ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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第7話①「少女が見た輝き」

 本日、フジミヤ レナは一人でGBNにログインしていた。

 同じ模型部のナミは部活動の予算会議に出席。ユウやカエデは家の用事で来れない事情ができた。さらにフォースリストを確認するとシルバもログインしていないようだ。

 いつもの人見知りの激しい彼女なら一人でログインすることはなかった。

 しかし、GBNでの空気にも慣れ、なによりガンダムベースでのゲンの接客術が彼女を安心させてくれた。

 

 そんなこんなでレナが何故、今日に限りGBNにログインしたのかというと、自分の悩みを聞いてくれるというダイバーに会うためだ。そのダイバーからは学ぶべきものが沢山あり、かつ同じタイプのガンプラであるが故に相談しやすかったとも言える。

 わざわざGBN内で会わないでもとは思ったが、相談相手がGBN内と指定したので合わせることにした。文字だけのやり取りより、仮想世界でも直接顔を合わせた方がお互い話しやすいだろうというのが相談相手の主張だ。

 

「えっと、このエリアで良かったのかなぁ?」

 

 相談相手から指定された場所はいつもとは違う雰囲気が漂っていた。ダイバー達が一様に熱気に溢れている。エリアマップを確認すると楕円形型のドーム内のようだ。

 

(何やってるんだろう?)

 

 そんな疑問を抱きつつ、歩いていると何やら怪しげなダイバーに出会ってしまった。

 

「お嬢ちゃん、ここは初めてかい?」

「は、はい・・・」

 

 レナはすぐさま逃げ去りたい衝動に駆られるが、ぐっと堪えた。今は少しでも情報が欲しいからだ。

 

「ここはレース場さ。それもガンプラのな。ここにいる観客は贔屓の選手を応援するか、自分が大枚はたいて賭けているガンプラを応援するかのどっちかだ」

「賭けって、ギャンブルですか!?」

「おうよ。といっても賭けるのは現実の金じゃなくて、ビルドコインだけどな」

 

 それを聞いて少し安心する。ゲーム内の仮想通貨なら多少は―――

 

「いや、いいんですかそれ!?」

「心配いらないよ。まず20歳未満は賭けはできないし、ここは公式も認めている場所だ」

 

 公式公認と聞いて少し安堵するレナだったが、その怪しげなダイバーの口からとんでもないことを言われる。

 

「おっと、ここでの情報量として一万ビルドコインを払ってもらおうか?」

「えぇ!? わ、私、そ、その……」

 

 気まずい空気が流れる中、怪しげなダイバーは笑みを零した。もちろん怪しげな笑みではない。

 

「冗談だよ。君が困っていたみたいだったからここの事を教えたまでさ。この格好も一見ダフ屋に見えるけど、そういうロールプレイだから」

「そ、そうなんですか」

 

 からかわれた怒りより安心した気持ちの方が大きかったレナは、特に怒ることもなく素直に礼を述べた。

 

「あの、知っていたらでいいですけど……ここに「アニマルハーフ」のヨーコさんという人来ていませんか?」

「おぅ、お嬢ちゃん、あのヨーコの知り合いかい? 彼女なら今のレースが終わったら出番だ」

「出場者だったんですか!?」

「おうよ、結構、有名人だぜ」

 

 そう言うとダフ屋姿のダイバーは、観客席にレナを案内した。この会場に顔が利くのか、ゴール前というおいしい席を譲ってもらった。道中のレース模様は巨大なモニターに映し出されている。

 

「わぁ……すごい」

 

 モニター壮観な光景に思わず声が出てしまう。様々なガンプラが猛スピードで駆けぬけていく。中にはミサイルやビーム、或いは網などで攻撃したり、妨害している者もいるが、純粋なスピード勝負でやっている者がほとんどだ。

 

「ここではコースに沿っていれば、バトルもなんでもありだ。現実じゃあこうはいかないだろうからな。GBNならではだ」

 

 訊いてもいないのに説明してくれるのはレナにとってはありがたかった。そしてついに今走っているガンプラが最終コーナーを曲がってゴールに迫っている。

 そこにはレナと同じバクゥを改造したものもいた。同じガンプラな手前、ゴール直前になって密かに応援してしまう。残念なことにそのバクゥは低空飛行している飛行形態ガンダムキュリオスのミサイルを浴びてリタイアとなってしまった。

 このままキュリオスの一着かに見えたが、後方からとてつもない速度で迫ってきた赤いケンプファーのシュツルムファウストによってキュリオスの態勢が崩れ、赤いケンプファーがそのまま一着をもぎ取った。

 会場は一気にヒートアップ。歓喜に打ち震える者、悪態をつく者など様々だ。

 レナとしては、あのバクゥのことが少し残念と思いながらも、全機がゴールするところまで見守った。

 そこにヨーコの狐型のラゴゥは見当たらない。

 

「ヨーコのレースは次だな。モニターを見てみろ」

 

 促されるようにモニターを見てみると、次のレースのスタート地点の様子が映し出されている。そこに狐型のラゴゥの姿があった。あの団体戦で交戦した時と変わらない姿のままだ。

 

「どんな走りをするんだろう?」

「気になるか?」

「え、あ、はい」

 

 レナとしては心の中で呟いたつもりだったが声に出ていたようだ。ダフ屋のダイバーが親切にも解説してくれる。

 

「ヨーコはな黄金の弾丸と異名を持つレーサーだ」

「黄金の弾丸?」

 

 狐色じゃなくて? という疑問が過ぎった。

 

