ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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プロローグ

 そこは、アニメ「機動戦士ガンダム」の廃墟都市をモデルとした戦場であった。

 ただし、行き交っているのはモビルスーツではない。

 

 ガンプラだ。

 

 ホバー音を鳴らしながら赤、青、黄、緑、ピンクのカラーリングをした5機のドムが白いガンプラを追走している。

ドム隊がビームやバズーカ弾が次々に撃つも、逃走者は華麗に回避していく。

 

「おいおい、逃げてばかりか?」

 

 黄色いドムに乗っているパイロット。いや、ダイバーは敵を挑発する。逃走者は意を介さず回避行動を続ける。

 

「よし、こうなったらアレをやるぞお前たち!」

 

 赤いドムのダイバーがそう告げると、青いドムのダイバーが驚いた。

 

「相手はたった1体ですよ!?」

 

 暗にやり過ぎ、と苦言を訂している。

 

「おいおい、ここまでのらりくらりされてるんだ。いっちょやってやろうじゃねぇか」

「えぇ、私もリーダーに賛成よ」

 青いドムのダイバーとは対称的に、緑とピンクのドムも赤いドムのダイバーに同調した。

「あ~、わかりましたよ。やりましょう!」

 

 最終的には青いドムのダイバーが折れたところで、リーダーと呼ばれた赤いドムのダイバーが満足げに頷いた。

 

「我ら五連戦隊ドムレンジャーの力、見せてやろうじゃないか!」

 

 リーダーの一言で5人の心が一つとなる。

 対して逃走者は、熱く燃え上がっている彼らとは裏腹に静かだった。いや、数的数の不利にどう対処しようか必死に考えていた。

 そんなのはお構いなしに赤いドムのダイバーが声を上げた。

 

「いくぞ、我らのコンビネーションを受けるがいい!」

 

ドムのコンビネーション攻撃といえば、ジェットストリームアタックが有名だが、あれは3機で行われる攻撃だ。しかし、今のドムは5機。

どのようなコンビネーション攻撃をするのか予測不能だ。

 

「結局、やるしかないか」

 

 逃走者は意を決して逃走をやめ、腰部に折り畳んでいた長刀、デモリションナイフを左手に握ってドム隊に向き合った。

 

「覚悟しろ、ガンダムぅ!」

 

 そう、逃走者のガンプラは、ガンダムタイプ。ガンダムXをベースとし、天使の翼を思わせるウイングガンダムゼロ(EW版)のバックアップ、右腕にはガンダムエクシアのGNソードが装備されていた。

 

 なにより、全身、真っ白なのが何よりの特徴だった。

 

「イエロー、ピンク、ブルー、グリーン。奴にアトミックストリームアタックを仕掛けるぞ!」

 

 機体の色とダイバーネームは一緒なのか、それともコードネームなのかは白いガンダムのダイバーには知るよしもないが、リーダーの赤いドムのダイバーはレッドだろうとは予想できた。

 レッドの叫びと共に5機は一直線並びながら白いガンダムに突っ走て行く。

 打算がついたのか、白いガンダムのダイバーもそのまま突っ込んでいく。そして1機目の黄色のドムが胸部拡散ビームを放つその瞬間、跳躍し、かつ踏みつけた。

 

「なっ、オレを踏み台にした!?」

 

 そう言うのはお決まりなんでしょと思っているうちにガンダムのダイバーは2機目に対応していた。

 2機目のピンクのドムは、ジャイアント・バズの2丁構えだった。さすがに原作とは違うかと毒づきながらデモリションナイフを振るう。2丁のジャイアント・バズを斬る目的だったが、デモリションナイフの大きさとそれに伴う破壊力は思わぬ副産物を生んだ。

 

「なっ!?」

 

 ピンクのドムの態勢が崩れたのだ。そのせいでヒートサーベルを振るおうとした後続の3機目の青いドムがドミノ式に倒れていく。

 

「怯むな! グリーン!」

 

 緑のドムが倒れる青いドムを横に避けて、すかさず煙幕を張った。

 視界を奪われた白いガンダムのダイバーは、驚きを隠せなかった。

 

「赤いのは!?」

 

 視界を奪われた今、頼れるのはレーダーであったが、それすらも反応を示さなかった。瞬時にあの煙幕は視界だけではなく、レーダー機器をも一時的に奪う特殊なものだと判断した。恐らく、同じ効果を持つ胸部拡散ビームの応用だろう。

