さて、そろそろ寒くなって来ましたが皆様いかがお過ごしでしょうか、季節の変わり目は風邪を引きやすくなると言われます。こんなご時世なので皆様十分お気をつけ下さい
それでは本編をどうぞ!
自身に起きた不可解な現象を夢だと信じたくて頬をつねるがしっかりと痛む
やはり自分は高校生に若返ると共によく分からない場所へワープしたのだ。
仕方がなく現実だと受け止めてため息をつく
「しかしここ何処だよ…潮の匂いがするから海付近なんだろうけどさ。いや、そもそもここは何処の国だ?建物は日本っぽいが…」
場所がわからなければ行動のしようがない、もっとも仮に人に聞いたとしてもここはブルックリンがいた世界とは別の世界なので周囲を見渡しても何一つ手掛かりになるようなものはない、一応看板は目に入ったのだがこの先にコンビニがあると言うお知らせだけで情報にはならない
「しかし文字が読めると言うことはやっぱここは日本なのか…じゃあここの住民とも会話しようと思えば出来るってわけか」
うんうん唸りこの状況を打開する策が出ないか考えてるうちに腹の虫が鳴る
「そういや何も食べてないんだった…何か食うものねぇかな」
身に付けていたカバンを漁る、この鞄は前の世界に持っていた物と同じだ
加えておくと格好なども同様だ
コツンと何かに当たる感触がして取り出してみる。握られていたのはペンケースの様な形をしたプラスチックの容器だ
「これはシガレットケース…いやキャロットケースと言うべきか、まぁこの際人参でもいいか」
そう嬉々として開けるも中には1本も入ってなかった。どうやら飛行機の中で食べたのが最後の一本だったらしい
ぬか喜びに思わずへたり込む、腹の虫は益々泣くばかりだ
何でもいい、食い物はないのか
辺り一面をキョロキョロと見回すと妙に明るいテンションで歩いてくる女子高生が目に入った、彼女の先には電柱がありこのまま行くとぶつかってしまうのだが周りの景色が見えてない様で真っ直ぐ突っ込んでいく。そしてそのままゴン、と鈍い音を立て電柱にぶつかり尻餅をついてしまった。
(言わんこっちゃない…)
電柱にまで行くと尻餅をつき額をさすっているのが見えた。
「あんた、大丈夫か?」
と手を差し伸べる、驚いた顔をしてこちらを向いたが彼女はブルの手を掴んだ。起こしてあげると顔を真っ赤にしながらも彼女はお礼を言ってきた
「すいません、ありがとうございます。全然前を見てなかったものですから」
「あんた変なステップ踏みながら歩いてたもんな…」
ブルックリンが苦言すると彼女は更に顔を赤らめた、普通ならばここでお別れだが何せ彼女は彼が別世界で会った初めての人間だ、出来る限り会話を引き伸ばして何かしらの情報を聞き出せないか模索する。
「あんな歩き方するだなんて何か良いことでもあったのか?」
「私この先にある学校に転校してきたんです、それで今日が初めての登校日で…そのせいか何か妙にテンションが上がっちゃたんです」
参った、よりにもよって転校生か。それならばここの場所とかはよく知らないだろう、何か引き出せないかと思ったがこれは無理そうだな…
そう思いブルックリンは挨拶をして別れようとしたが目の前にいる彼女の変わった人物でも見るようかの目が気になった
「…俺の顔に何かついてるかい?」
「いえ、どうしてこの先は女子校なのに男子がいるのかなっって気になっちゃって…それに服もボロボロだし貴方は一体…?」
この先は女子校だったのか、通りで周りを見渡しても女子高生ばかりなわけだ。不味いな、このままだと『女子校を覗きにきた変態男子高校生』と誤解されて警察呼ばれちまうかもしれねぇ。見た感じ文明が俺らと同じくらいの世界だからきっとそう言う組織もあるだろう…そんなのに世話になったらどうなるか分かったもんじゃねぇぞ…
心臓をバクバクにさせてなんとかごまかし方を考えるが妙案が出てこない
どうしたものかと考えると彼女がポン、と手を叩いた
