こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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投稿再開します。

メタ回です。


鏡面世界のヴェリテ2

 ??? 

 

 電子の海に佇む魔王は夢を見る。

 

 幸せな夢を、悲しい夢を、愛しい人の夢を。

 

 すでに彼は世界を掌握することができた。

 

 ただ何でもできることは、何もできないに等しい。

 

 目が覚めた時に一人であることを思い出し、牢獄から出たいと希う。

 

 人であることを捨てたことに後悔はないが、ずっとこのままというのは遠慮したいのが人の性である。

 

鏡面世界のヴェリテ2

 

 

 ジルベール・ジルベルトの中の人こと俺はどうやら世界の危機に立ち向かわなければならないらしい。主に自分の平穏の為に。

 

 第一回対策会議として俺は我が校の学生会副会長である六条クリス先輩と一緒に素敵なカフェタイムを興じていた。中の人はともかく彼女は十数年お嬢様をやってきたので所作がとてもきれいなのだ。

 

「対抗手段として色々あるけど、大きく分けて上策・中策・下策があるわ」

 

 六条先輩は指を三つ折る。

 

「なるべくあなたが分かる単語で話すけど、疑問が出たらその都度説明しますが、まず下策から。キャリアーである久利原直樹の暗殺です。私の親、といっても義理だけど、方々に顔が効くから、現実と仮想の両面から彼の行方を追っています。短期的に考えれば彼の暗殺が一番手っ取り早いですが、問題があります。彼の持つ情報が彼だけではないパターンで、彼が死ぬと私が持っている前世の記憶が意味のない、つまり来年の春ごろに本当の意味で制御されないアセンブラが予想外のポイントで発生する可能性があります。そうなるとアウトです」

 

「何故そう思うのですか」

 

「彼、後天的な二重人格なの。で二重人格の元ネタがドミニオン教団というサイバーカルト集団で、本作の主人公の父親とその周辺が壊滅させたけど、末端すべて滅ぼすのは不可能だから、彼が匿われていたとしたらそういうコミュニティね。その集団と知識共有してたらしらみつぶしになるから辛いのよ」

 

 終末思想信者は特に問題がない―よくも悪くもただのテロリストである―が、問題は科学の発展に犠牲はつきものだと考える科学者で、その対処が面倒なのだ。

 

「中策はバルドルを吹き飛ばします」

 

「バルドルってバルドバレットのバルドルマシン?」

 

「そう、私はパラレルワールド仮説を取ってるけど、バルドルとAIの優位性の問題で、バルドル側が優位になるとバルドバレットに、AI群が優位になると、今私たちが暮らしている世界に派生すると思うの。まあそれは置いておいて、バルドルは今はただの超絶性能のスパコンとして社会に組み込まれているわ。でその一つに今作のラスボスがインストールされています。これが諸悪の根源なので、これを停止できればまあ、何とかなるでしょう」

 

「……なるんですか?」

 

「スタンドアローンだから被害はないというか、詳しいことは私もわからないけど、コネクター適性が高い人だけが接触できるだけで、相性が良くない人にとっては本当にただのスパコンなのよ。久利原は疑似コネクターとなったんだけどね。久利原の野心と、別人格というか浸食された仮想人格の目的は全然違うから、その動きを見せればこっちとしては対処しやすいというわけ。政府巻き込むから後処理が面倒なんだけどね。この辺一帯で数十万の人がいるわけだからその命と引き換えにはできないでしょ」

 

 ここまでは至極真っ当な案というか俺の脳でも理解できたのだが、上策が問題であった。

 

「特異点を作り出して、アセンブラの制御式を入手します」

 

 六条先輩は一瞬何を言い出したのであろうか。

 

「あの先輩、ゲームにおける無を取得とかではないんですよね」

 

「似たような感じではあるのだけど、私たちはこの世界の過去の出来事は情報として知ってるわよね。固定された過去の上に現在があるのは変えようのない事実だけど、未来は固定されていない。本来出会うはずがなかった私とあなたが未来についてあーだこーだ言っている時点でバルドスカイの本来のルートとは違うわけだけど、その変化は些細なもので、世界の収束あるいは歴史の修正力には勝てないわ。私の推測に過ぎないけどアセンブラ実験は行われる。ただどのタイミングで行われるか成功するか失敗するかが不明なのよ。久利原直樹の暗殺が下策と言ったのも実際はこれなのよね。少なくとも門倉甲が星修学園在学中のタイミングなのは間違いない。ただそのタイミングと結果が不明なので余計なことはしたくない」

