こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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異世界の定義について、生前の俺は便宜的にチームバルドヘッドのゲーム体系を水坂憐役の声優の持つ固有結界ま○いづみ時空になぞらえてバルド時空と呼んだ。戯画のゲームはチームごとに作風が違うが、デュエルセイヴァーのアニバーサリーディスクを見る限りでは、戯画のゲームの世界は次元の壁に隔てられているものの、併存していると解釈したら良いらしい。

神(制作側)が意図しない限り次元の壁が壊れることはあり得ないのだが、ノイ先生と愉快な仲間たちは根元世界たるアヴァターに墜ちたのである。


えせ救世主物語2 クリス「ダウニー先生の永久封印刑のCGまだー」

 意識を取り戻した俺は、他のみんなが倒れている中、優先してクリス先輩を起こした。正直に言うと、デュエルセイヴァーは買って全クリまではやったがバルド系ほどやりこんでいない。白鳥友梨は妄想のためにかなり設定に凝っているのでかなりやりこんでいる。今はその知識が必要なのだ。

 

「クリス先輩起きて下さい」

 

 揺さぶること10秒。別にデザイナーズチャイルドだから寝起きがいい訳ではなく、俺みたいにリズムができていて起きやすいタイプもいればノイ先生のように10分くらい布団の中でごねるタイプもいる。クリス先輩は前者のようだ。

 

「気持ち悪い……夢で大好きな人が女の人とキャハハウフフしている姿を見るとは」

 

「現実に帰れ白鳥」

 

「現実……二次元の恋愛は自由。二次元なら男同士もOKというか推奨。とはいっても今やなんちゃって二次元の身としては」

 

 何度目かの再確認だけど本当にダメだこの女、腐ってやがる。ネットのジョークでは腐女史が進化すると貴腐人になるというが、こいつみたいなのを言うのだろうか。

 

 

 余談だが、白鳥曰く「至った人は森羅万象あるゆるカップリング(かのうせい)を作れるの。カップリングの錬金術なのよ」と意味不明なことを供述している。そして恐ろしいことに伝道者白鳥友梨は現代に布教しているやべーやつである。さすがにレインとか真ちゃんに布教しないだけの良識はあるが、水無月姉妹の姉の方がちょっと……否、今はそれどころではないと、思考の海から抜け出して現実を見る。

 

「それで予想通り、召喚の塔にいるわけね私たち」

 

 立ち上がって外を見れば、物理法則をちょっとだけ無視した高さからの眺め。

 

「まあ、俺は一通りやっただけなので覚えて無いからアドバイスよろしく」

 

「……というか、これ爆発した後じゃない。どうやって来たのよって話になるわね」

 

 クリス先輩の話を聞いてよく観察してみると片づけられているとはいえ、ところどころ破壊の爪痕があった。

 

「ベストなのは自力で元の世界に戻る。ベターなのは赤本でも白本でもいいから元の世界に戻してもらう。転送装置そのものは王宮の地下にあるから座標軸と彼女さえいれば問題ないけどそれは保険ね。少なくとも半ば脅される形で関わるのはごめん被るわ」

 

 世界の滅亡に一度直面して足掻いた彼女の意見は正論であるし、俺としても余計なことをせずに元の世界に戻りたいというのが第一希望だ。

 

「ところで、クリス先輩の方は出せそうですか?」

 

「必死に演算してるんだけど、馴染まないかな。ジルベルト君の方は?」

 

「ニードルガンくらいです。魔弾の方は無理ですね。多分馴染めば大丈夫だと思うのですが」

 

 根源世界であるアヴァターは何でもできる素地がある。ファンタジー系出身の人間ばかりじゃなく、機械文明が発達した社会も派生しているのであればシュミクラムは無理でも、武装は具現化が可能になると踏んでいた。つまり、アヴァターという世界を電脳世界と仮定して、電子チップがデータを変換している。例えるなら日本の製品を海外で使うためにコンバーターを使用しているというところだろう。

