ようこそ知らない世界の教室へ   作:マサオ

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35.

 

 一瞬だけ感じた寒気。

 

 体の不調がもたらすそれとは違う、周囲の空気まで凍りついたような感覚。

 

 ただ、視線を浅村君に戻しても変わった様子はなかった。

 

 だからきっと、今のはノイズ。

 

 あるいは、私の負い目か思い上がりが生んだ錯覚だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「──うん、乗った」

 

 口元に手を当てて数秒だけ瞑目した後に、浅村君はそう言った。

 

「‥‥‥随分とあっさりしているのね」

「いや、流石に悩んだよ。で、少しだけ確認」

 


 浅村君からの再追求。

 当然の反応だけれど、私から何か答えることはできない。

 

 情報を提供してもらう時に提示された条件。

 綾小路君の関与を秘匿するという要求は、意図がわからないとしても守る必要があった。

 違えれば、今後の協力が見込めなくなってしまう。

 

 だから、私は。

 

「この情報を掴んだ経緯について俺があれこれ質問するのは、堀北さんにとって都合が悪いこと?」

「‥‥‥ええ。何も聞かないでもらえると、手間が省けるわ」

「了解。とりあえず、Aクラスのリーダーは戸塚を指名する方針で行こう」

「‥‥‥少し、拍子抜けね。あなたは納得しているのかしら?こんな出所もわからない情報、私が浅村君の立場なら採用しないわよ」

「確かに俺には、その情報の確度も出所もわからない。でも堀北さんは知ってる。それで十分だ」

 

 浅村君の言葉を聞いて、一瞬だけ得意げになりかけた。

 そんな自分が、ひどく浅ましいように感じる。

 

 この試験自体を事前に察知して、さらにはAやCの動向を掴んだ浅村君。

 いつのまにかAクラスとCクラスのリーダーに見当をつけていた綾小路君。

 

 私はただ、2人の成果に寄りかかっているだけなのに。

 

「それに俺の見立てとも齟齬はない。こっちの4択にも、戸塚は入っていたから」

 

 浅村君がどうやってそこまで絞り込んだのかは気になる。

 けれど、それを確かめるのは、きっとフェアじゃない。

 

 綾小路君のAクラスリーダー推定は、試験初日に葛城君と戸塚君を見つけたことに端を発している。

 それすらも開示できないなら、せめて。

 

「だから、Aは決まり。残るはBとCなんだけど」

「目処はついているのかしら?」

「Bはまっさら。Cは船に乗っている人達を除外できるから、かなり絞り込める。当て推量だけど、龍園じゃないかな」

 

 綾小路君も、Cクラスのリーダーは龍園君だと言っていた。

 Aクラスの場合と違って、『あいつの考えは読みやすい』なんてデタラメな説明だったから、アテにしていなかったのだけれど。

 

「伊吹さんや金田君がリーダーを押し付けられている可能性は?」

「それを否定できる材料はない。龍園だと思ったのも、これといった根拠があるわけじゃないから」

 

 浅村君と綾小路君の意見が一致したのなら、きっとその通りなのだろうと思う。

 だから龍園君がリーダーであるという見解に異存はない。

 

 ただ、2人には見えているものが私には見えていないという事実がもたらす不快感は、思っていたよりもはるかに大きかった。

 

「‥‥‥彼がリーダーなら、正当な理由のないリタイアは不可能。試験終了まで、この島のどこかに留まっているはずよ」

「そうだね。この島はけっこう広いし、1人で隠れるなら場所には事欠かない。なんなら、快適に過ごせそうな洞窟もある。そこの先客と仲良くやれるのかはかなり疑問だけど」

「Aクラスが匿っているとでも?取引の痕跡があったとはいえ、そこまで緊密な関係を築けているのかしら?」

「あり得なくはない、程度の認識だね。まぁ、今どこにいるのかはそこまで重要じゃないんだ」

「‥‥‥龍園君を指名するのなら、所在は特定すべきよ。島から見える範囲に出てこないだけで、彼もリタイア済みかもしれないでしょう?」

 

