ようこそ知らない世界の教室へ   作:マサオ

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21.

 絶賛、森の探索中。

 隣の綾小路が、先行している高円寺を見やりつつ話しかけてきた。

 

「探索に来て良かったのか?話し合いへ参加すると思ってたんだが」

「せっかく離島に来たんだし、少しでも早く見て回りたくてさ。冒険だよ、冒険」

 

 古代文明が築いた遺跡、突如起動する魔法陣、青い光と共に空から舞い降りてくる女の子、引き出しの中から現れる青タヌキ。創作の世界であるのなら、何がきっかけで物語が動き出すかはわからない。

 ‥‥‥どうか神様。サメが出てきたり、ここがイスラ・ヌブラル島だったりするのはやめてください。誰かが死ぬのは嫌です。これは第3の願いではないので、そこんところ宜しくお願い致します。

 

 まぁ、99%学園系の世界だってことは理解している。

 それでもロボットや魔法とか追い求めてしまうのは男として仕方がないことだろう。スリルがあるけど誰も死なない世界を望んだっていいじゃないか。人間だもの。

 

 この探索に志願した本音は別のところにあるんだけどね。

 

「高円寺がいつも以上に楽しそうにしているのと同じ理由か?」

 

 綾小路が言う通り、高円寺は普段よりもテンションが高い。

 そして普段よりもこちらの言うことを聞いてない。

 

「さあ?あの気ままな振る舞いに、そもそも理由があるかどうかすら俺にはわからない」

 

 というか、アレと一緒にされるのはなんか嫌だ。

 堀北に友達と認定してもらった日の俺は、もしかしたらあんな感じだったかもしれないけど、それはそれだ。

 

「まあ、理由なんて無いのかもな。なんにしても大した運動能力だ」

「確かに。まるでターザンだ。ゴリラに育てられたって言われても納得できるよ」

 

 話題の野生児、もとい金髪男が位置するは地上から約7メートル。

 樹上の枝から枝へ飛び移り、高笑いと共に進んでいく様はとても楽しげだ。

 知らない人だったら間違いなく通報する自信がある。とりあえず、あの動きはターザン機動と呼ぼう。

 

 俺の皮肉を聞いた綾小路は、顔を前へ向けたまま視線だけをこちらに送ってくる。

 流し目がよく似合うイケメンだ。是非とも堀北以外に実施して頂きたい。

 

「ターザン‥‥‥たしか、バローズだったな」

「そっち?大抵の人はディズニー映画を連想すると思うんだけど」

「そうなのか?」

「たぶん。‥‥‥いや、ちょっと自信無くなってきた。佐倉さん、どうかな?」

 

 俺は探索チーム唯一の女子、少し遅れ気味でついて来ている佐倉へと話を振る。

 折角同じ探索チームになったのに、さっきから黙りっぱなしだ。

 俺と綾小路から仲間外れにされていると感じていないか心配になってしまう。

 

 高円寺に対してはそんなの不要な配慮だと断言できるけど。

 

「えっと、その、よくわからない、です‥‥‥」

 

 返事はしてくれるものの、相変わらずの距離を感じる反応。

 以前からその傾向はあったけど、ストーカー事件からはそれが一層顕著になっている。

 あの一件で男に対してトラウマを抱いたかもしれない。無理のないことだ。

 

 ただ例外もいるようで、綾小路とは一緒に帰ったりしているところを時折見かける。

 落ち着いてるし、いろいろ気が利くイケメンだからだろう。

 

 それはいいとして、だ。

 もしかしてディズニーって、この世界ではそこまで有名じゃない?

