やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。再編ストーリー   作:Minadukiyuuka

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モノローグ 3

次の日も、そのまた次の日も、雪ノ下雪乃は俺の病室を訪れた。

あの日の手紙にはお互い触れなかった。

 特に何をするでもなく、持って来た果物の皮剥きをしてそれを俺が頂く。

 りんご、なし、ぶどう、オレンジ、メロン

 メロンは果物ではなく野菜だが。って、メロンって皮剥きできるのかよ?

 それから雪ノ下はカバンから猫のブックカバーをつけた本を数冊出して読み始めた。

 その姿は例え世界が滅んでも、それでも変わらずにそこで本を読んでいるだろう。そう思わせるものだった。

「・・・何か?」

 俺が雪ノ下を見ていると彼女は文面から顔を上げて不機嫌そうに尋ねてきた。

「まぁ、なんだ、読んでる姿が不覚にも綺麗だと思っちまったってだけだよ。」

 俺は思ったことを正直に言うと雪ノ下は「・・・そう」と素っ気なく答えて体勢を変えてしまった。そのせいで俺からは雪ノ下の顔は見えないが、ほんの一瞬頬が朱らんでいる様に見えた。

 部屋には沈黙のカーテンが降りてしまって互いに声をかけることはなかった。

 でも、そんなカーテンを勢いよく開ける者がいた。我が妹、小町である。

 小町はノックもせずに病室に入って来た。いや、正確には持っていた荷物のせいで背中でドアを開けるしかなかったと言う方が正しいか。

「こんにちは!雪乃お姉様、これ言われてた物です!」

 天真爛漫な小町の声は病室に溜まった嫌な空気を振り払うほど元気な物だった。

 小町は持っていたダンボール箱を雪ノ下に渡した。

はて?あの箱はなんだ?

「ありがとう小町さん。これで調きょ、比企谷君を教育できるわ。」

 雪ノ下は読んでいた本を閉じて、ダンボール箱の中身を確認しながそう言った。

「おい、何おっぱじめるつもりだよ?」

 俺は雪ノ下が言いかけた言葉が気になって問うた。

 すると雪ノ下は俺がこの世で最も忌むべき書物を取り出した。

「なん、だと・・・」

 それは『数学1』大々的に書かれた教科書だった。

「小町さんから聞いたのだけど、あなた数学が大の不得意だそうね?その上授業も受けずにいきなりテストを受けるつもりなの?」

 高校の中間考査は早い。五月の中旬にはテストが始まってしまう。詰まるところ、俺は退院とともにゴールデンウィークを挟んですぐにテストが待っていると言うことだ。

「いや、連休があるんだし、別にいいかなぁって思ってたんだけど・・・」

 俺がそう言うと雪ノ下は目に見えて大きなため息をついた。

「あなた、中学と高校は違うのよ?中学は三年生の成績しか使わないのに比べて、高校でな一年から三年までの成績全てが使われる。つまり、受験戦争はすでに始まっているのよ。」

・・・教師かよ・・・

 と思うほど雪ノ下の態度と言動は大きかった。

「・・・言ったはずよ。『絶対にどうにかする』と」

 雪ノ下は手紙の一節を言うとどこ恥ずかしそうに俯いた。

「なになに?なんの話?私にも教えてよ!」

 小町は雪ノ下の態度が変わったのを目敏く見抜くと、俺に問い詰めてくる。

て言うか近い、近い!目とか輝かすな!

「・・・別にただの言葉の綾ってやつだよ」

 俺は誤魔化すために至って冷静に言葉を発した。

 すると小町はポンっと手を叩いて何かに納得したのか笑顔になる。

「すると小町はお邪魔ですね!それでは雪乃お姉様、私はこの辺で!」

 小町はとてつもない勢いで病室から出て行ってしまった。

「小町⁉︎」

「小町さん待って!」

 俺と雪ノ下の言葉は虚しく部屋に響くだけだった。

 部屋には再び二人きりの空間が広がる。

「・・・では・・・始めましょうか?」

「あ、あぁ、始るか・・・」

 俺は結局なし崩してきに雪ノ下から勉強を教えてもうことになった。

 雪ノ下はどこから持って来たのかホワイトボードに小学生でも解けそうな問題から中学の知識を使っても解けそうにない問題などをつらつらと書き始めた。

「まずは手始めに、あなたがどれだけ数学に対しての知識があるか確認するわ」

 

「・・・まさか、ここまで壊滅的だったとは・・・」

 そう言って雪ノ下はこめかみに手を当てて頭痛を耐えていた。

「別にそこまで落胆することないだろ?俺の場合数学は三割溶けてれば良い方だ」

 俺は誇らしげに胸を張って雪ノ下に言った。

「まったく・・・その自信はどこから出てくるのかしらね?難問はまだしも、掛け算のミスまであるのよ?恥ずかしくないの?」

「ふっ、それこそ今更だな。何を隠そう、俺はいまだに「七の段」が曖昧だからな。」

「・・・比企谷君。一度黙りなさい。」 

 その声は俺の体を瞬間冷凍するのではないかと思わせるほど底冷えする声だった。・・・願わくば、こんな声はもう二度と聞きたくないと思った。

「は、はい・・・」

怖えよ。まじで死を覚悟するレベルで恐怖を感じたぞ?

「よろしい・・・でも、それでどうやって高校に受かったの?」

 疑問に思うのも当然か。掛け算もできないのにどうやって試験に受かるのか。・・・まぁ、簡単な話だ。

「暗記したんだよ」

 そう、数式と答えをほぼ丸暗記したのだ。結構時間かかったけどな、まぁできないことじゃない。結局出て来たのなんて半分いってるかどうかくらいだからな。

「・・・まったく、呆れたわ。・・・でも、面白いわね。その考え」

 まさか共感してくれる奴がいるとは・・・俺は嬉しくてつい涙が出ちまう。

「興味はないのだけどね」

「・・・さいですか・・・」

返せ。俺の涙を返せ。

「さぁ、御託はもう良いわ。始るわよ、勉強。」

この後めちゃくちゃ数学やった。

 

「今日はこの辺で失礼するわ。」

 雪ノ下はホワイトボードに書いていた物を消しながらそう言った。

「おう、ありがとな。わかりやすかったよお前の授業」

 俺は授業で使った教科書やノートを片付けながら雪の下に礼を言った。正直、十五年間生きて来て一番わかりやすい授業だった。

「それはどうも・・・でも、あなたも苦手だと言った割には飲み込みが早かったわね。存外、あなたなら中間考査で良い結果を出せるかもしれないわね」

 雪ノ下が取り止めなく褒めるもんだから背筋に変な悪寒が走る。これは、明日は嵐か?

「・・・とても失礼なことを考えているわね?」

 なにこいつ?読心術でも持ってるのかよ?怖えよ。あと怖い。

「な、なんのことだ?そ、そんなこと考えてましぇんよ?」

 誤魔化すための言い訳を述べるがキョドって噛んでしまう。

「はぁ、比企谷君。明日もやるから少しくらいは予習しておいてね?」

「りょ、了解した。」

「えぇ・・・また、明日・・・」

 ぎこちないその「また明日」はあどけなくて、どこか・・・

「あぁ、また明日な」

 俺は思った言葉を胸の内にしまって雪ノ下の後ろ姿を見送った。

 




緩いペースで不定期投稿になると思いますけどこれからも見守ってください
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