こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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お風呂回という名の新キャラ登場回


スーパージルベルトワールド4-4

 『暇人の憂鬱』

 

 佐藤:ただでさえ怠惰に人生送っているのに欧州的な休暇の取り方はどうも……

 

 御大将:学生なんだからもうちょっとアバンチュールに過ごせばいいのに

 

 佐藤:男女比1対3の慰安旅行でアバンチュールというのもちょっとですね

 

 

 sinさんがログインしました

 

 

 sin:学生の身分でリゾート地とかいいですかねえ

 

 佐藤:sinさんも旅行中? 

 

 sin:ええ、絶賛リゾート地で遊んでいますけど、運と実力の賜物とはいえ贅沢覚えると良くないと思うんですよね。あと、姉からの通信が怖くて遮断中

 

 御大将:お姉さんに黙っていたとか? 

 

 sin:男の人と一緒何ですけど、思春期のお姉ちゃんからすると男女が一緒=間違いが起きるという式ができているのではと

 

 佐藤:おお、さすがは自称大人の女。でsinさんの付き合った人履歴は

 

 sin:女の過去は詮索しない物ですよ

 

 御大将:これが姉魂さんなら、姉さん以上に心を揺さぶる人ならいつでもOKとか言うんだけど

 

 佐藤:あれは一種の病気ですから、sinさんも適当なところで異性に対する好きを理解しないとダメな大人たちになるから

 御大将:それ僕も入っているのかな

 

 佐藤:むしろ、御大将は早く結婚して嫁と健やかに生きた方が幸せですよ。まだ引き返せますって

 

 sin:さっき来てなんですけどそろそろ出掛けるので失礼します

 

 佐藤:じゃあ俺もそろそろ、御大将も体調管理をしっかりと、では! 

 

 

 side 水無月真

 

 私の世界は狭い。サイバースペースにおいてどこまでも飛んでいける電子体とは打って変わって、リアルにおける人間関係は脆弱と言っていい。

 

 始まりは施設だった。私に親はいない。水無月という姓は研究所で後見人をしてくれた水無月博士の姓をもらっただけ。親身にはしてくれたが、どこか観察されているような雰囲気で育った。お姉ちゃんこと水無月空だけが私にとっての絆だが、私と違ってお姉ちゃんは社交的だ。というか鋭いようで鈍いというのだろうか。鈍いようで鋭い甲先輩と対照的で、もしカップルだったらステキだなと思う。もっとも甲先輩には既に千夏先輩がいる。千夏先輩はお姉ちゃん以上に大雑把だけど器が大きい。私の体質は別としてああいう性格だったら人生楽しかっただろう。

 

 電脳症の人間はいずれ死ぬ。死は人である限りは避けられない定めだが電脳症になって死亡したケースを見る限り、人として幸せな死に方をした人は誰もいない。死ぬのは怖い。だけど私の死を悲しむ人が居てくれるならそれは少数であって欲しい。だけど緩慢と死ぬのを待つのは嫌だ。だから生きた証が欲しいのだが、甲先輩のお母さんの話を聞く限りでは子どもにトラウマを与える可能性が大きいので、子どもを作るのは問題だ。生まれる命に責任が持てないし、万が一お姉ちゃんが育てる事になったら生活能力がマックスになるか、特殊な環境に適応したニュータイプになりかねない。

 

 10年後の私は何をしているのだろうか。勧めに従ってアーク社で働いて居るか、心変わりをして人を愛して子をなしているか。あるいは既に境界線を喪失して病院にいるのだろうか。

 

 思考の海に沈む私を現実に引き戻したのは外からコール。モニターで見ると赤毛の青年が立っていた。

 

「真ちゃん、そろそろ出掛けるよ」

 

「……はい」

 

 ジルベルトさんは私のことを妹のように扱う。レインさんに対してはある種の遠慮があるようだ。ジルベルトさんにとってはノイ先生は恩人で、レインさんにとってジルベルトさんは恩人なのだが、私たちはノイ先生を介して知り合ったに過ぎない。でもワシャワシャと髪をなで回すあの手はどこか気持ちがいい。男女として火が付くほどには熱くなく、怠惰に生きられるほど温くない暖炉の火。

 

「しかし、何もしないで生活できるというのはあまり精神衛生上良くないと思うんだよ」

 

「そですか?」

 

「一度高級なアイスクリームを食べるとラクトアイスが物足りなくなるからね。今日の夕方の花火を見終われば、苦学生再びって感じで。自分ができることは自分でした方が気が楽」

 

