ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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第7話②「少女が見た輝き」

 このレースで先に仕掛けたのはヒルドルブだった。一気に後方に下がったと思いきや戦車形態のまま主砲で撃ちまくっている。

 すぐ前方の金色のウイングゼロどころか、その長距離砲撃能力を活かしてこの場の全機を射程に入れている。

 

「これくらい!」

 

 フォックスラゴゥを不規則なジグザクで動かして弾を回避していく。

 滅多撃ちに見えてビルドルブの砲撃は意外なほどに狙いが正確だ。特にフォックスラゴゥのように地を走っているガンプラは着弾後の衝撃すら転倒に繋がりかねない。

 だからといって飛行しているガンプラも油断できない。砲弾がかすりでもしたらそれだけで先頭集団の脱落が決まってしまうだろう。

 しかし、これくらいの事で動揺するレーサー達ではない。

 動いたのはV2ガンダムであった。

 

「ガンダム!」

 

 V2ガンダムが反転してダイバーが叫んだと思いきや、その光の翼が大きくなると自機を守るバリアとなってヒルドルブの弾丸を防いだ。それだけではない。

 なんと、その弾丸をそのまま弾き返したのだ。

 ヒルドルブが連射したお陰でV2とヒルドルブの間にガンプラはいなく、弾丸はそのまま真っすぐヒルドルブへと直撃した。

 

「くそ! だが、まだだ!」

 

 被弾の衝撃で少し後退したものの、ヒルドルブのダイバーはまだ諦めていない様子だ。引き続き長距離砲撃を開始するかと思いきや、V2と同じように反転したトールギスがそれを許さなかった。

 

「落ちろ!」

 

 トールギスが構えたドーバーガンが火を噴いた。バスターライフルに勝るとも劣らないその威力がヒルドルブに直撃した。

 

「あと一発撃てれば充分だったのに……!」

 

 そんな悔し文句を言いながらヒルドルブは沈黙した。レースであるこの場合、動けなくなったガンプラはリタイア扱いとなる。反転したとはいえドーバーガンの反動で少し前に出たトールギスはそのままフォックスラゴゥを抜いた。

 

「すまんな、黄金の弾丸。前に行かせてもらうぞ」

「いえいえ、お好きにどうぞ」

 

 トールギスのダイバーの挑発とも嫌味ともとれるそれをヨーコは笑顔で受け流した。

 ひとまずの脅威は去ったが、最後までレースがどうなるかは分からない。

 それが面白いところであると同時に、理不尽なことでもある。

 レースはそろそろ中盤に差し掛かったところだ。

 

§

 

「いやはや、どうにか窮地を脱したというところかな?」

 

 そんな呑気な事を言っているツバサの声は、ハラハラしているレナの耳には入らなかった。

 

「ドキドキします。いつもこんな感じなんですか?」

「おうよ、面白れぇだろ?」

 

 ダフ屋のダイバーが笑いながら言うが、レナにはまだ分からないでいた。

 ただ見ているだけなのに自然と手に力が入ってしまう。

 

「大丈夫だよ。ヨーコにとってあんなのは日常茶飯事。あれくらいでリタイアするくらいなら『黄金の弾丸』なんて異名をつけられたりしないよ」

「そ、そうなんですか?」

「保証してもいい。ヨーコはゴールできるさ。順位はわからないけどね」

「そういえばツバサさんが応援している人って……」

 

 誰なんですか、と訊こうとしたが途端に歓声が沸いてかき消えた。

 何か変化があったのだろうと、レナの視線はすぐにモニターへと移った。

 

§

 

 ガンプラが2、3機ほど通れる長い直線コース。周囲は高い壁で囲まれているが、後続のガンプラにとっては追い抜きのチャンスではある。

 しかし、そうはいかない事態が起きた。

 レーサー達のガンプラよりも高い上空を飛行しているガウ攻撃空母。それが後ろから追うようについてきているのだ。

 この時点で皆、嫌な予感はしていおり、それは嫌なことに当たった。

 

 絨毯爆撃。

 

 ガウの爆弾倉から降ってきた爆弾がレーサー達に襲い掛かってきたのだ。

 

