砂漠地帯で5機のドムで編成しているフォースがいた。
フォース名は、五連戦隊ドムレンジャー。
ドムばかりで有名な彼らだが、装備構成は各々自由らしく、5機それぞれに違った武装が装備されている。
そんな彼らは現在、フォースバトルの真っ最中だ。
ルールは最初の5分だけ互いのレーダー類をカットし、5分が経過すればどちらか全滅するまで戦い合うというものだ。
ドムレンジャーが5機に対して、相手のフォースは3機。人数的にはドムレンジャーが有利に思われたこの戦い、思うようにはならなかった。
それが、相手のスナイパーの存在だ。
「ぬぅ! グリーン! スナイパーはまだ見つからぬか!?」
赤ドムでこのフォースのリーダーであるレッドが訊くも、返ってきた返事は「まだだ」というものだった。
グリーンの緑ドムはドムとしての性能は少し落ちるが、代わりに電子性能に優れている。しかし、そんな緑ドムでもまだスナイパーのいる位置を発見できないでいるようだ。今は護衛のピンクと共にレッド達から離れて行動している。
「仕方あるまい。ブルー、イエロー。ここは耐えるのだ」
砂漠といった足場は、ドムにとって有利に働くと踏んだが、それも甘かったといえよう。
相手の一機は、ラゴゥだった。
砂漠も何のそのと言わんばかりに自由自在に動き回ってレッド達をかく乱していく。
「いいか、決して止まるな! 狙い撃ちにされるぞ!」
「了解!」
レッドの指示に、全員が返事をする。
しかし、そんな中に、一機だけ砂地に苦戦しているガンプラがいた。
一見、青いジムの改造機に見えるが、レッドは見抜いていた。
それは、ブルーディスティニーの改造機だということを。
「くっそ、砂漠ってのはこれだから厄介だぜ!」
ブルーディスティニーのダイバーは、足場をとらわれる感覚に戸惑いながらも、自分たちの戦況が有利だということはちゃんと見ていた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、と。よっしゃ! 今、ここで一気に片付けてやるぜぇ!」
その声を聞いたのか、ラゴゥのダイバーが叫んだ。
「おい、やめろ! お前は迎撃だけを頼んだはずだぞ!」
「うるせぇ! 早いもの勝ちよ!」
仲間の静止を振り切って、ブルーディスティニーが赤ドムに接近する。
「まさかそちらから来るとはな!」
レッドは一機だけ砂漠に対応していないこのブルーディスティニーを狙っていた。
数に勝っているとはいえ、こうも相手のいいようにされていては面白くない。だから確実に相手の数を減らす隙を待っていたのだ。
「カラーリングからしてアンタがフォースのリーダーだろ! オレの力、見せてやんぜ」
「やめろ、止まれぇ!」
悲鳴にも似たラゴゥのパイロットの声は最後まで届くことはなかった。
「EXTRANS-AM!」
瞬間、ブルーディスティニーの全身が真っ赤に染まりあがる。
「エグザ……いや、トランザムだと!?」
レッドはブルーディスティニーが持つ『EXAMシステム』を起動したのかと思ったが、まさかの『トランザムシステム』まで合わせてきたことに目を見開くも、ブルーディスティニーが抜いたビームサーベルをヒートアックスで受け止めた。
「見たかぁ! EXAMとTRANS-AMを融合したシステム、エグトランザムは!」
どちらも機体の性能を飛躍的に上昇させるシステムであることは変わりない。
あえて分類するならば、EXAMは機体に設定されているリミッターを解除することにあり、トランザムは機体性能を約3倍に引き上げるというものだ。
だが、レッドは言わざるを得なかった。
「二つ合わせる必要があったのかぁ!?」
「ある! そこにロマンあるからだ!」
ブルーディスティニーの思わぬ行動に足を止めてしまった赤ドムだが、スナイパーからの攻撃はこない。
『おい、すぐに離れろ! そう密着されては狙えない』
「あんたは自分に近づいている奴を狙いな! ここはオレが3機とも落とすからよぉ」
『この、勝手なことを!』
「忙しいから通信切るぜ」
ブルーディスティニーのダイバーは、スナイパーからの声も無視して赤ドムとの交戦を続ける。膠着した状態でもう一本ビームサーベルを抜いてがら空きになっている胴を斬ろうとするも、赤ドムはこれを後方に下がって避けた。
今ので倒す予定が仕切り直しという形になってしまった。
「ちっ、余計なことを言ってくるから」
だが、彼は勝利を確信した顔をしている。あの大きなヒートアックスをビームサーベル片手で受け止めることができたのだから。すぐにスナイパーに狙われないよう、動き回る赤ドムを追う。
