こんな分岐は嫌だ ~ BALDR SKY短編集~   作:水城悠理

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スーパージルベルトワールド3-1

 シュミクラム戦というのはアリーナと呼ばれる空間で行われる。当然非殺傷設定だが、それを除けば同レベル程度の人間同士のやりとりが楽しめるので、ユーザーだけではなく観客も結構いる人気の娯楽だった。

 

「まあ、古代のコロッセオしかり、近代のボクシングしかり、人間の闘争本能未だ衰えずということか」

 

 対戦相手のシュミクラムをいなしながら俺は一人呟く。

 

 現在1対1で対戦中。相手は格闘仕様だが、俺の構築した陣を突破するほどの堅さを持ち合わせたタイプというより素早さと高火力で押し込むタイプのようだから、相性的には有利だ。

 

 俺の基本戦術は待ちだった。

 

 機雷と地雷をばらまき、後ろから狙撃。陣を突破された場合は、投げナイフと電磁鞭を使って戦う。硬い相手には不利なのだが、ベーシックなタイプであれば問題ないだろう。

 

 爆発音と共に機体をボロボロにしながらも突破してきた対戦相手が銃を構えるが、それを回避しながら鞭を振るい止めをさす。ここはショック死でも起こさない限りは安全なので、その分俺も容赦するつもりが全く無かった。

 

 もっとも殺し合いになっても容赦する必要は全くないのだが。

 

『勝者 ジルベルト』

 

 アナウンスが上がると共に俺は電子体に移行し、一息つく。余り歓声が上がらないのは、俺のスタンスが基本的に静であり、面白みに欠けるからだろうと思うのだが、俺のポジションを考えるとダメージを負うようなら危ないので、このやり方が効率的なのだ。ここがエンターテイメントの場であっても無茶して観客を喜ばせる義務はないだろう。

 

 

《b》 chapter3

戦場 Battle Field

《/b》

 

 

「相変わらず如才なく勝利するな」

 

 観覧席に戻ってきた俺にノイ先生の意見に苦笑した。

 

「まあ、正統派でないことは認めますけどね」

 

「で、問題は?」

 

『試合を開始してください』

 

 アナウンスと共に試合が開始される。

 

「ふむ、確かに筋は悪くないが勢いに欠けるというか」

 

「基本的に優しいんですよ。だから、傷つけるという行為に対して戸惑う。死なないとしてもね」

 

「まあ、娯楽に転用できるようになったものの、シュミクラムはあくまで兵器だ。これで楽しもうと考える神経の方がどこかおかしいのさ」

 

「まあ、世界もある程度安定すると多少は退廃的になるということですね。余裕があるようで無いのが問題ではありますが」

 

 世界的に見て紛争は比較的収まってはいる。反面、それは人口の膨張を意味しており、どう考えてもパラダイムシフトを必要としていた。まあ有り体にいえば俺がかつて生きていた時代と似たようなものなのだが、俺が死んだ後あっちの世界はその辺の問題を解決したのだろうか?

 

「その辺は政府にがんばってもらうしかあるまい。今後は宇宙開発やナノマシン分野に予算が投じられると私は思っているよ。政府直轄のドレクスラー機関だってナノマシンの研究を進めていると聞く。それに、一市民である我々はその日その日をまじめ……とまではいかないが、食うために働くのが精一杯だろう。そういうのは税金をもらって食っているお偉いさんがすればいいのだよ」

 

「ごもっともで。ああ、負けてしまったか」

 

 アリーナでは、勝敗――レイン嬢の敗北――が決していた。しょんぼりしながらこちらに向かってくる少女の姿は、悪いことをしてしょんぼりする仔犬のようで、ちょっとかわいく感じる。

 

 ちなみに彼女の姿はいつものようなお嬢様然とした姿ではなく、ノイ先生コーディネートのデニムに白いジャケットを羽織った少しラフな格好だ。美人は美人というだけで何を着ても似合うなぁ、というのが正直な感想である。

 

「お疲れさま」

 

「また負けてしまいました。私には才能が無いのでしょうか?」

 

「レイン君は真君やジルベルト君を基準に考えているから勘違いするかもしれないが、シュミクラムをはじめて一週間でその上達ぶりは並以上だ。君が今試合に出ている理由を忘れたのかね?」

 

「それは……戦闘の雰囲気に慣れる為です」

 

「そうだ。幸い試合まではまだ期間がある。勝つに越したことはないが、しばらくは戦場で冷静に対処する方法を考えた方がいい」

 

 レイン嬢の機体もノイ先生が設計したのだが、先生が極限まで趣味に走ったネール・エージュや俺の志向に合わせたグリモアと違い、彼女の機体は射撃中心という普通のコンセプトだった。

 

 サーチ範囲が広いという特性を生かして射撃をするという部分は俺に似ているのだが、彼女の場合はジャマーの展開なども可能なのでチームを組んだ上でとても心強くなる予定だ。

 

 だが、同時に彼女が的になると不利になるので、その辺は改善しなければというのが現在の実戦訓練の趣旨である。相性的には真ちゃんほど絶望的ではないので、順調に成長してもレイン嬢には負けないだろう。

 

 別にレイン嬢に才能がないというわけではなく純粋に相性の問題で、同じタイプであるならば性格が悪い方が勝つということだ。デザイナーズチャイルドがネットに特化したセカンドに勝てるというと奇異に思えるかもしれないが、肉体の延長線上と考えれば運動神経の良さはネットでも役に立つことに変わりはなく、考えようによってはバランスがいい。

 

