ようこそ知らない世界の教室へ   作:マサオ

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「浅村さぁ、枕投げに対してガチすぎない?」

 

 フレンチトーストを口にしながらそう問いかけてくる山内。

 年季が違うからね。枕投げは遊びじゃないんだ。

 それよりも今お前が食べてるそれ、俺が持ってきたやつなんだけど?

 

「いやでも、あのマトリックスみたいな動きは普通にすげえって。動画撮りたいからもう1回やってくんね?」

 

 サンドイッチを齧りながらそう言い放つ池。

 トリニティ役として堀北を呼んできてくれたらどんなシーンも喜んで演じるよ。

 それよりも今お前が食べてるそれ、俺が持ってきたやつなんだけど?

 

「食い終わったら続きだ、続き。次こそぶち当ててやる」

 

 ホットドッグを頬張りながらそう意気込む須藤。

 やめてよね。本気で回避したら、枕が俺に当たるはずないだろ。

 それよりも今お前が食べてるそれ、俺が持ってきたやつなんだけど?

 

 3人の制圧という目的は達成できたから戦術レベルでは勝利したと言えるけど、持ってきた食事の3分の1を略奪されてしまっている。参戦した理由である落ち着いた食事、その戦略目標を達成できなかった俺は結果的には敗北者だった。

 まあ、これから当分同じ部屋で過ごす仲だ。多少の狼藉は大目に見てやろう、BLTサンドに手を出さない限りは。

 あ、須藤は1個だけなら食べていいからな。ルームメイトの4人組に誘ってくれたけど、あれはすごく助かった。

 人数的に余ることがないのはわかってるけど、『まだ組んでいない奴らは誰だ』とか聞かれて挙手するのは勘弁だ。お前と友達でほんとよかったよ。

 少し前まで孤立気味だった堀北を心配してたら、自分がダメになりかけるとか笑えない。

 

 そんな感じでみるみる減っていく第2の朝食を眺めて心を痛めていたら、池が真剣な表情で口を開く。

 

「なぁ?旅行って独特の開放感とか、そういうのあるよな?」

「あるんじゃねぇか?少なくとも俺はテンション爆上がりだぜ、しばらく勉強とはおさらばだからな!」

 

 すごく楽しそうに応答している須藤だけど、あいつはただ知らないだけだ。俺の鞄には、夏休み中に須藤が取り組むための問題集が入っている。須藤専用ドリルだ。赤くはないし、分量が3倍だったりするわけでもない。

 今渡すのは流石に鬼畜だから控えるけど、2週間もあるバカンス中のどこかで渡すつもりでいる。それなら鬼畜じゃないはずだし。

 

「な!やっぱりあるよな!そんでさ、そういう時こそ好きな女子へ告白するチャンスだと思うんだよ」

 

 ふむ、続けてくれたまえ。

 

「だから俺‥‥‥この旅行で櫛田ちゃんに告白する!」

「寛治、マジか?振られたりしたら旅行中すっげぇ気まずいじゃんか」

 

 櫛田に好意を抱いていたはずの山内が真っ先に反応する。

 対抗する様子がないけど、他の誰かを好きになったとかそんな感じか?‥‥‥まさか堀北?

 

「櫛田ちゃんが告白されることに慣れていない可能性、その一点に全てを賭ける!あんな可愛い子だったらみんな尻込みするはずだし」

 

 ふむ、なるほど?慣れていなければ、池の告白で心が動かされるかもしれないと。

 わからなくもない理論だけど、参考にはできないな。櫛田レベルの女子が告白されたことがないなんて考えは楽観的すぎる。堀北なんて尚更だ。

 明らかに分の悪い賭けだから、正直やめた方がいいと思うんだけど。

 

「いきなりはやめとけって寛治。まずは2人で出かけたりして、そっから告白とかにもっていくべきだろ」

 

 俺が口を出すまでもなく、須藤がそう忠告した。

 そうだよね、まずは好感度だったりいろいろ積み重ねるべきだ。

 

