「なぁ、頼むよぉ! オレをあんたのフォースに入れてくれ」
元フォースメンバーが去ったあと、突如、シルバと名乗ったその人狼ダイバーは今にも土下座をせんばかりにユウに迫った。
「待って待って! 僕もフォースに所属しているわけじゃないよ」
「おいおい、女の子2人はべらせておいてそれはないだろう?」
やれやれといった感じでシルバが言い放つ。話を本当に聞かないその態度にユウはうんざりするも、先ほどまで食って掛かっていたナミが助け舟を出す。
「本当よ。ユウくんはアタシたちのランク上げに協力してもらっているの」
コクコクと隣のレナも相打ちを打つ。
「おいおい、お前らまだDランクにも達してないのかよ~」
明確にバカにしているシルバだが、ナミは意を返さない。
「だって一昨日始めたばかりだし。それにいくらランクが高くても、フォースに追放されるほどアタシは未熟じゃないよ」
カチーンという音が聞こえたような気がしたと思えば、シルバの顔がみるみると赤くなっていく。
「おいおい、言ってくれるじゃねぇか! こうなったら勝負よ!」
「望むところよ!」
さっきのケンカの熱は冷めていなかったのか、ナミも躍起になっている。レナが「落ち着いてください」と言うも今のナミは聞く耳を持たないようだ。
「で、何で勝負するよ?」
「そうねぇ‥‥…何かいいミッションある?」
急に振られ、ユウは思わずこけそうになる。リアルの頼もしい委員長とは打って変わって、GBNでのナミはこういうところでノープランだ。まだGBNを始めて日が浅いというのもあるのだろう。
「そうだなぁ」
かといって、このまま終わらせるのはナミも、そしてシルバにとっても後味がよくないだろうと思い、思案してみた。
そして一つのミッションを思い出した。
【奪われたGATシリーズを奪還せよ】
『機動戦士ガンダムSEED』を元にしたミッションであり、そのもしもの話である。
原作では4機のGATシリーズ。つまりガンダムがヘリオポリスから奪われたが、このミッションでは全機。つまり5機のガンダムが奪われたという設定となっている。
ミッションクリアの条件は、5機全機奪還か。破壊となる。加えてこのミッションでは功績ポイントが付く仕様になっている。
5機のうち何機奪還及び破壊したことで各々にポイントが付くのだ。当然、ミッション名通り、破壊するより奪還した方が多く功績ポイントがもらえるようになっている。そしてフィールドは宇宙だ。
ユウはこの功績ポイントがナミとシルバの勝敗をわけるものになるんじゃないかと思っていた。
だが、ミッション内容に納得いかないものがいたようだ。
「ユウくんの馬鹿ー!」
ナミが抗議の声を上げた。だいたいの察しは付く。アサルトヅダにはほとんど実弾武器しかない。そしてGATシリーズといえば、フェイズシフト装甲がある。実弾はあまり効果がないのだ。
「全くビーム兵器がないってわけじゃないだろ?」
「まぁ‥…。一応、ビームアックスがあるけど……」
アサルトヅダの護衛用にして、唯一のビーム兵器だが、あまり使う機会がないため主軸として戦うには心もとないだろう。
「ナミさん、大丈夫ですよ。相手がフェイズシフトダウンになれば実弾も通じるようになります」
「そ、そうよね! 頑張るわ! レナちゃん」
その頃には奪還の頃合いなんだよ、ということをユウは飲み込んだ。せっかくのレナのアドバイスでナミが立ち直ったのだから。
一方でこのミッションにやたらと自信を持ってるシルバがいた。
「おいおい、別に奪還しなくても全部破壊すりゃあいいんだろ?」
「それでクリアできるならね」
言いながらユウはシルバのブルーディスティニーを観察する。一見、バックパックにある太陽炉以外はブルーディスティニー1号機の素組に見える。武装に関してもベースとなっているブルーディスティニーと変わらないであろう。
ならば、このミッションにおいてアサルトヅダに有利な点でいえば、ビームライフルとビームサーベルを持っている点のみだ。
「おうよ、このオーディスティニーにかかれば、あんな重武装のヅダなんかにゃ負けねーぜ」
