狼紅(ろあ)を継承した梵迅(そよぎじん)は元老院の命により東の管轄を任された。
魔導輪・ゲルバ、魔戒法師・桜華(オウカ)が彼と共に行動することになる。
狼紅邸の修練場にて迅は鍛錬をし桜華は魔導筆や魔道具の手入れをしていた。
するといつの間にか大きな仮面をつけた女の子が紛れ込んでいた。
「なんだ元老院からの使いか?」
ゲルバが気付いた。
迅は剣を納め少女に近づく。
よく見ると手紙を持っている。
彼女は迅にそれを差し出す。
受け取りながらライターを取り出す。
中央に眼のような装飾がある。
「ご苦労様、ここに来ての初指令か。」
火を灯す。
紅色の火が灯り指令書を燃やす。
すると魔戒文字が宙に浮かび上がる。
内容はこうだ。
『赤銅騎士・狼紅、ホラー・デンケラズが東の管轄に現れた。現地にて魔戒法師と協力しこれを殲滅せよ』
ということだった。
文字が地図へ変わり場所を指し示す。
それは街外れの方だ。
「随分と人気のない場所に出たもんだ。」
「確かに。オブジェからの出現か、手早く済ませよう。」
ゲルバと迅の二人が話を進める。
桜華も筆や符などの装備を纏めて立ち上がる。
「今日は町で食事をとってもいい?インスタント食品も飽きたわ。騎士も法師も身体が資本だからね。」
「意外とそういうことも考えるんだな。」
口角を上げながら迅が言うと彼女は頬を赤らめる。
「いいでしょ、食事ぐらい楽しみにしたって!私たち料理も出来ないからまともな食事は貴重なのよ!」
こういうところは年相応の女性だと一人と魔導輪は笑った。
漆黒の魔法衣を羽織り魔戒剣狼紅を携え扉を開け現地へと向かった。
向かう先は街外れ、人気の少ない道だ。
三人は指令書にあった魔戒法師を探している。
特徴も名前も書かれていなかったが人気がないためここに人間が居ればホラーか法師かといったところだ。
すると遠くから一人の人間がこちらに近づいてくるのが見える。
ゲルバが口を開いた。
「お、ホラーの気配じゃないからあいつが法師か。」
「恰好もそれっぽいわね。一応見てみるけど。」
桜華が魔導筆を取り出す。
筆に魔導火が灯る。
近付く彼は気にせずに歩を進めこちらに声をかけてきた。
「安心してくれー!俺は魔戒法師・シグト。港町の『あかどう』っていう雑貨店を拠点にホラーと戦っている!」
シグトと名乗った法師はこの時期にマフラーをして大きな筆と鞄を一つ持っている。
「『あかどう』っていうとあの使途ホラー殲滅に助力した法師達かしら?」
聞き覚えのある店名にいち早く反応したのは桜華だった。
迅とゲルバも使途ホラーには聞き覚えがあったらしく桜華に目を向ける。
「名前までは知らなかったけどあの黄金騎士と共に使途ホラーのカルマを討伐した三人の魔戒法師が居たのよ。彼らが居なければ牙狼ですら殺されていたというわ。」
「お姉さんよく知ってるね、俺がその一人シグトっていうんだぜ!」
鞄を置き大きな魔導筆を振り回して見せる。
ひとしきり大立ち回りをし終えると彼は少し悲しい表情になった。
「この筆はその時一緒に戦った法師のものでさ、彼は命を落としてしまったんだ。だから俺が筆も魂も受け継いで店を守ってるってところ。」
涙ぐみそうになる彼が袖で顔を拭い笑顔を見せ語る。
「それと騎士にも負けず劣らずの体術を持った女の法師の三人で鋼牙さん、黄金騎士と共にカルマを打倒したってわけ。失われた系譜を復活させた騎士に布道法師の秘蔵っ子法師、それに受け継がれた魔導輪か。面白いチームだな。」
悲しい話題を流し彼は明るい話題と迅一行に話を向ける。
迅は姿勢を正しシグトへ一礼する。
桜華も習って一礼した。
シグトは驚いて前で両手を振る。
「そんなかしこまらなくていいって!俺もまだまだな法師だからさ。それより今回のホラーの情報なんだけど・・・。」
するとシグトが来た方向から大きな音を立てて人間が飛び出てきた。