「でもさ、悠長に構えてたら誰に櫛田ちゃんがもっていかれるかわかんねぇよ、健」

 

 そう言いつつなんでこっちを見るんだよ、綾小路とかもっと警戒した方がいいやついるだろ。

 

「段階があるだろ。まず下の名前で呼ぶとかよ。いきなり告白はマジでやめとけって」

 

 全くだ。いいこと言うじゃないか須藤。

 

「なるほどな‥‥‥よし。浅村、練習相手になってくれよ」

「‥‥‥え?」

 

 練習相手?なんの?俺は男だぞ?

 

「櫛田ちゃんのこと下の名前で呼ぶ練習だよ。いきなり呼ぼうとして失敗したらダセェじゃん」

「‥‥‥他を当たってよ。須藤とか山内でいいでしょ」

「嫌がるってことは、まさかお前も櫛田ちゃん狙ってたりすんのかよ!?」

「‥‥‥わかった、やればいいんでしょ。設定は?」

「そうだな、俺が櫛田ちゃんを夕陽が綺麗な船の上に呼び出したって感じで。もちろん2人っきりで」

 

 なぜか櫛田を演じることになった。明らかにおかしい気がするけど、演じる以上は妥協なんてかけらも許さない。

 咳払いをして喉の調整をする。

 完全な模倣はできないが、真に迫る演技ならしてみせよう。

 

 ん、よし。

 

「池君、話ってなにかな?」

「‥‥‥へ?‥‥‥‥‥‥あ、ああ!その、俺達って出会ってから4ヶ月くらいじゃん?だからそろそろ、下の名前で呼んでもいいんじゃない?名字だと他人行儀だしさ」

 

「おい、あれ浅村だよな?櫛田ちゃんの声にしか聞こえないんだけど、俺の耳がイカレちゃった?」

「安心しろ春樹。俺もほとんど櫛田の声に聞こえてるから。ギリギリ浅村の声が混じってるのわかるけどよ」

 

「そういえばいつの間にか山内君達とは名前で呼び合ってるね、池君って」

「そうそう!そんな感じで、桔梗ちゃんって呼びたいんだけど‥‥‥いいかな?」

「全然いいよ!よろしくね、寛治君!‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい、終わり。満足した?」

 

 演技終了。

 演じていて辛いものがあるから2度とやらない。

 いろいろすり減るんだよ、良心とか羞恥心とかが。

 

「練習になったかわかんないけど「サンキュー浅村、これならイケる!ってことで行ってくるな!」‥‥‥え?」

 

 池が興奮した様子で部屋を出て行き、山内も後に続いた。

 つまり須藤と2人きりだけど、なんか嫌な予感がする。

 

「すげぇな浅村!まんま櫛田だったじゃねぇか!頼む、今のやつ俺にもやってくれ!櫛田じゃなくて堀北で!」

 

 やっぱりこうなるよね。俺って、ほんとバカ。

 

「さっきは俺が考えた櫛田さんの反応しただけだし、本人以外相手にいくらやっても意味ないでしょ」

「んなことねぇって!勉強会の準備とかでつるんでるんだから、あいつの癖とか知ってんだろ?」

 

 須藤は堀北を巡る明確なライバルだ。

 堀北の好感度レースにおいて、堀北兄がスタートダッシュを決めてるタイプなら須藤は真逆のスロースターターだと思ってる。これからすごい加速してきそうで心底怖い。

 特別棟で手を出した理由が、自分じゃなくて堀北や俺が馬鹿にされたことが許せなかったからだとか言ってたけどさ、アレって完全に映画版ジャイアン入ってるよね?どう見てもギャップ狙いじゃないか。あざとい。かなり嬉しかったんだけど、それとこれとは話が別だ。

 入学したばかりの頃はまともに授業聞いてなかったのに、それが期末試験直前には大好きな部活の時間を削ってまで勉強するようになったことだって見逃せない。あざとすぎる。でもこれからもその調子で頑張って欲しい。

 

 ‥‥‥俺も堀北に惚れていることをさっさと白状しておけば、須藤だってこんな事言い出さないよなぁ。後回しにし続けたツケが回って来てる。

 いっそのこと、この場で言ってしまうか?