 元々いたところとは違うと言われたから、そうだとしても不思議ではないんだけど、そこらへんの流行が違うと色々やりづらい。

 堀北と2人でディズニーシーへ行くという俺の悲願、その成就に支障をきたすのはとっても困る。

 がんばれディズニー。まけるなディズニー。

 はたらけディズニー。やすむなディズニー。

 

 

 そんな風にディズニーへ純粋なエールを送っていたら、停止していた高円寺が話しかけてきた。地上7メートルの樹上から。ターザン停止だ。

 

「大地。あの主人公も高貴な生まれだ。その点では確かに私と共通しているが、他は比べるべくもない。こと美しさという点では遠く及ばないね。そこの凡人2人もそう思うだろう?」

 

 高円寺の言う凡人2人。俺のことは名前呼びだから、恐らくは綾小路と佐倉のことだ。

 その2人は応答せずに、『何言ってんだこいつ』みたいな表情をしたまま。

 

 残念だったな、高円寺。俺はさっき佐倉から返事をもらえたけど、そちらは違うみたいだ。

 これで俺だけが避けられているわけでないことが証明されてしまった。元々明白な事実だったけどね。

 

 2人から返事を得られなかった高円寺は、ため息をついて話を続ける。地上7メートルの樹上で。ターザンため息。

 

「やはり凡人では、私の美しさが認識できないようだねぇ。大地はすぐに理解したから、もしや君達もと思ったのだが」

 

 『何言ってんだこいつ』みたいな表情をした顔2つがこちらを向く。

 

 俺を巻き込まないで欲しいものだ。あんなの8割がお世辞に決まってるというのに。

 そして一番美しいのは堀北。これは絶対に譲れない。

 

 

 そんな感じで俺達は、楽しくお喋りしながら探索していた。

 

 このまま平和に終わればいいな、なんて望みを密かに抱きながら。

 

 僅か数分後、その希望は打ち砕かれることも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

「飛ばしすぎるとはぐれるって何回も言ってるだろ?もう少しスピードを」

「ノォプロブレムッ!この程度の森で迷う私ではない」

 

 俺の呼びかけを遮った高円寺は、哄笑と共に一段と加速する。問題大アリだ、バカヤロウ。

 

 あちらがスピードを落とさない以上、こちらがそれに合わせるか、でなければ離れ離れになるしかない。

 どんどん速度を上げる高円寺をなんとか捕捉し続けようとした結果、既に俺達3人の前進ペースは駆け足以上の速さになっている。

 それでもなお、少しずつ遠ざかっていく金髪ターザンの背中。

 見失わないためには、さらに急がなければならない。

 

 俺は平気だし綾小路も問題ないはずだけど、佐倉は見るからに辛そうだ。

 舗装されていない地面を駆けてきたせいか、既に息が上がっている。

 このままではいずれ脱落するだろう。

 綾小路もそれを察したのか、足を止めて俺に言葉を投げてきた。

 

「浅村、これ以上は体力が保たない。悪いが、高円寺の暴走に付き合うのは無理だ」

 

 出た、綾小路のイケメンムーブ。

 自分が泥をかぶるスタイルか。今度堀北相手に真似しよう。‥‥‥いや、堀北を疲れさせる時点でアウトだな。

 

「よし、チーム分けしようか。綾小路と佐倉さんはこの辺りを見てくれる?俺と高円寺は‥‥‥うん。いい感じに島を回るから」

「すまない。佐倉もそれでいいか?」

「は、はい。大丈夫、です」

 

 乱れた息を整えながら佐倉が返事をする。

 他の男子と2人っきりならともかく、綾小路相手なら佐倉も問題ないだろう。

 

 ‥‥‥なんか綾小路って、女子とサシでいるパターンが多いよね。

 櫛田と佐倉はちょいちょい見かけるし、一之瀬といる場面も見かけた。

 堀北にしたって最初会った時は綾小路と2人だった上、櫛田と計画したこととは言えカフェにも行っている。

 ‥‥‥まぁ、今考えることじゃないか。

 

「綾小路君も、浅村君も、ありがとうございます」

「こちらこそ。探索に協力して頂きありがとうございます」

 

 他のクラスメイト達が及び腰だった探索に参加してくれた。それだけで御の字だ。

 

「それじゃ、ここで一旦お別れだ。帰り道はわかるよね?」

「ああ、問題ない」

「ならいいんだ。俺はあっちに向かうから、2人は引き続きこの辺りをよろしく。区切りの良いところで平田達と合流しちゃって」

 

