ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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思いのほか長くなってしまいました。


第6話③「3機目のエクス」

 これはあまりにも無謀な作戦だ。

 だが、この状況を打破できるなら、やってみる価値はあるとユウは思った。

 

「いくよ、シルバくん」

「おう、相棒!」

 

 チャンスは一度きり。

 今、ここに賭けるはオーディスティニーの切り札。

 

「エグトランザムッ!」

 

 EXAMシステムとトランザムの同時稼働。瞬間速度ならⅩダイバーズNo1だ。

 

「うぉぉぉおおお!」

 

 全身を深紅に染め上げたオーディスティニーが大地を蹴って空を駆ける。向かう先は、先ほどまでビームが飛んできた方向だ。

 瞬間、第一射がきたが、今のオーディスティニーはそれより速かった。

 

「ここかぁ!」

 

 狙撃手であるケルディムガンダムを見つけた瞬間、ビームマグナムを撃った。虚を突かれ、ケルディムのダイバーは、ほとんど反射的にGNミサイルポッドを発射させた。

 ビームマグナムは、ケルディムの左腕を損壊させたが、ミサイルはほぼ全弾オーディスティニーに直撃した。

 

「脅かすんじゃねー」

 

 声には出てはいないが、驚いたのは確かだ。確実に捉えたはずのビームが避けられたのだからケルディムのダイバーにとっては予想外もいい所だ。しかし、あの速度でミサイルの迎撃を受ければ大ダメージは必至。もしかしたら撃墜している可能性すらある。

 そして、その可能性は現実のものとなる。

 爆炎の中からオーディスティニーが落下していくのが見えた。

 ホッとしたのも束の間、立ち込める煙の中から白いガンダムXが出てきた。

 

(こいつ! いつの間に!?)

 

 頭が真っ白になった時には、白いガンダムX―――エクスガンダムのGNソードが二連装GNスナイパーライフルⅡが斬り裂かれていた。

 からくりは至極単純なもので、エクスガンダムは単にエグトランザムを発動したオーディスティニーを追走していただけなのだ。ケルディムのダイバーが派手に動くオーディスティニーに釘付けになったからこそ、この一撃は成功したと言える。

 

「これで!」

 

 まだケルディムは墜ちていない。エクスガンダムがハモニカ砲による追撃をしようとしたその時だ。

 

 今度はケルディムの全身が深紅に染まった。

 

「トランザム!」

 

 狙撃ができなくなっても、ケルディムにはもう一つの武器がある。

 ビームピストルⅡの乱れ撃ちだ。左腕が損壊されて一本しかないが、この場を凌ぐには充分だった。ハモニカ砲が撃たれる直前、エクスガンダムの真上に飛び、そこから乱れ撃った。

 一本だけとはいえ、ビームの雨を浴びたエクスガンダムのダメージは少なくない。

 

「Cファンネル!」

「シールドビット!」

 

 オールビット攻撃同士がぶつかり合い、エクスガンダムとケルディムもまたぶつかり合う。

 基本的速度ではケルディムが上なだけに、ツインバスターライフルやハモニカ砲といった一瞬の溜めが必要となる武器は使えないので、展開したままのGNソードでしか応戦できていない。対してケルディムは、ビームピストルⅡだけではなく、GNミサイルポッドも織り交ぜる。

 中距離戦は完全にケルディムが支配していた。

 

§

 

 河の中で繰り広げられているエクスシャイニングとナドレによる激しい近接戦。ナドレがGNビームサーベルを、エクスシャイニングは拳をそれぞれぶつけ合っていた。

 ハヤトは当初、近接に特化しているエクスシャイニングに分があると思っていた。だが、目の前のナドレは違った。武器こそ持っているが、こちらの猛攻についていっている。

 

「おいおい、ナドレは元々戦闘能力は低いはずやろ?」

「原典はそうだけどねぇ。このナドレがただのトライアルシステムだけのガンプラだと思ったら大間違いってやつよ」

 

 ビームサーベルによる突きが迫る。水中では若干動きが鈍るがエクスシャイニングが寸前のところで姿勢を思いきり低くして避けた。次にはエクスシャイニングのアッパーカットが決まった。ナドレは何歩か後ろによろめくが、倒れはしない。

 エクスシャイニングが苦戦しているのはこういう所だった。何度、パンチやキックを決めてもナドレは決して倒れない。原因は装甲表面に膜のように覆われているGNフィールドがエクスシャイニングの攻撃を防いでいるからだ。

 

「チッ、じゃまくさいわ。しゃーない、向こうも苦戦しるやろうし一気に片付けたらぁ」

「それ、マジで言ってる?」

「当り前や!」

 

 バックステップをしてナドレと距離をとる。

 

「ワイのこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ」

 