「まぁ、アイツはなんていうかな。こういったレースでは珍しいタイプで、一切バトルをしない」

「そうなんですか?」

 

 てっきりここに参加しているレーサーはバトルや妨害前提で走っているものだと思っていた。同時にどうやってこういったバトルレースを走り抜けるのかと興味が沸いた。

 

「まぁ、百聞は一見に如かずってな。俺が話すより実際にレースを見た方がいいだろう。ただ、一つ言えるのはヨーコは、このレースの本命ということだ」

 

 それを聞いてレナはなおさら惹かれた。この瞬間だけは相談事のことなんて忘れてしまう程に。

 各ガンプラがスタート地点に並ぶ。ダフ屋のダイバーによるとレースはこの会場の周回ではなく、ここから離れた場所にあるスタート地点からゴール地点であるここまでのコースとのこと。

 ガンプラ達が並んだところで10カウントが始まる。

 5を切ったところから互いにけん制しているのがここからでも分かる。そして高まる緊張感さえ伝わってくる。

 0と同時にシグナルが青へと変わり、一斉にスタートした。

 

§

 

 まずは順当なスタート。いや、1体だけ猛スピードで先行しているガンプラがいる。

 ロケットブースターのような物を背負った白いハチマキを巻いている赤いズゴックだ。

 それを駆るダイバーは女性で、まちまきを巻いて体操服にブルマという、レースというよりかは運動会にでも出るような格好をしていた。

 

「ひゃっほーい! いっけー、スカーレッドズゴック!」

 

 このコースの最初の難関である湖。そこをどう攻略するかでこのレースの勝敗が決まると言ってもいい。だからではないが、このレースにおいては飛行可能なガンプラが多い。

 

「そこで水陸両用ですか。いい考えですが」

 

 その背に装着しているロケットブースターがいざ水中で足枷にならないかと気にはなっている。

 だが、スカーレッドズゴックが問題の湖に辿り着いた時、参加者一同や観客一同も驚くべき光景を目にした。

 

「ロケットブースター、パージ! お待ちかねの水中だーい!」

 

 それまで驚異的な速度を出してきたそれをあっさりと外して、湖にダイブしたのだ。もちろんそれは理に適っているとはいえるが、ここはまだレースの序盤だ。

 

「よーし、ここまでは一番だぞ!」

 

 確かに身軽になって湖を本来の性能で乗り越えていくが、問題はそのズゴックが湖から出たところにあった。

 

「しまったぁー! 陸上だともうあんなに速く走れな~い!」

 

 案の定、他の参加者が湖コースに入った頃にはすでに陸にあがったズゴックだが、そこには先ほどまでの速度はない。特に低空飛行をしていたガンプラに次々抜かれていく。

 もちろん、湖をホバー走法でクリアしたヨーコのフォックスラゴゥもあっさりと抜いていった。

 あのズゴックは一体何だったんだろうという疑問がレーサー全員に残ってしまった。

 

(さて、切り替えましょうか。やはりというか飛行系ガンプラが多いですね)

 

 前方にMA形態のギャプランにV2ガンダムが先頭争いをしており、フォックスラゴゥの少し後方ではトールギスが虎視眈々とタイミングを定めている。さらにその後ろにはビルドルブ。そしてズゴックを除けば、一番後方についているのは、まるで百式やアカツキガンダムを彷彿させる金色のネオバード形態になっているウイングガンダムゼロがいる。

 ガンプラレースにしては珍しくまだ誰もバトルを仕掛けてこない。

 だが、それはまだ全員がタイミングを計っているにすぎないのだ。

 特に一番後方に位置しているウイングゼロが狭い直線でバスターライフルなど撃ってきたらあっという間に他のガンプラはリタイアになるだろう。

 ヨーコの懸念はそこにあった。

 

(まぁ、まだ序盤ですし、先頭に着かず離れずのこの位置を保ちましょう)

 

§

 

 そんな駆け引きなど知らないレナは、現在3位の位置についているフォックスラゴゥにやきもきしていた。知らず知らずのうちに祈るように手を組んでいる。

 

「あはは。そんなにヨーコが心配かい?」

 

 聞き覚えのあるハスキーボイスにレナは振り返った。ボーイッシュなダイバーがそこにいた。

 

「ツ、ツバサさん!?」

「覚えていてくれたんだね。確かレナさん、だったよね?」

「は、はい。お久しぶりです。ヨーコさんの応援ですか?」

 

 そのダイバー、ツバサはその質問に「ははっ」と爽やかな笑いながら否定した。

 

「ボクは傭兵だからね。あの時は「アニマルハーフ」にいたけど、今はもう離れてるんだ」

「え、じゃあ……」

「まぁ、ボクにも贔屓にしているレーサーがいるってことだよ」

 

 そう言いながらツバサは、レナの真後ろの席に座りこんだ。

 

「ところで今日は他の仲間はいないのかい?」

「あ、はい。皆さん、今日は都合が悪くて、私は少しヨーコさんに相談にのって欲しいことがありまして……」

 

 気づけばこんな状況に、と、レナは内心で苦笑する。あまりの迫力につい先ほどまで忘れかけていた自分にだ。

 

「そっか。じゃあ、その時はボクも同席してもいいかな? この際、女子会しちゃおうよ」

「え、あぁ……」

 

 レナが返答に迷っていると、ダフ屋のダイバーが会話を遮って叫んだ。

 

「見ろ! ついにバトルが始まったぞ!」

 

 その声に反応してモニターを見ると、そこには後方から攻撃を避けながら走るフォックスラゴゥがいた。




スカーレッドズゴックのアイディアをくれた友人に感謝を
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