こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

60 / 60
やっぱり相性って大事だから


企業戦士ジルベルト めぐり逢いSモデル

 

 日曜とは家族や恋人と過ごしながら、明日から始める仕事とか学業に備えて体を休めるべきだと、転生前は社会人だった俺は思っているのだが、何故かいい年したおっさんとロボットアニメを視聴している。というか、これ先週から同じ流れである。

 

 名目は「宇宙の船外活動を行うロボット研究会(仮称)」の活動の一環であるのであり、主催はサトーこと俺と六条氏(父)。機体運用のオブザーバーとしての門倉氏と仮に部隊運用となった場合のオブザーバーとして桐島氏。平均年齢がかなり高いというか。

 

「あのー桐島さん。誘っておいてなんですが、休日をこういうのに費やしていいのですか。ほら赤ん坊の世話とか」

 

「残念ながら不器用な男がいても役に立たないとエイダから言われていてな」

 

 居場所のない男の逃避先ではないんですけどここ、と思いつつ。本題に入る。

 

「人間が乗らないなら前提なら人型に拘る必要はありませんね」

 

「そうだね、人型だと作業的に良い面はあるが、体高が高いとその分デブリ被害などのリスクが高い。人型を意識しないということは、コックピットも不要になるのだからコストも当然下がる」

 

「いやちょっと待って欲しい。人型は人型で需要があるというか、人が動かすことは考慮した方がいい」

 

「軍とノウハウの共有はしますが、このプランは基本資源衛星からの資源採取が主体になると思います。だから人型を開発したければ軍が主体になっていただければ」

 

 商売人の白鳥氏と軍人の桐島氏の意見というか、見据えた先が異なるのは当然なのだが……。

 

「ジルベルトの坊主ちょっといいか」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 これまで沈黙を保っていた門倉氏から声が上る。

 

「将来的な運用の話はこの際置いておくし、人型がいいか、その辺をオミットしてより機能的にするかという意見も無視するとしてよ。機体を動かすのにどれくらいの処理能力が必要なんだ。遠隔操作ということは距離のラグが発生するわけだが、ネット上から接続するのか、リアルで専用端末からログインするのか。そもそも軍部がそれをしなかったのはコスト以前にそれなりの理由があるんじゃないのか」

 

「あっ」

 

 とりあえず現代技術でロボット作ろうみたいなノリで始めて小型ロボットで思い通りに動かしてみたまでは良かったのだが、根本的なことを忘れてた。

 

「その、ジルベルト君できるのか」

 

「遠隔操作ですよね。すみません、ちょっと時間をください……一応できますね。身近な例で例えると西野亜希3人分を使うだけのメリットがあるかですけど」

 

 ちなみに西野亜希3人分というのは、橘聖良0.7人分くらいである。

 

「ようやく八重のクローン云々から解放されたと思ったら今度は聖良さんのクローンが必要になるとか、壮大な罠じゃねえか」

 

 余談だが、門倉氏の奥さんである門倉八重さんは、凄腕だが純粋な処理能力でいうと橘社長の方が上だという。何だこの姉妹。

 

「ちなみに君がやるとしたらどうするんだ」

 

「1人でできますけど、ちょっと方式が違い過ぎて体系化できないですね」

 

「ちなみに体系というとどういう」

 

「アセンブラのコマンダーを用いてナノマシン群を直接コントロール下に置いて動かす。いわば今宇宙ステーションで実験しているやつの発展型なのですが」

 

 正確に言うと、ノインツェーン式といってもいいのだが、ここで言及する必要はないだろう。加えて言うのであれば、企業側や軍が求めているのは既存の技術の発展系であり、検証段階の技術でどうにかするというのは予算が降りにくい。

 

「正確にはもうちょっと非人道的な手段での解決法もあるのですが、俺ができると口にして、正式にOK出されるとこっちも困るというか」

 

 俺が口ごもるのを見て、門倉氏は何かを感じ取ったようで。

 

「もう一回ノインツェーンを作るってことか」

 

「脳の並列処理的なのは必要なくて、単独の脳と特化したチップを介してみたいなイメージですね。自分で口にしといてあれですが、生体CPUって効率がいいんですよ。貧困地域で素材入手して、加工して、宇宙に出荷。もちろんパーツの方が先にイカレルと思いますけど、宇宙空間の専用ベースで交換すればいいし」

