東方汚染星 ~Corruption Of The Last Eden~ 作:影のビツケンヌ
所持したアイテムから推測するに、パチュリーという人物は恐らくこの資料室に関係のある人物だろう。
これだけ大量の未確認アイテムを管理しているのであれば、それを狙う者もいるはずだ。例えば、パチュリーの対峙するマリサのように。パチュリーを撃退してここのアイテムをいくつか奪取する腹積もりだったのだろう。
この状況に於いて、もしも私が介入しパチュリーに見方すれば、私と彼女との間には理想的な関係性が築かれ、フェイゾン汚染による精神掌握を行うこと無しに、支配を超えたコントロールが可能となるに違いない。そうなれば、今の私の不足した情報のニーズを満たすこともできるだろうし、この建造物の一角を借りて、フェイゾン制御はより安全に試せる。利用できる相手はとことん利用するべきだ。
私は二人の人物の間、未知のエネルギーで構成された弾丸の飛び交う中に躍り出た。
「何だパチュリー、また何か変なモノ召喚したのか?」
「はあ?こんな悪趣味な奴頼まれたって召喚しないわよ。というか誰?邪魔なのだけど。何でよりによって咲夜がいない時に侵入者が…」
私の乱入によって水を差され、弾幕が止む。サクヤ、というのが何者かはこの際どうでもいい。
「寄越せ」
パチュリーの傍に素早く移動し、彼女の所持するアイテムを奪い取る。
「ちょっ、何をするのよ!」
喘息持ちの為か怒声も力がない。軽く無視して、アイテムをさらに細かくスキャンする。
『使用エネルギーはフェイゾンエネルギーで代替可能と判断。起動はボイスコマンドです。起動コードによって異なる攻撃現象を発生する模様。コードを提示します。火符『アグニシャイン』、水符『プリンセスウンディネ』、…』
列挙された中から適当に一つを選択、詠唱する。
「日符『ロイヤルフレア』」
すると私の前に奇妙な幾何学的紋様が現れ、そこから超高温のエネルギー体がいくつも発射された。フレア、という位だから、プラズマだろう。メタリドリーの吐くホーミングプラズマ火球にもいくらか似ている。
「くっ!」
マリサは私のものとは異なる幾何学的紋様を展開し、プラズマ火球から身を守った。
「邪魔が入った!パチュリー、また会おう!」
マリサは颯爽と逃げていき、資料室には私とパチュリーの二人だけが取り残された。
サムスのマトリクスをパワードスーツごとコピーした私は、2メートル近い身長がある。私を驚愕の表情で見つめるパチュリーは、自然と見上げる形となっていた。
「あなたは一体、何者なの…?」
彼女の問に、やはり私はこう応えた。
「私は、…ダークサムス」
彼女の話は、私にとって衝撃的なものだった。
この地域――正確にはこの世界『幻想郷』は、私のいたのとは時間軸すら異なる異世界だったのだ。妖怪や幽霊等、スキャンすれば『異形形態』と表示されるような存在がごまんといるらしい。それらは全て外界で忘れ去られ“幻想”となったもの。恐らく私がこの世界にいる理由は、惑星フェイザの消滅によってフェイゾンが全宇宙から一掃された為に、フェイゾンが最早過去のものとなったからであろう。
不可解なタイムスリップの謎は後々考えれば良いだろう。それよりは、フェイゾンエネルギーの回収が先に立つ。フェイゾンが忘れ去られたからには、幻想郷のそこかしこにフェイゾンが点在していても何ら不思議ではないはず。
いや、むしろフェイゾンはそのまま放置した方がいいかもしれない。汚染によって突然変異を起こした場合、フェイゾン生命体同士の特殊な協調性がエネルギーの浪費を防ぐ役割を果たしてくれる――
「私の方からも質問させて貰うわよ」
私の思考を、パチュリーの声が遮った。
「…貴様に答える義務はない」
「対価よ。私もあなたに幻想郷について教えたでしょう?」
「それは貴様を助けた、その対価じゃないのか」
「へえ、恩を売る為に助けたの。血も涙もないのね、エネルギー生命体って」
私の目論みはどうやら外れたようだ。しかもパチュリーは、私がエネルギー生命体だと見抜いている。かなり目敏い。やはりマリサに見方すべきだったか、そう胸中で独りごちた。
どのみち私はこの人物に見方してしまった。今さら掌を反すような真似はできまい。
「…わかった。手早く済ませる」
私の世界の、私が知りうる情報を掻い摘まんで説明したところ、おおよそ二五分かかった。
パチュリーはフェイゾンに対してとりわけ大きな関心を抱いたらしく、質問はその項で多くなった。彼女曰く、本来魔法に使用する魔力をフェイゾンエネルギーで代替できたことが理由だとか。
「以上の説明で、理解できたか?」
これ以上説明するのは面倒だ。そんな意味も込めつつ、パチュリーに問う。
「…そうね、あなたここに住まない?」
彼女の真意位すぐにわかった。隠そうともしていない。
「私は貴様の
「でもあなたのことだし、そんな簡単に死にはしないでしょう?」
何が悪いのか、とでも言いたげな目だ。苛立ちが募る。
「私の行動の妨げになる。支配されるよりする方が私だ」
行動の妨げ、とは言うものの、私にはその行動の理由も目的も有りはしない。ただ邪魔をされたくないだけである。
「野心家なのね」
「どうとでも言うがいい」
野心家。その言葉は私を形容するのに相応しいだろうか。それを決めるのは、サムス・アランただ一人だと思う。
「…まあとにかく、あなたの行動の自由は保証する。定期的なサンプルの収集を行うだけよ」
「放し飼いか」
「信用がないのね、私は」
「安心しろ、誰も信じてなどいない」
「とことん変な人だわ」
いい加減この応酬も飽きた。そろそろ折れてやろう。拠点ができれば何かしらの行動も起こし易い。
「…仕方ない。承諾しよう。だが妙な真似をすればどうなるかわかっているな」
アームキャノンの銃口を向け、脅しながら言った。その気になればこんな建造物は一瞬で消し飛ばせる、と。
「勿論よ。…ダークサムスさん」
しばらく私と彼女は利用し合うような関係になるだろう。この意味不明な世界に於いて、私はどんな存在なのだろうか?
その答は、フェイゾンだけが知っている。そんな気がして、私は図書館を出、朝焼けの空に超高速で飛び出した。