こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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チート系でよくある、会社を作ってぼろ儲けして稼ごうという話
こんな簡単なことなのに何で気付かないんですか系なのか



企業戦士ジルベルト

 無事に鳳翔学園を卒業した俺は、兼ねてよりの希望である、洒落た喫茶店のマスターになるという夢のために進学し現在経営を学んでいる……と言えれば非常に良かったのだが、現実は非情である。

 

「先輩が所属するゼミに入るのは全然かまいません。来年には正式に所属したいと思いますが、何ですかこれは」

 

「……謎の天才科学者サトーと知己のある君と親交を得たいと考えている経済関係者からの招待状ね」

 

 謎の科学者サトーとは緘口令を敷かれた人型翻訳ソフト、ジルベール・ジルベルトの仮の名である。サトーは極東州というか日本ではよくある苗字であり、コードネームとして使いやすいという意味でそうなった。

 

 サトーは、アセンブラの第一人者である久利原直樹との共同研究者であり、電脳症の対策でも昨年画期的な論文を提出した。一説にはノインツェーンの後継者として目される人物であるが、その正体は謎であり、幾人かが彼のエージェントとして知られている。

 

 ジルベール・ジルベルトは極東におけるサトーの代理人の1人であり、メッセンジャーの役割を担っている。

 

 このようなカバーストーリーがあるわけだが、それ俺を介在する必要があったのかを、悪だくみをした連中に問うたところ。

 

「サトーというと、アジア人を想像するが、君のガワは欧州系だからな。だから都合が良いのだ。後2、3人サトーの代理人を掲げているが、彼らは君より年上なので、敵対勢力が狙うとしても彼らだ。まさか君が本人とは考えにくいだろう」

 

『そうね、佐藤さんの本質を知っているのはあそこの住人くらい。仮にあなたを拉致するとしても、物理接触によるマインドハックが可能だからまあ死ぬことはないでしょう』

 

 いやいや橘社長、できないことはないですが、それ法に触れませんか。

 

「残念ながら、君の優先度というか希少性は極東州では片手の指で数えるレベルなのだ。事前に申請しておけば大抵の悪事は調整の上で許容されるレベルと考えたまえ」

 

 大学に入る前に人生の諸先輩(ノインツェーン関係者)から心温まるメッセージを頂いた俺は、4年間のモラトリアムを無事に獲得することができたはずなのだが、速攻でクリス先輩に呼び出されて、来年のゼミ希望届の署名を求められたのである。

 

「残念ながらあなたに選択の余地は多少ありますが、雑音をなるべくシャットアウトするためには私のゼミに入った方が安全です」

 

「先輩のゼミですか。先輩が所属するゼミではなく」

 

「顧問の篠塚教授だけど、論文指導とかは勿論してくれるけど、彼女の本業は政府のエージェントなのよ。あなたの身の安全という意味では保証されているんだけど、特定の分野に肩入れされると色々と困るので、事前に私に白羽の矢が立ってあなたの箱を用意しておいたわけ。西野亜希と一緒にしておいた方がいいという意見もあって、去年の秋ごろまではそのつもりだったんだけど、私は現実分野へのフィードバック的な研究を進めたいのに対して、亜希はネット世界の拡充の研究を進めたいという感じで、仮に私達が一緒になると、外部との折衝が全部私に降りかかってくるので意味がないという結論に達したのが年を跨いだあたりね」

 

 ちなみに人工知能友愛会のメンバーは自分のゼミを持てるらしいので、西野亜希が所属するのは西野ゼミなのである。そもそも西野女史レベルになると、大学生活は本当の意味でモラトリアムでしかないのである。

 

「話を戻すけど、今回の件に当たって、私の養父には、関係者の同意を得てあなたの正体を伝えてあります。まあ直接的な利益に直結する立場ではないというのもあるのだけど、一度顔を合わせたいという感じね」

 

 つまり、軍を代表するのがレインの親父さん、研究側を代表するのが妹魂さんこと橘社長、商売分野を代表するのがクリス先輩の義父ということになるわけだ。それは良いのだが、一点疑問があった。

 

「そんな重要なこと、何で当事者が聞いていないのですか」

 

「いい、ジルベルト君。君は大抵のことは、自力で切り抜けられるわ。本気であなたと総力戦をするのであれば、水坂憐(リヴァイアサン)でもないと無理なのよ。スペック的には」

 

「いやいや、俺多分バチェラにも勝てませんよ」

 

「ハッキング技術に関しては神かがっていたとしても、一気にハッキングを成功されない限り、遡って無効化するのよあなた。詳しく説明すると面倒なんだけど、分割保存ができるっぽいのよね。で無意識に最適解を呼び寄せる。でそれに対抗するには、高情報量で負荷かけてそれをできなくするって話。だから少なくともネットに接続できる状態というか、相手が脳内チップを持っているなら物理接触でも、イザナミループ……その頃には佐藤君もう現世にいなかったわね。とにかく、エラー起こして色々と残念なことになるので気を付けてね。だから特殊な生産工程を経ている人間以外は、まあそういうことね」

 

 今明かされるスーパージルベルト(仮称)の脅威のメカニズム(ごつごうしゅぎ)

 

「つまり、俺ってノインツェーンを説得するまでにかなり試行回数繰り返したということですか」

 

「そう考えるのが妥当ね。もっとも、揺らぎに関しては私も専門外だから、詳しくはエージェントにでも聞けばよいのだけど、この世界エージェントが多分干渉できないので意味はないのよ。まあその件は、私とドクターノイと、ノイ経由のノインツェーンしか知らないから置いておくとして、アークは企業だけど、根が技術屋さんなので、政財界に顔を聞く養父が選ばれたわけ」

 

「そのクリス先輩の養父さんってあれですよね、卒業式の時に一度お会いした、ロマンスグレーの美丈夫」

 

「六条裕斗、六条家の総帥ポジ。ちなみに物心着いた時には亡くなっていたけど、私の母方の親戚ね。性格はそれ程癖がないわ。門倉のお父さんとか、レインのお父さんみたいに家族関係で問題ないし、実子が祐希義兄さんと、月菜(ルナ)義姉さん。二人とももう結婚していて、甥っ子から先日クリスおばさんと言われたから。一緒にお風呂入って遊んであげたわ。……大丈夫よ。児童虐待で捕まるなんてことはないから」

 

 本当に大丈夫なのか……俺は本当にクリス先輩(しらとり)を信じていいのか。

 

「大丈夫、ちょっと強気な男の子を閨ではメス逝きさせたい程度で、私性癖的には普通に同年代の異性好きだから」

 

 安心要素なんてねえよ! いや大丈夫だ。俺は別に強気系男子ではない。この女の射程圏外のはずだ。

 

「ごめん、話逸れたわ。この話はヤメヤメ。とにかくサトーの窓口の君の窓口を養父がやるので、事前打ち合わせと、ちょっと相談に乗って欲しいみたいなの」

 

「まあ、俺が対応できるレベルであるのであれば」

 

 この時、俺は下手に安請け合いしたことを後悔した。いや正確には俺の趣味に合っていたから、苦労ばかりではないが、お偉いさんからのちょっとした相談は、その後トンデモ展開になり得ることを忘れていたのだ。




よしR15タグが一応機能したぞ。

甥っ子君は次回登場しますが、その手遅れになってなければいいね。

というわけで次は悪だくみパートです

新規追加エピソード(ジルベルトワールド関連)

  • 白鳥さんから見た本編
  • 蛇足の蛇足(結婚式)
  • 蛇足の蛇足(失恋慰め回)
  • 蛇足(水面下の争奪戦)
  • ところで真ルートは?
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