アイドルになるには人気が必要。では人気の出る呪いに掛かったら?

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人気の出る呪い

『人気の出る呪い』

 

 今日は幕張メッセで握手会。ものすごい人でごった返し、警備員さんが必死にファンを抑えている。あまりにも混雑しているので「握手会するってレベルじゃねーぞ!」と叫ぶ人まで居る。

 どうして私がこんなことをしているかといえば、人気の出る呪いに掛かってしまい日常生活が困難になってしまったからだ。変装してようが、街に繰り出せば、人に追いかけ回されるのでおちおちCDショップにも行けやしない。

偶然知り合ったトレーナーの先生がいうには、アイドル力の暴走でこんなことになってしまっているらしい。アイドル力をコントロールできるようになれば、こんなことにならずに済むと。

 というわけで普通に戻るためにアイドル活動をやってる。

毎回毎回現場に向かうのも一苦労だ。護送される犯人のように、黒塗りのワンボックスカーに乗って、こっそり現場入りして、帰りもこっそり帰るのだ。

 デビュー当初から普通に戻りたいアイドルなんて前代未聞だと思う。デビュー曲だって「普通が一番!」だし。いつになったらみんな普通に接してくれるようになるんだろう。友達とカラオケに行っていたあの頃が懐かしい。友達までおかしくなってしまった。

 それにしてもこの能力はアイドル力がある程度ある人には効かないのが不思議だ。同じプロダクションのプロデューサーさんやマネージャーさんは、自分を見て目がハートマークになったりしないし。

それにしても一緒に握手会やってる同業者のアイドル達はどうしてそんなに愛想良くできるのか不思議でならない。どうしてそんな疑いの無い笑顔を見ず知らずの他人に向けることができるのか。私など、何かに耐えるような顔で握手会し続けているというのに。私より100倍は可愛いのに、どうして彼女たちの方が人気が出ないのか。

 プロダクションも強かなもので、私の人気に便乗して、一緒に握手会やるアイドルを派遣したり、グッズの販売してる。

 タオル一枚3000円とかの世界なのに飛ぶように売れるんで困惑する。3000円もあれば相当美味しいものが食べれるだろうに。

 どさくさに紛れて、不良在庫に困ってるお店の商品でも売れば良いんだ。全く日本が不景気だというのはなんだったんだろうという気になる。

 そんなことを思いながら握手会を終えて私達は、プロダクションに戻った。

 こんな世界に居たら頭がおかしくなってしまう。早くアイドル力のコントロールができるようにならないと。と思いながら私は時間の許す限り横ステップの練習をした。

 そして精神安定のために山ほど買い込んだ花だらけの寮の自分の部屋に帰った。あまりにもアイドルの同業者の実家がやってる花屋から買い込むので、お得意様扱いされた。うん、フラワーショップ渋谷の花は世界一だ。

 音楽を掛け、花をぼんやりと眺めながら私は眠りについた。

 

 その後なんとかアイドル力のコントロールができるようになり、街を歩いていても何も言われなくなった。仮にステージ衣装を着ていたとしても、そっくりさんにしか思われない。ホント、普通が一番だ。

 


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