「やってくれたなカエデ。今度はこっちの番だ!」
再びジャック・オー・ランタンの姿になるとユウ達に向かって飛んでくる。
「体当たり? なら、また」
「避けろ!」
ユウの声は間に合わなかった。再び雷砲・稲妻を撃とうとした武者飛駆鳥は、ウォルターガンダムの体当たりによって吹き飛ばされたのだ。
「カエデ!」
「待つお!」
エクスガンダムを掠めるようにビームが奔った。ハンマ・ハンマの3連装ビームだ。どうしても合流させない。もっと言えば、1対1にしようとしている魂胆が見える。
「いけっ、Cファンネル!」
ウイングバインダーの副翼から放たれる6枚の羽根がハンマ・ハンマに向かって襲い掛かる。小癪な、とばかりに再びビームで撃ち落とそうとシールドを構えるが、それが悪手であり、ユウの狙いだと気づくのは勝負が終わった後の事だった。
「速っ!?」
そんな当たり前のことしか言えない程、エクスガンダムの機動は凄まじかった。流星を思わせるそれは、弧を描きながらハンマ・ハンマに接近し、次の瞬間にはすで攻撃は終わっていたのだ。
ハンマ・ハンマのコクピットに鳴り響くアラート。
そこには、グシオンハンマーを持っていた右手が切断されたという情報が表示されていた。
(み、見えなかったお)
Cファンネルに目を奪われていたこともあったが、それより速く接敵してきたエクスガンダムがビームサーベルを振るった一連の行動を。
フランケンシュタインは、気づかなかっただろうが、ユウも件の動きを可能にできるかは賭けに近かった。それでも可能に出来たのはディバイダーに装備されている大型スラスターとウイングバインダーのお陰であろう。
「まだだお!」
呆気にとられていた頭を切り替えて、フランケンシュタインは、シールドをエクスガンダムに向けようとする。だが、無情にもそのシールドには少し遅れて降り注いだCファンネルによって切り刻まれていた。
当然、トリガーを引いても、ビーム砲が発射されることはなかった。
「これで終わりだよ」
Cファンネルの着弾を確認する前に、ユウは、ツインバスターライフルをハンマ・ハンマに密着させていた。それが火を噴くと、ハンマ・ハンマは、胴部に風穴を開いた。
仰向けに倒れて完全に沈黙したそのガンプラは、フランケンシュタインの無念さを表しているようだ。
それを確認してからユウは、カエデの方を見る。
タッグマッチにおいてこの気持ちは不要だと思うが、ユウは助太刀は無粋だと感じていた。
「デュエルモードは、やっぱり1対1が醍醐味だからね」
§
ミイラ男が自身のフォースにカエデを迎え入れたいという理由は、単にダイバールックが吸血鬼というだけではない。初めてカエデの武者飛駆鳥と戦った時、その強さに惹かれたからだ。
会う度にその愛らしさにサブリーダーのフランケンシュタインが熱心に勧誘するが、リーダーである自分が内心一番入って欲しいと思っている。しかし、フォースリーダーの手前、しつこい勧誘は悪名を広めてしまう可能性がある。
だからこそ勝負する度に半ば冗談口調で、負けたらウチのフォースに入れ、なんて言っている。
要するにあわよくばという奴だ。
「さぁて、捕まえたぜ! カエデ」
体当たり後、球体モードのままのウォルターガンダムは、両腕を伸ばして武者飛駆鳥を捕らえた。しっかりと換装できないように両腕をがっしりと掴んで離さない。
「うっそ、マジ!?」
「いい子だから大人しくしてろよ」
仮にまた両腕を外して脱出できても、そこに隙が生まれる。ミイラ男はそれを伺いながら、自機のとっておきの準備をする。
球体モードで完全なジャック・オー・ランタン化している“口”にビームが収束し始める。
「わわわ、まずい!」
なんて、焦ってみるが、カエデは至って冷静だった。こんな状況下を楽しんでいるといってもいい。
「天来変―――!」
「今だ!」
その掛け声を待っていたかのようにミイラ男は、ビームを発射させた。至近距離で放たれたそれは避けようがなかった。
両腕だけ外れた武者飛駆鳥が自由落下していく。
「くぅぅぅ!」
カエデは、最初からあの状況でウォルターガンダムの攻撃を受けるつもりだった。相当のダメージも覚悟していた。
全ては勝負を決める一撃のために。
「天来変化!
再び鋼鉄迦楼羅から射出された両腕のパーツ。それに加えてマントと一振りの刀が飛んできて、武者飛駆鳥に装着された。
「鬼切丸! そして、烈旋丸!」
飛んできた刀と、鞘に収めていた刀を抜いて、ビーム発射直後で硬直しているウォルターガンダムに迫る。
「嘘だろ!?」
硬直はとけたものの、そのあまりの迫力にミイラ男は圧されていた。動かそうにも動けないとはこのことだ。
「秘剣!
あぁ、やっぱりお前にはまだ敵わないよ。
ミイラ男は、どこか満足気な表情を浮かべながら敗北を受け入れた。
§
フォース『トリックオアトリート』と別れた頃には、時間も頃合いだった。そろそろログアウトしようと思っていた矢先、ユウの耳に馴染みのある声が聞こえてきた。
思わずドキッとしてしまう。今日、彼女たちが来ている事を忘れていたわけではないが、こうやってバッタリ出会うと少々気まずいものがある。
「ちょっとユウくん。来るなら来るって言っておいてよ」
怒っているように聞こえるが、彼女―――ナミの表情は笑っていた。よく来てくれたとばかりに。ナミだけではない。レナとシルバも一緒にいる。
「フォース名、決まったからね」
「そうか。良かった」
「何他人事みたいに言ってんの!? ユウくんも所属するフォースだよ」
「あはは。ごめん」
うん、よろしいとばかりに頷くナミ。
「名前、気になるでしょ?」
「もちろん」
「それはね」
§
幸いながらカエデは高所恐怖症とかではなく、問題なく二段目のベッドを利用することができた。それどころかはしゃいぐくらいにテンションの高いカエデを他所に、ユウはGBNのチャットに入室していた。いや、もはや単なる鍵付きのチャットではない。そのフォースに所属している者しか入れないフォースチャットだ。
チャットの名前には『Xダイバーズ』という文字。
これが、ユウ達のフォース名となった。
ユウ「これって奇しくもって奴かな」
エクスガンダムを見やって目を細める。ふと、あの長い銀髪の少女を思い出す。電脳の世界で生まれた少女は、ユウにとって。いや、あの時のユウを含めた4人のメンバーの運命を変えたとも言っていいだろう。
Xをもじったエクス。
彼女がくれた名前だった。
劇中こぼれ話
ミイラ男のガンプラはウォルターガンダム・パンプキン
フランケンシュタインは、ハンマ・THE・ハンマという名前でした。