常に炎の鎧を身に纏っている王と対峙する。コイツも懲りないものだ。
幾度となく私の縄張りに訪れては、叩き倒されている癖に何度も何度もこうして私の目の前に現れる。王の癖に逃げ足が早く逃し続けていたが、今回こそはその首を喰いちぎってやろう。何せ、今の私は機嫌がすこぶる悪い。
『グルァァァァァァァァァ!!』
咆哮をあげ、王と組み合う。私ほどではないが、凶暴で力のある古龍なだけはある。が、それだけだ。
あの男の様に次の一手を用意している訳でもない。何度私と対峙でも私を学ぶ事をしない実に王らしい慢心だな。いい加減、その熱苦しい息を至近距離で吐きかけられるのも嫌気がさした頃合いだ。
平伏せよ、進歩なき王よ
頭を掴み、地面に叩きつける。瞬間、奴の鱗粉が爆ぜるが無視し、そのまま頭を踏みつける。普段ならここで離すのだが、そのまま頭を砕く様に踏み続ける。強引にでも抜け出そうと暴れるが、この程度押さえられなければ貴様らを喰らうことなど出来はしないだろう。今日も見逃されると慢心していた王を嘲笑う。あぁ、それと暴れ過ぎない方が身のためだぞ王。
『グルァ!?』
あーあ、忠告してあげたというのに。
私の前脚から伸び切った棘が王の左眼を穿つ。ははっ、哀れだなその辺の獣や龍では手出しも出来ない炎の鎧を身に纏い、どんな厚い殻を持とうとも炭にするほどの火力を持ち君臨する王が地に伏せ、片目を失う。哀れよなぁ。何度か私の周囲で爆発を起こし、逃れようとするがこの程度なら無視できる。私の再生力とて無限ではないが、今は比較的腹が膨れている。多少のエネルギーなど目の前の王を喰らえば別に
王の頭を勢いよく押しつけ後方へと飛び退く。このエリアの入り口、そこに視線を向ければ見慣れた男がいた。
翼を広げ、咆哮する。貴様、貴様貴様貴様貴様ーーー!なぜ、何故、今ここに来たァァァァ!!!!!
「ありゃ、テオに夢中かと思ったんだがなぁ。やはり、不意打ちなんぞさせてくれる相手ではないかお前は……ん?」
奴が大剣を引き抜くと同時に周囲の温度が急上昇していく。私達のちょうど中間、王が大量の鱗粉をばら撒きながらその体温を急上昇させていた。あぁ、そう言えばこの王にはこれがあったか。
「おいおい、随分とお怒りじゃないの。まっ、頭を足蹴にされりゃ怒るわな」
私をチラリと見て納刀し、背を向ける。どういう理屈か私には分からないが、背を向け身を投げ出す様にジャンプするとこいつらは私達の攻撃を何であろうと無傷で避ける。見慣れた準備を見つめ、私も被害を抑えるために王から距離を取る。やがて鱗粉と高熱が最高潮へと達した瞬間、王が吠え空間が爆ぜた。
チッ、流石に熱いな。距離は取ったが高熱が私を焼く。焦げた肉を押し出す様に新しい肉が生み出されていく。それと共に私の内のエネルギーが消えていく。熱を感じなくなってから、目を開く。どうやら王は逃げた様だ。まぁ、片目を失えば奴とて懲りるだろう。
さて
『ガァァァァ!!!!!』
来い。人間!