 エクスシャイニングの右手がその台詞と共に輝きを帯び始める。それと同時にフェイスカバーとアームカバーが展開。さらにゴッドガンダムのバックパックであるスタビライザーが展開し、日輪のような光輪が宿る。

 

 エクスシャイニング・バトルモードと名付けられた姿だ。

 

「いくで、必殺! シャイニングフィンガー!ダァァッシュ!」

 

 言わずと知れたシャイニングガンダムの必殺技。それに加えて背部に宿った光輪を推進力に変えて加速し、通常のそれより突進力と衝突の際の破壊力が増す。

 そのため回避も防御も許さないそれがナドレの頭部を掴み、そのままの勢いで河を飛び出し地面へと叩きつけた。独特のGNフィールドが破られたのか、粒子が乱れている。

 

「今や!」

 

 厄介なバリアが破れたことが分かってか、地面に叩きつけられたナドレにラッシュを繰り出す。

 しかし、ナドレのダイバーがこのまま黙っているわけがなかった。

 

「ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」

 

 声の感じから不穏が空気を察してか、エクスシャイニングがジャンプしながら後退する。すでにかなりボロボロな状態のナドレがゆったりと立ち上がる。

 

「あー、なんかムカつく。仕返ししてやるよ」

 

 ナドレが持っていたGNビームサーベルがどんどんと大きく形状を変えて巨大化する。まるでガンダムエピオンのような大剣だ。

 

「これだけじゃないよ。……トランザム!」

 

 機体が紅く発光し始め、背部にマウントしていたGNキャノンを手に取る。

 

「大剣とキャノン砲。そしてトランザムか。短期決戦で勝負に出る気だな!」

「さぁ、どうだろうね?」

 

 不意にGNキャノンが発射された。咄嗟に避けることができたが、そのビームは河を割った。まるでモーゼが海を割ったかのような光景だ。

 

「GNバズーカのバーストモードよりどえらい威力しとんちゃうか?」

 

 この威力では腕部のIフィールドでは防げないだろう。しかし、逆に考えればその分、GN粒子の消費量は激しいはずだ。これは思いの外、トランザムのエネルギー切れが早そうだ。

 ハヤトはそんなことを思いつつ、エネルギー切れまで逃げ回る算段をつけていた。

 

「逃がさないから」

 

 ハヤトの目の前でナドレが消えた。そして気づいた時にはエクスシャイニングの背後に回って大剣となったビームサーベルで斬られていた。

 

「ミラコロか? えげつないやっちゃ!」

 

 背部のスラスターを掠めたものの、ハヤトはすぐに行動する。

 一先ずは“もう一つのエクス”の元へ。

 

§

 

 ケルディムの猛攻に、エクスガンダムは大地に倒れた。ケルディムのシールドビットは、Cファンネルによってなんとか相打ちに持ち込むことができたものの、それでピンチが終わるわけもない。

 そんな中、ふとユウが抱いた疑念があった。

 それは、一向にケルディムのトランザムが終了する気配がないことだ。

 いくら完成度が高くとも、エネルギー切れによる限界はある。それを補うようなプロペラントタンクのような余剰エネルギーを確保するパーツも見当たらない。

 

「あれ? もう終わりー?」

 

 射撃をやめ、停空した状態で仰向けに倒れたエクスガンダムを見下ろすケルディムのダイバー。その表情には余裕が伺える。

 それは今この瞬間にもトランザムが切れることがないことを確信している風にも見えた。

 

「え~っと、相方の方は……あぁ、あっちも切り札起動しちゃってるのか。それほどの相手ってことかー?」

 

 今のケルディムは隙だからけだ。しかし、ユウは仕掛けず、次のケルディムの動きを待っていた。

 やられるためではなく、

 

「そんじゃ、そろそろあっちの援護にいきたいから、これでね」

 

 ケルディムが再びビームピストルⅡを構えたその瞬間だった。エクスガンダムは、倒れている間に手にしていたツインバスターライフルが発射した。

 

「!?」

 

 不意打ちに飛んできたその強力ビームだが、ケルディムは紙一重で回避した。もしトランザム状態じゃなければ直撃だっただろう。

 

「危ねー。ちょーっとびっくりしたけど当たらなかったね。残念ー」

 

 内心冷や汗をかきながらも、あくまで余裕な態度を見せる相手だったが、ユウは笑っていた。

 彼の狙いは、ケルディムにもあったが、それは当たればという希望的観測に過ぎない。

 本命はケルディムの背後にいたエクスシャイニングだった。

 

「ナイスやで、ユウ!」

 

 エクスシャイニングの左手にあるIフィールドがバスターライフルのビームを拡散させる。それはエクスシャイニングの後方にいるナドレが立っている位置の周囲に着弾した。

 

「これで狼狽えると思ったの?」

 

 ハヤトの狙いがそうだとしたら随分と舐められたものだとナドレのダイバーは憤る。だが、その考えが間違いなのにすぐ気づいた。

 

