Angel Beats! 「死後の世界のあり方」 作:Chelia
☆体育館☆
「うっ…ここは?」
ここ、死後の世界でちょっと特殊な話をしよう。
この世界の大元の概念は青春時代をまともに過ごせなかった学生を対象にこの世界という学校で充分な生活を送り、無事成仏してもらおうという意図をもって作られている。
しかし、そんな不幸な生徒を何千人も一度に入れてしまうと、問題が起こりかねない。
なので、不幸な人生を歩んでしまった生徒を2割、そしてこの世界に最初から存在しているデータとしてのみの存在である生徒が8割で構成され合計2000人を超えるマンモス校が建設されているのだ。
このデータとして作られた生徒。日常会話等の会話しかできないと思いきや、かなり精密に作られている。話しかければ普通に返事をするし、部活動をしたり、食事をしたりと一見すれば正規の人間かどうかの見分けが全くつかない。
なので、ゆりたちSSSはこの生徒たちのことをNPC(ノンプレイヤーキャラクターの略)と呼んでいる。
ゲームなどで存在するモブキャラというやつだ。
そして彼らNPCに共通して言えることは、この世界に関する質問には一切無知で回答をしない。あるいは、変な奴と思われて終わり。
そして、生徒としての模範にあるまじき行為には一切手を出さずに黙認するという共通点がある。
何故わざわざNPCの説明をしたかというと、先程説明した生徒としての模範にあるまじき行為には黙認する…という設定を覆す程の実力を見せたとあるバンドがあるのだ。
青春時代をまともに過ごせなかった女子生徒4人で構成されていて、全員がSSS所属。
バンド名をGirls Dead Monster(略してガルデモ)という。
陽動班として、幾多の場でゲリラライブを行い、教師達を困惑させるのが彼女達の役目。
だが、そんな目的で演奏するには惜しいほど物凄い腕を持っている。
おそらく、現実世界でもトップレベルのバンドを組めるであろうほど…
彼女達の演奏時には、データで反応しない設定になっているはずのNPCでさえ、盛り上がって応援してしまうのだ。
そんな超有名バンドメンバーの一人、リードギター担当の高橋ひさ子が、ステージの上で目を覚ましたところのようだ。
夜の体育館。
ステージの上だけ明かりがついていて、演劇のようといえばそんな気もしないことはないが、急に別の場所に飛ばされて頭がパニックになってる今、そんなことを考える余裕はない。
むしろ恐怖心が湧くくらいだ…
慌てて周りを見るひさ子。
「…岩沢? 岩沢か!?」
ステージの奥の方にもう一人倒れていた。
短髪にアコギを抱えて倒れている女子でSSSの制服… まあ岩沢しかいないだろう。
この少女、ガルデモのリーダーであり、ボーカル&ギターが担当である。
「………? ここは?」
「どうやらまた戻されちまったみたいだぜー? …あたしら」
「そっか… 死んだ感じはしなかったんだけど…」
「死んでないんじゃないか? 少なくともあたしは死んでないのにこの世界に戻されたぜ?」
ゆり達と同様、死んだ感じがしなかったのにこの世界に戻されてしまった…なんて会話をしていると後ろから騒がしい声が聞こえてくる。
「ううーっ! ガルデモなら私たちもいるじゃないですか!…いい加減気づいてくださいよぉ…」
残り二人のバンドメンバー、関根しおりと入江みゆきの二人もステージに倒れていたらしい。 岩沢とひさ子のスルーっぷりに呆れた関根が口を挟んだ。
「…構って欲しかったのか?」
岩沢の天然発言はいつも滑らないのが長所だ。
「気づいてるんなら構ってくださいよー!」
「そんなカラフルな髪 の色した奴が二人も寝てたらそりゃ気づくだろ… あと関根 お前キャラがユイみたいになってるぞ?」
グサッとアニメでしか聞こえないはずの効果音が聞こえた気がした。
ユイとキャラが被るのだけは嫌らしい関根さん。
「そ…それは嫌です…」
「まあまあ…気づいてもらえてたんだから良かったじゃない…」
ひさ子にからかわれると関根は大人しくなり、フォローにならないフォローを入江がすると以外にその場は収まった 。
とりあえずいつまでもステージで寝ているわけにもいかないのでひさ子が話し出す。
「でさ…これからどうすんだよ」
「みんなここに寝てたんだよな?」
「そうです…」
「ゆりとか戻って来てないのかな~」
「なぁ…」
「ん? どうした岩沢?」
何かを思いついたように話しかけるリーダー岩沢にみんなが耳を傾けると…
「ライブをしないか? せっかくみんないるんだし… でっかい音出せば誰か気づくんじゃないか?」
「おーっ!岩沢さん気持ち悪いほど頭さえてるぞー でも絶対思いついたのギター弾きたいからですよね!」
「お前はいちいち一言多いんだよ!」
関根の頭をひさ子がぐりぐりと拳で痛めつける。
「でも、悪くないな… さて!早速準備するか!」
「いいい痛いですー…アホになっちゃうじゃないですか!?」
「元からアホだろ!」
ガルデモのゲリラライブの準備が始まった。
☆食堂☆
再び視点をゆりに戻し、ここは食堂。
「ふぅ…何を食べようかしら…」
「ん? ゆりっぺじゃないか」
「あら♪松下くんじゃない 久しぶりね…」
おっと、以外にもここでSSSメンバーの一人、柔道の達人松下五段を発見!