「あ、分かりました!貴方はこの学校の先生なんですね!」
「先…生?」
突然先生と呼ばれて一瞬困惑するもハッ、と気づく。これは救いの糸だ、乗っかるしかない
「そうだ、俺は教師だよ!…化学の教師だよ!ブルックリン先生さ!」
とっさに嘘をつき、何とかごまかす。
「ブルックリン先生、ですか。私は西住みほって言います」
「みほ…さんか、宜しく頼むよ。…ところで」
「?」
「学校まで案内してくれるかな?」
と言うとみほはクスッと笑った
「すいません、先生なのに場所が分からないってのが面白くて」
「いやぁ〜面目ない」
ブルックリンは何故学校に行こうとしたか、一言で言えば情報収集だ。学校に潜入すれば図書館がある、そこでこの世界のことについて知ることができるブルックリンはそれを目論んだのだ
案内されること数分、建物が見えてきた、それも同じようなものが数棟ある。
「ここが学校?団地みたいだな…」
「そうですよ、ここが“大洗女子学園”です!」
「これが学校か…マンマス校って奴か?」
「それじゃ、私教室に行きます。先生さっきはありがとうございました!それじゃ!」
そう言うとみほはスタスタと校門に入って言った、それに続きブルックリンも校門を潜る。多数の生徒にジロジロ見られたがここまで堂々と入ると怪しさと言うものは無くなるもので誰にも咎められる事はなかった。
そのまま校舎に入り図書室を探し出す、本物の教師に会ってしまっては大変なことになる。それ故に慎重に捜索する。学校の図書室ぐらいすぐ見つかるだろうとブルは思っていた、しかしそれはすぐに誤りであることを思い知らされる…
20分くらいが経過しただろうか、賢明な捜索にも関わらず図書室の「と」の自体も見つからない始末であった。
「何処にあるんだよ…アホみたいに広すぎるだろこの学校」
ガックリと項垂れると腹の虫が大きく鳴いた、これまで気力で耐えてきたが空腹の限界である
「あぁ、そうだ腹減ってたんだった…せっかく若返ったと言うのにこのまま餓死か…」
足の力が抜けてその場にへたり込み壁にもたれる腹が減りすぎて体が鉛のように重たい。何もやる気が起きずその内考えることが億劫になってきた、同時に眠気が襲ってくる。もうこの際バレても良い、ここで寝ちまえと思い目を瞑ったその時
「ねぇ、君何してんのさ」
と声をかけられる、顔を上げるとツインテールの生徒が居た、だがそんなことは今の彼にはどうでもいい。だが助けを求めるかのようにポツリと呟いた
「腹が…減った」
「お腹が!?…何かどうか分からないけど取り敢えず中入る?」
「…中?」
「君がもたれかかってるの生徒会室のドアなんだよね」
「そいつはすまない…今すぐ退く」
「待ちなよ、いいから入りなって」
ブルは立ち上がろうとした所を腕を掴まれそのまま生徒会室に無理やり連れてかれた
室内は豪華な作りでこれまた豪華なソファと机があった、ブルはツインテの彼女に座らせられた。ボーッとして机を眺めてるとジッパーを開ける音と共に三角形の物体が置かれた
「…これは、おにぎりか」
「腹減ってるんでしょ、食べなよ」
「…良いのか?」
「良いよ、遠慮なくおあがんな」
「すまない…!」
ブルは無我夢中でおにぎりを頬張った、味なんか気にしてないただ栄養を摂取するだけだ。
「うめぇ…うめぇ…!」
あっという間に食べ終えてしまう、まだ腹は減っているがそれでも気力の方はだいぶ回復した
食べ終えた口を服の袖で拭いお礼を言う
「すまない、本当に恩にきるよ。え〜と…」
「杏、角谷杏だよ」
「杏さん、お陰でマシになった。しかしどうして助けてくれたんだい?」
「生徒会室の前で生き倒れてるだけでも怪しいのにそのボロボロの服装だからさ、何か訳ありかと思ったのよ…さてここで質問だ」
「…?」
「ここは女子校だから男子は居ないはずだし仮に教師だとしても新任のお知らせなんかここ3年今日に至るまで聞いたことがない。かと言って餓死寸前の人が女子校を覗き来ただなんて思えない