 苛立ちをかき消すように次から次へと投げた質問にも、浅村君は淀みなく答えてくれる。

 

「その通り。だから確かめるつもりだよ、最終日に」

「具体的にはどうするつもり?」

「まずはAの──」

 

 

 

 そうして話しているうちに不快感は消え去って、残ったのは妙な懐かしさ。

 

 なんとなく、まだ幼かった頃を思い出してしまった。

 

 

***

 

 

 頭がマッシロシロスケだった割には悪くない対応だった。

 さっきの堀北とのやりとりを総括するなら、これだ。

 

 

 あの瞬間で最も避けるべき事態は、堀北からの信用を損ねてしまうこと。

 Aクラスのリーダーに関して堀北と違う判断を下して、その上で俺が誤っていた場合、取り戻すのに多大な労力を要するだろう。

 

 ならいっそ、物分かりの良さを見せつけるために同調しておいた方がリスクを減らせる。

 そんな計算だ。

 

 ただ、迎合したつもりはカケラもない。

 情報をもたらしたのが堀北である時点で、その精度はかなりのものだろうとも踏んでいた。

 

 仮にこれが堀北以外の、まだ活躍していない誰かだったりしたら、期待値はかなり低いものとして扱っていただろう。

 場合によってはその精度を、39分の1とみなしていたかも知れない。

 

 だけど、堀北は主人公と思しきキーパーソン。判断力も折り紙つき。

 そんな重要人物が掴んだ情報なら、真か、偽か。

 俺からすれば、最低でも五分五分の勝負。

 その上こちらの推察とも一致していたのだから、堀北から俺に対しての信用云々が無くとも乗っていたのは間違いない。

 

 だから、Aクラスのリーダーとして戸塚を指名することに異存はなかった。

 

 

 

 

 問題は堀北がそれをどうやって突き止めたか。

 

 Dクラスのみんなには、堀北をリーダーとして周知。

 体調不良という裏事情と相まって、堀北が外部と接触する機会はほとんど無かった。

 

 例外は昨日綾小路と出かけていた時くらいだ。

 共有してくれるまでのタイムラグも考慮すると、そこで戸塚がリーダーだと知った可能性はかなり高い。

 

 そして、堀北が口にした『出所』という単語。

 あの言い方を俺は、堀北自身の推理や観察ではなく誰かから情報を得た、と言うメッセージとして受け取った。

 

 

 

 その出所が『誰』なのかまではわかってないけど、これまでの堀北とその周囲を鑑みるに、多分男だろう。

 というか俺の直感が、『情報提供者は間違いなく”男”だ』と叫び、その上で『かなり手強い』と警鐘を鳴らしまくっていた。

 

 あそこまでショックを受けたのは、そういった経緯があったからだと思う。食堂での『綾小路同伴事件』や、龍園の『鈴音呼び事件』の時よりもはるかに衝撃的だった。

 

 で、ここで重要なのは、情報提供者の正体と狙い。

 特に前者は、少しでも輪郭を掴んでおきたかった。

 

 裏が取れる前にも関わらず、Cクラスリーダー候補として龍園の名前を挙げたのはそのため。

 

 あの俺様系ロン毛がリーダーであるという流れは、メタ読み的には全然有り得る。

 数字で表すと3分の1程度。

 もっと言えば『龍園』『伊吹』『金田』『それ以外の島に残ってるかもしれない14人』の4択があって、龍園の比率が他の3つよりも少しだけ高い。

 

 けど、その理屈で納得するのはおそらく俺だけ。

 

 今回はそれで問題なかった。

 確たる理由を提示せずに龍園がリーダーだと主張すれば、大抵の相手が示す反応は否定、あるいは懐疑。

 堀北は後者だったけど、やけに飲み込みが早かった。

 龍園が島に残留している可能性に思い至っていた、あるいは知っていたのでは、と勘繰ってしまうほどに。

 

 もう少し論じると、堀北の情報源は龍園である、というのが想定の1つにあるのだ。

 明確な根拠はない。

 ただ、諸々のタイミングやこれまでの動きを思い返すと、堀北とやり取りしてる姿が真っ先に頭に浮かぶのはあの俺様系ロン毛。ちょっと違和感もあるけど。

 