 もちろん基本的にセカンドのネット上における優位性は変わらないのであるが、相性勝負に持ち込めるレベルなら問題ない。第一、普通のセカンドでも本気になった真ちゃんに勝てるとは思えない。そしてそれは新人戦になんちゃって新人を入れるようなものだし、真ちゃんも知り合いにあまりばれたくない。つまり、それとなく盛り上げるためには戦術で戦う必要があり、その幅を広げるためにはレイン嬢の成長が不可欠と言うことで、現在はシングル戦と俺とのタッグ戦で、どの状況で、どの戦術が有効なのかを見極めていた。

 

「さて、これから……」

 

 団体戦の観察をしようかと思ったのだが、アリーナが騒然となる。どうしたのかと覗いてみると闖入者が仮想についてシュミクラムで批判している。

 

「いつも思うんですが、反AI主義者はどうしてシュミクラムという電子の鎧を纏ってその辺を否定するんでしょうか? 俺からしてみれば技術的には同系統のはずなんですが」

 

「反AIといっても仮想そのものを否定する勢力、生物学的AIを否定する勢力と色々いるからなあ」

 

「しかし、あいつらも暇人ですねえ。あっ、ケニッヒスだ」

 

 黒と赤をベースにした威圧感を与えるデザインの機体から聞こえてくる声に残念ながら聞き覚えがあった。心の中で否定したかったのだが、レイン嬢の顔を見るとどうも同じ事を考えていたらしく、顔を見合わせる形となり、ついため息を漏らす。

「知り合いかね?」

 

「俗にいう同じ学校の嫌われ者同士ですね。まあ、別に俺は彼が俺の生活に影響を与えない限りは生きていても死んでいても構わないのですが」

 

「ジルベルトさんとあの男が遠ざけられる理由は違いますが、彼は典型的な鳳翔の生徒です。正直死んでくれればいいと思っていますが」

 

 レイン嬢に関してはあのような被害があったので言うことが辛辣であるが、鳳翔の生徒としても男としても弁護の余地がない。というより最近俺やノイ先生に充てられたのか毒が強くなって気がするのだが大丈夫だろうか?

 

 もちろん、俺たちの会話をしている中でも舞台で話は進んでいる。

 

『甲くん、受け取りたまえ!』

 

 アリーナに突き刺さる巨剣を、白と青をベースにしたシュミクラムが手に取り一閃。

 

「ケニッヒスって美形で優秀なのに、どこかギャグキャラっぽいよな」

 

 口を開かず黙っていればまともというのが彼に対する評価である。

 

「ギャグキャラですか? 」

 

「いや、今後もこんなことあると厄介だから、3ヶ月ぐらい長期入院してくれないかなと思って」

 

 まあギャグキャラは爆発してもすぐ復活したり、どう考えても死んでるはずのダメージを負っても次の時には平気で登場しそうな気がするから無駄だとは思うが。

 

「そう言うことならば手を回していいナノを」

 

「ジルベルトさんがあんな男のために手を汚す必要がありません!」

 

「冗談だよ。それに言い方は悪いが、あのシュミクラムの人にあいつが粘着すると俺はとっても助かる」

 

「……どなたか知りませんがご愁傷様ですね」

 

 俺と彼女の中では因縁付けられる可能性が120%くらいだと思っていた。残りの20%は取り巻きたちの分である。俺は厄介ごとに巻き込まれるであろうシュミクラムの中の人に心の中で合掌した。

 

 

 

 おまけ

 『暇人の憂鬱』

 

 妹魂:あら、佐藤さんはそういう理論は嫌いかしら?

 

 佐藤:別に否定はしませんよ。ただ、どっちかというとバランス派なだけです。

 

 

 御大将がログインしました

 

 

 妹魂:お久しぶりね

 

 御大将:ご無沙汰しています。しかし今日は大変だったよ

 

 佐藤:研究室を爆発させたとか? 

 

 御大将:佐藤君は僕のことをマッドサイエンティストか何かと勘違いしていないかい? 

 

 佐藤:まあ、その辺はいいですけど、何か問題でもあったんですか? 

 

 御大将:僕の問題じゃなくて教え子がちょっとね。まあ結局は事なきを得たんだけど。

 

 佐藤:ああ、先生業も大変ですね。気楽な学生でずっといたいなあ

 

 妹魂:佐藤さんは働き出したら飽きるまでやるイメージがあるけど

 

 佐藤:飽きたらまずいですよ仕事。でも、探偵業とかいいかもしれませんね。助手はshinさんにやってもらってリアル・ネット両方で見つけます、みたいな

 

 御大将:……それはちょっと怖いかもしれない

 

 妹魂:そうね、寝首をかかれないように注意しないと

 

 佐藤:や、二人ともどれだけ後ろめたいことしてんだよ

 

 妹魂:大人になるって大変よね

 

 御大将:まあ、刺客には困らないからねえ

 

 佐藤:もしかしてこのチャットは危険人物が多いのではないだろうか?

 

 妹魂:申し訳ないけどあなたに言われたくないわ

 




レインさん対戦をがんばる。
あと美人はどんな格好をしても目立つ
甲さん、セリフは無いけど初登場する。


後シュミクラムユーザーという意味では本文でも言ってますけど、ジルベルトの実力は多分レインとどっこい、甲に勝てる訳がないレベル。
シュミクラム戦という土台でやる方が悪いんですけどね。
シナリオ上甲はまこちゃんに勝ってますけど、実際どっちが強いんでしょうね?

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  • 番外編→えせ救世主物語(DSクロス)
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  • ジルベルト系よりニラ小説書けよ
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