人気の出る呪いバージョン2   作:ア キ

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第1話

 

 東京は人が多すぎる。

 

 慣れない新生活にあたふたしていた頃、私はそんな事を思った。

 親の仕事の都合で、父、母、そして娘の私の3人は、東京に引っ越して来たのだ。

 私の住んでいた田舎は歌に出てくるような村で、自然以外何も無い。流石にネット回線とコンビニくらいはあるけど。東京行きになった私たち3人は、故郷では英雄扱いだ。

 新生活に必要になるからと渡されたスマホに、ひっきり無しに東京での事を聞かれ、質問に答えるたびに、東京って凄い! という反応が返ってくる。父と母も似たようなもので、急に知り合いが増えて困惑してると言っていた。私も今度のゴールデンウィークには、東京を案内して欲しいとお願いされたくらいだ。

 それにしても東京は美人が多いし、全く噛まずにスラスラと話せる人ばかりだから、役者の世界に紛れ込んだような気分になる。うちの学校校則厳しい方なのに、金髪の人が居て、思わず染めてるの?、ハーフなの?と聞いたことがあるけど、正真正銘の日本人で地毛だそうだ。東京って凄い。また話のネタが出来てしまった。

 父も似たようなもので、新しい上司はなんとフランス人だ。でも日本語は違和感が無いほどペラペラで、とても親切な人で助かった。というのを夕ご飯の時に聞いた。

 東京は退屈しないのは間違い無いけど、ちょっと疲れてしまうのでたまの休みにはふるさとに帰ろう、と誓い合う私たち家族三人であった。

 

 4月の週末、桜の花びらが舞っている渋谷の街をスマホをガイドブック代わりにして歩く。東京は音楽と広告に溢れていて、見ていて飽きない。田舎とは大違いだ。音楽を聴くくらいしか楽しみが無かったので、正直、夢が叶った気分だ。

 今日は渋谷で有名なとあるCDレンタルショップに来たのだ。そもそもこういうお店に来ることすら初めてなのでワクワクする。ビル丸ごと一つのお店なのは凄すぎる。

 凄い品揃えだ。もう自分が持っているCDも、お店に実際に並んでいるのを見るとなんだか違う商品のように思えてくる。プレミアが付いてるというか。

 商品が多過ぎて選べないくらいだが、目についたCDをカゴに入れて、視聴機で聴き漁った。インストの曲も良いが、やはり歌だ。なんだかんだ言って歌が良い。私の持ってるCDの大半も歌だし。思わず口ずさめるメロディーというのが良い。田舎では場所だけは有り余っていたので、暇さえ有れば歌っていたくらいだ。私以外の子もだいたい同じで、村に2軒しか無いカラオケボックスは溜まり場だった。

 音楽が好きなので新しいクラスメイトとの会話にもなんとか付いて行けてる。今度カラオケに行かないかと誘われたので楽しみだ。

 と夢中で音楽を試聴し借りるCDを選んでいると、「アイドルに興味はありませんか?」と変な人に声を掛けられた。多分他の人に声を掛けたのだろうと、そのまま去ろうとしたら、もう一度私の前に立ち塞がり両手で名刺を差し出しながら「アイドルに興味はありませんか?」と声を掛けて来た。

 こういう店って、キャッチセールスの類って禁止なんじゃ無いかな? それともCDレンタルショップの企画で社員の人なんだろうか、と考えていると無言は肯定と受け取ったのか、鞄からA4サイズくらいの封筒を取り出し、名刺と一緒に差し出して来た。名刺にはこう書かれている。

 

 美城プロ シンデレラガールズプロジェクト総合プロデューサー

 

 うん? 受け取るべきか悩んで居ると、エプロンを掛けた店員さんがやって来て「お客さん、困りますよ、うちの店でこういうことされたら。」「いえ、わたしは」「あーもう詳しいことは事務所で聞くから」という問答をしながら連れられていった。

 あの人、このお店の関係者ですか? と聞くと、全くの無関係です。うちの店はお客様に対してそんなことはしません。と断言された。じゃああの名刺は受け取らなくて正解だったんだ。とホッとして店員にお礼を言った。いくら東京に遊びに来たからと言っても、浮かれすぎるのは良くない。

 微妙な気分になったので気分転換も含めてCDを選ぶ作業に戻った。そしてアルバムを10枚ほどレンタルして家に帰った。聴き終わったらまた新しいのを借りよう。

 