 

 頭がこんがらがってきたので整理しよう。

 

 六条先輩的には久利原直樹の有無はそれほど重要ではなく、アセンブラの研究が漏れた方が重要である。つまりどこかでアセンブラの実験は行われる。ただし、1年後のクリスマスにそれを実行するとほぼ失敗するので、アセンブラの実験者を変えるか実行タイミングを変える必要がある。

 

「目指すべきところは理解しましたが、そこから特異点を作り出してアセンブラの制御式を入手するという結論に至るのですか」

 

「アセンブラの暴走するなら、完全な制御式で暴走を停止させるというのは分かるわよね。バルドスカイのEDの中にはアセンブラの制御に成功しているパターンがそれなりになるのでその知識を手に入れればいいのよ。でそれが可能なのが水無月真を起点とした特異点の呼び出しとなるわけ」

 

「誰ですか? その水無月真って」

 

「原作ヒロインね。可哀想な生い立ちの少女よ。まあバルドシリーズで可哀想じゃない生い立ちのヒロインなんて一握りだからそこに関してはあまり気にしなくてもいいわ。私だって若い頃にドミニオン教団に両親殺されて命からがら六条の家に引き取ってもらった過去があるし」

 

「……随分とあっけらかんに言いますね」

 

「物心ついたころには養女してたからね。義両親は過去のトラウマで忘れたという認識なんだけど、真実は白鳥さんという人格が六条クリスと融合した経緯で欠落した部分だから何とも言えないのよね。だから今生の両親は六条のパパとママでいいのよ。年の離れた義理の兄も姉もいい人たちだし、甥っ子もかわいい。だから私はあの人たちの普通を守りたいわけ。そんなときにあなたを見つけた。運命を変えるタイミングだと思った。多分普通にしていたら、あなたは何となく生き残れたのだけど、済まないわね。何ならこの体好きにしてもいいわよ」

 

 整った容姿に、服の上から見ても分かる均整の取れた体。一瞬いかがわしい想像をしたが、理性がぶん殴ってきたので首を横に二度振る。

 

「あら残念。私はジルベルトも中のあなたも気に入っているから。気が変わったら言ってちょうだい。でも残念ね。チート的な能力があるならバルドルにハッキングして、情報を引き出すということができたのだけど、残念ながら私もあなたもちょっと不思議な生い立ちのスペック高い学生でしかない。そもそもそんなことできるバグがいるなら私たちが頭抱える必要ないもの」

 

「そうですよね。原作知識があったからといって、肉体はこの世界のものなのだからできることとできないことがありますよね」

 

 先ほどのちょっと気まずい雰囲気が霧散して、再びコーヒーを飲む。

 

「でその水無月真という少女に対して俺たちは何をすればいいんですか」

 

「いや提案しておいてなんだけど、出来ることがないのよね。彼女わかりやすく言えば水坂憐の下位互換なのよ。セキュリティはザルにできるし、電脳適性高いけど、それだけ。ただ別の特性があって、自分の持っているデータを同期する能力があるの。よって特異点さえ形成できれば、未来の水無月真からデータを引っ張ってこれるわけ。だから私たちは水無月真にアプローチするというより、特異点の生成方法の模索がメインね」

 

「それは好感度の積み重ねで何とかなるものなのでしょうか」

 

「私は美少女だしあなたもイケメンだけど、残念ながらここはゲームの世界だけど、生きている私たちにとっては現実なのよね。地道に解決策を模索しましょう」

 

 




六条、目の前目の前

六条先輩曰く奇策が成功すれば問題は解決するけど、そんなことは無理だから現実的に考えましょうというのが本作の方針である。

ようやっとヒロインの名前が出てきたが、実質白鳥回である。

この思考方針で色々やってきたけど、無理っぽくてもうダメだおしまいだからのアセンブラ成功しました。久利原博士すごいムーブで頭が混乱してしまったのが本編の六条クリス(白鳥)である。

次回メインヒロインが出ます。

新規追加エピソード(ジルベルトワールド関連)

  • 白鳥さんから見た本編
  • 蛇足の蛇足(結婚式)
  • 蛇足の蛇足(失恋慰め回)
  • 蛇足(水面下の争奪戦)
  • ところで真ルートは?
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