「チョロチョロ逃げてんじゃねぇよ!」
ブルーディスティニーを動かそうとしたまさにその時、腕部や脚部がグシャアという嫌な音を立ててその場に頽れた。
「え?」
それが彼がこの戦いで最後に残した間抜けな声であった。
【デビルガンダムの進行を食い止めろ】
それが今回、ユウ、ナミ、レナが受けたミッションの名前だ。
第1ステージに無限に湧き出るデスアーミーの大群をある一定数撃退。
第2ステージは、デスアーミーに加えてガンダムヘッドの一定数撃退。
第3ステージは、ガンダムヘブンズソードとグランドガンダムのどちらかを撃破。
そして、ファイナルステージでは、マスターガンダムの撃破が目標となっている。
もし、どれか失敗した時点でデビルガンダムがフィールドに出現し、その場でゲームオーバーというミッションだ。
第1、第2ステージのフィールドはギアナ高地であり、第3、ファイナルステージのフィールドはランタオ島という憎い演出で、『機動武道伝Gガンダム』を知っている者なら挑戦したくなるミッションとなっている。
いわゆるGBN初心者脱出となっているこのミッションを受けるにはナミとレナは早いとユウは判断したが、今度もまたナミが選んでしまったのだ。
そして今、ユウ達は第3ステージをクリアしたところだ。
「ヘブンズソード早すぎ! グランドガンダム硬すぎ!」
前者は攻撃が当たらず、後者は攻撃が通らずだったナミが文句を垂れる。結局はユウのエクスガンダムがヘブンズソードにCファンネルを射出し、地面に落ちたところをレナのミュウバクゥが尻尾のアーマーシュナイダーでトドメを刺したことでクリアできた。
「まぁまぁナミさん。たまたま相性が悪かったってことで。ほら、デスアーミー戦では大活躍だったじゃないですか!」
懸命なレナのフォローに、ナミは第1、第2ステージを思い出して機嫌を直したようだ。
「まぁねぇ。多数相手ならアタシの得意分野だから」
フフンと鼻を鳴らすナミを見て、レナはホッとした顔になる。そんな様子を同じ部の先輩後輩となると大変だなぁとユウは見ていた。
「さぁて、いよいよマスターガンダムを撃破してミッションクリアよ!」
ステージクリア毎に設けられる10分のインターバルを終えて、現れるマスターガンダム。腕を組んで、こちらの出方を伺っている。NPCが相手とはいえ、これまでと威圧感が違うと感じるのはGガンダムを知っているからこそだろう。
まずは挨拶とばかりにアサルトヅダが装備している全ての武装を展開して一斉発射する。瞬く間に弾幕がマスターガンダムを包み込む。
「手ごたえはある。けど―――」
ナミが全てを言い終える前に、マスターガンダムが弾幕から現れた。右手を突き出し、アサルトヅダに迫る。
「読んでた!」
エクスガンダムがデモリッションナイフでその右手、ダークネスフィンガーを止めた。その隙にミュウバクゥが口にくわえたアーマーシュナイダーで右手を切り落とした。
「やった!」
「まだだ!」
レナが喜ぶも、油断禁物とばかりにユウはデモリッションナイフを振るって、マスターガンダムの胴体に突き刺す。
「ユウくん、離れて!」
後方のナミの声が聞こえると、すぐにデモリッションナイフを抜き、空へと離れる。直後、左手のダブルガトリングガンをバックパックに懸架させて、シールドの裏に隠れているシュツルムファウストを撃った。
マスターガンダムが炎に包まれる。
だが、それで終わるマスターガンダムではなかった。DG細胞による自己再生が始まっていた。
それはここまで来るまで同じことだった。
「さすが東方不敗マスターアジア! まだ終わらないか!」
そんな場合ではないのに、期待通りとばかりにナミが喜ぶ。相手はNPCなので決して東方不敗ではないのだが、そんな無粋な突っ込みをする者はいない。
「ユウさん、合わせましょう!」
アーマーシュナイダーを元の尻尾に戻し、レナが言うと、ユウは頷きデモリッションナイフ二つ折りにして左腕にマウントし、背中にマウントされているツインバスターライフルを手にした。
「アタシもいくよ!」
再びフル武装化したアサルトヅダも構える。そしてミュウバクゥは口のビームをチャージした。切断されたマスターガンダムの右手が再生する前に3機が一斉に発射した。
どんなに再生しようとも、一定のダメージを受けることで撃破扱いとなる。3機の最大攻撃が終わった後、マスターガンダムは膝から崩れ落ちた。
少しして、ミッションクリアを告げるシステム音声が流れると共に歓喜の雄叫びがランタオ島に響いた。