 それはわかる気がする。ジルベルトさんも男の人なのにとても家事が上手いし。反面、他人に触れられるのが好きではないと言うことだと思う。その辺は私も似たような物だと思う。どんなに親しい人でも触れられたくない所はあるのだ。

 

「しかし、いつになっても花火の美しさだけは変わらないな」

 

 この人欧米系のはずなのだが日本文化に馴染みすぎていてかつ違和感を覚えないのはなぜなのだろうか。

 

 

 side ジゼル

 

「うーん、自然体というかあの組み合わせは意外にしっくりくるな」

 

 結局、護衛対象と要注意人物との間に過度な接触は無かったとレポートを上げるべきなのだろうか。あの年代だと特殊な嗜好がない限りは護衛対象はとても魅力的に見えると思えるのだが。

 

「彼は一体何者なのだ?」

 

「シゼルが年下に興味を持つとは新しい発見だが、ジルベルト君は我々の常識で考えない方が無難な男だ」

 

 確かに、シュミクラム戦での戦闘データも見たが、トリッキーな動きをしている反面、陽動と迎撃などをプラン通りに進めていることから、思考型の人間であると予想できる。正直、あの年であれだけのことができるなら軍でも引く手あまただろう。

 

「彼は将来何になるんだろうな」

 

「傭兵としての評価は?」

 

「見た目ほど柔ではないし希望するなら紹介する」

 

「ジルベルト君は思考ゲームは得意だが実際のドンパチはどうかな。多才ではあるが、最先端名の技術者や軍人やるより真君と一緒に料理屋でもやる方が似合っていると思うぞ。ただ真君の場合は体がな」

 

 南米で造られたデザイナーズチャイルドであるということは大佐から聞いているが、彼女は事故で電脳症を患っているらしい。

 

「ジルベルト君が突拍子もないアイデアを持ってくる可能性は捨てきれないが、彼は天才ではないからな」

 

 そんな都合のいい話はフィクションくらいなものだ。残念だがそんなものに縋りたいと思う時期は既に終わっている。

 

「それで、仕事は無事に終わりそうなのかね」

 

「……明日で終了だ」

 

「そうか、レイン君も合流したようだし私もあの輪の中に入ってくるとしよう」

 

 護衛対象者が合流したのを確認したノイは、ごく自然にあの輪に入っていく。分かっていて何事も無かったようにしてくれた友人には感謝すべきなのだろうか。

 

 

 side 桐島レイン

 

「勇気を出していくべきでしょうか」

 

 明日には家に戻る。ネットで調べた『夏は男女の仲を進展させる』とか『男を惹き付ける行動100』などは残念ながら効果が無かったようです。こうなれば一発逆転を賭けて部屋に飛び込むかと思うのですが、踏ん切りが付きません。

 

「でも、春のあの頃を思えばかなりの前進です。クリスマスまでには何とか」

 

 淡雪が舞い降りるクリスマスの街並みを彼と過ごしたいなんて一年前は想像にもありませんでしたが、これはこれで楽しいと思う自分がいます。

 

「お風呂にでも入ってゆっくりしますか」

 

 既に日が変わる時分、露天風呂で月でも眺めながら頭の中を整理したい。決めた私は、バスタオルとタオル、その他一式を持って露天風呂の看板に入ります。

 

 みれば浴衣が入っているかごがあるので先客がいるようです。

 

 ドアを開けて入ると岩陰に隠れているようですが1人入っているのが分かります。

 

「んー♪ ふんふー♪」

 

sideout

 

 

「……どうしてこうなった」

 

 出発は午後なので夜遅くまで温泉に入っていたのだが、ドアを開けて入ってきたのはよく知っている人物だった。咄嗟に見えないように岩陰に隠れる。

 

「んー♪ ふんふー♪」

 

 鼻歌を歌う彼女に対してどう考えても俺は無力というか、前にもこんなことがあったような。そう、あれは里菜ちゃんが混浴と知らずに入ってきてそのあとに大騒ぎになった不幸な事故だった。

 

 湯けむりが多ければ逃げ出す事ができるが、どう考えてもレインの前を横切らなければならず、ダメージを受けずに向け出す手段が思い浮かばなかった。

 

「うーん、いいお湯。本当に来て良かったなあ」

 

 幸い向こうは気付いていないようだが、デザイナーズチャイルドの俺とて湯にのぼせない訳じゃないので、持って10分くらいか。

 

 5分経過……レインは全然出る気がないようで、顔は見えない物の惚けた声が漏れてくるのが分かる。そして、何だかんだいって若い今の体が恨めしい。

 

