やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。再編ストーリー 作:Minadukiyuuka
ワンワン!
「⁉︎危ない‼︎」
そう言って、俺はこいでいた自転車を捨てて目の前で轢かれそうな犬とやけに高級そうな黒の車との間に入り込んだ。
ドンッ‼︎
鈍い衝突音が耳に届いた。
犬を庇ったせいで背中は痛いし、足は痛いし、腕は痛いし、体が痛い。
痛みのせいで遠のいて行く意識の中で、遠くからかけてくる女の子と車から降りてきた女の子が青ざめた顔をしているのが見えた。
全く、女の子に駆け『寄られる』とかどこのラブコメだよ?
正解、このラブコメである。
ティン、ティン、ティン
耳につく嫌な機械音が聞こえてくる。
体は痛くて悲鳴を上げている。とう言うより、力が入らなかった。
そのせいで、自分が今どんな状況なのかわからなかった。
視覚だけで確認するにここは・・・病院、ですね。うん。
て、ことは俺の横で鳴っているこの機械は点滴とか心電計とかか・・・
俺、どうなったんだよ?
ガラガラ
「⁉︎お兄ちゃん‼︎大丈夫?私が誰かわかる?」
おぉ、これは最愛の妹「小町」ちゃんじゃないですか。何、俺って病人になればこんなに心配されるの?ならずっと病人でいようかな?YDという病人に。
そんな下らないことを考えていると、小町に体を揺すられた。
「⁉︎こ、小町‼︎痛い!痛いから離して!」
バッ
「ご、ごめん、なさい・・・お兄ちゃん、何があったか、覚えてる?」
小町は俺が痛がると素早く離れて塩らしい態度で問いかける。
「あ、あぁ。覚えてる・・・と思うぞ?」
「・・・ぷっ、なんでそこで疑問形だし?・・・うん、間違いなく家の「ゴミいちゃん」だね!あっ、今の小町的にポイント高い!」
おいおい、貶すか褒めるかどっちかにしろ?じゃないと涙が出てきちゃうよ?
キラっ
目尻に薄らと涙が浮かんだ。
「⁉︎ご、ごめんね?言いすぎちゃって・・・」
「いや、気にするな。いつものことだ・・・それで、何があったか聞いていいか?」
俺はもう一度塩らしくなった小町に問いかける。
「お兄ちゃん車に轢かれたんだよ?犬を庇って、車の前に出て犬を庇ったの。覚えてない?」
いや、覚えてる。あの時、確かに犬を庇ったし、二人の女の子が駆け寄ってきたんだ。
「大丈夫。覚えてるよ・・・犬は大丈夫だったか?」
「うん。お兄ちゃんのおかげでね」
「そうか・・・ところで、今って何日?」
「四月○日だよ?どうして?」
別に、大した用じゃない。そうか、もう3日も過ぎたのか・・・これは、もうダメだな。
何がって?高校生活の華々しい薔薇色の生活がだよ。せっかく誰も知ってる奴のいない
高校選んだのに、無駄になっちまう。
「・・・小町。ごめんな、心配かけて・・・」
「うんん、大丈夫。第一、お兄ちゃんが心配なのは年がら年中だから今更って感じだし?」
・・・ごもっとです。
コンコン
俺と小町が他愛もない会話をしているところに、来客者がきた。ここは一人部屋だ。知り合いなんていない俺に客なんて誰だ?
軽い自虐を内心で呟いてドアに向かって答える。
「はい、どうぞ」
「・・・失礼します。こちら比企谷さんの病室で間違いないでしょうか?」
そう言って病室に入ってきたのは・・・あの時の、青ざめた顔をした女の子だった。
あの制服、どっかで・・・あっ、うちの高校か。
「そうですが・・・あなたは?」
小町はその女の子に若干の警戒心を込めた声色で問いかける。
「申し遅れました。私、雪ノ下「雪乃」と申します。・・・先日は、本当に申し訳ありませんでした・・・私どもの不注意で比企ヶ谷さんに怪我をさせてしまって、本当に」
雪ノ下は頭を下げてあの時のことを詫びてくれた。
別に雪ノ下が運転していたわけでもないのに律儀なやつだな。
「いや、こんなんになっちまったが、あれは完全に俺の方が悪かった。いきなり車の前に出ちまったからな。気に病むことぁない。」
「・・・そう。ありがとう・・・」
雪ノ下はそう言うと病室の中へ入ってくる。
そして、何も変わらない様に椅子へと座った。
・・・近くで見ると、美人だな・・・整った顔立ちはまるで人形細工の様だ。
そんなふうに雪ノ下に見惚れていると、雪ノ下は俺の病状を教えてくれた。
「確か、左足が骨折なのよね?退院まで三週間・・・私が看病するわ」
そう言うとどこから出したのか、リンゴと皮剥き用ナイフを取り出して皮剥きをし始めた。
その姿は見惚れる様で、言葉が出てこない。口は半開きになって固まってしまう。
小町はと言うと、俺と同じ様にその立ち居振る舞いに見惚れていた。
「・・・お姉さま・・・」
おいおい・・・マジかよ?
