こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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スーパージルベルトワールド2-2

 -チャット空間『暇人の憂鬱』-

 

 

 佐藤:というわけで、今度久しぶりに本気で料理をすることになった

 

 shin:何がというわけでなのかはわかりませんが、佐藤さんの料理ですか。私も食べてみたいかも

 

 佐藤:男の料理なんて大雑把というか趣味の領域で、現役で金額計算しながら毎日料理を作っているshinに勝てる気がしねえ

 

 shin:そんなことないですよ。でもこれからの季節はサンマがおいしいかも・・・うん、今日はサンマの蒲焼き丼にしよう

 

 佐藤:完全に主婦(夫)的発想だよそれ(苦笑

 

 火打ち石さんがログインしました

 

 

 火打ち石:今日は佐藤とshinだけか。

 

 佐藤:ちわ、火打ち石氏。久しぶりに見たけど元気だった? 

 

 shin:こんにちわ、お元気ですか? 

 

 火打ち石:うむ。少し長丁場だったが、無事に解決して、今は休暇がてら温泉宿からアクセスしている。

 

 佐藤:温泉! ああ、俺考えてみたら温泉行ったことないや。

 

 shin:私も無いですね。今度オフ会で行ってみましょうか。

 

 佐藤:いいねえ、仕事人間の御大将もたまには羽を伸ばした方がいい。

 

 

 御大将さんがログインしました

 

 御大将:失礼な私だって仕事ばかりしているわけではないよ

 

 佐藤:じゃあ、先週の休日は何をしてたんだよ

 

 御大将:久しぶりに面白い講演があるから聞きにいった。専門とは少しかけ離れるがとても興味深くてね

 

 shin:・・・・・・

 

 佐藤:・・・いや、御大将それって

 

 火打ち石:俺たちが言いたいのはもう少し、学問から離れろということだ

 

 御大将:君達、いくら私が学者だからって全てを学問でまとめるのはねえ

 

 佐藤:すまん、御大将は学問オタクだったな。俺たちの認識が足りなかったわ

 

 shin:そうですね。あっ、そろそろセールの時間なので、そろそろ出かけますから落ちますね

 

 佐藤:おつー

 

 御大将:では、また今度

 

 shin:また会いましょう

 

 

 shin:さんがログアウトしました

 

 

 佐藤:んじゃ、俺もそろそろ落ちますわ。人と会う約束があるんで

 

 火打ち石:デートか

 

 御大将:へえ、佐藤君も隅に置けないなあ

 

 佐藤:違いますってば。まあ、人生相談って若い内は大切ですよって話

 

 御大将:ははは、君だって私より年下だろ

 

 佐藤:中身は40代のおっさんかもしれませんよ? 

 

 火打ち石:そうだな、お前の言葉には俺たちより年輪の重みがある

 

 佐藤:そんなもんですかねぇ……では、失礼

 

 

 佐藤さんがログアウトしました

 

 

 

 

「しかし、作った自分が言うのも何だが、この文明が発達した世の中で、文字オンリーのチャットとかねえ」

 

 どれだけ離れていてもイーサー(中継ポイント)を経由して電子体に会える現代社会において、チャットサイト「暇人の憂鬱」は電子の海の片隅に存在している。

 

 シンプルイズベストとでも言うのだろうか、多分同年代でメル友でもあるshinさんはもちろん、仕事人間の御大将や、不思議系というか神秘的存在である火打ち石氏、今日はいなかったが、姉魂(シスコン)さんなど変な常連が集まっている。

 

「うん、今度ノイ先生も誘ってあげよう」

 

 きっとよく馴染むはずだ。あの人も紛う事なき変人だし。

 

「お待たせしました。ジルベルトさん」

 

 急ぎ足で駆け寄ってくるお嬢さんもとい、桐島レイン嬢。

 

「別に待ってはいないよ。しかし、買い物といってもそんなに面白いものでは無いんだけども」

 

「そうですか? それで今日はどこに行くんです?」

 

 そう、買い物に行く話をしたらぜひ付いていきたいという話になったのだ。本当に面白くないんだが、一応女性の視点から見てもらうのもいいだろう。今日は若草色のツィードコートを中心に決めているんだけど、行く場所が行く場所だし。

 

「……ここですか?」

 

 レインボーストアというネーミングの欠片もないスーパーマーケットだが、適度な値段で品質もまあまあと、俺は結構重宝している。

 

「今度、食事を作ることになったんだけど、女性的にどんなのがいいのかアドバイスが欲しくてね」

 

「……女性の方ですか?」

 

「そうだけど。でも、女性って言っても好みの差あるし、あの人基本的に何でも食べるから問題ないんだけどさ。レインは意外と好き嫌いが結構ありそうだよな」

 

「そ、そんなことはないですよ」

 

「そうか。一応ヘルシー志向ということで水餃子は決まりとして、豚とキクラゲの中華炒めに、肉末粉絲もいいなあ」

 

「ろーもうふぇんすー?」

 

「日本的に言うと麻婆春雨。おかずというか酒のつまみにもいい」

 

 デザートに杏仁豆腐は外せないとして、もう一品くらい欲しいが。

 

「中華得意なんですか?」

 

「いや、趣味の範疇。中華って手間かかるけど、手順と火力さえ間違えなければ問題なくできるよ。俺は餃子だったら皮から作る派だけど」

 

 以前は市販のをメインに使っていたのだが、この時代に来てからは自作している。

 

「ん?」

 

「どうかしたのですか?」

 

 エビか白身を求めて鮮魚コーナーに向かうと、真剣なまなざしで獲物を物色しているかわいい生き物を見つけた。

 

「知り合いを見つけたんでちょっと挨拶してくる」

 