「いやぁ、お兄ちゃん! 助けてぇ!」

 

 本当に兄がいるのか、それともロザミアになりきっているのか。ともあれ先頭を走っていたギャプランが爆撃によって散っていった。これで先頭争いをしていたV2ガンダムが先頭に躍り出る。そのV2ガンダムは光の翼を巨大化させて爆弾が当たる前に破壊していっている。

 それを今まさに追い抜かんとするトールギスはスーパーバーニアを駆使して加速している。爆弾を避けつつも、多少の被弾はあるが持ち前の装甲の硬さがその威力を軽減しているようだ。

 そして、すっかり先頭集団とは離れてしまったフォックスラゴゥは、金色のウイングゼロとほぼ並走している状態だ。

 

「ここを抜ければラストスパート。……そこに賭けるしかありませんね」

 

 フォックスラゴゥは、まるでスケートリングの如く大地を滑るように爆弾を避けつつ駆ける。そんな時、そんなフォックスラゴゥを庇うかのように金色のウイングゼロが上空で並んだ。

 

「一体何を……? あ!」

 

 意図が分からずにいたが、ネオバード形態からMS形態に変形したそれを見て一つの予感が過ぎった。そしてそれは的中した。

 2丁のバスターライフルを本来の並列に連結させるのではなく、縦列に連結させ、ガウに向けて撃った。さながらバスターガンダムの超高インパルス長射程狙撃ライフルにも見えたその武装の構造だけは予想外だったが、とにかくツインバスターライフルにも勝るとも劣らないであろう威力はガウを撃ち貫くには充分だったようだ。爆撃が止まり徐々にその巨体が落ちていく。

 そう、先頭を走るガンプラに向かって。

 

「あんなの汚い、卑怯ですよ!」

「くっ! トールギス! もっと速度を上げろ!」

 

 ガウの迎撃をしようと思えば出来ただろう。だが、レースには“仕掛けどころ”というものがある。特にこの2機は追われる立場にあるのため、ここで余計なエネルギーを消費するわけにはいかない。

 だが、彼らにとっても予想外の出来事が起きた。ガウ特攻などという、原作さながらなこの状況を生み出した金色のウイングゼロがもう一発撃ったのだ。

 それも一発目とは比にならない威力のビームにガウは飲み込まれて爆発した。その衝撃で多少大勢は崩れたものの、ガウ直撃よりかはマシだっただろう。

 運営側が用意した障害物を利用するなど相手を妨害することはルールでは禁止されていない。むしろバトルありを肯定しているガンプラレースではそれを暗に推奨している風潮がある。

 だからこそ余計に金色のウイングゼロの行動が理解できなかった。もちろんヨーコも同じだった。

 だが、今はそんな余計なことは考えない。

 直線を抜けたらスタジアムのコース。つまりは最終コースだ。

 

「ここよ!」

 

 仕掛けどころを定めたフォックスラゴゥが加速した。

 

§

 

 各レーサーが肉眼で見える頃になると、会場内が一気にヒートアップする。先頭はV2ガンダムだが、それを抜こうとするトールギスとの距離がぐんぐんと迫っていく。

 だが、V2ガンダムの光の翼が大きく、まるで蝶のような形となって展開された。

 

「月光蝶!?」

「考えたねぇ。あれなら簡単に抜けれない」

 

 驚くレナに対して、ツバサは率直に感心していた。

 その蝶に触れたトールギスが地面に叩きつけられ転がりながら爆発した。まるで「おのぉれぇ!」とでも叫んでいるような無念さがあのトールギスから感じられた。

 

「ヨーコさんは……あ!」

「うん、どうやらトールギスの爆発すら利用したんだろうね」

 

 先ほどまで先頭集団に遅れていたフォックスラゴゥがV2ガンダムのすぐ後ろについていたのだ。それを追うように金色のウイングゼロもいる。

 だが、光の翼を大きく展開してコースを塞いでいるV2ガンダムがこのレースを制する。

 ほとんどの人がそう思っていた。

 

「来るぞ、黄金の弾丸が!」

 

 ダフ屋のダイバーの呟きは、会場の歓声によって誰にも届くことはなかった。

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