こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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えせ救世主物語1 ジルベルト「サイバー出身の人間はファンタジーな世界に適応できるのか」

 季節は春

 

 ジルベール・ジルベルトとして18年生き、無事に大学に進学した俺は、現在キャンパス生活を満喫している。

 

 1年目から講義より副業(コンサルティング)の方が多いのは気のせいだと思いたい。普通に進級して普通に卒業するというささやかな夢はまだ捨ててはいない。

 

「この大学ってアークの出資なんだから必要な単位だけ取っておけば、別にうるさくないわよ。だから私もここに進学したわけだし」

 

 そう宣うのは、大学3年生で俺が所属するゼミのゼミ長をしている六条クリス先輩である。鳳翔の一年上の先輩であり、紆余曲折を経て、親しい仲となった財閥系お嬢様である。

 

「そういえば、結果として西野さんとは別のゼミに所属しているのは何でなんです。いや俺的には都合がよかったんですけど」

 

 先輩と如月寮の西野亜希女史は大学1年次は同期だった。美人二人が一緒ということもあり、1年次はそれは注目を集めたらしいが、結局2年次になると、それぞれ別のゼミに所属するというか、実質的に自分たちが主催するゼミを立ち上げたのだ。

 

「亜希ちゃんは、たまに遊ぶぐらいの距離感ならいいのだけど、常に一緒だとずっと面倒見ることになって辛いから。今でも月1ぐらいは遊ぶわよ。でもあの子のアプローチってやっぱりネットで、私たちのアプローチってリアルを前提としたネットの有効活用だからゴールが違うのよね。あなただって門倉甲とずっと同じ空間にいたいわけではないでしょ」

 

 なるほど、確かに門倉甲はいい奴だし、たまに飯食うぐらいには友好度を稼いでいるが、じゃあ一緒に議論したいかというと微妙である。

 

 そんな訳で、星修学園の如月寮組は2年次に進級すると通称西野ゼミに所属し、俺とレインは通称六条ゼミに所属したわけだ。

 

「それはいいけど、あの子どうするの? 1年後とか考えているかもしれないけど、例の如く大学の1年のサイクルは長いようで短いわよ」

 

 2年次にゼミを選択しなければならないのだが、どっちのゼミからも誘われているというか、うちは積極的に誘っていないのだけど、彼女はこっちのゼミに所属する気満々で、彼女の姉は自分の方に来なさいと。

 

「気持ちは分かるのだけど、こればかりはもう」

 

 自分の問題なら最終的に決断するのだけど、こればかりはアドバイスもできないし。

 

「まあ、先輩が知っている未来だったらそんなことで悩む余裕なんて全く無かったのでしょうね」

 

「この辺は全部吹き飛んで、グングニール発射の影響による気象異常。鳳翔も星修も無くなったから学歴ってどうなってたんでしょうね。まあ、蔵浜周辺の人たちはほぼ即死だったと思うけど。ジルベール・ジルベルトは生き残ってたわよ」

 

 未来は無限の可能性があるとはいえ、ほぼ確定している道を違う時代の情報が入ったカーナビが適当に誘導して結果として最良の未来に行き着く可能性はどれだけあるのだろうか。

 

「もし観測者がいたのなら悶絶しているでしょうね」

 

 曰く、灰色のクリスマスから無数のフラグ管理をしている存在がいるらしい。絶対者とかいうわけではなく、敵対者と一進一退らしいけど。

 

「とにかく、そういえばクリスマスの日にデートしてたのは門倉甲と渚千夏のはずだから……そういえば誰かさんがフラグを潰しまくったから一人の女の子の不幸と人類の繁栄を天秤に掛けたということで諦めてもらいましょう」

 

 その誰かさんが俺であることは予想できるのだが、フラグを潰された女の子は分からない方が精神衛生上いいし、今更どうしようもないよねっていう前提で俺たちは話しているのだ。

 

 実際、俺は俺のベストを尽くしただけで、クリス先輩も多少の不満はあるものの、納得している。もしかしたら佐藤弘光や白鳥女史のようにこっちに来ている人物がいるのかもしれないが、俺たちが現在生きている未来の道のりは筋道が付いている。

 

「女同士が和気あいあいと楽しんでいる風景も乙よね」

 

 この性癖が鳳翔在学中に発覚しなかったことが一番の奇跡だと心から思っている。

 

「おや、こんなところに。誰かの落とし物かな」

 

 前を歩いていたノイ先生とレイン、真ちゃんが立ち止まり、ノイ先生が道脇に置いてあった本らしきものを手に取る。少し近づくにつれてその装丁が赤地に金の文字で書かれていたことに気付いた瞬間、俺の脳裏にデュエルセイヴァーという単語が浮かびアラート代わりにFatallyが流れはじめた。

 

 クリス先輩こと白鳥女史の方を見たところ、同じ想像をしていたようで慌てた俺はノイ先生たちにに向かって近寄りながら叫ぶ。

 

「その本を遠くに投げ飛ばしてください」

 

「何を言ってるのかねジルベルト君。落とし物なら交番に……」

 

来たれ

 

 書から召喚陣らしきものが展開され、時間の流れが心なしゆっくりとしているように思えた。

 

 全力で走る俺とクリス先輩。

 

 そして、本を中心に展開される陣が消え去る寸前、俺は転移酔いに似た何かを感じて意識を落とした。




えせ救世主物語始まります。

arcadia投稿版は嘘予告だったわけですが、こっちでは正規版なので結構弄ってます。

ジルベルトとか星修組が2年で真が新入生の春の物語。

この間に白鳥パッパとロボ作ったり、とうとうノイ印のナノが世界に受け入れられてしまったりして、金に困らない状態からスタートします。

ええ向こうの世界に行っている間の金とか意味ないんですけどね。

新規追加エピソード(ジルベルトワールド関連)

  • 白鳥さんから見た本編
  • 蛇足の蛇足(結婚式)
  • 蛇足の蛇足(失恋慰め回)
  • 蛇足(水面下の争奪戦)
  • ところで真ルートは?
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