「オーディスティニー? あぁ、
二人の口論はミッションが始まる前の準備時間でも続いていた。
「とにかく今回は二人の勝負だから、僕とレナさんも参加するけど見届け人として基本動かない方針でいくよ。相手がこちらに攻撃してもこちらからは一切手を出さないこと」
「はい、わかりました」
レナも納得した。ミュウバクゥは地上でこそ真価を発揮する機体だが、宇宙でも背部のスラスターで問題なく戦えるようになっている。だが、今回は出番がなさそうだ。
「二人とも、それでいいかい?」
「「もちろん(よ)(だ)」」
二人の声が見事にハモったとこでミッションが開始された。
ヘリオポリスが見える宇宙空間に、5機のガンダム。イージス、デュエル、バスター、ブリッツ、そしてストライクが現れる。ストライクがノーマル状態なのは奪った直後という設定なのだろう。ある意味では一番狙いやすいターゲットかもしれない。
「いくぜいくぜ!」
オーディスティニーが敵陣に突っ込むと同時に5機は示し合わせたかのように散開した。バスターが後方に下がり、イージス、デュエル、ストライクが前に出る。さらにブリッツはミラージュコロイド・ステルスを発動したのか、すでに視界から消えていた。
「そーいえば、ブリッツはミラージュコロイド中はフェイズシフト装甲はできないんだったわね」
アサルトヅダは持ち前の武装でブリッツが消えた辺りを広範囲で発射した。結果としてそれは正解だったようだ。消えた瞬間を見られたのが運の尽きだったのだろう、ブリッツは煙を上げてその姿を現した。
「いっけぇぇぇ!」
即座にダブルガトリングガンを背中に懸架させ、土星エンジンを吹かして加速する。その際にシールドを前に突き出している。そこには白兵戦用ピックが展開していた。
さしものフェイズシフト装甲でも超加速で繰り出されたそれには効果があったようで、ブリッツの胴体にめり込んだ。
物理攻撃は防げても、その衝撃は軽減されない。そしてそれはパイロットの行動不能だということをNPCが判断したようで、ブリッツはそのまま動かなくなった。
「まずは1体確保。いぇい!」
喜んでいるナミだったが、その隙をバスターに狙われた。超高インパルス長射程狙撃ライフルのビームがアサルトヅダを掠める。発射された直後に気づいたため反応が少し遅れたが、土星エンジンが持つ高出力で何とか撃墜を間逃れた。
「まぁ、止まっていたら狙撃のチャンスよね」
辛うじて回避したとはいえ、代償にバックパックに懸架させてたダブルガトリングガンが融解。爆破を危惧してすぐに外して捨てた。
「さてと、次は誰を狙おうかな」
値踏みするナミの視界に、シルバのオーディスティニーが3機のガンダムを相手にしているのが見えた。
「換装パックのないノーマルストライクなんざ雑魚じゃねぇか!」
ストライク、デュエル、イージスが前に出たとき、シルバは即座にビームライフルを撃って、ストライクに被弾させた。
続いてくるデュエルもビームライフルで撃ってくるも即座に盾で防いで凌いだ。
「アサルトシュラウドになって出直してきやがれぇ!」
一気に距離を詰めてビームサーベルを振るおうとしたその時である。横からイージスがオーディスティニーを蹴り飛ばした。
「くそぅ! ざけんな!」
無重力の海に流されながらも、体制を直してビームライフルで反撃する。狙いが定まっていないそれは3機のガンダムに当たることはなく、逆にデュエルとイージスから反撃を受けてしまう。
「こうなったら一気に片付けてやんよぉ! エグトランザム!」
掛け声と共にオーディスティニーの全身が真っ赤に染まる。
それをユウ達は驚きの目を向けた。
「いくぜぇ! まずは壊れかけのストライクからだ!」
太陽炉から膨大な粒子が放出し、オーディスティニーはとんでもない速度でストライクに迫り、瞬く間にビームサーベルで破壊する。
「まず1機! これでぇ」
次に狙いをつけたのはイージスだった。盾を捨て、ビームライフルを構える。一連の流れにどのNPCの反応は追いつけていない。誰もがオーディスティニーが2機目の撃破となるかと思われたまさにその時だ。