「いや~、苦労した分、クリア後のジュースの味は最高ね」
GBN内の喫茶店で3人はアバターの状態で祝杯を挙げていた。バーチャルなのでアルコールでも問題ないのだが、まだ酒の味を覚えなくないナミはリンゴジュース、ナミはカフェオレ、ユウはミルクだ。
「まだDランクにならないんでしょうか?」
「ん~、今のでかなりポイントをもらったから、あと同じようなミッションを2、3個クリアすればいけるかな」
あくまでユウの推測に過ぎないが、それでも長い道のりには違いなく、レナは大きくため息をついてしまう。内心、早くフォースが組みたくてたまらないのだろう。
「なーに。あとたったの2、3回じゃない。ひとまずここはユウくんの奢りで一休みしたらもう一回別のミッションにいきましょう」
おい、いつ僕が奢るなんて話になった、と身を乗り出して抗議しようとしたその時、何やら店内が騒がしくなった。罵声や怒声が行き交っている。
「なんで俺たちの指示を無視するんだよお前は!」
「しゃーねーだろ。いけると思ったんだからよぉ」
「いけるわけないだろ。あんな欠陥システムで」
「欠陥とはなんだよ!」
今にも殴り合いに発生しそうになっているのは男ダイバー3人組だった。どうやら茶髪と黒髪の2人で人狼アバターの1人を責めているようだ。ミッションかバトルかは知らないが、その失敗の原因をその1人に押し付けているようにも聞こえるが、自然と耳に入る怒声のお陰でどうやらそうでもないらしい。
どうやらその1人の連係ミス。というより、身勝手な行動でそのフォースは負けたようだ。
「あ、あれだ。砂漠がオレの機体に合わなかったんだよ」
「だから岩場に陣取って、ラゴゥのフォローを頼むって言ったじゃないか!」
「相手は3体もいたんだぜ! あの場面じゃオレも助けに入らなきゃピンチだったろうが!」
どうやら話は平行線のようだ。責めている2人もそう察したのか、すっかり呆れ顔になっている。
そして、ここに1人、現在進行形で不機嫌になった子がいる。
「こらぁ! こっちが気持ちよく祝杯あげてんのに喧嘩なんて。気分ぶち壊しよ!」
もしかして飲んでいたリンゴジュースはアルコールが入っていたのかと思うくらいにナミが乱入していったのだ。
「なんだお前、関係ないだろ!」
「ここの客なんだから関係あるわよ! だいたい聞いてればなに? あんたはさっきから言い訳ばかり!」
「うるせぇ! 女のくせにからんできてんじゃねーよ!」
「そっちも男のくせに情けないわよ!」
あれよあれよと、店内がまるで昔の海外映画の酒場のような雰囲気になっていった。他の客が「やれやれー」やら「お、ケンカか? 俺も混ぜろよ~」とか言い出してきた。
焦ったのは、当人たちの同じチームの4人だった。
「ナミさん、公共の場でケンカはやめよう!」
「ユ、ユウさん、ひとまずでましょう!」
「俺たちもひとまず出よう!」
互いの意見が一致したところで、まるで食い逃げでもするかのように店を後にした。ユウがちゃんと後で店に戻って両方テーブルのビルドコインを出したので食い逃げにはならなかったが。
「ドリンクだけで助かった……」
自分の財布事情に悲しくなるが、今はそれどころではない。店を出た後も互いににらみ合いは続いている。
「すまん。とりあえずこっちのテーブルのコイン代は出すよ」
「あぁ、そうしてほしいよ」
黒髪の男とのやり取りが終わったころ、茶髪の男はというと独断専行した上に別のテーブルの人と揉め事を起こしている件の人狼にほとほと愛想が尽きた様子だ。
「あ~、ごほん。お嬢さん、少しいいか? ひとまずこいつに伝えなきゃいかんことがあってな」
「さっさとしてよね」
ナミに代わって、茶髪の男が問題の人狼に告げる。
「もういい。お前はフォース追放だ」
「ちょっ!?」
「今日のことだけじゃない。お前をフォースに迎えてからずっとあんな感じだった。お前は自分しか考えてない。フォースなら仲間のことを考えろ! それが嫌ならずっとソロでやりやがれ!」
最終通告なのだろう、それまで粋がっていた人狼は途端にシュンとなって黙りこくってしまった。
2人の男が去ろうとする中、自棄を起こしたのか、人狼はとっさにユウの手を馴れ馴れしく握って告げる。
「いやぁ、それは丁度よかった。実は前々からこいつからスカウト受けててよ」
その場にいる人狼を除いた全員が呆れを通り越してポカンとなってしまった。
ドムレンジャー念願の再登場叶いました。
人狼ダイバーの「オレ」と他の一般ダイバーの「俺」はあえて使い分けていますのでよろしくお願いします(何を?