 

 side 水無月真

 

 やっぱり今日はサンマがおいしそうだけど、こっちのイカにも浮気したい気分だ。

 

 予算的に買えなくも無いけど、そうなると副菜に問題が。

 

「こんにちは、真ちゃん」

 

 声を掛けられると、つい身構えてしまうのは悪いくせだ。世界は悪意ばかりじゃないけど、怖いものは怖い。おそるおそる後ろを振り向くと、ついこの間知り合った赤い髪の男性がいた。

 

「あ」

 

 確かジルベルトさんだ。

 

「この間はどうも。へえ、真ちゃん料理をするんだ?」

 

 私は首をコクコクと振る。

 

「サンマもいいよね。今日の夕飯はサンマの竜田揚げにしようかな」

 

 うっ、そう言われると竜田揚げもいいかもしれない。私の中では蒲焼きにしようと思ったけどちょっと心が揺らぐ。

 

「あう」

 

「イカをオイスターソースで甘辛く炒めるのもいいなあ」

 

 この人はどうして私を迷わせるのだろうか。私は今日サンマの蒲焼きを作ろうと決意したはずなのに。

 

「ジルベルトさんのお知り合いですか?」

 

「うん。知り合いの先生の患者さんで、俺の師匠的存在」

 

「はあ」

 

 師匠さんか。確かに現段階では私の方は腕が上だけど、その内抜かされるかもしれない。素人のはずなのに、切り返しとかがとにかく早いのだ。思考から行動へのタイムラグが無いというのか、それが才能と言えばそうなのかもしれないけど。

 

 それにしても一緒にいる女の人、美人さんだな。もしかして彼女さんなのかな? 

 

 すごくプロポーションがいいし、何といっても亜季先輩と同じくらい大きい。

 

「そうだ、今週末先生を呼んで料理を作ることになったんだけど、真ちゃんもよかったらどうかな?」

 

「え」

 

 胸について考えていると突然のジルベルトさんからの提案につい戸惑ってしまう。どうしよう、この間知り合ったばかりの人の家に行っても大丈夫かな。でも、ノイ先生と一年くらい前からの知り合いだって言うし、不思議と悪い感じはしない。

 

「返事は後でもいいよ。ノイ先生経由でいいから」

 

 私はとりあえず頷いた。この時点で私の心は一緒に行く方向で定まっていたのだが、何か彼女さん(?)の機嫌が心なしか悪いような気がする。そう、何というか、最近いい感じの甲先輩と千夏先輩に対するお姉ちゃんのジェラシーみたいな。

 

 菜ノ葉ちゃんがこの頃、「私、幼なじみなのに……料理だってできるのに……脱いだらすごいのに」とか呟いているのは怖いけど最後のは諦めた方がいいと思う。

 

 どう考えても私(事実は事実として認める)<菜ノ葉ちゃん<越えられない壁<お姉ちゃん<多分千夏先輩<間違いなく亜季先輩というヒエラルキー……。

 

 アレ? もしかして私、嫉妬されてる? つまり、あの人はジルベルトさんが好きだけど、ジルベルトさんは興味がないって関係なのかも。

 

 でも、ノイ先生の知り合いということは、変人だろうし。突然修羅場に巻き込まれるのは怖そうだし逃げることにしよう。

 

「じゃ、またです」

 

「うん、また」

 

 お呼ばれするなら、私も何か持って行こうかな。何となく私の中の料理人魂がうずいたのだった。彼はきっとできる人だ。

 

 

 

side桐島レイン

 

 

「ああ、どうしよう」

 

 スーパーで不機嫌になった後、逃げるように自宅に戻ってきてしまった。あの後一応話はしたのだが、頭が一杯になってしまって何を話したかよく覚えていない。

 

「何であんな態度取っちゃったんだろ」

 

 あんな小さな子に嫉妬する自分に自己嫌悪する。でも、自分以外の女性に彼の意識が向けられているのが嫌。

 

「先生か……ラ・ヴィータのマスターなら知ってるかな?」

 

 ジルベルトさんは、色んな場所に行くけど、基本的にあそこにいることが多い。なら、マスターに聞けばわかるかもしれない。

 

「これはジルベルトさんに悪い虫が付かないようにするための、そう、予防行為なんです」

 

 先生という立場を使ってそんないかがわしい行為をするなんてうら……じゃなくて許せません。私は意気揚々と立ち上がろうとしたが、身体が空腹を訴えたのでキッチンに向かった。

 

 帰りに買ってきたお弁当を食べながら思う。とりあえず、私も何か、そう何か一品くらいは得意料理がないと。先日試しに作ってみたオムレツは何とか食べられる味だった。よし、今度はお袋の味の定番である『肉じゃが』と『きんぴらごぼう』に挑戦してみよう。

 

 だが、今私がやることは。

 

「どうにかして、その週末の食事会に参加できないものでしょうか」

 

 週末まであと4日。

 

 その間にどうにかしないと。とりあえず明日ジルベルトさんに話を何となく振ってみよう。

 

 




如月寮は順調に恋愛が進んでいるようです。
そして、菜ノ葉さんが病みはじめているようです。
レインさんは独占欲強そうですよね。
その辺もかわいく思えると思う彼女の補正値がマジで怖い。

すれ違い系SSの定番チャットをやってみました。
火打ち石氏と御大将の2キャラが登場+姉魂の1キャラが登場予定です。
彼らの正体は何者なんでしょうね。

ジルベルトワールド本編終わったらどちらを読みたいですか

  • 番外編→えせ救世主物語(DSクロス)
  • DIVEX(バルドスカイ本編再構成2)
  • ジルベルト系よりニラ小説書けよ
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