 

 召喚器が過去の英雄の魂を用いて作られたというのは知っているが、俺達が必要としているのはどうやって具現化しているのかなのだ。まあ結論からいえば、発生するというプロセスだと認識してしまえばいいのであるが。手元にはシュミクラムで使い慣れているニードルガンがある。射程こそ短いものの、発射速度を考えれば大抵の人間は殺せる。魔物はわからないが。

 

「私には理解できていないのだが、そろそろ説明してくれないかね」

 

 二人の会話に口を挟んだのは、最近にょきにょきと成長しているノイ先生だ。治療も3年経ち具体的に言うとそろそろやばい。真ちゃんがノイ先生の胸元を見て絶望する程度には。

 

「先生が本を捨てなかったからですよ。まあノイ先生は奇妙奇天烈摩訶不思議な状況に慣れっこだからいいですが、二人にはどう説明したものか」

 

「サイバーパンクからファンタジー世界に飛ばされてもね。いっそのことゲームという設定にしちゃう?」

 

「レインだけなら何とでも誤魔化せますけど、電脳症当時ほどではなくても敏感な真ちゃんに悟られないとか無理ですよ」

 

 電脳症を克服している真ちゃんは、何も考えずにセキュリティを突破できることはもうできないが、セキュリティを突破したという経験値そのものは残っている。つまり、ハッカーとしては未だに一流であり、そんな彼女を誤魔化すのはほぼ不可能といっていいだろう。さらに言うと、シュミクラムユーザーとしての腕は上がっているというのは最早チートというかバグキャラなのではないだろうか。格闘ゲームキャラを魔改造しちゃったみたいな。そう例えるなら全力全開真。

 

 もっともクリス先輩からするとお前が言うなの世界なのだが。

 

「えーと確かシアフィールド学園長が記憶を操作する魔法が使えたはずだから、完全に空白じゃなくて最終的にそういうゲームでテスターやっていたという結果にしましょう」

 

 人間の想像力は空白を埋めることができる、これもいわゆる錯覚という事になるのであろうが。

 

「ん……ジルベルトさん、ここどこですか?」

 

「頭がグルグルです」

 

 レインと真ちゃんが起きたので、状況を説明しようとしたら、体中から色気が溢れている女性が塔の下から駆け上ってきた。

 

「あらぁ、大河君達は2人だったけど、今度は団体さんねえ」

 

「失礼、俺たちも何となく理解はしているのですが、ここはどこなのでしょうか?」

 

「ここは根の世界と呼ばれるアヴァターよ。私はここで教師をしているダリア。それであなたたちは何者かしら?」

 

「どこにでもいる普通の学生と狂気のマッドサイエンティストの組み合わせです」

 

「どこにでもいるねえ」

 

「ジルベルト君、狂気とマッドは同じ意味なのだが……」

 

 クリス先輩とノイ先生の発言は無視するとして、ダリアさんの胸の大きさってバルド系で一番だよなと男として健全な思考が頭をよぎる。まあ、別に胸なんて子供に授乳する機能がメインであり、後はファッション上の問題である。強いていえば崩れない方が美人に見えるわけだが、それはそれで女性を物のように見ている感じで余り好きではない。

 

「とりあえず、説明できる方に詳しい説明をして欲しいのですが……」

 

「そうね、私が説明するより、学園長に話をしてもらった方がよいかもしれないわ。とりあえずようこそ救世主候補さん?」

 

 

 

「お初にお目に掛かります、ジルベール・ジルベルトと言います。まあぶっちゃけますと、元の世界に戻してもらえると助かるのですが」

 

 学園長室には、30代後半の女性と20代の男性教師、そして俺たちを案内した

 

「ジルベルト君といいましたね。残念ながら召喚陣と呼ばれる施設。あなたたちの居た塔のことですが、機能が壊れています。そもそも壊れた召喚陣からどうやってあなたたちが出てきたかも調査しなければなりません」

