好奇心は猫をも殺すというがまさか自分がこうなるとは思わなかった。
世にも奇妙なラジオに殺された女とは見出しとしては完璧だろう。
怪物に殺されるよりも都市伝説的でむしろ良いのかもしれない。
などと死ぬ間際に記者魂を内に秘めていると首を絞めているコンセントが急に緩み私は道へと吹っ飛んだ。
「痛ったー!もうなんなのよ!」
この状況に怒りを叫んだ。
不思議と叫んだあとは落ち着くものみたいで周囲を見渡す余裕が出た。
すると先ほどのラジオが目の前に転がっている。
私を襲ったそれはまたしても一人で音を出しその形を崩壊させていく。
違う、崩壊ではなかった。
崩壊したそばから再構築し先ほどの質量では考えられない大きさへと変貌していく。
私には理解できない音を出しながらそれは異形の姿へと変わった。
両腕がある場所から無数のコンセントが生え、頭と思われる部分にはその大きさに相応しいスピーカーが付いている。体には無数の摘みがありラジオの面影が見えないことも無い。
「こいつがデンケラズか。」
「悪趣味な姿ね。ゲルバとどっちが怪物かしら?」
「何?俺はあんなゲテモノじゃない!もっと紳士的かつ優雅な見た目をしている!」
怪物との間に人が割り込んだ。
人数は二人。
声は確かに三人分聞こえた、しかしシグトのものではない。
(では誰が?)
私の疑問が解消される前に目の前の都市伝説が彼らに襲い掛かる。
無数のコンセントが鞭のように攻撃してくる。
二人はそれを避けた。
地面が抉れコンクリートが弾ける。
「活きの良いホラーだぜ。」
「無駄口を叩かずに何か情報を出せ、相棒だろう!」
男の方から声が二つ聞こえた。
何処かと通信しているのだろうか?
そういった通信機器は見えない。
漆黒の衣装に身を包んだ彼が着地しコートがなびく。
コートの下から長い棒を取り出した。
あれはなんだろうと見ているとそれが二つに分かれる。
剣だ。
現代日本においてあんなものを携帯している人間が居てはいけないはずだ。
私の常識が今塗り替えられていく。
訳の分からない怪物に剣を持っている人間。
頭がおかしくなりそうになりながらも目が離せなかった。
「お前たち、俺が動きを止めるからそのうちに頼むぞ!」
後ろからシグトが走ってきて鞄を置きそれに大きな筆をかざした。
すると箱が発光し変形し始める。
これも怪物に?
と思うとサイズはあまり変わらないが小さな機械の竜のようなものになった。
「魔戒法師も戦えるってところを見せてやる!行け号竜!」
号竜と呼ばれたそれが口を開く。
するとそこに光が集まり光の弾を作った。
弾丸のように発射され一瞬のうちに怪物にぶつかりよろけた。
その隙を突くように女性が筆を手に取り何か印を結んだかと思うと何もない空間に魔法陣が描かれそこから鎖のような光が怪物に絡みついた。
身体を縛り上げ怪物は思うように動けなくなった。
「迅、鎧の召喚だ。」
「言われなくてもそのつもりだ!」
漆黒の男が抜身の剣を天に掲げる。
そこに円を描くと空中に光の陣が描かれ、中心が割れ光が溢れる。
その中から何かが出てきた。
それは赤銅色の鎧だった。
男はそれを纏った。
鈍く輝きまるで狼を象った赤銅の鎧。
美しく見える、これは写真の金の鎧よりも私の心を奪ってくれた。
私の被写体はこれだ、これが私の生涯追い求める取材対象だ。
「一撃で決める!」
鎧から彼が声を放つ。
先ほどの剣が大きく変化していて身の丈ほどの長さで幅も広くなっている。
彼が怪物へと突進し怪物の腹を真一文字に切り裂いた。
怪物は苦しみの声を上げながら大きな体を小さくしていき、元の壊れたラジオに戻った。
鎧が弾け、彼は元の漆黒の衣装に戻っていた。