ネルギガンテに惚れた男   作:マスターBT

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2話目ですよ〜そんなに筋肉してない。


は?なんでいるの???

「よぉ、総司令。元気にしてたか?」

 

「ネルギガンテのツノを叩き折るほどの元気はないが、元気だとも。相変わらず、ネルギガンテを追いかけている様だな」

 

 防具を身に付けていない男と総司令はお互いに挨拶を済ませると、腕を組み合い引っ張り合う。腕から伝わる力が一向に衰えていない事が分かり満足気に離す。昔からやってる二人の恒例行事だ。ちなみに、男と似たような体格の大団長がこの場にいると腕相撲が始まる。

 

「あのツノは弱い!俺の追いかけてるネルギガンテなら、受け止めて魅せるだろうさ。

 まぁ、お陰で分かったがネルギガンテは複数個体いる。どこでそんなエネルギーを確保しているんだろうなぁ」

 

 お前はその場所に居ただろうというツッコミをしてはいけない。ネルギガンテの事以外に微塵も興味ないのだこの男は。龍結晶の地がエネルギーに満ちてる事に気がついても、何も考えずそういうものなんだろうで片付けてしまう。仮にネルギガンテの一部から龍結晶の地由来のものが出てくれば理解するかもしれないが、あのネルギガンテは途中で逃げてしまったので分からない。

 

「お前は探索とかが苦手だからな。彼奴らには会ったか?」

 

「大団長は確か荒地をウロウロしてたぜ。彼奴もネルギガンテを追ってるみたいだから、軽く情報共有をしたな。フィールドマスターとは色んな場所で会ってる。その度にネルギガンテの痕跡を貰ってるよ。お陰で、今じゃネルギガンテがいればこいつらが活発に動くよ」

 

 豪快に笑ってみせる男。

 アステラに残っている一期団との絆は強い。個性の塊であるが故に纏まって動く事は少ないが出会えばそれぞれの見地から意見を言い合い、見識を深め再びそれぞれの目的のために動き出す。

 

「あの、そちらの方は?」

 

 五期団のよく落下している受付嬢が会話に入ってくる。彼女からしたらいきなり現れた筋肉が総司令と親しげに話しているのだ。どこの誰か知りたくもなるだろう。その筋肉は受付嬢をまじまじ見た後に首を傾げ口を開く。

 

「四期団にこんな奴いたか?」

 

 総司令がそれを聞き呆れた顔で、ため息を吐く。五期団が派遣されるという連絡はその時、アステラに居なかった者達にも翼竜やアイルーを用いた連絡が行っている筈なのだ。

 

「お前がネルギガンテ以外の事を覚えている訳がなかったか……新しく派遣された五期団の者だ。覚えておけよ。

 彼は一期団一の筋肉馬鹿だ。強さは見て貰った通りだが、ネルギガンテ以外に興味がない奴だ」

 

「ほぅ!ついに五期団になったか。道理で活気があるわけだ」

 

「なるほど……確かにあのネルギガンテのツノを高さがあったとはいえ、叩き折るほどの怪力……一体、どれだけ鍛えればその領域に。

 あ、そうでした!相棒を助けてくれてありがとうございます」

 

 ぺこりとお辞儀をしながらお礼を言う受付嬢。

 

「相棒?」

 

「そうです!確か……あ、居ました。相棒ーー!ちょっと来て貰って良いですか!!」

 

 彼女に呼ばれ、近くで買い物をしていた女性がやってくる。その顔を見て男は思い出す。ネルギガンテのツノを折った時に近くにいた奴だと。

 

「えっと……」

 

 いきなり呼ばれて困惑した様子だったが、男を見てハッとした表情になる。

 

「あの時はありがとうございました!その、それで良かったらで良いんですが、大剣の扱い方を教えてくれませんか!!」

 

 お礼をした後に、だんだんと強くなる語気。

 彼女は自分と同じ武器を二本振り回し、片手で自分より上手く扱う男の強さに強い尊敬を抱いていた。彼女からすれば、自分の危機に空から降って来て簡単に吹き飛ばされてしまった相手に終始有利に戦い続けた相手。尊敬するなと言う方が無理だった。

 

「元気があっていいな嬢ちゃん!しかし、俺は普通の戦い方ってのは教えられんぞ?それにネルギガンテを追いかけたいから、食料とかの補充を済ませば俺はすぐアステラを離れるぞ?それでも俺に師事を仰ぐのか?」

 

 男は自分が変な戦い方をしているという自覚がある。ネルギガンテに惚れてからというもの全てのモンスターに対して、防具を身に付けずに挑み、時には大怪我を時には死に掛けながら習得した大剣二刀流。一本は攻撃を受け止め、一本は相手を叩き斬るというランスやガンランスか?と言いたくなる戦い方だがいざという時は二本で攻撃に転じる事が出来るため大剣二本を担ぎ、簡単に振り回す筋力があれば割と理に適っているのだ。

 男の言葉を聞いても彼女の表情は曇らない。むしろその期間の間に盗めるだけ盗んでやるとさらに熱意の篭った表情を浮かべている。

 

「ふっ。分かった!!総司令、少しこいつ借りるぞ」

 

 熱意ある若者は先達にとって最も好ましい存在だ。総司令は口角を上げながら許可を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だ!!何故あの男が此処にいる!?

 

 いつもよく行く場所に尽く全裸の男がやってくるものだから、普段来ない森まで脚を運んだというのにそこには全裸の男が何やらもう一人の人間に何かやっていた。因縁の相手でなければ見えないほど距離を空けているから、未だに森の雑魚どもにもバレずに済んでいるが、もしバレればあの男が嬉々として向かってくるだろう。それを想像してネルギガンテは面倒に感じる。

 

「よし。良いぞ、アンジャナフは練習相手にちょうど良い。

 こいつの攻撃を無傷で受け止め、カウンターをたたき込む感覚を覚えるんだ!」

 

「はい!」

 

 何をしてるんだあれは?