 そう言い終えると同時に、高円寺を追いかけようと2人へ背を向ける。

 

 駆け出そうとしたその時、綾小路が声を掛けてきた。

 

「高円寺のアレ、やらないのか?」

 

 ‥‥‥おかしい。怒らせるようなことをした記憶はないのに煽られている。

 人前でターザン機動する趣味はない。俺は文明人だというのに。

 

 

 たぶんこれは、綾小路流の冗談だろう。そうに決まっている。

 それならこちらも採点せねば、無作法というもの。

 

 俺は掌をパーの形にして綾小路に突き出す。

 

「50点」

 

 かなり甘めの評価だ。確実に赤点にならない点数‥‥‥やめよう。封印していた記憶が目覚めてしまう。

 

 

 俺の甘々評価は伝わったはず。

 だから何かしらのリアクションがあると思ったのだが、一向に反応が返ってこない。

 不思議に思って視線を向けると、そこには『何言ってんだこいつ』みたいな表情が2つ。

 

 それを確認した俺は今度こそ2人に背を向けて、高円寺が消えていった方向へ駆け出す。

 

 別に空気を凍らせてしまったからではない。高円寺が離れすぎると困るからだ。

 

 そもそも夏なのに空気が凍るわけがないから、たぶん気のせいだろう。

 

 封印していた記憶が目覚めている気もするけど、それだってもちろん気のせいだ。

 

 

 

 そうしてフリーズした空間から離脱し、高円寺を追うこと数十秒。

 目当ての背中が見えてきたあたりで地上から声をかける。文明人的アプローチ。

 

「綾小路と佐倉さんとは別行動することになったから」

 

 俺を誘うような加速。そして2人っきりの状況。何も起きないはずがなく。

 

 停止した高円寺は、髪をかき上げながらこちらへ振り返る。

 いつもの笑みとは少し違うソレを顔に浮かべながら。

 

「やはりこの程度、君は難なくついて来るようだねぇ」

「一応はね。こっちの制止を聞かなかったのは、俺を試そうとして?」

「ノゥ。この清々しい日差しを浴びて、私の体がエネルギーを求めていたからさ」

 

 言っている意味が理解できない。高円寺の体には葉緑体でも備わっているのだろうか。

 なんであれ、ゴリラの方がまだマシとさえ思えるコミュニケーション能力だ。

 

「しかし君の能力に興味があるのか、という問いならイェスだ。4月の水泳以来、本気を出していないだろう?」

「‥‥‥まぁ、加減はしていたよ」

 

 高円寺が指しているのは、俺が体育の授業などで全力を出さなかったことだろう。

 不自然に思われないよう留意はしていたけど、それでもバレていたらしい。

 

 ちなみに高円寺は手抜きしまくりだ。やる気の無いヤツランキングで不動の1位を誇っている。

 

 俺がそんなことをしている理由として、監視者の件が念頭にあるのは言うまでもない。

 そうでなくても身体能力は第3の願いを除けば、現状で俺が持つ最大の武器として認識している。

 可能な限りは秘匿して、いざという時に備えておきたかったのが本音だ。

 

 入学当初の俺の目立つ振る舞いが、色々と悪影響をきたしているな。

 今回のこともそうだし、星乃宮先生の件もそうだ。

 

 うわっ‥‥‥俺の行動‥‥‥ガバすぎ‥‥‥?

