ガンダムビルドダイバーズX   作:蒼ウサギ

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第3話②「初のチーム戦」

 カウントが5秒前を切ると、一同に緊張が高まっていく。そして0を示した瞬間、それぞれのガンプラが動いた。

 まずはエクスガンダム。開始と同時に自分の真正面にツインバスターライフルを撃ち放った。相手に当てるわけでも、あぶり出すわけない一撃。当然、手ごたえなどあるはずがない。

 一見、無駄な一発かと思われたそれだが、そこに道が出来ていた。

 

「よっしゃー! いくぜぇ!」

 

 その道を駆けだしたのが、オーディスティニーだ。その間、エクスガンダムはその道とは別の方向にもう一発放って、道を作った。その道をエクスガンダム自ら駆けだす。

 その光景を中央に位置していた『アニマルハーフ』は一部始終見ていた。

 

「……ふ~ん、威嚇射撃と障害物の排除をしたみたいだけど」

 

 ツインバスターライフルの連射を目の当たりにしても『アニマルハーフ』は悠然としていた。いくら視界が悪いとはいえ、このようなやり方で索敵をするなど無謀にもほどがある。これでは自分から場所を教えているようなものだ。

 

「カイ君。油断は禁物よ」

「わかってるよ、リーダー! じゃ、とりあえず前に出てるやつを叩くよ」

 

 カイのバクゥにも似たその黒いガンプラが木々が生い茂る密林から飛び出す。狙いはオーディスティニー。

 

「くらいなよ!」

 

 接敵と同時に変形して人型になった。不意打ちとはいえ、目の端で捉えたシルバがそれがガイアガンダムと分かったときにはすでに遅い。盾を構える間もなく、すでに振るっている鎖付きのモーニングスター、通称、ガンダムハンマーが目前に迫っていた。

 

「っ!」

 

 まずは1機撃破と思われたが、この瞬間を待っていた者がいた。

 一筋の光が奔りガンダムハンマーを貫き、破壊せしめた。

 

「よし、命中!」

 

 腹ばいになっているアサルトヅダのダイバー、ナミは目標に命中して思わずガッツポーズする。アサルトヅダの手にはロングレンジビームライフルが握られていた。対フェイズシフト装甲のためにナミが急遽作り上げたものだ。

 それを密林に隠れて狙撃したのだ。オーディスティニーに相手の誰かが襲うと確信して。

 もちろん、エクスガンダムの方に向かう可能性もあった。しかし、ナミはオーディスティニーの方に狙いをつけていた。ユウなら自衛できると信じていたと言えばそれまでだが、しいて言うならあんな強力なビームを撃つエクスガンダムより見た目は完全ノーマルなオーディスティニーを狙うだろう。

 ナミならそうする。結果として、目論見通りになったわけだ。

 

「さぁて、今のでここの位置もバレたかな。一応、移動しておこう」

 

 ライフルを二つ折りにして腰にマウントさせ移動しようとしたまさにその時、轟音が響き、近くに立っていた木々の場所がえぐれた。

 

「あっちにもいたのね、スナイパーが」

 

 思わず怯んだものの、第二射が来る前に移動を再開する。そうしながらナミは砲撃手を肉眼で確認した。そこにはガンタンクのような砲身を背負ったラゴゥがアサルトヅダを狙っていた。

 

「みんな、向こうにもスナイパーがいるから気を付けて! 機種はラゴゥだけどバカでかい砲身もってる」

「了解。こっちでも確認したから、やってみる」

 

 返ってきたのはユウだ。自身で作った道を低空飛行で駆けながら、片手でツインバスターライフルを構える。だが、そういったユウの企みは、突如、飛来してきたガンプラによって防がれた。

 紫色のカラーリングをしたガンプラ。ガンダムタイプ特有のV字アンテナと口を持っているが、その目はモノアイ。モノアイガンダムとも呼ばれるシスクードによって。

 

「くっ!」

 

 攻撃変更をラゴゥから紫色のシスクードへと変えるも、砲身がビームサーベルで斬られた。

 

「君のことは噂に聞いてるよ!」

 

 ガンプラ越しに聞こえるハスキーボイスに、ユウはこのガンプラのダイバーが誰かすぐに分かった。

 

「ツバサさんか! 傭兵の」

 