 火を吐く龍擬きに対して大剣を振るっている雌と、その後ろで指示を出している男がいた。雌の方は才能があるようで男の指示通りに身体を動かしている。持っている武器こそ一本だが、その一本で見慣れた男の戦い方をすでに再現している。その光景を眺めネルギガンテは思った。

 

アレが増えてしまう!!

 

 いくら戦い方が再現されても、基本となる筋力が男と五期団のハンターでは違うのだがそんな事に思いつく余裕はネルギガンテになかった。自分の僅かな安息の時間を奪う奴が増えては困るのだ。それならもう此処で眺めている理由はない。翼を動かし、全力で奴らの元へ飛んでいく。着地地点にあの龍擬きが居るが知ったことか。邪魔だ。

 棘を飛ばし龍擬きの頭を叩き潰すようにして着地する。土埃が晴れた先にはあの男が笑みを浮かべ自分を見ていた。

 

『グルゥァァァ!!!!!』

 

 邪魔だ。貴様がそこに居たらあの雌を殺せんだろう!!

 

「ネルギガンテェェェェ!!!!!お前から来てくれるとはなぁ!!」

 

『ガゥ………』

 

 アンジャナフは筋肉共の咆哮を聞きながら、僅かに残った自分の意識を手放した。哀れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネルギガンテが襲来した瞬間、男は走り出し目の前の彼女の首根っこを掴み、放り投げた。個体差など認識していない男だったが、ただの勘で目の前に来るであろうネルギガンテは自分の追っているネルギガンテだと判断した。

 

「未来ある若者を喰われたら洒落にならんからなぁ」

 

 良い事を言っているが、結局のところネルギガンテと一対一で戦いたいのだこの男は。土埃が晴れ奴と視線が合う。相変わらず目付きが悪いなこいつはなどネルギガンテが思っている事に擦りもしない事を考えながら背中の二刀を引き抜く。

 

『グルゥァァァ!!!!!』

 

 良い咆哮だ。ならば俺もそれに応えねばならんな!

 

「ネルギガンテェェェェ!!!!!お前から来てくれるとはなぁ!!」

 

 思わぬ邂逅に筋肉が躍る。前脚の攻撃を真正面から受け止め、もう片方で奴の顎をかち上げる。身体を持ち上げた奴の動きを見て、位置を変える。瞬間、先ほどまでいた場所に前脚が叩きつけらる。気絶しやすい顎をかち上げられてもなお、反撃に転じてくる。

 

「やはり強いなネルギガンテ!」

 

 あれで気絶を起こさないネルギガンテの強さを再認識しつつ、まだ自分に目指せる上がある事実に笑みを浮かべる。

 片側を地面に近づける動きを見て、男は大剣二本を自身の目の前で盾にするように構える。喜んでいた為に回避は間に合わない。地面を抉りながら棘と本体が近づき、やがて男の大剣と衝突する。

 

「ぬぅぅぅおぉぉぉぉぉ!!」

 

 歯を食いしばり全身の筋肉を隆起させ、それでもなお物理法則を無視した勢いで体勢そのままに移動していく。ネルギガンテの攻撃は基本的に攻撃と共に棘が周囲に飛んでいく。至近距離でそれを受ければいくら盾があっても棘が身体を傷付けるのを防ぎ切る事は難しい。

 

「ふんぬっ!!」

 

 決して浅くない傷もあるというのに、この男はネルギガンテの体当たりを弾き飛ばした。古龍相手でもないというのに、自身の体勢が崩されたネルギガンテ。だが、スムーズに体勢を整え距離を取る。もはや、ネルギガンテにはこの男に対する慢心も油断もない。それだけの時間戦ってきているのだから。男も大剣二本を構え直し、肩に刺さったままの棘を引き抜く。

 

「また傷が増えちまった。ま、油断した俺が悪いわな」

 

 突進してくるネルギガンテを躱し、顔に二刀を放つが、ネルギガンテは顔を思いっきり男に向ける事でツノを利用しその刃を弾き、後方へ跳躍。そのまま空へと飛び上がる。男がネルギガンテの腕を見ると棘は真っ黒になっていた。滑空してくるネルギガンテを見つめたまま、衝撃のタイミングを合わせる。ネルギガンテが自分を地面に叩きつけ、今まで以上に多くの棘が周囲に飛んでいく。直接の体当たりを避けた男に棘が向かってくる。男はその棘一つ一つを視界に収め、大剣二本を派手に振るう。向かってきた棘、その全てが叩き落とされた。

 

「やっぱ、腕が痺れるなこりゃ」

 

 棘を弾き大剣から伝わる衝撃で僅かに震える手を眺めて呟く。可能ならこのまま戦い続けたいのだが……嬢ちゃん、やっぱり呼びに行ってたか。

 古代樹の森はアステラと近いのだ。それなりに奥地で戦ってはいたが、他の場所に比べて援軍の到着は早い。

 男が味方の気配に気づくと同時にネルギガンテがその援軍が来るであろう方向を見て、その後男を見た後飛翔した。

 

「まっ、逃げるよなぁ。俺もこれで勝ったからって嬉しくねぇし。さっさと行きな」

 

『グルゥゥ』

 

 まるで言われなくてもそうするわと言わんばかりに唸り、彼方へと飛んでいく。

 

「無事ですか!!」

 

「おう。生きてるぜ」

 

 薙ぎ倒された木々、大量の棘、出血してる筋肉。

 男のアステラ滞在時間が伸び、五期団の嬢ちゃんは少しだけ喜んでいた。

 




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