇の中、轟轟と燃え上がるような凄まじい炎の夢を見ながら目を覚ました。
救急隊員や、涙を流した母が自分を見ている。
「なにしてたんだろう?」
出久は覚えていなかった。
だが人伝に聞いた話では、廃ビルの下で倒れているのを発見され救急車で運ばれたらしい。
そして廃ビルの屋上に靴と、黒焦げになった自分が執筆していたヒーローなどの情報が記載されたノートが残っていて、自殺を図ったのかと警察から聞かれたが出久はその前後の記憶を全て失っていた。
結局平謝りし、解放されてから母と家に帰った。
「…出久。」
「なに?」
「あなた…ちょっと変じゃない? どこか打ったの?」
「ううん?」
「なら…いいけど。」
どこか不審げな目で聞いてくる母に、出久は首を傾げた。
後日、学校に行くと、机の上に花瓶が置かれていた。
「死に損ないがきたぞー。」
なーんてはやし立てるクラスメイトに、出久は何も感じること無く、花瓶を窓辺に置いて椅子に座った。
「おい、無個性、昨日自殺未遂したらしいな?」
「そうらしいね。」
「残念だったなー。死ねなくてよ。」
「そうらしいね。」
「……?」
「どうかした?」
「…お前…、なんか変じゃね?」
「頭でも打ったんじゃないのか?」
「かもね。」
「お前変だぞ!?」
出久は戸惑っているクラスメイト達の様子を不思議に思った。いつも通りのつもりなのに。
「おい、デク。」
「なに?」
「…なんだその目はよぉ? ああ? 昨日はビルからダイブしたらしいな? けど死ねなかったんだってな? 残念だぜ。この世で無駄なクソナードがいなくならなくってよぉ。」
「『俺』の目が、なに?」
「…?」
「どうかした?」
「お前…誰だ?」
「?」
「いや、そんなわけねぇか…。ともかくその目…やめろ。クソムカつく。」
「普通だけど?」
「ああ?」
「なに? この手はなに?」
爆豪に胸ぐらを掴まれ立たされた出久は、ジッと爆豪を見た。
爆豪は、その目に見つめられ、グッと息を詰らせ、火傷でもしたように慌てて手を離した。
するとチャイムが鳴って教師が入って来た。
「チッ!」
大きく舌打ちした爆豪は自分の席に座った。出久は何も気にすることなく前を向いて座った。
夢を見た。
轟轟と燃えさかる、地獄の灼熱の炎。
すべてを焼き払う、地獄の炎。
「緑谷!」
「……ぁ。」
「居眠りするとはどうしたんだ! 調子が悪いのか?」
「……眠い、かも。」
「せめて授業が終わるまで起きていなさい。」
「はい…。」
しかし、出久は眠気に勝てず、そのままウトウトし、眠った。その後教師が起こそうとしたが、まったく起きなかったためほっとかれた。
そうこうしていると進路についての話になり、その頃になってやっと出久は起きた。
「確か、緑谷も雄英校希望だったな。」
途端、ドッとクラスメイト達が笑った。
曰く、勉強は出来ても無個性がヒーローなんて無理だと。
しかし、出久は。
「それがなにか?」
っと、なんでもないように言ってのけた。
「おい、デク!」
「なに?」
「てめー、雄英校に行くんじゃねーぞ! クソナードが!」
「とやかく言われる筋合いはないよ。誰にもね。」
途端、教室内の空気が凍ったような錯覚があった。
「無個性云々でヒーローができないなんて誰が決めたのさ? だいたい君の志望動機だって変だと思うけど?」
「ああ!? てめぇ!!」
「それと、俺はデクじゃなくて、出久って言うんだけどね。人の名前もまともに言えない人がヒーローなんて務まるのか?」
「ぷ…。」
誰かが思わず吹いた。
それが聞こえた爆豪は、顔を赤くし青筋を立てた。
「クソデク…、放課後覚えてろよ…!!」
「うん。」
「っ!?」
冷静沈着な出久の態度に、我慢の限界が来た爆豪が席を立って出久に殴りかかろうとしたため、教師やクラスメイトが止めに入った。
