ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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前回から1週間以上開けてしましました。


第3話①「初のチーム戦」

 強力なビームが“救出対象”のベアッガイⅢを貫く。それと同時に『Mission Failed』というシステムボイスが流れた。

 

「なんで人質を撃つのよ!?」

「いやぁ~悪い悪い。ビームライフルをビームマグナムに変えてからまだ慣れてなくてよぉ。つい狙いがズレちゃったぜ」

 

 ミッションが失敗したと同時に始まるナミの怒声と、謝罪はするが、反省の色が見られないシルバ。本日、3回目のやり取りである。

 

「だ~か~ら! あんたは素直にアタシと一緒に敵の仲間の排除でしょうよ! 人質救出はユウ君とレナちゃんに任せてあるんだから」

「人質を捕まえているアッグガイが隙だらけだったから救出のチャンスだと思ったんだよ。ユウ達もシャア専用ズゴックに苦戦していたようだしな」

 

 それは間違いではない。

 今回のミッション名は【ジオン水泳部に捕らわれたベアッガイⅢを救出せよ】である。

 アッグガイに捕まっているベアッガイⅢを救出するという一見、簡単に見えるミッションだった。しかし蓋を開けてみれば様々なジオン水陸両用MSがまるで大規模なフォースのように編隊されており、簡単には突破できないでいた。また、カラーリングを変えて別個のガンプラとして数に入っていたので、いわゆる雑魚狩りにも手間が掛かる。

 そのため、ナミが立てた作戦は、アサルトヅダとオーディスティニーでそれらを食い止め、エクスガンダムとミュウバクゥで人質救出というシンプルなものだった。

 結果として、アッグガイの取り巻きである赤いズゴック、ハイゴック、ジュアッグの3機に手こずったところにオーディスティニーのビームマグナムがベアッガイⅢを撃ち貫いて失敗に終わってしまった。

 

「まぁ、あのズゴックのAIは結構賢かったね。まるで本物の赤い彗星を彷彿とさせたよ」

「あ、あの、私が上手くユウさんのアシストできなかったのがいけなかったので……ジュアッグの砲撃を回避しがら戦っていたのに、私はハイゴック1機に手を焼いていたので」

 

 こうやってユウとレナが2人の上がったボルテージを下げるための反省会をするのもこれで3回目である。

 思えば、本日は【ガンタンクの死守】から始めて、まだ一度も成功していない。原因は単に難易度が上がったのもあるだろうが、あえて言うならシルバが独断先行に走ってばかりだろう。

 

「あのよぉ。やっぱ防衛系ってのは性に合わないんだよなぁ。やっぱこう、強敵と戦うのがオレに合ってる気がするんだよなぁ」

 

 今まで「任せておけ!」とか、豪語しておきながらどの口が言うんだか、と、ナミは思ったが、それならいいかもしれないという考えに至った。確かに目標を倒す系のミッションならば多少のチームワークの乱れも関係ないだろう。味方が1機でも欠けたら失敗になるものでない限り。

 

「そうね。そうしましょう!」

 

 言うが早いが、ナミとシルバは競うようにミッションの受付カウンターへと行った。受付のお姉さんはAIなので、笑顔のままでずっと待っていてくれるが、長時間張り付いているのはマナーに反するというものだ。

 そんな折、ナミとシルバに声が掛けられる。

 

「君たち。まだ決まらないのかい?」

 

 声を掛けてきたのは、背が高く紺色のショートヘアーという、一見男性にも見えるが、ハスキーボイスなそれは女性のものであった。

 

「えっと、待たせてます?」

「いや、そういうわけじゃなくてね。もし、良いミッションが決まらないなら、ボクらのチームと対戦しないかい?」

 

 彼女は握手を求めるかのように手を差し出した。ナミとシルバはお互い目を合わせるとニッと笑った。

 

「えぇ、喜んで!」

 

 同意の握手にナミが代表として応えた。

 

 

「てなことで、対戦することになりました」

 

 はい、拍手とばかりにナミがはしゃいでいる。その横にいるシルバも満足気に、うんうん、と頷いている。ダイバーネームをツバサと名乗ったその女性は4対4であること、フィールドがジャブロー地上であることを告げるなり、「じゃあ、仲間を呼んでくるね」と言ってロビーを去っていった。

 「ミッションじゃなかったんですかぁ?」とレナは呆れたが、ユウは賛同していた。

 

「対戦かぁ。確かにそっちの方がダイバーポイントが多く貰えるね」

「でしょでしょ!」

「でも、負けたらダイバーポイントが下がるけどね」

 