 白兵戦の距離に追い詰められたエクスガンダムだが、ユウの決断は早かった。ツインバスターライフルを捨て、GNソードを展開。シスクードのもう一つのビームサーベルが届く前にそれを弾くことができた。

 

「君も似たような境遇じゃないか、今は」

 

 GNソードとビームサーベルが交差する。

 

「そうだね。でも、今は少し違うかな」

「どう違うんだい?」

 

 従来のシスクードにはない頭部からのバルカンが火を噴く。シールドの役目も持つ非使用時のデモリッションナイフでそれを防ぎつつ、エクスガンダムは距離をとった。

 

「今は楽しくやっている。傭兵としての立場じゃなく、チームの一人として」

「じゃあ、チームがフォースを結成したらそこに入るつもりかい?」

「それもいいかなと思っている」

「イサミが今でも君を待っているとしても?」

「!」

 

 ユウの脳裏にあの赤毛で体格のいい男が思い浮かぶ。確か傭兵フォースを作るとか言って自分を誘ってきた者で、かつての恩人だ。

 

「そうか。もう結成していたんだ」

「サブリーダーの席は空いたまんまだけどね」

 

 シスクードの動きが加速して、一気に距離を詰める。先ほどとは打って変わったような鋭い剣筋にエクスガンダムは対応できなかった。

 

「彼から話を聞いて、ボクは一度、君と戦ってみたかったんだ。彼の“元相棒”だった君とね」

 

 エクスガンダムの顔を突き刺す手前で、ビームサーベルを止めたシスクード。そのダイバーから発せられた声はすごく冷たいものだった。

 

「噂ほどでもなかったね」

 

§

 

 シルバはガンダムハンマーを失ったガイアガンダムと対峙した。

 

「ったく、ビビらせやがって。これでもくらえ」

 

 ビームマグナムを構えたその時、また不意打ちを受けた。眼前のガイアガンダムからではない。『アニマルハーフ』の最後の1機がカイの応援にやってきたのだ。

 

「ノエル~。こなくても良かったのに」

「相手の1機が見えません。ならば、ここは確実に1機ずつ倒していきましょう」

 

 ダイバー同様、猫耳と尻尾まで付いているノエルのガンプラ、白銀のノーベルガンダムが黒いガイアガンダムと並ぶ。

 

「けっ、最初に一番手強いやつを潰すってのはいい判断だぜ」

 

 ノーベルガンダムの不意打ちから立ち上がりながらシルバが不敵に笑う。

 

「え~、それホント? 僕はさっき狙撃してきた人か初っ端バスターライフルを撃ってきた人がそちらのエースだと思ったんだけど」

「馬鹿言うんじゃねぇよ。訳あって実力の一部を封印しちゃあいるが、お前ら2機相手なんざどうってことないぜ!」

 

 はったりではなく、シルバは本気でそう思っている。だから一片の淀みもなく言いのけることができた。

 

「なら、このドッグガイアと」

「キャットノーベルがお相手します」

 

 2機のガンプラが構えると、オーディスティニーがビームマグナムを捨て、ビームサーベルの2刀流で構える。

 

§

 

 ユウがモノアイのガンダムに苦戦しているのはナミの位置からでもわかった。こちらが狙撃してもいいが、構える前に撃たれるのが目に見えている。

 かといって、このまま逃げっぱなしだといつあの照準がエクスガンダムに向くか分からない。

 

「なら、アタシに狙いを向けていればいいわよね」

 

 立ち止まった瞬間、ラゴォからの砲撃が飛んでくる。コンマ遅れてアサルトヅダがミサイルと胸のガトリングを放った。

 ミサイルはラゴォを倒すために、そしてガトリングはラゴォから放たれた弾を撃ち落とすために。期待はしていない、せめてもの悪あがきだ。アサルトヅダ、砲撃型のラゴォ双方に爆煙が起こる。

 結果として砲撃戦はナミの完全敗北に終わった。ラゴォから撃たれた弾はアサルトヅダの左腕に直撃し、大破したのに対し、ラゴォに向かったミサイルはあらぬ方向へと飛んでいってから爆発したからだ。ミサイルが着弾する直前、ナミは見た。ラゴォがダミーバルンを射出したところを。それが特殊な電磁波を放っていたのか、ミサイルの軌道を全てラゴォ本体から反れていったのだ。

 

「くっ……思ったよりキツイ」

 