 一方で素直に考えると、Aクラスのリーダーを知り得るのは同じAクラスの生徒。

 その場合、堀北は内通者からその情報を入手した、となるだろう。

 葛城と坂柳の関係を考えれば、これもまた有り得る展開。

 ただ、情報流出がその経緯で発生したものならば、俺にまで秘匿する理由がわからない。

 

 ともあれ、Aクラスのリーダーを知り得る人物という時点で、候補はかなり絞られる。

 それなりの実績か説得力を持つような人物の言葉でなければ、堀北は受け入れないだろうから。

 

 そこらへんと1学期の暗躍具合、AクラスとCクラスの取引も勘案した結果。

 

 本命Aクラス生徒。

 対抗龍園。

 あとはBクラスの神崎あたりがまあまあ怪しい、といったところか。

 それ以外はどんぐりの背比べ状態で、顔見せに同行した綾小路が少しだけ飛び出している程度。

 

 

 

 ‥‥‥改めて考えるとこの学校、男子が多すぎる。1学年に10人もいれば十分だろう。

 

 ちなみに、この情報源を警戒している要素は直感だけではない。

 理性溢れる脳内会議でも、これを敵対的生命体と認定する決議が全会一致で採択された。

 

 なぜかって?

 俺が堀北と違うクラスだったとしたら、同じような手管で接近するからだ。

 クラスメイトを裏切るのはともかくとして、他クラスのリーダー情報を餌にするのなら心理的なハードルも低い。

 この動機ならば、情報提供者側による俺への秘匿があったとしても大いに納得がいく。

 

 

 

 ‥‥‥考えれば考えるほど、このシチュエーションに嫌な感覚を抱いてしまう。

 

 油断して胡座をかいている男が隙を突かれて、大事なものを掻っ攫われるという、脳が壊れる類のアレだ。

 

 ただ、この浅村大地にそのような油断はない。

 そう思っていただこう。

 

 そもそも油断できる要素が皆無、という悲しい事情は棚に置いておくとして。

 

 この場合に注意すべきは、堀北を責めてると捉えられるような言動は慎むことだ。

 俺にそんな気がなかったとしても、些細なすれ違いから生まれる悲劇なんて腐るほどある。

 

 逆に、どんなことでも許すような寛容さを示すことができれば、それは離れていく心を繋ぎ止める力となるかもしれない。

 そもそも付き合ってすらいない現状、許すも何もないという悲しい事情は棚に置いておくとして。

 

 とりあえず、こういった展開をもたらしそうなキャラの特徴は。

 

 欠点のない優等生、兄弟や父親などの血縁者、権力者、御曹司、小汚い中年、オラオラ系、チャラ男、変なアプリをインストールしてるやつ、体育教師、外国人、席が隣の生徒、身体のとある部位がやたらデカいやつ──。

 

 ‥‥‥ダメだ、警戒するべき属性が多すぎる。

 しかも来年以降は後輩や年下もここに加わるのだから、いい加減にしてほしい。

 

 つまるところ、男はみんな危険。

 そういうことなんだろう。

 

 

 

 ‥‥‥堀北に話しそこねたBクラスとの連携案、やっぱり投げ捨てた方がいいのかもしれない。

 

 

***

 

 

 3日目、夜。

 慎ましい夕食と夜のスポット周回を終え、就寝時間に入ったのが3時間ほど前。

 しばらくは喋り続けていた池やその周囲も、だいぶ前から寝息を立てている。

 

「‥‥‥桔梗ちゃん、そこまで俺のこと‥‥‥。あ、いや。違うんだ篠原」

 

 悪夢なのかそうでないのか、判断に困る寝言も聞こえてきた。

 他の男子に聞かれていたら格好のイジリネタにされただろうけど、幸か不幸かこのテントで起きているのは俺だけ。

 そろそろ日付が変わるから、それも当然だ。

 昨日までなら、俺も眠っていた時間だし。

 