 

「君がそんな真似をする理由はどうでもいいがね。勝負が引き分けたまま、というのは私の趣味ではないのだよ」

「それはあれかな?今ここで決着を付けようと?」

 

 俺の言葉を聞いた金髪の男は、不敵な笑みを浮かべてこちらを見下ろす。

 

 

 高円寺六助。身体能力で考えた場合、Dクラス生徒の中で監視者の可能性が最も高い人物。

 もしその予想が的中していたのなら、ここで流血沙汰かそれ以上の事態が起きるかもしれない。

 

 寮に裁ち鋏を置いてきたのは失敗だったかもという後悔。

 いざという時、堀北のためならどこまでできるのだろうかという自問。

 

 それらを頭の片隅に追いやり、別の可能性に賭けて話を続ける。

 

 監視者の今までの行動は慎重そのもの。

 ここで何か事を起こすというのは大胆がすぎる。あまりにもミスマッチだ。だから、大丈夫。

 

「白黒つけると言ってもさ、どうやって競うつもり?」

「それは君が考えたまえ、大地。人前では全力を出さないのだろう?」

 

 こっちに配慮しているような言い方してるけど、単に勝負の内容を考えるのが面倒くさいだけに決まってる。

 でも、俺にとって都合がいいのも事実だ。

 

「なら、ちょうどいい勝負方法がある」

「聞こうじゃないか」

 

 俺は平田に対して、約束を破る不義理を心中で詫びておく。

 今から提案する方法は、探索前に決めた条件に反しているのだ。

 

「シンプルだよ。今から30分間、別れてこの島を探索。スポットをたくさん見つけた方の勝利。どう?」

 

 高円寺が優秀であるという点は疑いようがないけど、今まではその有能さをDクラスの利益につなげることができなかった。

 口実があれば乗ってくるかどうか。高円寺の能力がどの程度か。

 この勝負を試金石にできるのならば。

 

「ほう、私を利用するつもりかい?」

「まさか。ただ、このやり方だと引き分けがあり得るんだよね。それが嫌だって言うなら、別の方法を考えるけど」

「安い挑発だねぇ。だがグゥッド、乗ってあげよう」

 

 高円寺は愉快げに応答した後、俺が向かおうと考えていた方角へ体を向ける。

 それを認識した瞬間、荒っぽいことにならずに済んでよかったという安堵が吹き飛ぶ。

 

「では30分後、またここに」

「待った!俺がそっち行ってもいいかな?」

 

 俺が向かうつもりだった方角、それは北。理由は2つある。

 島の外周から観察した限りだと、険しい地形ながらも狭い範囲にスポットが密集している可能性が高い。

 そしてこっちが特に重要なこと。俺が愛してやまない漢字4文字、そのうちの1文字がまさしく北なのだ。選ばない理由がない。

 

 こちらの懇願を聞いた高円寺は白い歯をこぼしながら、今日一番の笑顔で返事を寄越す。

 

「勝負の方法を決めたのは君だ。なら、行き先を選ぶ権利が私になければ不公平だろう?」

 

 そう言うや否や、佐倉達を引き離した時以上のスピードで緑の向こう側へと消えていった。

 

 

 クソッ!北を取られてしまった。

 チクショウ‥‥‥高円寺のくせに正論言いやがって‥‥‥チクショウ‥‥‥。

 そっちが決めろって言うから勝負の仕方考えただけなのに‥‥‥。

 

 ‥‥‥こうなれば、あいつに勝ってギャフンと言わせてやらないと気が済まない。

 

 勝負中に限り、俺は文明人としての矜持を捨て去ろう。

 

 今より1800秒の間、この体は浅村大地ではなく、ただスポットを見つけるだけの獣になるのだ。

 

 

****

 

 

 勝負終了まで残り30秒。既に『スポット見つけるビースト』モード、血眼になりながらターザン機動している状態は解除している。

 1800秒まるまる維持していると、高円寺にも見られるからね。

 

 だから今は文明人機動、地上を走って待ち合わせ場所に向かっているわけだけど。

 スポットを探している間に模倣したターザン機動、アレがめっちゃくちゃ楽しかった。

 とりあえずこの島にいる間、人目がない時の移動方法にはアレを採用する。

 

 ‥‥‥よく考えたら、ターザン機動と呼ぶのも高円寺に失礼だな。ターザン機動あらため、NARUTO機動と呼ぼう。

 うん、これならカッコイイし文明的だ。

 

 

 残り15秒の時点で待ち合わせ場所に到着すると、高円寺は既に待機していた。地上7メートルの枝に腰掛けて足を組んでいる。ターザn‥‥‥NARUTO座り。

 

