こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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作者はそれ散る信者です


スーパージルベルトワールド4-3

 -21世紀のいつかのどこか-

 

 世の中のお子様が夏休みを謳歌している今日この頃。社会人である俺は帰宅してビール片手に週末は家でまったりとを過ごすと決めていたのだが、携帯がなり、画面にはバカその1の文字が浮かぶ。

 

「はい、こちらドクターイエロー、本日の営業は終了したのでおととい来やがってくださいませ」

 

 通話を切り、お手製のカツオの塩辛をつまみながらニュースを見ていると、またバカその1が。

 

「んで、何の用だ? 金を貸すのはいいが、きっちり取り立てるからな」

 

『ドクターイエローって何者だよ、佐藤、お前週末暇だろ? 暇だよな、暇に決まっている。だから、泊まりがけで海行こうぜ』

 

 どうやら、福引きでホテル宿泊券が当たったものの、彼女と別れて以来女に縁が無かったバカその1こと雪村史郎は、俺を誘うことを思いついたらしい。

 

「独り身の俺が言うのもなんだけど、同僚とか誘えよ。気になるやついないのか?」

 

『同僚って言ってもナースはみんな男持ちで、余計な噂が立ったら困るだろ』

 

 バカというのは性質であって、頭はいい雪村は顔だって普通だからお買い得なはずなのだが、どうも女にもてない。高校時代に俺も間に入って紹介した彼女もつきあい始めてから3年は続いたのだが、結局別れてしまった。

 

「はあ……まあ、ホテル代出してくれるならいいけどな」

 

『じゃあ、車はそっちの負担で頼むぞ』

 

「オーケー、どこに迎えに行けばいい? お前の家に行けばいいか」

 

『お前が来ると妹がうるさいから……「佐藤さんとお話してるの? 里菜にも変わってよ。もしもーし佐藤さんお久しぶりです。元気ですか」』

 

「あー里菜ちゃん、久しぶり。俺は元気だけど里菜ちゃんも元気そうで何よりだね」

 

 雪村里菜ちゃんは雪村の妹でお嬢様学校に通う見目麗しい少女なのだが、兄貴である雪村やの前では当然のこと、俺の前でも猫を被らないので元気娘といった第一印象は未だに堅持されている。

 

『女子校だから男の人に縁がないのが難点ですけど……それよりおにいと何話してたんですか? どこかにお出かけするとか』

 

「たまには友達でどこかに行きたいなって話だよ。そろそろバカに変わってくれないか」

 

『はーい、今度デートしましょうね、はい、おにい佐藤さん』

 

「お前、俺何かより里菜ちゃん連れて行ってやれよ。たまには妹にサービスしてやれ」

 

『バカかお前、何好きこのんで妹の面倒見なくちゃいけないんだよ。まあ、お前が里菜を連れて行くのならチケットを譲るが、手を出したら責任取らせるけど』

 

「里菜ちゃんがかわいいのは別として、少なくともお前を兄と呼ぶような人間関係はごめん被る」

 

 両親と姉弟ともに普通の会社勤めの佐藤家と父親は病院経営で自分も大学病院に勤務している雪村家とでは、釣り合うはずもないのだが、どうも俺は家族ぐるみで雪村家に気にいられている。特に里菜ちゃんは俺たちより7歳も下という事で自分も妹のように可愛がったし、向こうも兄みたいに慕ってくれている。

 

 ただ、最初に会ったときは小学生だったが、年を重ねるにつれて、どうも男として認識されているような気がして距離を置いているのだが、家柄とか考えると友達のお兄さんポジションキープが妥当なのだろう。

 

 

 

 -サイバーパンクを生きるいつかのどこか-

 

 

「まあ、結局里菜ちゃんは付いてきて一騒動あったんだけどな」

 

「はあ……それで里菜さんとは誰なんですか?」

 

 現実に戻るとビキニの上に水色のパレオを付けた桐島レインが居るのである。基本的に締まるところ締まっていて出るところは出ている彼女は、他の同行者(真ちゃんとノイ先生)に比べると非常に目立つ。

 

 ふと、悪友である雪村の妹である里菜ちゃんを思い出してみると、性格こそ違うものの、上流家庭の令嬢(年下)をあしらう方法を学習していたようだ。

 

「雪村里菜、とある物語の主人公の友人の妹。野郎だけで一泊二日の小旅行に行くはずが、着いてきてその後はどうだったかなと思い出そうとしているのだけど、中々思い出せないのがもどかしいというか」

 

「私も昔のドラマの1シーンを何となく覚えているのですが、その前後は曖昧ですから記憶なんてそんなものですよ」

 