 

 それはもっともな話であるが、そもそもこの世界の特異性の前にはルールなんて皆無みたいなものなので話を進める。

 

「一つ、召喚士の力を借りる。二つ、空間移動するための術を覚える。三つ、違う転送施設を探す。あるいは俺たちが出てきたその召喚陣を直す。空間移動は次元断層を越えなければならないので現時点では却下。現実的なのは他の手段ですが、俺たちの世界のポイントが判明しないと難しい。しかし、あなたたちは敵対勢力との戦いで忙しくてその余裕がない」

 

「あなたたちの世界には次元を渡る術があるのですか?」

 

「自分の世界のルールに当てはめて考えただけよ。それにゲームだとありがちな設定でしょ。それで漂流者である私たちを救う余裕があるのか聞きたいのだけど。あなたたちが無理であるなら別の手段も考えなければならないし」

 

「手段ですか? 私としてはあなたたちに救世主になって欲しいのですが」

 

「安寧の為に味方に殺されるとか嫌ですよ。既にそれぞれの主が定まっている以上、これ以上のユニットは不要でしょう」

 

 空気が固まったような気がする。ふとクリス先輩を見るとやっちゃったわね的な顔をしていた。

 

「主とは何ですか?」

 

 ダリア先生が目を光らせている。いやあなたスパイだから知っているでしょ。

 

「……ここで話してもいいんですか?」

 

「……後日改めてお話したいと思います。今日は部屋を用意しますので皆さんそちらの方で」

 

「そうですね、俺としても皆さんとお話して、俺達にとって何がベストなのか考えたいと思いますし」

 

 目の前には、学園側、王国側、破滅側の人間が居る。究極的な話をしてしまえば、当麻未亜はおそらく救世主になれないので勝ってしまったら自殺するだろう。ダウニー・リードの吸収は有用な性質だが、器としては人間の枠を越えないので、力を手に入れても暴走させる。そしてロベリア・リードには最早資格がない。アヴァターは壊滅するかもしれないが、最終的に影響は無いと踏んでいた。

 

 神の定義は分からんが自業自得で世界が滅びる可能性はあっても、外敵の存在によって人類が滅びることは多分ない。ましてや人間に最終決定権を与えて行使できるほど人間は強くない。正直、神の意図って完全な世界を創ることじゃなくて適度に文明レベルを調整して完全な破滅を抑える為じゃないのかと。おそらく文明の発展度と破滅のモンスター、救世主の質と数でバランスを調整しているっぽい。

 

 むしろ、俺達というイレギュラーが居ることの方が問題であるので、戻れないなら、安全な場所で生活するという選択肢が重要である。知るパターンでは学園に居ることが一番安全なのだが、できるのではあれば王城の地下にあるという転送装置を使いたかった。多分、あれが本来、救世主を呼ぶための装置のはずだ。赤本か白本のどっちかの協力があればいい。

 

「反乱勢力を一ヶ所に纏めたところまでは良かったですけど、その後虐殺すべきでしたね。まあ千年近く前の話をしても仕方ありませんが」

 

「……ダウニー先生、彼らを客室にご案内して下さい」

 

「わかりました、こちらです」

 

 ダウニーさんのに案内されて、まず女性陣、真ちゃんとレイン、クリス先輩とノイ先生、そして俺一人で部屋に分けられた。これだけいい部屋なら当麻大河はこっちでも良かったんじゃね疑惑が浮上する。

 

「何かありましたら、入り口におります事務の女性に行ってください」

 

「ありがとうございます。ダウニー先生とお呼びしてもよろしいでしょうか。先生は何がご専門で?」

 

「魔法全般です。と言っても学園長には足元も及びませんが」

 

「彼女は純然たる魔法文明の出身者で元救世主です。あなたの吸収は優れた能力ですが、根本となる知識と経験の差がある以上遠くおよびませんと思いませんか、ダウニー・リード先生」