 それを知ってナミが凍り付いてしまう。一方でシルバは余裕綽々の様子だ。

 

「な~に。勝てばいいんだよ。勝てばよ」

「そ、そうよね……大丈夫、こっちにはユウくんがいるし、アタシやナミちゃんだってもう結構な腕前だと思うし」

「おい、オレは!?」

「なんとしても勝つわよーーっ!」

 

 気合を入れるナミだが、どこか空回っているように見えた。

 

 

 

 今回、対戦フィールドに選ばれたジャブロー地上は、別名、密林フィールドとも言われている。その名の通り緑豊かな木々が生い茂っており、その高さは通常のMSの腰くらいが分程度が精々といったところだ。これがかなりの難敵で、歩こうと思えば木々が倒れる音がして敵に早期発見されることもある。なにより視界が悪い上に

通常のガンプラがまるまる鎮まる深さの川もある。

 

「ナミさんとレナさんは初めてだよね? シルバくんは?」

「オレは何回かあるぜ。だからこそ言う。ここは嫌いだ」

 

 ユウは心の中で同意する。エクスガンダムが飛行能力を持っていても、敵がカモフラージュネットを被っていたらすぐにはわからない。加えてスナイパーがいれば飛んだ矢先に狙われることもあった。

 

「私のガンプラだと完全に木に隠れちゃいますねぇ。でも、こうも木が密集していると走っているときに倒しちゃいそうです。最悪、こっちが転んじゃう可能性だってありますね」

 

 レナが感じた素直な感想だった。ナミはナミで難しい顔をしている。

 

「アタシのガンプラでいっそ更地にしてもよさそうだけど……そんなことするくらいなら敵に撃った方がいいよねぇ」

 

 ご尤もだ。いくらアサルトヅダの重火器でもこのフィールド全部を更地にするのは無理がある。仮にできたとしても、弾数が残っている保障はない。

 

「ねぇ、ユウくんは何回かここで戦ったことあるんでしょう? 攻略法とかあるの?」

「ないわけじゃないけど、それが絶対ではないよ。相手によっても違うだろうし。しいて言うなら、敵にスナイパーがいたらこちらの不利になるかな」

「ほほぅ、スナイパーねぇ」

 

 この時、ナミが何か意地悪い笑みを零したのを、ユウは見逃していなかった。

 あれこれと話をしている間に、ツバサ達がやってきた。よく見ればナツキ以外のメンバーには共通点があった。

 

「待たせてすまない。彼女達が今回の君たちの相手である『アニマルハーフ』さ」

 

 そう、ツバサ以外の3人は、顔は人間そのものだが動物の耳と尻尾があった。いわゆるケモミミというやつだ。

 

「初めまして。この度は我々のフォースと対戦して頂き、ありがとうございます。私、ヨーコと申します」

 

 フォースのリーダーなのであろう、眼鏡をかけた狐耳の女性が丁寧な挨拶をした。それに次ぐように他の2人も自己紹介をしていく。

 

「ごきげんよう、皆様。ワタクシはノエル。以後、お見知りおきを」

 

 戦場というより、どこぞの華やかなパーティにでも出席するようなドレスアップをしている猫耳少女が白いスカートの裾を摘んで少し持ち上げて上品に一礼する。それにつられるように思わずユウ達も一礼してしまう。

 

「2人とも固いなぁ。オイラはカイ。よろしくね!」

 

 いかにも活発というより、わんぱく小僧と言った方が似合う犬耳の少年は耳も尻尾もブンブン振りながら挨拶する。そして最後に改めてツバサが挨拶をして締める。

 

「みんなよろしくねー! あ、こっちも紹介しないとね。アタシがナミ。そして、こっちがレナちゃん。そしてユウくんで。これがシルバ」

 

 なんとも雑な紹介であった。それぞれの名前を勝手に紹介されながらも、レナが恐縮したようにお辞儀をし、ユウが軽く頭を下げ、シルバは不敵な笑みを浮かべた。続いてナミが疑問をぶつけた。

 

「そういえばツバサさんはフォースメンバーじゃないの? ケモミミも尻尾もないみたいだし」

 

 そのことに関してはユウ達全員訊きたいと思っていたところだ。話を聞く限り、てっきりツバサが率いるフォースだと思ったからだ。

 

「あぁ。ボクは傭兵みたいなものさ。彼女たちのフォースは出来たばかりで、ある程度、強くなるまで手助けを頼まれているんだ」

 