 レインの態度が良くなったのを確認しながら、佐藤弘光の記録とはどれくらいの価値があるのかと思いを馳せる。極端な話、佐藤弘光として培ってきた経験には価値があるが、佐藤弘光の記憶には特に価値が無いと思っている。もうあの頃に戻れるわけでもないし、さっきのようにふとそういえばこんな事もあったなと思い返す程度だ。

 

 生まれた時代がバルドフォースの時代であるなら、必死にタイムスケジュールを追ったりもしたのだろうが、平和な昨今を考えれば本来は兵器であるシュミクラムも趣味の範囲内だし、別に囚われなければいいと思っていた。

 

「しかし、中流家庭の俺にしてみると長期休暇というのは中々肌に合わないな」

 

「私は小さい頃はニースとか行きましたよ。今思えば日本の海より青かったと思います。もっとも、ここ数年は遊びに何て行きませんでしたが」

 

「しかしあ年頃の娘に同年代の男が一緒であることをよく容認したなとは思うけど」

 

 何となくだが、基本箱入り娘の彼女を心配して護衛とか監視とかが人知れず入っているのではないだろうかと一応警戒したいのだが、軍人が手配するならその道のプロに決まっているのだから俺ごときが気付くはずもない。

 

「さて、俺はちょっと泳いでくるけど、レインはどうする?」

 

「ご一緒してもよろしいのですか?」

 

「本来なら俺が勇気を持って誘わなければならないんだからレインはもっと自信を持つように」

 

「では、行きましょう」

 

 レインに手を引かれてプールに向かう俺に対して怨嗟の視線が纏わり付くが、内半分が彼女連れなのだから男の業は深いと言わざるを得ない。

 

「どうしました?」

 

「何でもありませんよお嬢さん」

 

「そういえば久しぶりに聞きましたね、そのお嬢さんって呼び方」

 

「そりゃ、親しくなれば固有名詞を使うさ。ノイ先生だって、最初は『先生』って呼んでたんだから」

 

 意識せずに女性を呼び捨てにするというのは難しい。まあノイ先生はノイ先生だから別にいいが、ここまで馴染んでしまえばもう認めざるを得ない。

 

「レインも真ちゃんも俺たちの仲間なんだから」

 

「今は認められたことがうれしいですけど、次はもう一歩先ですね」

 

「よく分からないけどがんばれ」

 

「はい!」

 

 俺だってそれなりの時間生きているのだから、彼女が俺に抱いているのが何であるか分からない訳ではない。だけど、吊り橋効果が切れれば冷めてしまうような恋愛に何の意味があるのかという思いと、精神年齢的に真ちゃんほどでは無いにしろ、レインに手を出すのも犯罪だという俺個人の倫理的な問題もある。

 

 世界は色々難しいのである。

 

 

 

 おまけ

 

 ジゼルレポート

 1日目

 

 偶然を装ってノイに近づく、確か半年ぶりくらいなので、話を続けていると彼女の同行者であるジルベルト君と会話する機会に恵まれる。ノイと気が合うというからどれくらい思考がぶっ飛んでいるのかと思いきや、普通の青年だった。

 

 そして話を続ける内に彼もまた彼女の被害者なのだと思うと変な連帯感が生まれていることに気付く。

 

 2日目

 

 ターゲットと友人達が一緒にプールに向かうので私も合わせてプールに向かうのだが、ノイから派手なのは厳禁と言われてしまうので、大人しめなものを購入。経費で落ちるのか大佐に相談しなければならない。監視の途中、ジルベルト君が一瞬こっちを凝視したようだが、首を傾げ再びターゲットとの会話を続ける。何となく勘が鋭いとは事前の報告で受けていたのだが、本人にそっち方面の訓練を受けたという情報は無いので考えない方がいいと考えるべきだろう。

 

 しかし、ターゲットも男性の目を引くが、ジルベルト君ももう少し筋肉が付けば注目されるのではないかと愚考。だがノイに伝えると怪しげなナノで実践しそうなので黙っておくことにする。

 

 夕食時はノイに誘われて同じテーブルで過ごす。食事会の話を聞き、ジルベルト君曰く「天才でも基本をという基点から始まっている。まして凡人なら基本を殊更意識しなければならない」とのこと。我々軍人にとっても重要なことだと感心するが、彼が本当に17歳なのかという疑問が浮かび上がるが情報は白だ。強いて問題があるとすればノイが相手だと年が結構離れているという所だろうか。




当時の製作時系列でいうと、雪村兄妹は最後に登場したネームドキャラなのでこの後に影響が出ないキャラです。もし、当初からバカンス編が入るなら、後に登場する彼女の中の人は里菜ちゃんになっていたかもしれませんが、私あのキャラの中の人のキャラ好きなのと、攻略対象増やしたくないのであのキャラのままだったでしょう。

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  • DIVEX(バルドスカイ本編再構成2)
  • ジルベルト系よりニラ小説書けよ
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