 都合の良いことに今は2人だけだし。

 

「‥‥‥須藤、あのさ」

「あ?」

 

 どんな伝え方をすればいいか、なんて言えば須藤が納得してくれるのか、なかなかまとまらない。

 

 

 

 うん、とりあえず上陸前はやめよう。

 

「ごめん、実はそろそろ平田と約束してる時間なんだよね。試験について話すことになっててさ」

「そういや、バカンスでクラスポイントがどうとか言ってたな。俺も先に島の準備とかしておくか」

「うん、よろしく。池と山内が戻ってきたら2人のこともお願いしていい?」

「おう、任せとけ!」

 

 ‥‥‥夏休みの間、流石にそれがリミットだな。

 

 

****

 

 

 須藤にはあんなこと言ったけど、本当は平田と約束なんてしてない。行くあてもないので、なんとなく最上層のデッキに来て海を眺めている。

 センチメンタルな気分に浸っていたら、珍しい人物が後ろから声を掛けてきた。

 

「あぁ、実に美しい。君もそう思うだろう?」

 

 高円寺だ。まともに会話するのはかなり久しぶりな気がするけど、そんなことはどうでもいい。

 なんでブーメランパンツを穿いている上にずぶ濡れなんだこいつ?

 

「‥‥‥夏だからってそんな格好してると身体冷やすよ」

「無用な心配だねぇ。凡人ならいざ知らず、私がこの程度で体調を崩すことなどあり得ない」

 

 心配というより、体拭いて服を着て欲しいだけなんだけど。

 それにしても相変わらずナルシストなキャラはブレないな。

 確かに鍛え上げられた肉体はなかなかに見事だけど、俺はもっともっと美しいものを知っている。堀北よりも美しいものなんてこの世に存在するわけがない。

 ‥‥‥聞きたいことがあったし、ちょうどいい機会だ。まともに取り合ってもらえるかわからないけど。

 

「高円寺ってすごく鍛え上げてる感じだけどさ、ここから飛び降りたりできる?」

 

 下層デッキを眺めながら、そう尋ねる。

 高さにして5メートル以上。常人なら無事で済む筈がない高度だが、監視者と俺はこれくらいの高さから飛び降りていた。

 俺の質問に対して、軽くポージングをしている高円寺が口を開く。

 

「私は美しい。そうだろう?」

「え、うん」

 

 俺の返答を聞くと、満足したような表情を浮かべて立ち去って行く高円寺。

 

 ‥‥‥あいつ自由人すぎるでしょ。俺の質問に対しての反応がかけらもなかったし、そもそもこっちの発言なんて聞いてもいないんじゃないか?

 判断材料が少なすぎるし、高円寺は保留だな。

 

 得られた情報はほとんどなかったけど、少し気分転換になったのは幸いだ。まともな会話にならなかったけど、それが逆に良かった気がする。

 そろそろ島が見えてくる頃だし、切り替えないといけなかったからな。

 もしかしたらだけど、俺の微妙な雰囲気を察して声を掛けてくれたのかもしれない。

 床をびしょ濡れにしながら歩き回るような奴が、実は気配りできるキャラだったりそんな感じで。

 ここにもギャップが潜んでいるのか、油断できないな本当。

 

 濡れた床を拭いている乗務員へ高円寺の代わりに謝った後、海を眺める作業に戻る。

 しばらくすると水平線の向こうから島が現れて、それと同時にアナウンスが聞こえてきた。

 

『お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』

 

 やっぱり何かあるのは上陸後かな?とりあえず嘘つきにはならないで済みそうで何よりだ。後々のために『非常に意義ある景色』はしっかり見ておかないと。

 そんなことを考えていると、放送が流れたせいか周囲に生徒が集まり始めて、その中の1人が声を掛けてきた。

 