…君は何者だい?」
杏の目は真剣そのものだ彼女になら自分に起きた出来事について打ち明けても信じてくれるかもしれない。そう考え重い口を開く
「これから話す内容はフィクションの様にしか思えないかもしれない。だがこれは確かな事実なんだ、出会ったばかりの人に言うのもおかしいが…どうか信じて欲しい」
「…分かった」
そしてブルックリンは話した
自分はこことは別世界でガンヘッドと言う巨大変形ロボットのパイロットであると言うこと
507と言う相棒と共に人類抹殺を阻止したこと
そして天寿を全うしたと思ったら若返ってこの世界に来てしまったことを
全てを話し終えた後杏は深く頷きこちらを向いた
「変形ロボットのパイロットが異世界転生か…本当にフィクションみたいな話だな。だけど君が話してる時の目、特に507だっけ?君の相棒について語ってる時の目は嘘をついてる様には見えなかったよ、君の正体はよく分かった。それで…これからどうするんだい?」
「取り敢えずここの図書室を使わせてもらってこの世界について調べる、その後は…分かんねぇや」
「…そっか」
「おにぎりありがとうございました、それでは」
ブルはゆっくり歩きドアノブに手をかけたその時
「待って」
と杏が声をかける、振り返ると何か企んでるような笑顔でこっちを見ている
「ブルックリンちゃん、もしとある条件でこの学校に入学出来て食堂の食券200日分、寮も与えちゃう…って言ったらどうする?」
ブルは自分の耳を疑った、杏の言ってることが正しければとある条件を飲めば食、住が確保でき安定した生活を送れると言うのだ。そんな美味しい話あるわけがない、あったとしてもロクでもない条件を結ばされるだろう。だが、今の自分が拒否することなんて出来るだろうか?持ち物なんてなく誰も知り合いなんかいない未知の世界で救いの糸が垂れ下がってるのにそれを手放すことなんて出来るはずがない。このチャンスを逃せばこんな機会は二度と訪れないだろう
ブルックリンは覚悟を決めドアノブから手を離し杏へと近づいていく
「…それは本当か?」
「勿論、嘘はつかないさ。ただし1つ条件を飲んでもらう…ただそれだけさ」
「その条件ってなんだ?」
「我が校には必修選択科目ってのがあるんだ、花道とか剣道とか茶道とかね。その事を覚えてこれを見てほしい」
杏は机の引き出しから1枚の紙を取り出した、紙にはいろんな漢字が書かれてるが中でも目を引くのは「戦車道」と言うものだ。戦車と言うワードを見てブルは瞬時に察した
「ひょっとして杏さん、条件ってのは…」
「話が早くて助かる、そう君には戦車道に参加してほしいんだ」
「…1つ質問させてくれ、戦車道ってのは何なんだ?まさか本気で戦車使うんじゃ…」
「そのまさかだよ、戦車道ってのは乙女の嗜みと呼ばれてる武道でね、戦車を使って戦うんだ」
「戦車で戦うのが乙女の嗜みぃ!?これまた凄いパワーワードだな…男が乗るなら分かるけどよ」
「男…?ひょっとして君の世界じゃ戦車ってのは男が乗るのかい?」
「当たり前だよ、戦車ってのは漢のロマンさ」
「逆だ」
「逆?」
「価値観が真逆さ、君がいた世界と私がいる世界じゃ、こっちの世界じゃ戦車を好きな男性は変わり者扱いだよ」
「マジか、とんでもねぇ世界だな…あ!大事な事を忘れてた!戦車戦なんかして大丈夫なのかよ!?まさか戦争紛いな事をするんじゃ…」
「ハハハ、そんなんじゃないよ。戦車道はこれでもかってくらい安全に配慮された武道だからね、大丈夫だよ」
そう言って杏が笑ったがブルは苦笑いしか出来なかった。安全に配慮された戦車戦と言うのもパワーワードで釈然としないが模擬戦の様なものと判断して無理やり飲み込んだ
しかしここでもう一つ疑問が残る
「でもよ、戦車道ってのは乙女の嗜みなんだろ?そんなのに野郎が出て良いのかよ?」
「一昔前は無理だったけど最近はいける様になったんだよ、これも男女平等って奴だね」
