そんな結末認めない。   作:にいるあらと

7 / 195
若干一名(一つ?)のキャラ崩壊が激しいです。注意してください。




2014.3.30 修正


05

「ごちそうさまっ、おいしかったです!」

 

「はい……お粗末様でした……」

 

 手をぱちっ、と合わせて、元気よくご馳走様した。

 

やっぱり料理はおいしいと言ってもらえるのが一番嬉しいな。

 

今日の晩御飯は俺にとっては、天国と地獄を行ったり来たりするようなものだったが……

 

「徹兄さんの料理本当においしかったです! すごいですね、あんなに喋りながら作ってたのに!」

 

 ユーノも褒めてくれた。

 

ん? 褒めてくれてくれてるんだよな?

 

 もうユーノの中で俺の呼び方は、兄さんで固定されてしまってるようだ。

 

訂正しようとも考えていないな、こいつ。

 

『誰でも一つくらいは、得意なものがあるのですね』

 

 なぜ素直に褒めれないのか。

 

そういえばレイジングハートは大丈夫なのだろうか、電池とかのエネルギー的なもの。

 

「飯も食ったし風呂入るわ。ほれユーノ、行くぞ」

 

 はい、と返事をして俺の肩に乗る。

 

「お背中流し……」

 

「もういらないよ、そういうの」

 

 なのはがまたいらん事を言いそうになったので、言い終わる前に先回りしてばっさり切り捨てる。

 

これ以上なにかされたら、さすがに俺の鉄壁の理性もどうにかなってしまいそうだ。

 

 むぅ、とうなるなのはを無視してレイジングハートに水を向ける。

 

「レイジングハート、お前はどうする? すこし汚れてんじゃねぇの?」

 

『助けてくださいマスター! 野獣が私の体を狙っています!』

 

 親切心で洗ってやろうかと思ったのに、何てことをいいやがる。

 

この赤い宝石は俺をなんだと思っているのだろう。

 

お前襲うとかどんな性癖だよ。

 

「ちょっと待ってろ、今すぐやすりを持ってきてやっから」

 

 リビングを出て自分の部屋へ、必要なもの取りに行く。

 

後ろでレイジングハートがわめいている声と、なのはがそれを落ち着かせるような会話が聞こえた。 

ユーノが、お手柔らかにしてあげてください、と頼んできたがそれは保証できないな。

 

「さあ、レイジングハート……裁きの時だ」

 

 戻ってきた俺が、リビングの扉を開け放つと同時にレイジングハートに宣告する。

 

あれ、テーブルの上に転がっていたはずの赤い宝石の姿が見えない。

 

代わりになのはが隅っこで、カーテンに隠れるように丸まっていた。

 

それ隠れる気あんのかよ…

 

ゆーっくりと、なるべく恐怖を与えるように近付き、うずくまるようにしているなのはの肩を掴む。

 

「なのはちゃーん、隠しているもん出そうか?」

 

「持ってません、なにももってないですよお兄様?」

 

嘘下手か、なんかもう一周回ってかわいいわ。

 

なのはの手の中から、かたかたっ、とレイジングハートが震える音出ちゃってるのに。

 

「はぁ、ほら大丈夫だから。レイハこっちに渡せ」

 

 俺が持ってるものをなのはの視界に入れる。

 

俺が持ってきたものを見て安心したのか、はふぅと詰まっていた息をはいて、レイジングハートを俺の手に乗せる。

 

 突然の主の豹変ぶりに、レイジングハートが驚いたように声を上げる。

 

『マスター!? 私を見捨てるのですか! こんな……野蛮で粗野で、私の名前を省略するような男に!』

 

 色々文句つけてるけど、一番怒ってる理由は名前短くしたからみたいだな。

 

「省略じゃない、愛称だ。その方が親しみやすいだろうが」

 

『私はもとから、貴方の十倍は親しみやすいですよ、この強面!』

 

 たしかに俺はちょこっと愛想が悪いし、少しだけ凶悪な顔をしているとは言われるが、そこまで言わなくてもいいじゃないか。

 

なんでこんなに俺を嫌ってんのかね。

 

「それじゃ始めるか」

 

『きゃあーっ! 私の自慢の、美しい曲線美に傷をつけないでください!』

 

 脚線美ではなく曲線美か、うまいことを言う。

 

 さて、まずは乾いた布で表面の汚れを拭く。

 

こいつ、ただの球体だからやり甲斐がねぇな。

 

『わひゃあっ、な、なにを』

 

汚れがひどかったら少し湿らせた布で拭くんだが、今回はその必要はなさそうだ。

 

『んっ、あぅ、ひぅっ……』

 

汚れが落ちたら、専用のオイルをしみ込ませた布で表面に薄く塗布していく。

 

なんか手を動かす度にレイハが反応してくるんだが、こいつ感覚とかあるのか?

 

『ふぅっ……はぁっ……だっ、だめっ……』

 

あとは、綺麗な布で余分なオイルを拭えば終わりっと、もう終わっちまったよ、早いな。

 

こいつ手をかけるところ無いからなぁ、真ん丸だし。

 

俺、うまいこと言ったな。

 

 つうか、なんでなのはは目を覆ってんだよ。

 

ちゃんと見とけよ、これからはお前がするのに。

 

『はぁっはぁっ……貴方、一体何をしているのですか!』

 

なんで息荒げてんの、どっかで呼吸してるの?

 

「レイハ、お前本当に俺にやすりで削られると思ったのか?心外だな、お前の中の俺のイメージどんだけ短気なんだよ」

 

 失礼な話だぜ、俺は常に仲良くしようとしていただろうに。

 

なのはは、もう終わったかな? 大丈夫かな? という風に、ちらちらと手の隙間からこちらを見ている。

 

 ユーノの気配がさっきからしないなーと思ったら、俺の肩で布団干すみたいな感じで寝てしまっている。

 

魔法も使ったし疲れてたんだな。

 

『ジュエルシードの思念体に、生身のステゴロで挑む位ですから。それはもう、極めて野蛮な人間なのでしょう』

 

 その部分だけを抜粋されると俺、人間じゃないみたいだな。

 

「俺だって、できることなら戦いたくは無かったぜ。あの時はやるしかないからやったんだ。この際だからはっきりと口に出しておくが、俺はな、レイハ。お前とも、良好な関係を築いていきたいと考えてんだよ。常になのはの一番近くにいて、有事の際はお前が一番なのはを守ることができるんだ。俺にはできない事も、お前にならできるんだからな」

 

 レイハは言葉が出てこないのか光で応答する。

 

一応、俺の話を聞いてはいるようで安心した。

 

「まぁそういうことだ。これから頼むぜ、レイハ」

 

『わかりました、私の想定以上に、あなたは善良な人間のようです。評価を一段階引き上げて差し上げましょう、精進することですね。……これからよろしくお願いします、徹』

 

 相変わらず俺のことは呼び捨てのようだが、少しはお互い歩み寄れたようだ。

 

目先の問題がたくさんあるのなら、近いところから一つずつ解決していこう。

 

次の問題は、寝落ちしてしまったユーノとなのはをどうするかだな。

 

なのははついさっきまで起きてたじゃんかよぉ……

 

 はぁ、とため息をこぼす俺に、レイハが、恐らく応援の意味を込めてぴかぴかと光を送ってくる。

 

前よりも、光が強く優しく感じるのは、手入れして綺麗にしたからだけではないと信じたい。

 

 

 

 

 




レイハさんと仲良くなる回、誰得かわからないサービスシーン、どうしてこうなったのでしょうか。

話の進行スピードが亀より遅いですね、自分でもわかっていますので見捨てないでください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。