ハヤトとは、以前、シルバを人質にとったことのあるエイジと同じ境遇で知り合った。違う点としては、エイジが憎しみに囚われているのに対して、ハヤトはあの頃と変わらず接しているところだ。
「しかし嬉しいなぁ。ワイとお前、勝負はまだついてへんかったやろ?」
「どうだったかな?」
「まぁ、ここで会うたのも何かの縁。勝負しようやないの!」
意気揚々と飛び出そうとするエクスシャイニングをフォースメンバーのガンダムマックスターが制した。
「おい、ハヤト。あれを見ろ。なんか、変だぞ」
「あん? おおぅ!?」
ここでようやく初めてハヤト達にも奇妙な残骸に気づいた。
「ちょい休戦や。ひょっとしてこれやったん自分ら?」
「違う。僕らが来た時にはすでにこうなっていた」
そういえばそろそろ5分以上経過したのではないかと思ったが、それらはまだ残っている。本当に雰囲気作りのためのオブジェじゃないかと思う程だ。
「なんや不気味やなぁ。アレ調べてみたんか?」
「いや、もしかしたら罠かと思って何もしてない」
ユウがそんなことを言うと、エイジが大きなため息をついた。
「なんやんねん。難しく考えすぎや。あんなもんプカプカ浮かんでたら気味悪うて戦えへんで」
せやから調べよ、というエイジの一言で彼のフォースからボルトガンダムが迷わず動いて河に入ったいった。
異変はそこで起こった。
「うっ、動かん!」
「なんやて!?」
まるで金縛りにでもあったかのようなボルトガンダムのダイバーは驚き、それはハヤトだけでなく、その場にいる全員に伝染した。それと同時にどこかやはりと納得したユウは、すぐにボルトガンダムの腕を取って河から引き揚げようとした。
河に入らなければ罠は発動しない。そう思っていたが別の脅威が空から落ちてきた。
一筋のビーム。
それがボルトガンダムを引き上げようとしたその手の間近に落ちてきた。
「ユウ、下がれ! 上や!」
ユウも察したようでバックステップしながら頭上を見上げた。そこには1体のガンプラ。ガンダムナドレがいた。
今まで何故誰も気づかなったのだろうか、あの高さならここに来る前に見えていたはずだ。考えられるのは、見えないようになっていた。つまり「ミラージュコロイド」などで透明化していた可能性がある。
「あ~、惜しい! もう少しで直撃だったのに」
姿を見せてからのナドレからは何か特殊な粒子が発せられており、それが河全体に広がっている。
「あ、トライアルシステム!?」
「ピンポーン! 正解~」
ガンダムナドレを知っている者ならすぐに気づくであろう答えをレナが口にすると、ナドレのダイバーがからかうように応えた。
「じゃあ、もしかしてここにいる水陸両用のガンプラはみんな……」
「そう、ただ動けないだけでまだダイバーが中にいるんだぜ」
なんともエグイことをするもんだと一同は思った。真っ先に激高に駆られたシルバがナドレに向かってビームマグナムを放つ。だが、それを浮遊する装甲版が防いだ。
その形状にピンと来る者は、それが「GNシールドビット」だと言うことがわかった。
「俺一人だけだとでも思ったのかよ?」
危険を察知したのか、一同は散開した。その瞬間、動けないボルトガンダムの頭部にビームが貫通する。ここにはいない遠くからの狙撃だった。
「あっちか!」
散開する際、ナミのアサルトヅダは転げるように森の中に入り、うつ伏せになってロングレンジビームライフルのスコープでビームが飛んできた方向を覗いた。
そこには片膝をついてこちらに銃口を向けているケルディムガンダムいた。
「そこ!」
狙撃手は居場所が判明すれば脅威ではない。スコープでその姿を確認した瞬間、ナミは引き金を引いた。しかしながらアサルトヅダのカウンタースナイプは、ケルディムを掠めるだけに終わった。
せめて武器だけでも破壊しようとしたが失敗した。だが、それでもこちらから見えているというアピールはできたのか、ケルディムはその場所から移動を始めた。
「狙撃手移動した。みんな今のうちにナドレを!」
言われるまでもないとばかりに、すでにエクスシャイニングが動いていた。
「早よそこどけや!」
「うるさいよ」
迫ってくるエクスシャイニングをGNキャノンで迎え撃った。威力もタイミングも絶妙。ナドレのダイバーは、これでもう1体撃破完了。そう、思っていた。
しかし、その不敵な笑みが崩れる。
左手を広げて防御していただけのエクスシャイニングは、ほとんどダメージを受けていないようだった。
Iフィールド。
ビームを弾くバリアをエクスシャイニングは左手を広げることで発生していたのだ。クロスボーンガンダムⅩ3の腕部Iフィールド発生器と同じ仕組みを、ハヤトはエクスシャイニングの左手に仕込んでいた。
「うぉらぁ!」
エクスシャイニングが繰り出す右ストレートは、GNシールドビットを破壊するだけでなく、そのままナドレの頭部に決まった。錐揉みながらナドレは河に墜落。当然、トライアルシステムの粒子が消え、それまで浮かんでいただけの水陸両用ガンプラ達が動き出すことになった。