 傭兵という言葉にユウはピクッと眉を上げた。まるで自分と似たような立場なんだと認識させられる。

 

「じゃあ、さっそく始めようか。準備はいいかい?」

「えぇ、もちろ―――」

「待って」

 

 承諾しようとしたナミの声を遮ってユウがストップをかけた。

 

「団体戦にはいくつかルールがあるんだけど、どんな勝負なのか? 勝敗条件は何か知りたいんだけど」

「おっと、大事なことを言い忘れていたね。じゃあ、ヨーコさん、その辺よろしく」

 

 ツバサに代わってヨーコがルールを説明していく。

 

「単純な制限殲滅戦でいかかでしょう?」

「時間は?」

「1時間でどうでしょう?」

「わかりました。それでいきましょう」

 

 ユウとヨーコ間では成立していたが、ナミは疑問符を浮かべている。

 

「え、えっと、結局、どういうルールなわけ?」

「後で説明するから。えっと、開始時間はどうします?」

「今より30分後でどうでしょう?」

「OKです。それでいきましょう」

 

 納得いったところで、互いの代表、この場合、ヨーコとユウはチーム戦の承諾YES/NOを求めるウインドウにYESを押した。

 上空に30:00という数字が浮かび上がり、カウントダウンが始まる。

 開始までの時間はメンバー内の作戦だったり、位置の移動にあてがわれる。『アニマルハーフ』はすでに移動を始めているが、ユウ達はまだ最初の位置から動いていない。

 

「制限殲滅戦っていうのは、時間内にどちらかのチームが全滅するまで戦うっていうこと。もし制限時間が過ぎた場合、残ったメンバーの数によって勝敗が決まるってことだね」

 

 今回、初のチーム戦となるナミとレナにユウが説明する。

 ほぅほぅと2人は納得するが、シルバは「こんなことも知らねぇのかよ」とプレイ時間の経験の差を鼻にかけている。それがナミにはやはり気に入らなかったようで

 

「なにさ。真っ先にあんたが撃墜されそうなくせに」

「んだとぉ!」

「前に出てもいいけど、誤射したらごめんなさいね~」

 

 また始まる2人の言い合いに、いい加減慣れてきたユウが話を進める。

 

「とりあえずチームワークという点ではフォースを組んでいる向こうが上だと思う。だから、最初は攻撃を最小限にして、相手のガンプラをよく観察していこう」

「でもよぉ。こんなフィールドだからアサシンスタイルで来るってことないか?」

 

 なまじ経験があるシルバの発想だ。アサシンスタイルとは建物や闇に紛れて奇襲するという戦法だ。またミラージュコロイドなどの透明になって奇襲するのもアサシンスタイルとも言われている。

 そして今回はただでさえ視界が取りづらい密林ときたものだ。フィールドを指定してきたのも『アニマルハーフ』の傭兵についているツバサなだけに可能性は決して低くはない。

 

「どちらにせよまずは相手の索敵が重要となる」

 

 それがどれだけ難しいのか、チーム戦の経験がないナミとレナには知っている。忘れもしない最初のミッションでプチッガイを見つけるだけだったのに、索敵能力のなさで初心者狩りの罠に引っかかってしまったこと。

 

「とりあえず死角に気を付けて、当初の予定通り攻撃は最小限で」

 

 そこまで言って、ナミが何かを思いついたのか、声を上げた。

 

「待って! そんな消極的戦法はやめよう。相手のことがわからないのは向こうも同じじゃない?」

 

 それはそうだが、こちらにはチーム戦と密林フィールドが初めての2人いる。

 

「何か案があるの?」

「んふっふっふ~。ちょ~と危険だけど、やってみる価値ありますぜ?」

 

 と、何故かナミはユウではなく、シルバを見ていた。

 

「あんたの活躍にかかってるわよ!」

 

 いい笑顔でシルバの肩をバンバン叩くナミだが、シルバは嫌な顔をせず、むしろ嬉しそうな顔をしていた。

 

「おうよ、このオレに任せな!」

 

 シルバは気づいていない。ナミの笑顔の裏には何やらよくない企みが潜んでいることを。

 

「じゃあ、決まりね。でさ―――」

 

 ナミが作戦内容を説明し始める。全てを話し終えた頃には、上空のカウントダウンが5分を切っていた。

 ナミとレナ。2人にとって初のチーム戦が始まろうとしている。




『アニマルハーフ』の意味は、人間と動物系人種のハーフという設定で結成されたフォースです。要はケモミミであれば無条件で入れるフォースとも言えます。
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