プシューと、まるでガス欠を起こしたかのように、オーディスティニーの動きがピタリと止まった。
「え!? ま、待って! 待ってくれよ!」
シルバの懇願は、狙いすましたバスターのNPCに届くはずもなかった。オーディスティニーが止まった瞬間、超高インパルス長射程狙撃ライフルが発射される。
「何やってんのよ、あんたは!」
あわやビームに飲み込まれようとするオーディスティニーを救ったのは、まさかのナミのアサルトヅダであった。ガトリングやミサイルでイージスやデュエルをけん制しつつ近づき、体当たりでビームの射線から外したのだ。
「な、なんで?」
当然の疑問をシルバが投げかけるも、ナミはそれに応える余裕はなかった。
「黙って! ユウ君、レナちゃん。救援よろしく!」
「いいけど、勝負は無効になるよ」
「いーの! 早くね!」
通信を切るなり、アサルトヅダは動けないオーディスティニーを庇いながらイージスとデュエルの攻撃に耐える。
「だから撃墜されないように気をつけろって言ったじゃない! 世話焼かせるわね!」
シルバは彼女の行動が理解できなかった。
そもそも勝負をしていたはずなのに何故、助けたのか? 自分のことなど放っておけばお前は勝ちだったんじゃないのか? 等々、疑問を上げればキリがない。
そして、そんなナミの救援に迷いなく来てくれる2人の考えも。
「2人が来てくれた! もう安心よ!」
宇宙にあるデブリからデブリに、まるで八艘飛びのようにミュウバクゥが接近し、口からビームを連続発射する。イージスやデュエルからしてみれば不意打ちでビームの雨を受けてことになる。
「レナちゃん、ナイス!」
連射しているので通常より威力は劣るものの、2機を足止めするには適している。そして、そこにエクスガンダムがやってくる。
「いくらフェイズシフト装甲でも!」
デモリッションナイフを大きく振るい、イージスを斬るというよりぶち当てた。ダメージこそ与えれてないが、衝撃でデュエルを巻き込んで体制を崩すことができた。
「よーし、2人とも。ここは任せていい?」
返事を待たずにアサルトヅダはダブルガトリングガンや脚部のミサイルポットを外す。
「うん。ここはもう大丈夫だから」
ユウは、ナミが何をするのか察しがついていた。だからこそ快くこの場を引き受けた。
「お、おい、何をする気だよ!」
シルバが尋ねるも、ナミは「いいからそこでじっとしてな」と返されてしまう。
「お願いだからもってよ……アサルトヅダ!」
背部の土星エンジンが唸りを上げたかと思うと、アサルトヅダは、それまで以上の加速力で宇宙を奔った。狙いは、後方に下がっているバスター。当然、こちらに接近するとわかったバスターが迎撃態勢に入る。超高インパルス長射程狙撃ライフルをガンランチャーと高エネルギー収束火線ライフルに分離させ、さらに両肩のミサイルポッドまで同時発射する。
目の前が瞬く間に砲撃の嵐となるが、アサルトヅダはそれを悉く回避していった。
「っぅぅぅ!」
ジェットコースターとは比べ物にならないGがナミを襲うも、必死に意識を保ったまま、迎撃中のバスターの横を通り過ぎた。しかし、それは単に逃げたのではない。すぐさま機体を反転させ、もう一度白兵戦用ピックでバスターの背中から攻撃した。さらに零距離でシュツルムファウストまでぶっ放す。
その衝撃でアサルトヅダは吹き飛び、同じようにバスターも吹き飛んだ。NPCがパイロットの行動不能を感知したのだろう。バスターはしばらくして動かなくなった。
あまりにも高機動なマニューバーに、シルバは思わず感嘆してしまった。ふと気づくと、イージスとデュエルも2機のガンプラによっていつの間にか撃破されていた。
『Mission Complete』というシステムボイスと共にそれを祝福するかのようなファンファーレが鳴り響いた。
今回、少々乱文になってしまったかもしれまん。
読みにくいなどのご指摘があれば修正していきます。