(ちなみに高校生じゃ五段取れません)
そうよ!私は最初から食堂に松下くんを探しに来たんじゃない!こんなに早く見つかるなんてさすがあたしね☆
※思いっきり嘘である。
「他のみんなも戻って来てるのか…?」
すでに席について肉うどんをすする松下が言う
「そうなるわね…」
ゆりも向かいに座り、ハンバーグを食べながら
「松下くんは誰かに会わなかった?」
「ああ…日向たちが廊下に歩いて行くのを見たがそれより飯だったからな…」
(ちゃんといたじゃない!…あいつら~!)
ゆりの血管がブチブチと音を立てているが気にしない方向で…
というか、もう少し乙女になったほうがいいですよリーダーさん。
「まっ…まあいいわ… 人数が揃ってきたら校長室に突撃するから、それまであそこには近づかないでね?何かある気がするの」
「うむ 修行に校長室は関係ない。了解した」
………
ここでゆりの通信機に連絡が入る
「もしもし?」
「あっ!?… 繋がった?」
「もしかして遊佐さん?…まだ使えたのね、これ…」
そして二人目SSSメンバーの存在を確認。
トランシーバーと言うなの通信機を使って連絡をしてきたのは戦線でオペレーターを務める遊佐という少女。
オペレーターなので、他のメンバー達とは行動を共にせず、少し離れた場所からサポートを務めるためあまり接する機会が少ないが、実はこの子、とっても有能な通信士。
彼女の活躍によりどれだけ楽にオペレーションが進行しているかなど、この頃はまだ誰も知らないのであった。
「お久しぶりです。ゆりっぺさん…このパターンは…」
「さすが順応性が高いわね…そういうことよ」
そして遊佐は冷静なのも持ち味の一つ。
アホが集う戦線の中で、数少ない知能派だ。
「誰かさんの悪影響です」
いつも無茶して突っ走るリーダーのせいと遠回しに皮肉を言う遊佐。
「悪かったわね!…今どこにいるの?」
「体育館倉庫から連絡をとっています。ゆりっぺさんが欲しそうな情報もいくつか入手済みですのでご期待ください」
「ホント!?助かるわ…一時間後に屋上に集合になってるから遊佐さんも来てくれないかしら?」
「了解です…では、私は引き続き独自に調査を進めますので…」
そういうと通信が切れた。
全く…どっから通信してるのかしら…
体育館倉庫って…調査方法も気になるんだけど?
「松下くんも屋上に来てね?」
松下が返事をしたので私は次の場所を探す
☆屋上☆
約束の一時間が立ったので屋上に向かう。松下、遊佐は先に来ていて各自暇そうにしていた。
日向と大山がだいぶ人数を集めたらしい
野田、藤巻、高松、椎名、TK、竹山が後ろからぞろぞろと続く。
「上出来じゃない♪よく集められたわね」
後々大山に聞いたところ、名誉挽回のために日
向が死に物狂いで校内を走り回ったらしい
「ゆりっぺが話すと言うから来てやったが、何の用だ?」
ゆりっぺ信者の野田が早速不満そうな声をあげる
「あわてなくとも話すわよ…」
「目視で確認したところ現在いないのはガルデモメンバーと音無さん、直井さんですね」
「チャーは?」
「チャーさんとは会っていますのでご心配なく。現在は仲間を集めてオールドギルドの復興に務めていただいています」
「さすが遊佐さんね…助かるわ」
なるほど、私の欲しそうな情報ってこういうことね…
チャーを見つけた上に、既に作業を開始させてくれてるなんて…
流石、有能なオペレーター…
ゆりは上記の言葉で遊佐をほめたあと、一同を見渡し
「さて、そろそろ始めるわよ。いつも言ってるようにこの世界は何が起きてもおかしくない…各自順応性を高めるように」
「オペレーションか?」
「ええ…遊佐さんが言ったとおり、地下では既に私たちの基地を復活させてくれてるみたい。だから私たちは地上の基地を奪うわよ!」
やはりオペレーション決行のようだ。
日向の質問などかの当然と流し話を進めようとすると、長ドス使いの藤巻が疑問を浮かべる
「校長室のことか?普通に入ればいいじゃん か! 校長なんてまたどけてよぉ…」
まあ、この疑問は当然だろう。
元々校長室は戦線の本拠地だ。しかし、戦闘面に関しては一流の椎名は何かを察したのか名言を一つ。
「あさはかなり」
「確かにそう思うのが、ごもっともだわ…でも私は校長室から今までと違う何かを感じたのよ…」
「具体的な説明が欲しいのですが…」
今度は具体的データを求める竹山が…
(本人は本名をクライストと言い張るがもはや誰も突っ込んですらくれない)
「具体的には言えないわ… でも警戒するに越したことはないの… 何か、繰り返してるような気がして…」
「繰り返す?」
「なんでもないわ…今武器を持ってる人は?」
「俺たちの中で武器持ちは野田と椎名っちだけだ… でもまあ、また校長を脅迫するくらいなら野田のハルバートで充分だろう」
「とりあえず場所がないのも困るし、校長室奪取作戦は今すぐ決行するわ…野田くん、椎名さんよろしく」
「はっ…ゆりっぺに俺の実力を見せてやる!」
「あさはかなり」
「高松くん、松下くん、竹山くん、遊佐さんはギルドに向かってそっちの手伝いをお願いね…何かあったら連絡して」
「「「「了解(です)」」」」
「じゃあ始めるわ!オペレーション・スタート!」
みんなそれぞれが細かな役割を言い渡され、作戦がスタートされる。
再びこの世界に戻されて初めてのオペレーション。
その名は…「校長室再奪取」!!