 

「くらぇい!」

 

 そんな叫びと共に白いガンダムのダイバーは反応した。煙の中から赤いドムが現れ、振るってきたのはヒートアックス。デモリションナイフより長いことはないが、その巨大な斧に白いガンダムは反撃することができず、デモリションナイフで受け止める。

 刃と刃がぶつかる音が大きく響き渡る。まさにそんな時だ。

 白いガンダムは、背後から攻撃を受けた。衝撃からしてジャイアント・バズだろう。

 

「くっ!」

 

 思わぬ振動と警告音に白いガンダムのダイバーは焦りを感じた。そしてまた攻撃を受ける。今度は左右同時にすれ違う形でヒートサーベルで斬られる。

 要はこの赤いドムは足止めの役割なのだ。もちろん攻撃の意味もあるのだろうが、煙幕で周囲を覆われた状態ではそれが最適解なのだろう。

 

「ふふふ、どうだ? これぞアトミックストリームアタック。誰かが欠けてもそれを互いが互いをカバーして確実に仕留める!」

 

 レッドの声は実に誇らしげだ。

 確かにこのまま攻撃され続ければダメージが蓄積し―――いや、その前に腕の一本でも切断されれば、瞬く間にヒートアックスによって真っ二つだ。

 

「確かにすごいね。でも、対処できないわけじゃない」

 

 直後、レッドは背後からきた「なにか」の衝撃と自機のダメージ判定に目を見開いた。その隙を白いガンダムが見逃すはずがない。あえてデモリションナイフを捨て、空中高く舞い上がる。

 その両手にはデモリションナイフの代わりに握られている二連装のライフル。

 

「煙は吹き飛ばせばいい!」

 

 その言葉と共に白いガンダムのライフルが火を噴いた。

 それはただのライフルの威力ではない。新機動戦記ガンダムWに登場したツインバスターライフルだ。煙を吹き飛ばすどころかその場にいる5機ドムを全て破壊することができる威力を誇る。

 現に赤いドム以外はビームの奔流に巻き込まれて大破しており、その赤いドムもまた片腕とヒートアックスを失っていた。

 

「降参してくれる?」

「うむ。元より我らから仕掛けた戦い。見逃してくれるなら要求に応えよう」

 

 降参の証に赤いドムが消えた。GBNでは、コンソール操作一つでそういうことが出来る。そして、この場合、降参を意味する。白いガンダムのダイバーも同じようにして、互いに顔を合わせた。レッドは、髭を蓄えてマッチョなアバターだった。白いガンダムのダイバーは、少年だった。GBNアバターでは珍しい部類の黒髪であること以外はこれといって特徴はない。あえて言うなら優男というアバターだ。

 

「我が名はレッド! 以後、よろしく頼む」

「いきなり仕掛けておいて以後、よろしくはちょっとなぁ。僕はユウです」

 

 相手が名前を名乗ったからこちらも名乗るべきだと思ったユウだが、はっきり言ってレッド達の第一印象はよろしくない。

 何しろ機体の調整のために動かしていたのに、いきなりレッド達ドム隊が挑んできたのだ。

 

「時にユウよ。一つ聞きたい。あの時、我の背後から攻撃を受けたのは君の仕業か?」

 

 レッドは仲間のコンビネーションミスをも疑ったが、それはほぼないと思っている。彼らのドムは煙幕に対する対策装備をしているからだ。つまり、ユウからは何も見えなかった煙幕も、彼らにとってはそれがないも同じだった。

 

「あ~、あれね。う~ん、企業秘密ってことで」

「なんだそれ!?」

「まぁ、またいつか戦う時もあるし、手の内はなるべく見せたくないからね」

「ふむ、一理ある。では、代わりに教えてくれないか? 君のガンプラの名は?」

 

 少し逡巡するが、機体名くらいはいいだろうとユウは判断した。

 

「エクスガンダム。……未知を表すXを捩った名前だよ」




劇中で書ききれなかった五連戦隊ドムレンジャーの各仕様タイプ。

赤ドムは、近接特化型。
緑ドムは、電子戦&妨害型。
青ドムは、高速型。
黄ドムは、パワー型。
ピンクドムは、重火器型

といった面子です。一発ネタとしては惜しい連中ですね。

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