 ただ可愛いだけのフォースではないことを痛感する。しかし、ナミは己の策に後悔はしていない。

 多少の狂いはあるが、ここまで予定通りなのだから。

 

「さぁ、今よ。レナちゃん」

 

 一人呟いていると、予測通り“それ”が来た。ラゴゥが背後からの攻撃を受けたのだ。その一撃は背負っている120mm低反動キャノン砲を破壊することに成功した。

 

§

 

 レナはカウントが0に近づくたびに心臓の音が大きくなるのを止めることが出来なかった。

 今作戦の大役を任されたからだ。

 ナミが立案した作戦は、賭けに近い。それはGBNを長くやっているユウが言っていた。それでもユウはやる価値はあると言っていた。

 保障も保険なんてあるわけない。自分がしくじれば人数差でチームが瓦解する可能性だってある。そんな折、一番気にかけてくれたのは憧れのユウだった。

 

「レナさん、深呼吸して」

「え……?」

「いいから」

 

 言われるがままやってみるも緊張がとれる気がしない。ならばと、ユウが次の提案してきた。

 

「じゃあ、ナミさんをよーく見てみて」

「は、はい」

 

 アサルトヅダの回線を開いてナミの様子を伺ってみる。そして気づいた。

 口が軽く開けて、息遣いがどこか荒い。瞬きの回数も心なしか多い。そこでレナは気づいた。ナミも緊張しているということを。普段の彼女は緊張とは無縁だと思っていた。この作戦を説明している様子だって自信に満ち溢れている様子だったのに。

 

「初めてのことなんだから緊張して当然なんだよ。失敗することを考えるより、楽しもう」

 

 言われてもう一度深呼吸してみる。不思議と先ほどまでのガチガチの緊張から解き放たれた。

 

「あ、ありがとうございます、ユウさん」

「うん、レナさんが動きやすいように、僕も派手にやるよ」

「お願いします」

 

 そして、カウントが0になるとエクスガンダムがツインバスターライフルを撃った。ナミの作戦通りに。

 エクスガンダムが開幕と同時に撃ったのは密林の障害物をなぎ倒して道を作ることもあったが、それはあくまで二の次に過ぎなかった。

 これの本当の目的は、エクスガンダムの攻撃力を相手に見せつつ、かつ注目させることにあった。その間に密林に完全に隠れることができるミュウバクゥが木々を縫いながら走った。幸いか計算かは不明だが、木々が倒れる音は強力なビーム音にかき消されていた。

 二つ目の道が出来た頃にはミュウバクゥは密林を抜け、近場にあった川に潜った。刹那、ピピッとレーダーが反応した音がした。

 

「近くにいる」

 

 早くも相手がいる位置をレーダーで捉えていた。視界が悪いのは向こうも同じだったようで、レーダーの動きを見れば一連の動きは見られていないようだ。

 ミュウバクゥの役目は、ゲーム用語でいうところの裏取りである。相手に気づかれることなく、背後に回るそれはレーダー性能が高い機体なら即座に看破されてしまうところだったが杞憂に終わった。

 相手が囮になってるオーディスティニー、そしてエクスガンダムに向かって展開し始めたからだ。ただ1機、残っているキャノン砲を背負っているラゴゥがいたが、それも支援攻撃に向かった。

 後は狙いとタイミングだ。ナミには「こちらがギリギリまで追い込まれている状態で仕掛けて」と言われている。この場合、支援砲撃型の厄介なラゴゥだろう。最初はユウがやってみるとは言っていたが、どうやらモノアイのガンダムに阻止されたようだった。

 ならば、その代わりは自分がやるかないとレナは思った。

 

「……あれだ」

 

 緊張と興奮で心臓の高鳴りが聞こえる中、ゆっくりと水から上がってラゴォを視認する。そして一気に駆けた。ビームをチャージしながら射程内まで接近する。ラゴォが自機と同じ形をした風船を出したところで、チャンスがやってきた。

 

「いっけぇ!」

 

 狙いは背中にあるキャノン砲。そこに出来るだけ近づいてチャージしたビームを発射した。

 結果として、レナの奇襲は成功した。

 

「4機目が見当たらないと思えば……やってくれますね」

 

 狙撃能力を失ったラゴゥは、標的をミュウバクゥへと変更した。




初のチーム戦での文章は難しいと感じた今日この頃です。
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