 

「私は聞かなかったことにする。家業の側面もあるが、これでも人を守るために軍人を志望したのでね」

 

「私も孫を持つ身だ。企業家として搾取する側面はあっても守るべき矜持というものがある」

 

 ここでとりあえずこの話は終わり、次回への課題となったのだ。

 

 余談だが、この問題の解決は、結局俺が大学卒業するぐらいまでの課題かと考えられてきたが、大学でとある人物から意外な解決策を提示されたことで加速的に進むこととなる。

 

「アセンブラで脳のパーツを作ってそこに特製チップを付けて、コマンダーというかオペレーターが指示出せばいいんじゃないの」

 

 ああ居たわ。原作知識持ちチートが身近に。

 

「可能なんですか?」

 

「原作の水無月空が全身ナノマシンで甲と一緒に地上に降り立っていたから多分いけると思う。というかその辺は専門家に任せるけど、処理装置としてならそこまで問題がないんじゃないの」

 

「全部ナノマシンなんですか未来では」

 

「冷静に考えなさい。現状脳以外は義体の人だっているでしょ。脳だって、自己判定のチェックサムの問題さえ解決できればいけるのよ。今回は判定チェック必要ないのだからより簡単よ」

 

「クリス先輩、天才だったんですね」

 

「どちらかというと使えるものはうまく使うだけという貧乏性なのよね」

 

 黄昏る彼女を後目に、解決策さえ出れば実現に向けてアイデアが出てくるわけだ。

 

「ストップ! その辺は関係各位にやらせなさい。アイデアだけ提示して分散しないとまたあなたの元に大量の金が入ってきて扱いに困るでしょ。そもそも金の使い道のための起業なのに、金増やしてどうするのよ」

 

「おっしゃる通りです」

 

 よしこれから、こういう問題のさじ加減はクリス先輩に任せよう。

 

 こうして、プロジェクト・スカイは始まったわけである。何故スカイなのかというと。

 

「疑似脳のモデルをいくつか用意したのだけど、一番相性が良かったのが水無月空なのよね。カタログスペックだけ見ると真ちゃんの方がはるかに優秀なんだけど、ヒロイン補正が高いのか、こういう技術群との相性が高いのか」

 

 まあ最終的にはもう少し調整するらしいが、それは置いておこう。

 

「とにかく、マテリアル系と精密機械系の企業がこの研究を基に宇宙空間向けのマニピュレーター開発とか色々やるはずだから、とりあえず今年は乗り切ったわ」

 

「今年はって来年もあるんですか?」

 

「多分来年あたりは橘聖良から何か要望が出ると思うわ。彼女も一応企業人だから」

 

「達成しやすい課題だとうれしいですね」

 

 もっともことネットに関して彼女にできないのは例外的な何かか、時間を掛ければできるけど面倒な類だろうが。

 

「それが嫌なら、技術は持ってるけど金がない企業や個人を支援する側に周るしかないわね。幸い義父は篤志家の側面もあるから義父に扱えない変人を斡旋して貰えば何とか」

 

 フラグかな。いやフラグだろうな。

 

 斯くして、変人のソサエティである正式名称S&S開発機構、通称ロボット愛好会が発足される運びとなる第一歩だったのだが、逃がさん……お前だけはの精神で総務取締として面倒ごとを押し付けられる白鳥が一人居たそうな。




S&SはSATO&SHIRATORIの略です。

白鳥女史はちゃんと結婚できるよ20代で。
根がSだけど、構いたい系女子だから、ダメンズにさえ引っかからなければマザコン寄り男子に需要がある。

そこ、思春期の子供の性癖を歪ませるだけの魔女とか言わない(言ってない)

本編ルートは一旦終えて週末から真ルート始めます。
ちょっと本業が詰まってきて、息抜きに脳内まこちゃんと会話したいから。

新規追加エピソード(ジルベルトワールド関連)

  • 白鳥さんから見た本編
  • 蛇足の蛇足(結婚式)
  • 蛇足の蛇足(失恋慰め回)
  • 蛇足(水面下の争奪戦)
  • ところで真ルートは?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。