ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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第4話③「それぞれの決心」

 その後、エイジは何をすることもなく、フィールドから去っていった。不正ツールも解除したのか、シルバのメニュー画面が自由に操作できるようになった。

 まだGBNにこうして“生きている”ところを鑑みるに、アカウントの消去もされていないようだ。

 

「引き分けだったからかな」

「だろうな」

 

 GBNのカフェで、ユウがぼやいたのに対し、シルバが返した。

 確かに両機が同時に動かなくなった時点で、勝敗がないのは目に見えて明らかだ。第三者のシルバも言っている。

 

「シルバくん、すまない。こんな事に巻き込んでしまって。……やっぱり、僕はフォースなんて……」

「おいおい本気か?」

「うん、誰かと組めば、その人が狙われてしまう。今回のようにね」

「上等!」

 

 ドン、とシルバは持っていたコーヒー牛乳のジョッキを下ろした。

 

「それなら! リベンジかますってことができるってもんよ」

「けど!」

「あーもう、ウザったい! いいんだよ、お前は今のままで。過去に何があったか知らねぇし、無理に訊く気もねぇ」

 

 そう豪語した後、少し気恥しそうにシルバは続けた。

 

「それにまぁ。……オレの数少ないダチだからよ」

 

 たったそれだけの理由が、ユウには嬉しかった。

 

§

 

 エイジは、自分が所属するフォースのアジトへと訪れた。アジトといっても洞窟内に適当に散りばめれた灯かりくらいで、溜まり場といってもいいところだ。

 エイジが帰還するなり、いかにもキザったらしい風貌のダイバーが声を掛ける。だが、エイジに対する口調はそれとは大きくかけ離れていた。

 

「あ、エイジさん。団長がお呼びです」

「おう、グヴレイル。出迎えご苦労。あ~、そういやぁ、お前、まだ下っ端やってんのか」

「ぐっ!」

 

 グヴレイルの顔が醜く歪む。初心者狩りをやっていた彼だが、ユウ達との一件以来、『覇王団』の団長によって、フォース内の階級が大幅に降格した。現在は下っ端。つまりフォース内の最下層である。

 

「で、団長は何だって?」

「そこまでは……」

「ふ~ん、わかった」

 

 薄暗い洞窟を進み、唯一、整備が行き届いた扉の前にやってくる。門番がエイジの顔を見るなり、すぐにドアを開ける。

 そこには会議用テーブルがあり、複数のメンバーと、『機動戦士ガンダムF91』に登場した鉄仮面のような男が座って待っていた。

 

「よぉ、団長。俺に何か用か?」

「うむ、まずはバトルロイヤル優勝を褒め称えよう。そして、例のシステムのテストもな」

 

 軽い労いを、団長と呼ばれた仮面の男が述べた。

 

「ま、アカウントの消去まではやってねぇけどな」

「それでいい。今、それをするには早い。それに―――」

「あん?」

「お前が戦ったダイバー、確かユウとか言ったな。そやつの強さは以前と比べてどうだった?」

 

 エイジは思わず息を飲んだ。以前よりパワーアップした自分と、以前より装備が減ったとはいえ、結果的には引き分けに終わったユウのエクスガンダム。

 ガンプラとしては格段に弱くなっただろうが、ダイバーとしては確実に以前より強くなっているといえよう。

 

「今の俺と互角に終わったんだ。観てたんならわかるだろう?」

「お前が手加減したという可能性もある。何せ昔馴染みだからな」

「ケッ、今じゃ怨敵だよ」

「フフフ、そうか。ならば、お前は本気で戦ったというわけか、なるほどなるほど」

 

 強さを追い求める『覇王団』にとって、ユウのような存在は無視できないと同時に欲しい人材でもある。もちろん、ユウだけではない。チャンピオンのクジョウ・キョウヤ。『第七機甲師団』を率いるロンメル。その他にも注目するダイバーは山ほどいる。

 

「是非とも我がフォースに来てもらいたいものだな」

 

 仮面の男は、仮面の中で小さく笑い続けた。

 

§

 

 GBNでシルバと別れた夜。ユウは、封印していたエクスガンダムの装備を弄っていた。保存状態がよかったのか、目立った汚れもない。少しメンテナンスをすればすぐにでも使えるようになるだろう。

 だが、今頃になってこれを取り出したのかというと、やはりエイジの事があったからだ。また同じような事がないとは限らない。今度はナミやレナが狙われる可能性だってある。だからこそ、皆を守るために二度と使わないという封印を解いたのだ。

 だがやはり、ユウは迷っていた。

 この装備は確かに強大だ。だからこそ、また過ちを起こすのではないかと恐れている。

 そんな中、ふと思い出した台詞があった。

 

「『過ちは繰り返すな』……か」

 

§

 

 学校のHRが終わった後、ユウは大きなあくびを一つした。そんな間抜けな様子を、ナミは見逃さなかった。

 

「どーしたの? 寝不足?」

「委員長こそ、もう風邪はいいの?」

「いやぁ、人生で初めてズル休みしちゃった」

 

 小声で軽く言ってのけるナミに、ユウは目を丸くした。

 

「えっと、まさかチーム戦での敗北がショックで?」

「え? いやいや、なんでそんなことで休まなきゃいけないのさ」

 

 そう言うなり、ナミはまるで水戸黄門の印籠のようにスマホを、ユウに突き付けた。そこにはGBNのサイトがあり、ナミの個人データが映されていた。

 

 Dランク。

 

 そう、ランクを示すところにはそう記されていたのだ。

 

「あ、レナちゃんもDランクに昇格したんだよ。これでフォースが組めるね!」

「えっと、委員長さん……昨日、ガンダムベースにいなかったよね?」

「うん、だって家庭用のを買ってもらったから。4人分」

「4人分!?」

 

 ただでさえ、まだ家庭用のGBNは普及していない。パソコンのスペックも求められるが、値段が高いからだ。

 それを4人分となると、イクマ家の財力の恐ろしさを思い知らされる。

 

「言っとくけど、正当な権利で買ってもらったんだからね。過去3年分の誕生日とクリスマスプレゼントを込々で」

 

 なるほど、そういうわけか。と、素直に納得できるユウではない。むしろ、ナミの過去3年間に何があったのかと訊きたいくらいだ。よほど物欲のない時期だったのかもしれない。

 

「というわけで、フォースを組むから、これからもよろしくね!」

 

 有無を言わせぬウインクをするナミに、ユウは昨日の出来事を言えずにいた。




これから年末なので少し間が開くかもしれません
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