「お、動ける!動けるぞ! オレ達ははまだ戦える」
しかし、それを見据えていたのか、ガンダムローズのノーゼスビットが周囲に展開されており、いつでも攻撃できる準備をしていた。
「ふふふ、今すぐ降参するか、それともこのまま私の薔薇達に撃たれるか? どっちがいいか選ばせてあげる?」
もはや自分たちの運命は決まっているとばかりな質問に、水陸両用ガンプラのフォースは降参を選んだ。
「あら、賢い子たちね」
どこか女王様を彷彿とさせるそのダイバーは、実に満足気である。
「ちょっと、まだ狙撃手が残ってるんだから油断しないでよ!」
ナミが行ってる側から狙撃の第二射が飛んできた。狙われたのはガンダムローズだった。
「くぅ! 厄介ねぇ」
幸い片腕を覆う程の盾に命中したのでそこまでのダメージはないが、見えない距離にいる敵には畏怖を感じられずにはいない。
「ナミさん、また狙撃手を探して」
ユウが指示を飛ばしている間にも第三射が飛んできて、先ほどまでナドレがいた空のエクスシャイニングを掠めた。
「アカン、スパンが早いで!」
逃げるようにエクスシャイニングも水にダイブする。そこにはビームサーベルを手にしたナドレが待っていた。
「ちょっと油断したけど、接近戦ならどうだ?」
ナドレのダイバーの言葉に、ハヤトは面白そうに口元を広げた。
「このガンプラを見てわからんか? インファイトは望むところや!」
かくしてエクスシャイニングとナドレの第二戦が水中で行われようとしている。
§
一方で陸上は、ケルディムの狙撃によって場が混乱していた。
「いくらなんでもこんな狙撃の連射なんて……!」
普通はあり得ないと思う一方で、相手もまたガンプラだ。改造次第ではそういう事も出来るようになっている可能性がある。ここは否定するのではなく、現実として受け止め行動するのが最適だとユウは判断した。
「みんな、無事かい?」
「なんとか!」
「大丈夫です!」
シルバとレナが無事を知らせてくる一方、そうでない者もいた。
「ごめん、片腕がやられた。こっちからの狙撃は無理かも」
「僕は鋼鉄迦楼羅をやられたよ。あいつ、よく視ているみたい」
ナミのアサルトヅダはカウンタースナイプした位置からほとんど動いていないから狙われたのだろうが、カエデの武者飛駆鳥の支援機、鋼鉄迦楼羅は不必要な時、フィールド限界の高度で待機している。それを射抜くのは容易ではないだろうに、この狙撃手はそれをやってのけた。
ビームが飛んでくる方向から大体の位置の目星は掴んでいる。だが、それでも反撃できないほどの連射なのだ。
「「狙い撃つ」と「乱れ撃つ」の両方兼ね備えているなんて……厄介すぎるなぁ、オイ」
シルバが毒づく。全くその通りだと誰もが思っている。
しかし、いつまでもこのまま一方的に狙撃されるのも面白くない。
(一か八か、あの射線めがけてバスターライフルを……)
そこまで考えて、いざ覚悟を決めた矢先、シルバから通信が入った。
「おい、変なこと考えてるんなら、オレの考えを聞け!」
「君の考え……もしかして――――」
「おうよ、封印中の「エグトランザム」の解禁するぜ!」
§
ケルディムのダイバーは、GNスナイパーライフルⅡのスコープという狭い景色を眺めていた。
最初のカウンタースナイプには驚いたが、射程外まで後退すれば安全だ。こと狙撃戦ともなれば射程距離が長い方が有利に立つ。そういった意味でもGNスナイパーライフルⅡという武装はそれに適していた。
ついでに敵の狙撃手を攻撃することで、カウンタースナイプの手段を奪っておいた。
これで安心して一方的にこちらから狙撃できるというものだ。
「さて、もう一丁」
スコープ内に入ったガンダムマックスターを撃ち抜く。撃墜とまではいかなかったが、自慢の拳を一つ損壊させることができた。
「ほれ、次はもう片方の拳ね」
続けざまに放たれたビームは狙い通りにマックスターのもう一つの拳を破壊した。通常、スナイパーライフル類はこう連射できるものではないが、仕掛けがわかればなんてことはない。
このケルディムのGNスナイパーライフルⅡは、ツインバスターライフルと同じ、二連装式となっている。ただし、ツインバスターライフルのように二連装同時撃ちではなく、片方一発ずつ撃っているという事だ。
最初こそ、通常のGNスナイパーライフルⅡであったが、それはあくまでこちらが普通のGNスナイパーライフルⅡを使っていることを相手に見せるためだ。こちらが間を開けての狙撃しかできないと思わせてからの連射狙撃。
思惑通り、相手側は混乱して攻撃を避けるよう動き回ることに徹している。
相方であるナドレが河に沈んだが、毛ほども心配していない。むしろあのゴッドガンダムのバックパックを装備したシャイニングガンダムをあえて掠めることで同じフィールドで戦わせることができたのだ。
何もかも狙い通り。
「さぁて、このまま優勝させてもらおうか」
ケルディムのダイバーがニヤリと笑いながらスコープを覗く。ふと、そこに映ったのは、白いガンダムXとGNドライブを装備したブルーディスティニーの2機だった。