「お前Dクラスだろ?ここはAクラスが使うんだ、どっか他所へ行け」

「‥‥‥俺が先に居たんだけど」

 

 今まで会話したことがない男子生徒だけど、やたら威圧的だ。

 Aクラスの生徒が増長するケースは考えていたけど、思ったよりも早くそれが現れているのかもしれない。

 

「関係ない、この学校は実力主義なんだよ。どんな時だって俺達が優先されるのは当たり前だろうが」

「そんな規則、聞いたことがないね。先生からの指示なら従うから、真嶋先生でも連れてきてくれる?」

 

 Aクラスの担任の名前を出すと相手が少し怯む。

 真嶋先生が真っ当な先生ならスネイプみたいに横暴な振る舞いはしないはずだ。

 そもそもこの場所にそこまでこだわる理由もないから、普通にお願いされていたのなら譲っても良かった。ただ、こいつの言い分は容認できない。

 いつかAクラスから堀北を巡るライバルが現れた時に、同じ様なことを言われないためにもここは死守しなければ。

 ライバルならまだマシだけど、カラダ目当ての不貞な輩がいないとも限らないからな。

 他の学年の雰囲気を見ていると、なんとも言えない感じだし。

 

「面倒くせぇ奴だな、さっさとどけよ!」

 

 苛立った様にそう言い放ったAクラスの1人が、柵にもたれかかってる俺の肩を後ろから掴んでくる。

 お、いいぞ。まさしく実力(筋力)主義だな、わかりやすい。

 力比べで俺に勝てると思うなよ?どうしても動かしたかったらアルベルト10人か堀北を連れてくるんだな。

 

 柵を握っている腕に力を込めて、実力主義の勝負が始まろうとしたその時。

 

「おい、やめろ。葛城さんの知り合いだ」

 

 聞き覚えのあるその声に振り向くと、戸塚が人混みをかき分けて近くにやってきた。

 俺に掴みかかっていた奴が舌打ちしながら離れていったので、戸塚に話しかける。

 

「ありがとね。ただ、葛城とは知り合いじゃなくて友達だよ」

「‥‥‥あの人が優しいだけだ。調子に乗るなよ」

 

 助けに入ってくれたからそれなりに話せるかと思って、軽い感じで声を掛けたけど失敗したみたいだ。

 俺が葛城と関係している奴じゃなかったら、今のも止めなかったかもしれない。そう思わせるくらいには、前に会ったときよりも刺々しさが増していた。

 

「そっか、ごめん」

 

 それだけ言って前を向く。

 いろいろ思うところはあるけど、それは後で考えることにする。

 

 離島がすぐ近くまで迫ってくると、船は桟橋を無視して島の周囲を回り始めた。

 人の手が入っている様子はあるけど、整備されているという程ではない。その割には不自然な場所に、人工物らしきものが見えたりしている。

 

 島を1周し終えて船が停まると、再びアナウンスが響き渡った。

 

『これより、当学校所有の島に上陸します。全生徒はジャージに着替えて、30分後までにデッキへ集合してください。所定の鞄、荷物、携帯を忘れず持参するようお願いします』

 

 

****

 

 

 準備を済ませてデッキへ行くと、他のクラスメイトは全員揃っていた。

 Aクラスから順に上陸するらしいのでそれを待っていると、堀北が近寄ってきて小声で話かけてくる。

 

「浅村君、島は見てもらえたかしら?」

「うん、バッチリ見ておいた」

 

 堀北には部屋で休むようお願いしておいたけど、この様子ならそうしてくれてたみたいだ。

 

「私物の持ち込みが禁止されていて、先生達の物々しい雰囲気。間違いないようね」

 

 周囲には他クラスの生徒もいるので、そこで会話は切り上げた。

 

