こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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原題 クリスアフター(笑)

タイトルは内容の羅列をするといいと聞きまして


afterstory2 Q.日常が容易に崩壊するエロゲの登場キャラになった時の心境を答えなさい

「以前約束していたデートの約束をそろそろ履行してもいいじゃないかしら」

 

 元鳳翔学園生徒会長にして、進学がとっくに決まっていた六条クリス先輩に誘われたのは1月も半ばを過ぎた頃のことだ。

 

 ジルベール・ジルベルトの外の人こと佐藤弘光は、彼女のキャラが生前の姉に似ていてどうも苦手である。

 

 もちろん、現世における彼女に他意はないのだが、2、3ヶ月に一回のペースで俺を呼び出しては、どうでもよいことをああだこうだと話し合う機会が訪れており、世間体を考えるとノイ先生と違って何かと気を使うので疲れるのだ。

 

「てっきり忘れているものだと思いました」

 

「あら、てっきりクリスマスに誘って頂けると思ってそれなりに下着も買いそろえていたのにジルベルト君は女性に囲まれていて一人寂しく枕を濡らしていたのよ」

 

「確か六条家主催のパーティに参加してましたよねあなた」

 

 彼女の家である六条家は俗に言ういいとこの家で、代々軍人の家系で将官(例の件で昇進が確定した)の娘であるレインの家とは財政基盤が違う。

 

 ちなみに俺の知り合いで一番金持ちかつ権力があるのは橘財閥の分家筋にあたる橘聖良の橘家で、当主である彼女と実質的な後継者である西野亜季嬢が一番の金持ちだろう。そもそも彼女は自信にその気があれば自力で稼げるタイプである。

 

 もっとも、彼女たちがパーティーに出る必要があるかというと、必ずしも出席して愛想を振りまく必要は無いのだろうが。

 

「ジルベルト君のところにも招待状を送ったのですが」

 

「知り合いにアセンブラの研究者が居たんです。その成功を見届けてからパーティをチャット仲間プラス諸々とする約束だったので」

 

 正確には緊急の事態に備えて、俺は方面軍司令部に召集されていたのだが、別にそれを口にする必要はない。確かに届いてはいたのだが、お断りを入れたと思う。正確には俺ではなく、俺の意向を聞いた政府関係者の誰かがだが。

 

「それでデートと言いましても、六条先輩をお誘いするとなるとどこがいいんやら」

 

「オーソドックスな場所で構いませんよ。私だって女の子ですから」

 

「でしたら、それなりに考えますので、10時に駅前で」

 

「じゃあ楽しみにしているわ」

 

 どうして俺の周りの女性はまともなのが居ないのかと疑問に思いつつ、デートという言葉に思いを馳せる。

 

「はて、俺って生まれてこの方デートしたことあったっけ?」

 

 男女で出掛けるというのを考えるとノイ先生とかレインとかと出掛けたことはあるが、俺の認識的にはアレはデートじゃない。デートとはもう少し甘い何かがあるべきである。

 

「どうしたですかジルベルトさん?」

 

「デートの定義についてちょっと考えていたところ」

 

「は、はあ……その、どなたかとデートでもされるんですか?」

 

「うん、全部俺任せで六条先輩と。デートだからまじめにプランを考えないとな」

 

 その辺について意見を伺いたかったのだが、いつの間にかレインは姿を消していた。会話をしていたのだから彼女は居たはずなのだが急ぎの用事でもあったのだろうか。

 

 

スーパージルベルトワールド

afterstory2

Q.日常が容易に崩壊するエロゲの登場キャラになった時の心境を答えなさい

 

 

 

sideノイ

 

 

 ダッフルコートにスエードブーツを合わせた少女が駅前のモニュメントの前で待っているというのはとても絵になる。

 

 遠目で見るものも多く、中には勇気を出して声を掛ける男もいたが、約束していた長身の男性が近づいてくると立ち去った。

 

「客観的に見ると美男美女だなジルベルト君と、えっと何と言ったっけ」

 

「六条クリス先輩です、ノイ先生」

 

「ふむ、しかしレイン君の格好はいつもと違うようだが」

 

「はい、父が万が一の時のことを考えて動きやすい格好をした方がよいと」

 

 ベレー帽に機能性を重視したコートを羽織っている彼女は何だかんだ言って軍人の家系の出であることがよく分かる。

 

 もっとも、懐に入っているスタンガンをどういう状況で使うのか全く想定が付かないのだが。

 

 彼女の母親と比較してみると、彼女はどうも父親似のようだ。その行動力がプラスに働くなら良いのだが、マイナス方向に向かうと手が付けられない。

 

「まあ、その辺は彼女がどうにかしてくれるだろう」

 

「何か言いましたかノイさん」

 

「ああ、すまない。それで二人はどこに向かったんだ」

 

「どうやら、今話題の映画を見るようです。私たちも向かいましょう」

 

 確か余命幾ばくかの少女が仮想で出会った少年と永遠を生きるか、死ぬと分かっていても現実を生きるかを決める。

 

 そんなストーリーだったはずだ。

 

「陳腐だな」

 

「そうですか? 美しいじゃないですか」

 

 生と死はこんなにキレイなものでは無く、とてもおどろおどろしいもので、つい最近その手の話題に関わった身としては男女関係は適度に波乱がある程度で充分だと思いたい。

 

 恋に憧れる10代と結婚が見えてくる20代の感覚の違いと言えばそこまでなのだが、ジルベルト君ならともかく佐藤君の精神年齢だとレイン君は小娘になってしまう。もう彼、アクション映画とか、自然系の方が受けるのではないだろうか。

 

 映画が終わり、映画館から出ると私たちも尾行を開始する。

 

