狼紅邸へ帰る途中に迅は疑問に思っていることを口に出した。
「ゲルバ、なんであんなことを言ったんだ。」
「どのことだ?」
とぼけるゲルバに対して苛立ったのは迅だけではなかった。
「あの女の事よ。一般人を巻き込むことになる上に秘密を世の中に出す記者なんかに取材を許可するだなんて普通ありえないわ。」
桜華が心底呆れた口調で言う。
闇に生きる魔戒騎士、魔戒法師からすれば一般人との交流は最低限に留めなければならない。
そのため今回のゲルバの話は異常なことなのだ。
しかしゲルバは軽く笑う。
「お前たちは知らないかもしれないがあの黄金騎士様も一般人を囮にホラーを狩っていたことがあるらしいぜ?」
その言葉に二人が驚く。
魔戒騎士の最高峰と呼ばれる黄金騎士・牙狼が人間を囮にホラー狩りをしていたという話。
彼らには真偽がわからないため迅がゲルバに詰め寄る。
「牙狼が人間を囮にホラー狩りなんてありえない!ガジャリと契約をしてまで騎士達を救い、ギャノン討伐は彼が居なければ成しえなかった。その騎士がそんな非常識なことをするわけがない!」
「そうね。師匠の話を聞いたこともあるけど彼はそんなことしないと思うわ。ゲルバの知識は何代前の黄金騎士の話なの?」
「いいや、今の黄金騎士様だぜ?冴島鋼牙、メシア、レギュレイス、ギャノン、その他にも使途ホラー達を討伐した男の話だ。」
ゲルバは何も間違えていないと二人に伝える。
「だからあの女を使って効率よくホラーを狩る。あっちは取材出来て俺たちはホラーを狩れる、ギブアンドテイクってやつさ。」
「なんだか乗せられている気もするが、あの牙狼が通った道なら一度は通るべきなのだろうか・・・。」
迅は眉間に皺を寄せて考える。
これは守りし者として正しいのだろうか?牙狼を受け継いだ人間の行ったことなのであればやるべきだろうか?
彼の中で答えの出ない問答が続いている。
それは桜華の言葉によって終わる。
「どちらにせよあの子を守ればいいだけでしょ?ホラー退治は出来るし人も守れる、効率が良いのであれば私は構わないわ。それに一度関わってしまった以上、縁が出来てしまったわけだしね。」
「守り切れれば問題ないってことだ。迅、狼紅を受け継いだお前は女一人守れないほど弱いのか?先代に認められるほどの心意気は何処に行ったんだあ?」
ゲルバが迅を煽る。
「うるさい!お前に言われなくても守り切る!」
ゲルバを顔の前に持っていき大声で怒鳴った。
そして足早に狼紅邸へ帰る迅。
桜華はため息をつきつつ付いていく。
そしてゲルバは笑った。
満月の夜に怪しく光る魔導輪の真意は如何に。