出久は、何も感じていないような無表情でボーッとしていた。
「で? これはなに?」
「ああ?」
放課後すぐに爆豪に捕まり、校舎裏に連れて行かれた。
爆豪の取り巻きらしき他の男子生徒達がいたが、出久の様子を不気味がっていた。
「用がないなら帰る。」
「待てや。てめぇ…、なんだよその態度はよぉ? 朝からおかしいんだよ!」
「それがどうかした?」
「! 自覚があんのか!?」
「帰るね。」
「待てやぁ!!」
クルッと踵を返した出久の肩を爆豪が掴んだ。
「……しつこいなぁ。そんなに気に入らないなら無視が一番じゃん。ほら、好きの反対は無関心って言うだろ?」
「死ぃねぇぇぇぇええ!!」
「ふう…。」
殴りかかってきた爆豪の手を出久は片手で軽々と受け止めた。
それを見て取り巻き達が目を見開いた。
「ねえ、君はナニがしたいの?」
「その言い方…、てめぇ…、本当にデクかよ!? つい昨日まで俺のこと『かっちゃん』『かっちゃん』って呼んでたじゃねーか!! まさか自殺未遂でおかしくなったか!?」
「さあ? 俺は俺だよ? 緑谷出久だ。」
「っ、ぐあああああ!? いでぇぇぇぇ!!」
ギリッと出久が爆豪の拳を軽く握ると、爆豪は痛がった。
「な、なんだこの握力!? てめぇ、クソ無個性のクソナードが!」
ーーー見ろ…
「?」
ーーー目を…
「ああ…、そうか。君ってさあ、本当にヒーロー目指すなら……。大切なモノが欠けてると思うんだ。」
「!?」
痛がっている爆豪の顎をガシッと掴み無理矢理目を合わせる。
「っ…!?」
「『俺の目を見ろ!!』」
出久の内側に潜む悪魔ザラゾスの声と出久の声が重なり、爆豪は出久のその目の奥から放たれる“ちから”に引きずり込まれた。
それは一瞬の出来事だったかも知れないが、爆豪からしたら永遠に思える苦痛だっただろう。
これまで自分が虐げてきた者達への罪、その罪が生み出す苦痛が爆豪を襲ったのだ。
とりわけ虐げていた出久への暴力がすべてその身に降りかかり、爆豪はあっという間に倒れた。口から泡を吹き、白目を剥いて。
『……なぜ殺さなかった?』
「かっちゃんなんて、殺す価値もないよ。それにヒーローは、むやみに人殺しなんてしちゃいけない。」
『違う。それはお前の良心とやらだ。素直になれ出久。俺に身を委ねろ。』
「体をあげるつもりなんてないよ? 死のうとした俺を助けくれたことは感謝してるけどさ。」
『まったく…、善意は時に悪意を越える残酷さか…。』
その後、爆豪は緊急搬送された病院で目覚め、病室にいた出久を見るなり声にならない悲鳴を上げ、頭を抱えて身を丸め、ガタガタと震えながら『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』っと、延々と謝罪の言葉を口にしていた。
ザラゾスは、これならいっそのこと廃人の方がよかっただろうに…っと思ったのは内緒にしておく。
ペナント・ステア(贖罪の目)。
出久のヒーローとしての在り方の精神があるため、中途半端な威力で爆豪を蝕むだけにとどまる。
緑谷出久が、『ゴーストライダー』となるのは、あと少し……。
(※文字数が増えたので、設定は削除して移しました)
感想欄でいただきましたが、一応自殺未遂をしたというのはニュースにすべきでしたかね?
ただ、なぜか無傷で発見されたため大事にならなかったという感じで書いちゃいましたが……。
オールマイトから個性の譲渡受けるか否か
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個性はいらない
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