既に二刀を構え、私に向かって全力疾走している男に向かって吠える。
目の前で炎王龍をボコボコにしたネルギガンテに向かって走る。珍しく空にいる奴に対して、スリンガーを伸ばし尻尾に張り付く。暴れる奴の尻尾を傷つけ着地する。すると奴も地面におり、前脚を2連続で繰り出す。
「この程度!」
確かに着地時の隙があるだろう。奴がそれを狙ったかは知らないが、私の脚は衝撃で動けない。あぁ、だが上半身は問題なく動く。ならば、大剣二本でタイミングを合わせれば良いだけのこと。両腕に力を込め、振るい両前脚を弾き飛ばす。
『!?』
「ふははは!やれば出来るもんだな!」
大剣と奴の棘がぶつかり合い、勢いよく火花を散らし、我々の視線がぶつかり合う。驚いてはいるが、鋭い殺気を放つその瞳を見て笑みを浮かべる。炎王龍と一戦交えてもコイツはまだまだ元気だ。むしろ、準備運動を終わらせ十分に昂っている。
「ふん!」
身体を捻り、ネルギガンテの顔へと大剣を放つ。
ガキンッ!という音共に大剣が微塵も動かなくなる。おいおい、冗談だろう?お前さん。俺の大剣はネルギガンテの噛みつきによって止められていた。してやったぜという顔のネルギガンテに腹が立つ。力を込め引き抜こうとするがピクリとも動かない。
「抜けねぇ…!」
勝ち誇った様な顔をしながら俺を押しつぶす様に前脚が左側から向かってくる。
一旦、手を離し大剣を盾にして受け止めるが軽く飛ばされ、距離を取らされる。どうやら、久しぶりに大剣一本でこいつの相手をしなければならないのか。面白い、やってやる。
「やっぱり、一本じゃ軽いな」
両手で持ちその場で振るい感覚を思い出す。思った通り軽い。
まぁ、仕方ない。へし折られてはいないし取り返してから戦えば良いだろう。感覚を確かめる俺を待っていたネルギガンテに向けて大剣を担ぎ、片手で挑発する。
『グルァァァァァァァァァ!!!!!』
「お?怒ったか。お前さん、この動作の意味分かるのか」
大剣を咥えたまま器用に吠えるネルギガンテ。
同時に相手に向かって走り出す。大した距離は開いていないからすぐゼロ距離に変わり、奴の叩き潰しを避け右足の白い棘を一撃で砕く。
「おっ、壊れた」
『ガァ!?』
そのまま離してくれよ。
落ちかけた大剣を咥え直し、ネルギガンテは困惑した様に俺を見る。なんだ、一撃で砕かれたのがそんなに不思議か?普段、片手で使ってるものを両手で振れば加える力も増えるに決まってるだろう。まぁ、防ぎながら攻撃する事が出来ないから不便なんだが。
しかし、これで奴は俺が砕いてくると分かってしまった。此処からはそう簡単に踏み込んで来ないだろう。
『グルル……』
予想通り俺の出方を伺っている。時間をかければかけるほど奴の棘は再生していき、黒く染まったとき一本の大剣では防ぎきれない攻撃が飛んでくる。つまり、俺は防ぐ事が出来ないのに奴へと突撃していかなければならない。
「はっ!それはそれで面白い。俺の身体も暖まってきたところだ」
その辺の石を掴み、走る。未だに俺を見つめているネルギガンテに対して、目を狙い石を投げる。
それを弾き飛ばす為に目を閉じ頭を振るう。瞬間、俺は全力で跳躍しネルギガンテの視界から消える。下では姿が見えなくなった俺を探す為、頭を右に左に振っているネルギガンテがいた。ははっ、精々探すと良い。俺は上だがな!
「うぉぉぉぉっ!」
大剣を下に向け、体重を乗せ落下する。
俺の雄叫びに気が付き、上を見るネルギガンテ。慌てて、身体をズラすが遅い!そのツノ、貰い受ける。全体重と重力を利用した一撃は俺の狙い通りツノを………へし折る事は出来なかった。軸をズラしただけではなく、俺たちがやる様にステップをネルギガンテは入れていた。場所が変わった事で俺の狙いは奴の背中、翼と翼と間に大剣を叩きつけた。
「かてぇ!!」
既に黒く染まった棘に阻まれ、凄まじい衝撃が手に返ってくる。
しかし、ネルギガンテにとっても結構な衝撃だった様で俺を振り落としたあと、大剣を落とし軽くふらつきながら飛翔した。
「頑丈な奴め」
上を見上げ大剣を拾い、睨み付ける。
ポーチから回復薬を飲む。多分、既に奴に戦闘意欲はない。今回も俺の手札を見せて終わってしまったな。
「俺はいつかお前をこの手で倒してみせる。お前に心底惚れ込んでいるからこそ、俺以外にお前を倒させたくねぇ!
だが、お前が俺を見てないうちに倒しても嬉しくねぇ。命より俺との戦いが優先したくなるほど強くなってやるからなぁ!!!」
大剣の切っ先を向けそう吠える俺を見つめたあと、背を向け飛んでいく。
まだだ。俺はまだ、奴の本気を引き出せるほど強くねぇ。この程度で手が震えている様では甘い。未だ届かない遥か高みの滅尽を見送りながら疲労困憊の俺は座り込んだ。
筋肉→未だネルギガンテには届かない。
ネルギガンテ→気を抜けば自分を殺し得る存在。
お互いの相手に対する認識はこんな感じですね。ネルギガンテが逃げるのは、逃げないという選択肢を取る理由がないからです。
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