「なるほどねぇ…」
「確認するけど戦車動かしたことはあるんだよね?」
「あぁ、こう見えても前の世界じゃトレジャーハンターやる前は軍人やってたんだ。訓練の一環として戦車にはよく乗ったもんさ」
それを聞いて杏はにやけながら拳を握った
「よし、これでいける!」
「何がです?」
「いや何こっちの話さ、さてと…参加してくれると言う意思で間違いないんだね?」
「そうだ、逆にそれ以外に選択肢はないからな」
「うんうん、賢いのは長生きするよ〜」
「一回死んでるんだけどな」
「うまい!一本取られたわ」
お互い笑い合った。こんなに笑ったのは久しぶりかもしれないと感傷に浸っていると杏がペンを差し出してくる
「それじゃ、ここの場所に丸つけてちょうだい」
ペンを受け取りブルはじっと「戦車道」と書かれた欄を見つめる、これに丸をつけたら俺の第二の人生が始まる
そう思うと緊張してきたが意を決してゆっくりと円を描いた。描き終わりペンを手から離し机に転がし顔を上げる
そこには今日だけで何回も見る杏の笑顔があった
「ようこそ、大洗女学園へ。歓迎するよブルックリン君」
「こちらこそ宜しく頼む、杏。…ところで女子校なのに男子が入って良いものなのか?」
「なぁにその辺は心配いらない。無理やりにでもねじ込んでみせるからさ」
「…出来んのかよそんなこと」
「出来るさ、私は生徒会長だからね」
「あんた生徒会長だったのかよ!てか生徒会長の権限強すぎないか…!?」
「まぁまぁ小さいことは気にしなさんな、ほんじゃ…」
そう言うと杏は机から鍵と2枚の紙切れを取り出してその内一枚の紙に何やら書いた
「ほい、これ鍵と君がこれから住む寮の地図と部屋番号ね」
「妙に手回しが良いな…」
「なぁに今年は何故か一部屋だけ余ったみたいでね、それで私が鍵を保管してたのよ。しかし一部屋だけ余るだなんてまるで君を待っていたみたいだねぇ」
「こうも自分にとって都合の良いことばかり起きるとなんだか怖いもんだな…」
「まぁまぁ甘んじて受け入れなよ、でねもう一つの紙は…」
「これは食券か?」
「そ、取り敢えず今日の昼ごはんの分ね。私からの奢りだ」
「え?本当に良いのか?」
「餓死寸前の人間がおにぎり一個じゃ足りないだろ?しっかり食いなよ」
「何から何まですまねぇな」
「良いってことよ、昼ごはん食ったら今日は帰りな。クラスとかの情報は今日の夜に寮のポストに入れとくから必ず見てね」
「ラジャー」
さてと、と言いながら杏は席を立つ
「これから授業なんだわ、3年生は変な時間に授業があって困るねぇ全く。それじゃブルックリン君、また明日」
「あぁまた“明日”な、杏」
杏が出て行った後ブルックリンはしばらく静けさ滲み入る生徒会室で佇んでいた
____女子高生が戦車に乗って戦う、かぁ…とんでもない世界に来ちまったぜガンヘッド、でもまぁロボットに天国があるかどうかなんて分からないけどよ上で見ててくれ、俺はこの世界で生きてくからよ。
世界に来ちまったぜガンヘッド、でもまぁロボットに天国があるかどうかなんて分からないけどよ上で見ててくれ、俺はこの世界で生きてくからよ。
戦車道…どんなのか見当がつかねぇがやってやるぜ
ブルックリンは天高く拳を振り上げる、と同時に思い出したかの様に腹の虫がなる
「流石におにぎり一個じゃ燃料切れか、食堂行くか…あっ!食堂の場所聞くの忘れてた…!」
その後再び20分近くかけてようやく食堂へ入れたと言う。尚食券の裏に地図が載ってるということに気がついたのは食券を使う寸前のことであった
う〜ん、個人的には私が出がけれる小説「ガールズ&レイバー」より心理描写を抑えめにして会話を増やしてみたのですが如何でしょうか?是非ご感想などを頂けると幸いです
次回はみほとブルックリンが大きく関わっていきます。そしてブルックリンはみほの心の闇に触れることになります。
それではガールズ&507、次パートもお楽しみに!