 にも関わらず起きているのは、いろいろと気になることが出てきたから。

 

 

 

 ‥‥‥いや、いきなり状況が動きすぎだろう。

 そろそろだとは思ってたけど、この流れはよろしくない。

 夜陰に乗じて堀北への接触を図るやつがいても、なんら不思議ではない雰囲気なのだ。到底許容できない。潰す。

 

 真面目な話、Cクラスに動きがあったことや話の展開を考慮すると、これから何かしらのトラブルに見舞われると睨んでいる。対象はDクラスか、あるいは堀北。

 

 メタ的な事情だけど、何事もなく順調に終わりました、では物語が成り立たないのだから。

 

 けど、そんなのは俺の知ったことじゃない。

 トラブルなんて起きずに済むのなら、それが1番いい。だから潰す。

 

 突き詰めれば、今起きているのもそれが理由。

 

 要は寝ずの番だ。

 試験終了までは、残り4夜と少し。

 その程度、この身体なら乗り切れるだろう。乗り切れ。

 

 そんなわけでひたすら警戒。

 就寝時間にテントの外で警戒し続けるのも不自然なので、索敵はテント内からの聞き耳と気配感知頼りになっている。

 

 今のところは静かなもので、時折トイレへ向かう足音が聞こえた程度だ。

 

 ‥‥‥そう、トイレ。

 物音と気配だけで索敵するのはなかなか新鮮なんだけど、ちょっとした問題もある。

 本気で周囲に集中すると、キャンプから少し離れた位置にあるトイレは余裕で索敵範囲内。

 となると、諸々の音も聞こえてしまう。

 そういったプライベート、特に女子のそれへと踏み込むのはいくらなんでもまずい。

 とりあえずは適当なタイミングに耳を塞いで、今のところはやり過ごしていた。

 

 

 

 

 そしてまた1人、女子テント──2つある内の堀北が使っていない方──から誰かが出てくる。

 

 ‥‥‥この足運び、伊吹だ。

 

 足音は真っ直ぐにトイレの方へ向かったので、ドアの開閉音を確認してから耳を塞ぐ。

 

 これで問題解決。

 

 取り敢えず3分くらいだろうか。

 

 ‥‥‥正直、この時間が結構辛い。

 音を遮断してボーッとしている間、堀北が情報を手に入れた経緯について余計なことを考えてしまう。

 得る物など何もないと分かっていても、そちらの方に思考が寄ってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3分経過して、警戒モードに戻った。

 トイレ周辺に人の気配はなく、周囲から聞こえるのは寝息のみ。

 

 異常なし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして30分後、自分のやらかしを理解した。

 

 

 トイレの方角、そのさらに向こう側から寄ってくる伊吹の足音を感知。

 

 耳を塞いでる間に離脱されてしまったのだろう。

 

 伊吹を警戒しようと堀北へ言ったのに、俺自身がこの始末。

 

 ‥‥‥悔やんでも仕方ない。

 今後、伊吹はクロという前提で動く。

 

 ただ、気配は単独なので襲撃の手引きとかではないだろう。少なくとも今は。

 

 離脱した目的は外部との連絡か、付近のスポット偵察か。

 なんであれ、スパイである可能性はかなり高まった。

 

 対策は、ほどほどの牽制による行動抑制。

 

 万全を期すなら証拠を掴むなりして追い出すべきなんだけど、それをやったところでCクラスにダメージを与えられるわけではない。

 さらに言えば、排除された伊吹が別の手を講じる可能性がある。あるいは、島に残っているかもしれない龍園が。

 

 そしてこれは保険。

 伊吹が散歩に行っていただけの可能性を考慮した、最後の妥協だ。

 

 次に怪しい動きを見せたら、容赦しない。

 

 

 さて、方針は決まった。

 伊吹側から見えない位置、キャンプ中央に腰を下ろして待ちかまえる。

 

 

 

「あんた、なにしてんの?」

 

 聞こえてきたのは、昼間よりも幾分冷めた声。

 こちらに気づいても狼狽えず、躊躇いなく声までかけてきたあたりは流石だ。

 