小町から出てきた言葉に驚いていると、目の前に皮を剥かれた綺麗なリンゴが現れた。
と言うより雪ノ下が爪楊枝に刺して差し出して来た。
「ほら、口をもう少し開けなさい」
「は、はい・・・」
俺は言われた通り口を開けてリンゴを待つ。
・・・これじゃぁまるで、
「「まるで、雛鳥だな。(雛鳥ね。)」」
・・・まさかかぶるとはな・・・
「・・・自覚があるのね?」
「皮肉かよ?」
「いいえ、極めて称賛しているわ。大体の人間は自覚ができないものだから」
「俺は他人からの善意の行動に敏感なだけだよ。そもそも他人から受ける善意の行動っていうのが少ないからな。」
「・・・ふふっ、面白いことを言うのね。変な男」
「うっせ、変な女」
俺は雪ノ下に対して悪態をついて目を逸らした。しかし、あの瑞々しいリンゴを見たせいか、うちなる自分が悲鳴を上げる。
グゥ〜
空腹を知らせる鐘が鳴る。
「・・・さぁ、口を開けて求めてみなさい。そうすればこのリンゴをあげるわよ?」
ぐっ
雪ノ下は先ほどよりも幾分か嬉々としていた。
俺の中では論争が飛び交っていた。
この女に媚びるのは俺の「安いプライド」が許さない。
何かあれば土下座に靴なめもできる安いプラドだが、この女に媚びるのだけはなぜか抵抗がある。
しかし、それとは反対に生命活動に必要な食料を欲する「本能」が対立したのだ。
・・・その結果・・・
「り、リンゴをくだ、さい・・・」
「あ、あのお兄ちゃんが折れた⁉︎」
俺の選択に小町は驚きの声をあげる。
誠に遺憾ながら、この様な選択をしてしまった。
「あら、声が小さいわね?もう一回言ってもらえるかしら?」
「おいお前わかってるか?俺は病人だぞ?」
「あなたこそわかっている?自分でこれは自己責任と言ったのよ?なら、こちらにはそれを配慮する必要はないのよ?おわかり?」
なんだ、この無茶苦茶なはずなのにどこか的を射ている様な発言は?まるでこちらが悪い様にすら聞こえる。
「さぁ、卑しく乞うてみなさい。リンゴが欲しいですって、言いなさい。」
この女・・・
「お、お姉さま!私もやってもいいですか⁉︎」
お、おい小町?・・・
「あなたは・・・」
「あっ、私小町って言います!この愚兄の妹です。あの・・・お姉さまと、お呼びしてもいいですか⁉︎」
「えぇ、いいわよ。私、姉はいるけど妹はいないからとても嬉しいわ。一緒にこの男で遊びましょう?」
「はいっ‼︎」
小町は食い気味に雪ノ下に詰め寄って、雪ノ下は雪ノ下で嬉しそうに人の妹のお姉さまになりやがった。
こ、小町ぃぃぃ!!!!!?????
「「さぁ、さぁ、さぁ!さぁ‼︎」」
病室には小町と雪ノ下の声が響く。
俺は折れてはいけないことを知りながら、空腹に勝てずに二人に乞うた。
「り、リンゴをください‼︎」
「比企谷さん!静かにしてください!」
・・・当たり前だ。ここは病院。大きい声を出せば迷惑になる。でもなんだろうな?二人だって結構大きい声出してたと思うんだが、なんで俺だけが怒られるのだろう・・・
くすっ
「ふふふ、やっぱり面白いわね?これからの看病が楽しみだわ。よろしくね比企谷君」
「よかったねお兄ちゃん!」
「・・・こんなの全然ラブコメじゃないじゃないかよ?誰だよ、ラブコメとか言ったの?」
はい。俺ですね。
・・・その後でしっかりリンゴをもらってお腹が一杯になってしまったので俺はもう一度眠りについた。
後になって聞いたのだが小町と雪ノ下は会話に花を咲かせていた様だ。主に俺の昔話で。
全く、俺の人生ハードモードだなって改めて認識したよ。
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