「やぁ、大地。制限時間内に君が現れないまま勝利、なんて興醒めな結果にならないで何よりだ」

「自分が負けるなんて微塵も思っていない言い草だね」

「当然だとも」

 

 自信満々な様子の高円寺に、同じく自信ありそうな感じで声をかける。実際はかなり怪しいと思っているけど。

 

 スポット探索で島を動き回っている間、見つけたスポットの配置と上陸前に島を外周から観察した結果に基づいて、島全体のスポットの配置を予測してみた。

 その見立てが当たっていて、なおかつ高円寺の回れる範囲が想定を下回っていなかった場合、俺は負けるだろう。

 

「ではまず私から。見つけたスポットの数は9、だ」

 

 どうやら、俺の見立ては当たっている可能性が高い。

 

 それはつまり。

 

 

 

 

 

 

「こっちは7箇所」

 

 俺の負け、ということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 本当に自らが勝つことを疑っていなかったのか、勝利した事による喜びは高円寺の表情から読み取れない。

 そこにあるのは先程同様の不敵な笑み、それと少しばかりの驚愕。

 

「ふむ‥‥‥4つ前後になると踏んでいたのだがね」

 

 実のところ、7箇所見つけられたのは運が良かったというか、ちょっとしたワケがあるというか。

 

 それは勝負開始後間もない時、微かに聞こえてきた須藤の声。

 

 何やら興奮している様子だったのでそちらへ急行すると、向かった先で川辺のスポットとそれを見つけてはしゃぐ須藤達を発見。

 

 勝負中だったから声を掛けずに離れたけど、あれのおかげで少し時間を短縮できた。

 そして何より、あのポイントはベースキャンプとして理想的。

 堀北の休める場所を探す、という目的を須藤が達成してくれたからこそ、俺は勝負に集中できたのだ。

 

 敗北という結果は変わらないけど、須藤の声が聞こえなかったら7箇所目が間に合ったかどうか。

 

 ところで『敗北』って言葉はあまり好きじゃないんだけど、1文字目を隠すだけでその印象は反転する。

 不思議なことに、胸のトキメキが止まらない。

 

「お望み通り決着がついたわけだけど、満足できた?」

「ああ。大いに楽しめたよ」

 

 そう言いながら高円寺は、腰掛けていた枝から立ち上がる。

 

「実を言うと手を抜かないか少し危惧していたのだが、いらぬ心配だったようだねぇ。有利な行き先を選択した私相手に、こうも食い下がるとは」

 

 やっぱりこいつ、北が有利だと認識した上で選んだのか。

 フェアな勝負をしようという気概が足りない。男として恥じるべきだろう。

 

 そんな俺の正当性しかない不満をよそに、高円寺は語り続ける。

 

「間違いなくこのバカンス最大の収穫だ。だからここはひとつ、君の質問に答えてあげよう」

「質問?‥‥‥もしかして船で聞いたやつのことを言ってる?」

 

 それは、上層デッキで居合わせた時の問いかけ。

 高いところから飛び降りることができるか、というもの。

 

 監視者が実行した行動が、高円寺に可能かどうかの確認だったのだが。

 

 

「それだよ。その答えだが───」

 

 

 言葉を区切った次の瞬間、高円寺は7メートルの枝から跳んだ。

 

 そのまま俺の目の前に着地すると、平然とその金髪をかき上げながら続きを述べてくる。

 

 まさに今、答えを目の当たりにした質問への返事を。

 

 

「───イェス、だ」

 

 

 それこそが、俺の最も困る回答。

 

 もしかしたらそれもバレているのかもしれない。

 

 とても楽しそうに笑っている。

 

 だとしたら、なんてキザで嫌味な奴だろうか。

 

 

 

 

 これが、高円寺六助。

 

 監視者と思しき身体能力を持つ男。

 

 そして監視者らしからぬ性格をしている、俺のクラスメイトだ。

 




NARUTO跳躍からの文明人着地。

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