 その後3日で全部聴き終わってしまったので、学校の帰り道に新しいのを借りようと渋谷まで行くと、なんとこの前のプロデューサーがレンタルショップの前に居た。

 見つからないように別の入り口から入り、CDの試聴とレンタルをして、もう流石に居ないだろうとタカを括ってお店を出ると、どうやって察知したのか、小さな入り口でまた勧誘された。しかし私は「興味はありますが、なる気はありません」と断り、渋谷駅まで走って去った。

 

 また別の日、今度はなんと学校近くの通学路にまで現れた。制服を来た状態で、渋谷に行ったのが不味かったかな。と反省した。

そこまでやるプロデューサーに対しての私の答えは変わらない。

「なる気はありません」

 プロデューサーがここまでやるということは、アイドルもこれくらいやらなきゃいけない大変な仕事なんだろうな、と思う。

 美城プロのシンデレラガールズプロジェクトのことはネットで調べたけど、本当に美人揃いで、とても自分には務まらない。本当に欲しいものがあるとかでもないなら、芸能界には入ってはいけないと思うし。

 親や友人にも心配されてしまい、○○を見守るスレみたいなことになってしまった。

 これでこの人は諦めてくれると良いけど、まったく私の何が良かったのやら。おのぼりさん状態で、言うこと聞かせやすそうとでも思われたんだろうか?

 

 さらに別の日、また通学路に現れバカの一つ覚えのように、両手で名刺を差し出し「アイドルに興味はありませんか?」とスカウトされた。そうすると金髪のクラスメイトが横から名刺をひったくり。「はい、はーい!私アイドルになりたいで〜す!」とアピールした。私にはこっそりとウインクして「行って!」とジェスチャーしながら。助かったので私は急いで家に帰った。

 流石にこうもしつこいと身の危険を感じるので、当分の間、親の車で通学することになった。

 それにしてもいったい私の何がアイドルに向いていると言うのだろうか? 助けてくれた金髪のクラスメイトも、あの後結局断られてしまったと言うし。クラスメイト達もさっぱり分からないと言っていた。私のことは、皆口を揃えて普通だと言ってくれるし。

 きっと思い込みの類なんだろうなと思う。それかもしくは一目惚れか。具体的な指標があるわけでも無いのに私に拘るなら、それはもうストーカーだ。恐ろしい。

 

 あの後、例のプロデューサーは警察に厳重注意されたと聞くし、流石にもう大丈夫だろうと思って居ると。今度は知らない人からのスカウトの着信とメールがひっきり無しに掛かって来たり、郵便受けがアイドルのスカウトメールでパンパンにされた。いい加減、美城プロに電凸してやろうかと思ったら美城プロとは違う芸能プロダクションからスカウトのだった。しかもアイドルのオーディションを受けても居ないのに、合格という。お父さんは、大学受験や就活してた頃を思い出すなぁ、と言った。これくらい僕もモテたら受験や就活も楽だったのに、とネガティブな事を言っていた。

 しかしどうしよう。お父さんとお母さんは、こういうことは子供が悩むようなことじゃ無いから大人に任せておきなさいと言ってくれるけど。

 ちなみにアイドルのスカウトメールは分厚い資料付きで見る分には楽しいから、親やクラスメイトとの会話のネタになった。こうやって人は騙されていくんだろうなと、みんなして笑ってる。学校でも不審者には十分に注意するように、とホームルームで告知があった。

 もういい加減うんざりしていると今度は、学校の校門で報道陣に出待ちされるようになり、勝手に写真を撮られた挙句「何か一言お願いします!」とマイクを向けて来る始末。うーん。日常生活が送れなくなって来た。最近街にも遊びに行けてないし、どうしようと思って居ると、授業を受けてる時に急に放送で呼び出されて、応接室に行った。

 そこにはなぜか父と母が居て、緑色の事務服を着た綺麗な女性と、凛々しい目をした女性が居た。初対面の二人は、美城プロの事務員とトレーナーだと名乗った。

 そしてどうして私はこんな目に遭っているかの説明をし始めた。

それによれば、私をスカウトしたプロデューサーが何かのきっかけになり、アイドル力が暴走しているからこんなことになっている。そしてこれをどうにかするにはアイドル力をコントロールできるようにならなければいけない、と訳の分からない事を大真面目に言われた。両親もポカーンとしている。

 アイドル力ってなんだよ。なんでもかんでも~力をつければ良いというものでもないだろうに。

 色々と話合った結果、私はアイドルになることになった。さっぱりわけがわからない。超スピードだと瞬間移動とかそんな生優しいものじゃ無い。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。まるでホグワーツに入学することになったハリーポッターの気分だ。しかも当分の間は休学することになったし。まるで無茶な企画のテレビ番組みたいだ。




いくら時間を掛けても完成しないので、とりあえずできたところまでで投稿してみた。
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