 荷物チェックを済ませて上陸すると、すぐに整列するよう指示されて点呼が行われる。

 明らかにバカンスという雰囲気ではない。他クラスでも数人が違和感を覚え始めているようだ。

 クラスメイトは俺の言葉が的中していると感じ始めたのか、何人かはチラチラとこちらを見ている。

 

 全クラスで点呼が終了すると、真嶋先生が用意された壇上に上がってマイクを手に取って話し始めた。

 

「今日この場に来ることができて嬉しく思う。病欠による不参加者が1名発生したことは残念でならないがな」

 

 その1名はAクラス所属の生徒、坂柳だ。船から降りるときに39人しかいなかったし、杖を使っている彼女は一際目につくはず。学校で見た時も、確かに身体が丈夫なようには思えなかった。

 堀北も体調を崩さないように十分注意を払わないといけないけど、それでも不参加にならなくて本当に良かったと思う。

 

「たまにいるよな、病気とかで旅行に参加できない奴。かわいそ‥‥‥て思ったけど、あのテントとかパソコンとかいろいろあるってことはやっぱり」

 

 池がそう呟くと。

 

「ではこれより───本年度最初の特別試験を行う」

 

 真嶋先生のその発言を聞き、周囲が一斉にざわつく。

 『最初』か。2回目はいつだ?冬休みか?

 

「君達にはこれから1週間、この無人島で集団で過ごしてもらう」

 

 バカンスのつもりでいる中で突然試験が行われれば、当然の如く不満が出てくる。

 真嶋先生の話を遮るように、他クラスの生徒が声を挙げた。

 

「今は夏休みのはずで、我々は旅行という名目で連れてこられました。こんな騙し討ちのような形での試験は如何かと思います」

「なるほど、理解できる言い分だ。だが安心していい。これは過酷な生活を強いるものではない。海で泳ぐのもバーベキューするのも君達の自由だ」

 

 水泳試験と肉の焼き方試験か?それなら任せろ。

 

「今回の特別試験では大前提として、各クラスに試験専用のポイントを300支給する。これをうまく使えば快適な1週間を楽しむことが可能だ」

 

 真嶋先生はそう言うと、数十ページほどの冊子を開く。

 

「このマニュアルには、試験ポイントで入手できるモノのリストが全て載っている。飲料水や食料などの必需品はもちろん、海で遊ぶための娯楽品やバーベキュー用の機材も取り揃えているぞ。計画的に使えば、300ポイントで無理なく1週間過ごすことができる」

 

 隣の堀北に視線を向けると、なぜか目が合ったので無言で頷いておく。可愛い。

 堀北兄から受領したデータと300という数値、それらを鑑みると今回の試験で動くクラスポイントが見えてくる。

 

「そしてこれが最も重要なことだ。この試験終了時に各クラスに残っている試験ポイント、その数値をそれぞれのクラスポイントに加算して夏休み明けに反映する」

 

 つまりは最大300ポイントの加算が見込めるということだ。他にも変動要素があるかもしれないし、試験ポイントを消費しないでクリアできる程簡単な設定にしてくるとは思えないけど。

 もしも300もクラスポイントが増えれば、月に貰えるプライベートポイントも30000増える。

 既存のポイントと合わせれば1ヶ月で20回近く堀北とデートできるな。‥‥‥だめだ、集中しろ。堀北と俺のより良き未来のために。

 

「今回のルールでは体調不良などでリタイアした生徒がいる場合、1名につき30の試験ポイントペナルティが発生する。そのため、Aクラスの試験ポイントは270からのスタートとなる」

 

 その一言で周囲は驚いた様子だったけど、Aクラスからはほとんど反応がなかった。

 間にCクラスとBクラスを挟んでいるせいで、織り込み済みなのか動揺を抑え込んでいるだけなのか判断がつかない。

 

「この場での説明は以上となる、各クラスは担任の元へ集まるように」

 

 そう言って真嶋先生が壇上から降りる。

 

 それぞれのクラスが距離を取るように集まり出し、特別試験が本格的に始まった。

 


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