「夜更かし」

「‥‥‥‥‥‥」

「天体観測って答えなら、納得できる?」

「‥‥‥バカじゃないの?ここでまともに見えるわけないでしょ」

「確かに」

 

 頭上では、木の枝が折り重なっている。

 ここをベースキャンプとした選定理由の1つは、日差しを遮る立地。

 星なんて見えなくて当然だ。

 

「‥‥‥ま、なんでもいいさ。寝付けないのはわかるけど、ほどほどにしときなよ」

 

 そう言って、伊吹はテントへと戻っていった。

 

 特に問い詰めることはしなかったけど、それなりのプレッシャーを与えたはず。

 追求しても適当に言い逃れをされるのがオチだろうし、無闇に追い詰めて爆発されるのも望ましくない。

 

 適度に圧力をかけて、過度な動きを縛る。

 あれが単なる内偵として、こちらのリーダーを探りにきた程度ならそれで十分だ。

 

 もともと、それくらいは想定して準備してきたのだから。

 

 俺がリーダーであることを伝えてあるのは、堀北、平田、軽井沢の3人だけ。

 ここから情報が漏れる、というのはほとんど心配していない。

 そこまで疑ったら1人で全てやることになってしまう。

 

 他からの漏洩については微妙なところだけど、それで辿り着くのは『堀北がリーダー』という偽の情報。

 伊吹や龍園次第でそれがAクラスに伝わる可能性まで考慮すれば、泳がせておくのはベターな選択だ。

 

 理想的な展開は、偽情報でAクラスのポイントを削りつつ、AクラスとCクラスの関係に亀裂を入れること。

 ただ、そこまで成立させるには何かしらの細工が必要だろう。

 

 俺だったら何かしらの証拠が無ければ他クラスの、それも龍園の報告なんて信用しない。

 葛城がどうかはわからないけど、俺と同じ感性なら物証を求めているはずだ。

 

 今のところ思いつくのは、伊吹がカードを持ち去るよう仕向けてから俺がリタイアするパターンだけ。

 

 だけど、その方法は取れない。

 

 最終日にCクラスリーダーの所在を確認するのは俺だ。

 俺じゃないと失敗しかねないし、所在以外にも確認しておきたいことがある。

 

 それに、堀北の傍から離脱してしまうというリスクも軽視できない。

 

 龍園の目的が暴力的なもので、そのためにトロイの木馬として伊吹が派遣されていた場合。

 今でも四六時中そばにいるわけではないけど、俺はそれなりの抑止力として捉えられているはず。

 その俺がリタイアして、龍園達がその瞬間を狙ってきたら最悪だ。

 

 実際そんなことが起こるのか、と言われるとかなり微妙ではある。

 

 島に残っている可能性があるCクラス生徒の中で、武闘派は龍園と伊吹のみ。

 Dクラスにも須藤、平田、三宅、綾小路あたりの腕っ節に期待できる生徒はいる。

 順当に考えれば、夜陰に乗じようとあちらに勝機はない。

 

 それでも警戒してる理由は3つ。

 龍園がCクラスへの損害を考慮してない可能性、信用しきれない学校の方針、そして監視者の存在。

 

 最後に挙げた理由については、特に危険視している。

 

 あの身体能力は、常人のそれを大きく上回っていた。

 誇張抜きで、1クラス全員をまとめて相手にしようともひっくり返しかねない程に。

 

 平穏な学園生活とは馴染まない存在。

 それが、監視者への暫定評価。

 

 もしもアレが龍園と繋がっていて、あるいは龍園自身が監視者で、Dクラスに対しての脅威となった時は俺の出番だ。

 流石に、出し惜しみをしてる場合じゃない。

 絶対に潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 試験折り返しの目前で、盤面には剣呑さが満ちてきた。

 

 何事もなく終わるなんて最初から思ってなかったけど、今の状況はそれを踏まえてもかなり刺激的だ。

 

 これもひとえに、監視者と龍園のおかげ。

 なら、それに報いることは人として当然の行いだろう。

 

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