 ジルベルト君がセカンドだったら、とっくに見破られている範囲だが、お前のような普通がいるかと総ツッコミを受けたとしても端末性能としての彼は少々優れている程度だ。

 

「どうやらカフェテラスに行くようです。いつもジルベルトさんが行くようなお店ではありません」

 

 本格的な英国式のお茶が楽しめる店のようだ。

 

 ちなみに私たちはコンビニで買ってきたおにぎりを食べている。

 

 私は大して目立たないのだが、レイン君は目立つため同じカフェに入らなかった。

 

「私のイメージだとレイン君はコンビニのおにぎりというイメージは無かったのだがな」

 

 どちらかというと優雅にサンドイッチとかパニーニとか食べているのが合っているだろう。

 

「手軽でいいですよね、コンビニって」

 

 そういえば、彼女はつい最近まで本当に料理のスキルが壊滅的だったのを思い出す。

 

 空君のスキルは致命的だが、改善の兆しがある彼女は、だんだんとレパートリーも増えている。

 

 というか、桐島父が割と喜んでいた、そして彼女はようやくこのレベルかと多少嘆いていた。男と女の認識の隔たりは埋めるのが難しいな。

 

「そろそろ、また食事会を開催しようか。今度は何が良いだろうか」

 

「ノイ先生は見た目とは違って健啖家ですよね」

 

「私は食いしん坊キャラではないぞ! そこ何年上を生暖かい瞳で見ているんだ」

 

 私だって普段は普通に作れるが、ジルベルト君と真君がおいしい物を作るから任せているだけだという主張は彼女に受け入れられる事は無かった。

 

sideout

 

「端から見て私たちどう思われているんでしょうね」

 

「まあ、普通のカップルじゃないですか。良い意味でも悪い意味でも釣り合いませんけどね」

 

 六条クリスという人物は口を開かせなければ熟練の職人が魂を込めて作ったアンティークドールのようにも見える。

 

 ジルベルトの姿は平均よりも優れているというのは自覚しているが、それでもこの令嬢のお相手となると力量不足だろう。

 

「そう? まあ、そういうことにしておきましょう。それにしても最初はちょっとボリュームあると思っていたけど意外と食べられるわね」

 

 生前はコーヒー党で男と言うこともあって俗に言う本格的なお茶会なんてものには興味が無かったのだが、意外と何でもできるマスターの薫陶の元、それなりに詳しくなっている。

 

 そう、英国人のティータイムは重たいということを。

 

 日本茶に和菓子とか、ケーキにコーヒー、紅茶なんてレベルじゃなく、スコーンに、ペストリー、サンドイッチの三段とかザラである。

 

 偏見とは分かっていても、だから奴らは粗食に耐えられるんだと心から思った。

 

「逆説的に言えば彼らの未知の食物も受け入れる文化的下地は自国の料理が微妙なところから来ているのかもしれないわね」

 

 あそこの国は調理方法がシンプルなだけで、素材さえ良ければ問題ないのだが、どうしても雑なのは仕方ないだろう。

 

「まあ日本式カレーが食べられるのは大英帝国のおかげですけどね」

 

 世界が再編されるに従い、国という概念は薄くはなっているが、かつて地名や歴史としての価値が薄れているわけではない。

 

「そうね、さてお腹も一杯になったし、ちょっと付き合って欲しいところがあるの。できればあそこの二人を撒いてね」

 

「気付いていたんですか?」

 

「ちょっとした昔の杵柄よ。でもジルベルト君が気付いていたとは思わなかったわ」

 

「映画館で気付きましたよ。今どこにいるかは分かりませんが、俺たちを見ることができる範囲内にはいるだろうと」

 

 俺自身はセカンドではないのだが、無意識にチャンネルを作ってしまうことがあり、それでノイ先生が居ることに気付いた。

 

「まあ、いいでしょう。一応今日は先輩のエスコートということですから」

 

 だから、一時的にリミッターを解除して、気付かれないように視覚を弄ったのを確認すると、俺たちはゆっくりとカフェテリアを後にするのだった。

 

sideノイ

 

「見失った!」

 

 どうやら向こうは私達に気付いていたようだ。

 

「探しますか?」

 

「無理だ。君の所の会長は分からないが、逃げに徹した彼には到底対応しきれない」

 

 一度やられたが、ジルベルト君はネットを介在して脳内チップを経由して脳にアクセスし、認識させないという齟齬を起こさせることができる。

 

 これも一種のマインドハックなのだが、現代社会に置いては致命的だ。

 

 特に常時ネットに繋がっているセカンドはネットに対して強い反面、搦め手に弱い。

 

「今回はここまでのようだ。気になるなら後で本人に聞けばいい」

 

「ですが!」

 

「女の嫉妬は少しならかわいいが、過ぎると男が引くぞ。それに、何か理由を付ければジルベルト君は付き合ってくれるだろう」

 

「そ、そうですね。ああ……いいかも」

 

 レイン君がヤンデレとかストーカーになったら私では止めようがない。あと最近真君の悪い影響が出ているのかちょっと妄想が入ることがある。彼女の脳内のジルベルト君はどんなのだろうかと。でも、中身はアレだからなあ。

 

 最近の10代の少女達を見ていると、生い立ちにめを瞑ると案外自分が常識人であることに気付くのだった。




クリス先輩は当時の私の中では瀟洒で美人でおっぱいも大きいパーペキな生徒会長だったんですけどね……。人の夢と書いて儚い

新規追加エピソード(ジルベルトワールド関連)

  • 白鳥さんから見た本編
  • 蛇足の蛇足(結婚式)
  • 蛇足の蛇足(失恋慰め回)
  • 蛇足(水面下の争奪戦)
  • ところで真ルートは?
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