「ハヤト!」

「おう、交代や!」

 

 一連の流れの間に、2機は立ち位置を入れ替え、背中合わせになっていた。エクスガンダムはナドレに、その対角線上にエクスシャイニングはケルディムと対峙する形だ。

 

「相手を変えたところでー」

「俺たちをやれると思ってるー?」

 

 ナドレが巨大化したビームサーベルをさらに巨大化させ、ケルディムは再びトランザムによる高速機動を開始する。それと同時に、エクスガンダムとエクスシャイニングも動いた。

 

「まるでライザーソードだね」

 

 そんな表現が相応しいほどの圧倒的な巨剣がエクスガンダムに振るわれる。

 

 一刀両断。

 

 まさにその表現が相応しい一振りだった。だが、両断されたのはエクスガンダムではない。

 

「盾!?」

 

 そう、ユウはディバイダーを犠牲に巨大な剣特有の“斬撃直後の隙”を狙っていた。ナドレがGNキャノンを構えたが、それを撃たれる前にエクスガンダムのGNソードがナドレのコクピット部分を突き刺した。

 原典において、対太陽炉ガンダム戦を想定されたその剣は、GBNでも再現されていた。

 

「くっそー!」

 

 永久的に続くかと思ったトランザムが切れ、ナドレも戦闘不能とみなされた。

 

 その一方、エクスシャイニングとケルディムの戦いも決着がつきつつあった。

 GNピストルⅡの乱れ撃ちは、腕部Iフィールドの前では一向に無効化されていった。

 ならばと、GNミサイルも織り交ぜてるも―――

 

「無駄や無駄!」

 

 頭部バルカンでミサイルを撃ち落としながら回避行動する。エクスガンダムを封じたそれがエクスシャイニングには通じなかった。

 しかし、ケルディムのダイバーは余裕を見せている。

 

「それで勝ったつもりー? 悪いけどこっちは負けないよー」

「ハッ、何眠たいこと言うとんねん。このまま時間を稼げばお前のトランザムも切れるやろうが?」

「どーかな?」

 

 再びトランザムの高機動を活かして死角に回ろうとする。

 

「なるほどな」

 

 ハヤトは一つの推測。いや、今ので確信した。先のナドレもそうだが、このケルディムも同じだ。

 どちらもトランザム切れが起こることなんてないと思っている。

 それは、自機の完成度とか大量の貯蓄エネルギーを搭載しているとかそういったものではない。

 

「お前ら……チートしてるやろ?」

「どうかなー?」

 

 その声が聞こえたのは背後だった。腕部Iフィールドもバルカンもない完全な死角。そしてそれは、作り手であるハヤトが一番わかっていた。だからこそ、事前に背部のスタビライザーを展開していた。

 

「はぁぁぁあ! だりゃあ!」

 

 日輪を描いたそこから高出力のエネルギーを放出。威力は少ないが、相手を一瞬だけでもよろめかせればそれで充分。

 

「必殺! シャイニング……フィンガァァァァ!」

 

 即座に振り返ってケルディムを捉える。

 

「これで終わりや!」

 

 左手でビームサーベルを抜いて横薙ぎにケルディムを切断。さすがのケルディムも沈黙してしまった。

 

「ったく、無粋なモン持ち込みやがって」

 

 憎々しく吐き捨てると、今度はエクスガンダムの方を見た。同時にエクスガンダム―――ユウもエクスシャイニングを見ている。

 バトルロイヤルは終わってない。

 

「よぉ、ユウ。もうアカンか?」

「何を言ってるの? むしろこれからでしょ!」

「ハハハ、せやな!」

 

 二つのエクスがぶつかろうとしたまさにその時だった。

 バトルロイヤルの終了を告げるコールが鳴ったのは。

 

§

 

「うがー、納得できへんわ!」

 

 ロビーに戻った途端、一番荒れたのはハヤトだった。

 時間切れで『Ⅹダイバーズ』の生き残り人数4機に対して、爆熱同盟は5機。残り人数の割合で勝敗が決まるそれで『爆熱同盟』の優勝が決まったのにも関わらずだ。

 

「納得いかないのはこっちの台詞なんだけどなぁ」

 

 本当はハヤトくらい悔しい気持ちだったが、彼ほど感情的にはなれないユウ。というより、ハヤトが騒いでいるせいでそんな気持ちが薄らいでいるのが確かだ。

 

「でもさ、もっと納得いかないことあるんじゃない?」

「ん、あぁ、せやな……」

 

 そう、今回最も納得いかなかったのは、チートの存在だ。

 エネルギー切れを起こさないガンプラ。

 これが広まれば「ブレイクデカール事件」の再来となるだろう。

 今回のことは映像として残る上に、運営にも報告済みだ。時期が経てば運営がなんとか対処してくれるだろう。

 

 だが、どこか嫌な予感が拭えないユウ達であった。

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