 

「……何者ですか?」

 

 以前から思っていたのだが、ジルベール・ジルベルトというのは挑発的な部分が強い。佐藤弘光の頃は普通の人だったと思うのだが、魂(ジルベール・ヘタレルト)の影響だろうか。

 

「物語に存在しないはずのバグですよ。今のところ、学園長ともお姫様ともあなたたちとも利害関係はないですけどね。まあ、アヴァターが壊滅しても多次元世界は崩壊しないので存分に殺し合ってくださいな」

 

「アヴァターは全ての世界に影響を与えます」

 

「うち、科学万能な世界なので地震程度は終わりますよ。それに俺達の時代の厄災はつい最近取り除いたので」

 

 世界を手玉に取るような輩の登場は多分俺の世代ではないだろう。そう簡単にリヴァイアサンやらノインツェーンレベルの厄災が来られても困る。

 

 アヴァターの影響というものは地震に例えられる。巨大な津波が発生した場合、近場は甚大な損害を被るが、遠くには影響が少ない。言うなれば、ミュリエル・アイスバーグやルビナス・フローリアスの出身世界はアヴァターとは離れており、リリィ・シアフィールドやロベリア・リードの世界は近いからもろに影響を受けたというところか。

 

「人が死んでも構わないのですか?」

 

「俺は一緒に来た仲間を無事におとぎ話の世界から現実に帰すという目標がある。意図的に殺したいわけではないけど、優先順位を怠るとかバカのすることですよ。しかし、あなたは復讐者なのにこのような質問をするのは(する事自体が)ナンセンスだと思いますよ」

 

 まあ、嫌いではないのだけど。

 

「そういえば、ずっと疑問に思ってたんですけど、ロベリアさんの召魂とルビナスさんのホムンクルスの技術があれば妹さん蘇らせることができるんですけど、どうしてしなかったんでしょうかね」

 

「か……可能なんですか?」

 

「情報の齟齬が発生しなければ多分。さらに言うと、傷の無い体もルビナスさんに頼めば簡単に作れた疑惑が。ああ、本人が彼女の肉体欲しかったというなら話は別ですけど」

 

 理論的に可能なのと実現できるのかは別問題で、主に金銭や資源、時間などの制限がある。人間の犠牲とか差し引いたらそっちの方がお得なんじゃないかなと思うのだ。

 

「別に親の因果を子に背負わせるのはあれですけど、復讐する貴族の家、マナとか枯渇させて奴隷に落としちゃえば解決ですね。というわけでその辺踏まえて白本に交渉しといて下さい」

 

 今更だけど、この体トラブルを引き起こしやすいのかねえ。




文明って最盛期を迎えるとやがて滅びるじゃないですか。つまり、最盛期辺りで壊滅されて、復興して、また壊滅させる。シムシティとかそんな感じ。別に遊びでやっているのでなくて1000年周期でやっている辺りに義務的な何かを感じる。時代によって救世主候補を増やしたり減らしたりするわけだけど、今期は5人でナナシとリコは除く。前期がルビナス、ロベリア、アルストロメリア、ミュリエル、ソニア。あれもしかして人数同じ? 

まあ相変わらず、佐藤さんの思考としてはワグナス戦でもう帰るを選択するようなものでした。そしてクリスさん、クリスさん。カップリングが恐いです。ムドウ総受けとか止めてください。

佐藤さんの主観ではヘタレルトなのに、あっちを先に書いているから、ちょっと矛盾してしまうのですが、佐藤さんは観測者じゃないから仕方がない。

絶対白鳥にあっちの世界を見せてはいけない。腐の者に餌を与えてはいけない(戒め

新規追加エピソード(ジルベルトワールド関連)

  • 白鳥さんから見た本編
  • 蛇足の蛇足(結婚式)
  • 蛇足の蛇足(失恋慰め回)
  • 蛇足(水面下の争奪戦)
  • ところで真ルートは?
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