 8分経過……ようやくレインが出る。結構危なかったので助かったというべきだろうか。それにしても入っている間に男女が入れかわったのか謎である。

 

「でも女の着替えとか長いから脱衣所には戻れないしな」

 

 しばらく湯冷まししなければと待っていた。それから10分ほどたち、向こうのドアが開いたのを確認した俺はもう一度湯を被って体を温め直し、脱衣所に戻った。

 

「……今レイン君が出たところだが、どうして君が温泉から戻ってくるのかね」

 

「俺が先客です。チラッとしか見ないで出るまで待ってました。あと、女性なんだから前隠して下さい」

 

「ひんそーでちんちくりんな体だからあんまり気にしないのだが、今度家族風呂で一緒に入ってそういうプレイをしてもいいぞ」

 

「いいからタオルで巻けよ!」

 

「今ちょっとキュンと来た。今からお風呂でお姉さんといかがわしいプレイを」

 

 うん、ノイ先生の裸体に欲情しないのは普通だと心から思うのだ。

 

「結構です、お休みなさい先生」

 

「うむ、あの美術品のようなレイン君の裸体が脳裏を離れないかもしれないが怖いお姉さんが見張っているから余計なことをしないようにな」

 

 ああやっぱりなと思いつつ、今は早くここを離れたかった。

 

 そして当然のことながら次の日、俺は口止め料として少なくない出費を強いられたことだけは言っておかなければならないだろう。

 

 

 

 おまけ1 お姉ちゃんは心配性

 

 ようやく帰って来た如月寮。寮の前に立つお姉ちゃん。何かニコニコしているし、追求の手を逃れられるかもしれない。

「おかえりなさいまこちゃん。お姉ちゃん、突然のことで怒っちゃったけど、まこちゃんも考えてみればもう学生なんだしそこまでうるさく言う必要がないと気付いたの」

 

「おねえちゃ」

 

 やっぱりお姉ちゃんは私の自慢のお姉ちゃんだ。お土産を渡してたくさん楽しい話をしようと思ったのだけど、突然後ろから羽交い締めされる。

 

「まこちゃんはここに至る経緯を素直に話すか、私特性のおいしいプリンを食べながら話すか選択肢があると思うのよ。いや、何というかまこちゃんに男の人はまだ早いというか、姉を差し置いて何青春を謳歌しているのかとか」

 

「七色に光り輝く物質をプリンと呼んではいけません」という標語の元、封印されたプリンを妹に食べさせるとか人としてどうでしょうか。うう、というか本来ならお姉ちゃんは充実した青春を送っているような気がするのにどうしてこんなに残念な子になっているのでしょうか。

 

 まあ、別に言って困るようなところは何も無いし、最悪ノイ先生かジルベルトさんの家に逃げ込んでしまえばいい話ですし。きっと甲先輩と千夏先輩に充てられたんだろうなと思いつつ、コクコクと首を縦に振って寮内に連行されていきました。

 

 

 

 おまけ2 闇よりの干渉

 

 現代では珍しい手紙が届いたのは夏休み前の最後の日曜日。可愛らしいレターであるが、裏を見るとご丁寧に脅迫状と印が押してある辺り、作成者のダメ方向なセンスを感じることができる。

 

『暑さも峠を越しいよいよ秋、いかがお過ごしでしょうか。

 ニュービーズインパクトの際のジルベルトさんのご活躍を拝見して心から勇気を与えられ一筆したためました。

 これからもご活躍を期待しております。

 追伸 

 混浴の浴場から桐島さんが出てきたあとにあなたが出てきたことについて、武勇伝を聞かせてくれたらうれしいと思いますので、ぜひ生徒会長室まで足を運んで下さい。

 あなたの学園の生徒会長より』

 

「……最悪だ」

 

 俺に対して何か視線を感じていると思ったが……それは想定していなかったというか、金持ちなんだから普通に海外で過ごしてくれよとツッコミてえ。

 

 こうして新学期に対して一抹の不安を感じながら俺の8月は終わりを迎えようとしていた。




まこちゃん回+混浴イベント、そして次回に続く。

余談ですが、まこちゃんルートに入ると洋食屋さんENDです。
本編はご存知の通りノイ先生ルートです。

レインENDは…その内投稿するDIVEXで(なお本編のレインではない)

ジルベルトワールド本編終わったらどちらを読みたいですか

  • 番外編→えせ救世主物語(DSクロス)
  • DIVEX(バルドスカイ本編再構成2)
  • ジルベルト系よりニラ小説書けよ
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