こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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スーパージルベルトワールド4-2

 夏は開放的な気分になるらしいのだが、冬生まれである佐藤弘光は地元が夏になるとうんざりするくらい暑くなることもあって何となく苦手なイメージがある。ジルベール・ジルベルトとしての俺は暑さに強いのでどうでもいいと言えばそこまでなのだが、考えてみると夏休みに旅行に出るという習慣がないので新鮮といえば新鮮である。

 

「結論としては基本的にはインドア派なんですね、俺」

 

「どう結論が出たのかは知らんが、アバンチュールを楽しもうではないか」

 

「それは構いませんが、それはさすがに年甲斐ないのではないでしょうか?」

 

 ワンピースに麦わら帽子と完全に避暑地に来たお嬢様の格好をしているノイ先生だが、実年齢が2X歳なので苦しい気がするのはなぜだろうか? 似たような格好をしている真ちゃんはイメージ的に問題ないんだけど、比較するとどうしても違和感が。

 

「だが、私がアダルティックな格好をすれば違和感があるのも事実だ。レイン君や真君に合わせた格好をしなければ浮くだろう?」

 

 それは残念ながら否定できないので、これ以上服装について言及するつもりはないのだが……逆にアダルティックというノイ先生の格好に興味があった。まあ、性的というより知的好奇心的な意味でだが。

 

「そもそも来たのはいいものの、アイスティー片手にだらけている君が信じられないのだが」

 

「俺的には優勝するところまでが目的であって、成果はまあ夏休み前半奔走したし、そろそろ行動基準をダメ人間に戻さないと」

 

 社会人になってからはともかく、学生時代の夏休みは基本的にだらけて生活していた中の人的には、夏休み前半がんばりすぎた気がするのでここらで手を抜かないと、冬までペース配分がうまくいかない気がするのだ。

 

「というわけで、今日はもう休みたいというか、まじめに動くのは明日からにしたいです」

 

「仕方ないな。ではベッドに俯せになりたまえ」

 

 手を引っ張られ、渋々ベッドに俯せになると、ノイ先生は馬乗りになって俺にまたがる。やっぱり見た目通り軽いなと思う。

 

「本職ではないが体の構造はわきまえているから、まあ悪化することはないだろう。うーん、なんだかんだ言ってきちんと鍛えているではないか」

 

「セクハラは禁止ですよ」

 

 とは言うものの、ノイ先生の体温の高めな手がサワサワと筋肉を触るのが心地よく、ウトウトし始める。そして、俺はつい夢の世界の住人になってしまった。

 

 

 side ノイ

 

 寝顔だけ見ると普通の子どもなんだがな、と寝てしまったジルベルト君を見て思う。

 

 全然警戒されていないということは信頼されていると思っていい。

 

「役得と思っていよう」

 

 彼は手負いの獣のように警戒心が強いから、慣らすまでえらい時間が掛かった。真君のように庇護欲を抱かせる相手には甘いのだが、それでも本能的な警戒は未だ解いていないと思う。レイン君に対しては……まあ彼女は思考はともかく私たちと違って立派に性的な対象なので気を使っているという所だろうか。その辺がどう考えても10代な気がしないのだが、私が彼の立場ならむさぼるな、きっと。

 

「さて、王子様も寝たところだし、私も自室で色々と準備をするか」

 

 静かに彼の部屋を出ると、見知った顔を見つけた。もちろん、ここで会う予定などみじんも無かったのだが。

 

「どうして君がいるんだ、シゼル?」

 

 門倉永二の部下で傭兵団『フェンリル』に所属するシゼル・ステインブレッシェル中尉。電子戦はもちろん、潜入なども無難にこなす若きエースといったところだろうか。ついでに言うと私のおもちゃでもあるが、最近遊んでいなかった。

 

「最近まで仕事が続いていたので、休暇を取ることになった。まあ、私はこんなリゾート地では落ち着かないのだが」

 

 嘘ではないが、真実を全て語っている訳ではないのだろう。彼女が原隊を離れて単独で休暇を取るという状況が怪しいし、そもそも格好に違和感が。

 

「まあ、シゼルが休暇と言い張るならそれでも私は構わないのだが、その格好で押し通すつもりか?」

 

 リゾート地のイメージとはマッチはしているものの、義体とはいえ、バランスの取れた肢体をアピールするような格好は男性の目に毒だ。

 

「いや、海外のリゾート地だとこのような格好が基本なのだが、国内ではまずかっただろうか?」

 

 考えてみれば南米ってそういう文化圏だったのを忘れていた。私なんかは基本的にここにいたから文化的背景はこっち側なのだが、シゼルの場合、助かってから各地を転々としていたのでアイデンティティが確立されておらず、良く言えば染まっていない、悪く言えば郷に入らないといったところだろうか。

 

「ふむ、では良かったら私とお茶でもしないかね? 誘った相手は眠りの園に行ってしまったのでな」

 

「初日から……そうだな、久しぶりに情報交換でもしようか」

 

sideout

 

 

「久しぶりによく寝た気がする」

 

 そういえば、ノイ先生にマッサージしてもらったわけだが、つい寝てしまったのを思い出す。時計を見ると最後に確認した時から2時間くらい経過していた。

 

 さて、体力も回復したし、どこかに行こうか。

 

 

 ラウンジにお茶をしに行く ●

 レインを探す

 現状をチャットに書き込む

 

 

 ラウンジに行くと、ノイ先生が見知らぬ女性と一緒に、甘ったるそうなケーキとコーヒーに囲まれて会話に花を咲かせていた。

 

「おや、ジルベルト君ではないか。こっちに来たまえ」

 

「では失礼して、初めましてジルベール・ジルベルトです。ノイ先生には世話をしたり、世話になったり、被害者だったりする間柄です。もしかしてシゼルさんでしょうか?」

 

 ノイ先生の友人に甘い物に目がない友人がいると聞いたことがあるので多分彼女なのだろう。本質的に彼女も友達が少ないし。

 

「シゼルだ。ここでは構わんが、私が甘い物に目がないことは秘密にしてもらえないだろうか? 職場でのイメージもあるので」

 

「そうですか? 見目麗しい女性が甘い物を食べて破顔する光景というのは、世の男性にとって貴重だと思いますよ。シゼルさんの普段とは違う姿に心奪われる同僚もいると思いますが」

 

「ジルベルト君、私の前でシゼルを口説いていると認識しても良いのかね?」

 

「いやだなあ。ノイ先生の友人で、尚且つ、美人に対しては最大限の礼儀を尽くすのは常識じゃないですか」

 

 きつそうな彼女のああいう姿はいわゆるギャップ萌なのだが、そこまで話を広げるつもりは毛頭無い。俺のいた時代だときっとバリバリのキャリアウーマンなシゼルさんは好みではないが、美人であることを否定する要素は皆無であるし、俺が彼女の職場に近づく可能性は多分無いだろうから、思ったことを口に出しても問題ないのである。

 

「そ、そうか……しかし、ジルベルト君だったか、君はノイのことをどう思っているんだ?」

 

「波長の合う友人ですね。別にロリコン嗜好はないので安心してください。いくら何でも欲情はしません」

 

「それなら……問題がない……いや問題があるか?」

 

 彼女の人間像を多少修正、やっぱりノイ先生の友人なので、変人枠に半分突っ込んでおこう。

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