「あかどう」の現店主は目的地は言わずに歩いていく。
その道すがら色々話をしてくれた。
彼は魔戒法師と呼ばれる存在でホラーという怪物を倒すために尽力していること。
他にも魔戒騎士が存在してそれが鎧騎士の正体だということ。
ホラーは人間の陰我をゲートにしてこの世に現れるということ。
それは人からだけでなく物にも溜まりそれをゲートにする場合もあること。
先ほどまで情報を出すことを拒否していた彼がこんなにも話してくれたことに驚いた。
適当な場所に連れてこられてそれでおしまいだと思っていたから。
「そうそう、俺の名前はシグト。確か笹山さんだっけ?今回だけだからな、あんまり首を突っ込むとアンタもホラーに喰われちまうからな!」
こっちを見て私を襲うような身振り手振りをしてくる。
彼は優しい、それだけは確かだと思った。
「心配してくれてありがとう。でも自分のことは自分で守るから大丈夫。シグトって優しいのね。」
彼は一瞬のうちに後ろを向き頭を掻く。
「優しいんじゃない、ただ、出来れば犠牲者は減らしたいんだ。これでも守りし者の端くれだから。」
やっぱり優しい、いい人なんだろう。
だから今まで話したことにも嘘はないと思う。
なんだか悪い事しちゃったかな?
でもこっちも仕事だもんね。
「そういえばどこへ向かってるの?」
「東の管轄。って言ってもわからないか、あっちにある町だよ。」
そこは私が住んでいる町の方角だ。
灯台下暗し、近場にネタが転がっていたなんて思ってもみなかった。
時計を見るといつの間にか夜十時を指している。
周りを見ると人気が無くなっていた。
シグトが口を開いた。
「隠れてもらっていいかな?」
「どうして?もしかしてあの怪物が!」
「違う違う。この先で東の管轄の騎士に会う予定があるんだ。君を連れてきたなんてことが知られたら大変だから遠くから見るだけにしてほしいんだ。だから隠れておいてほしい。」
「なーんだ、せっかくの取材対象なのに私は会っちゃいけないってこと?」
不服そうな私を見てシグトは項垂れる。
「連れてきたこと自体異例なことなんだぜ?ここから先は秘密厳守!雑誌に書くぐらいは構わないけど直接ご対面は控えてほしい。」
少し怒っている、いい人だからってさすがにやりすぎだったみたいだ。
仕方なく頷いて路地裏へ向かいシグトの歩いていく方向を見る。
すると男女が一組彼に近づいてきた。
先ほどまで人っ子一人見なかったのに急に現れたように見えた。
男の方がシグトと握手をし何かを話している。
この距離では聞こえないのだ残念だ。
カメラを構えて彼らをファインダーに収めシャッターを押した。
一応これで今回の目的は達成できた。
あとは帰って記事を纏めて編集長に見せるだけだ。
私は撮影した写真を見ながらそんなことを考えていた。
すると何か音が聞こえる。
ラジオがノイズを発している音。
周りを見ると壊れたラジオが勝手に電源が付いたようだ。
見つかるとシグトに悪いと思い近づいて電源を探す。
それがいけなかった。
そのラジオは電源が入っていないにもかかわらずスピーカーから音が出ている。
不思議に思っている私は危険だと理解する時間が遅れた。
ラジオのコンセントが私の首に巻き付いて首を絞める。
声を発することが出来ず苦しみどうにか救いを求め路地裏から飛び出した。