牙狼外伝~赤金の魔戒騎士~   作:神山人海

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奇術・弐

私の名前は笹山優里亜(ささやまゆりあ)、オカルト雑誌のライターをしている。

いつもの目覚ましに起こされルーチンワークのように化粧をし出社をする毎日。

飽き飽きしながらも心が少し躍っていた。

それは先日、怪物とナントカ騎士という生きる都市伝説に会ったからだ。

騎士のしていた髑髏の指輪から『半身』と呼ばれる指輪を貰った。

次の日起きたときは夢かと思ったが右手を見ると指輪がそこにはあった。

夢じゃない、それだけでしばらくはテンションが高いまま仕事をしていた。

周囲からは普段していない指輪までして楽しそうに仕事をしているから恋人でも出来たのだと思われているだろうが違う。

一生モノのライフワークを手に入れたのだからあながち間違いでもないか。

そんなことを考えながら編集室へとたどり着いた。

ここ数日別件の取材や雑誌の都市伝説などの投稿者との打ち合わせ等があり彼らの元に行けないことに頭を抱えながら仕事をしていたため少し心が落ち着いてきている。

このドキドキワクワクを風化させてはいけないと思い、一刻も早く仕事を終わらせて彼らの基地に向かおうと考えていた。

 

「よおここ最近恋人ができたであろう笹山君!」

 

「おはようございます編集長。」

 

案の定勘違いしている。

無視して昨日の取材した記事をまとめるためパソコンを立ち上げる。

すると編集長は画面を遮る形で顔を視界に入れてきた。

驚き顔を引く。

 

「セクハラ発言は謝ろう。それよりもだ、この前の画像の奴見つかったか?」

 

彼も気になっていたようだ。

しかし、まだ記事にするには写真や情報が少ないため私はこう言った。

 

「いえ、まだ写真の騎士も怪物も見つかってませんね。ただそれっぽい話は仕入れたので他の仕事を片付けたら探してみようと思ってます。」

 

「ほほう、意外と進展があるもんだなあ。そんなお前に朗報かどうかはわからねえが面白い話を仕入れたんだわ。」

 

「面白い話?」

 

騎士達の話の取っ掛かりであれば多い方が良い。

少し食い気味に口を挟んだ。

 

「ここ最近失踪者が増えててな、ニュースでもあんまりに多いから取り上げてたんだわ。でな、それに伴って読者から面白い投稿があったのよ。それがこれだ。」

 

そう言うと一枚のメールのコピーを差し出した。

それを受け取り内容を見る。

 

『先日町はずれの公園で殺人現場を目撃しました。一人の男が手品を披露していて一人の女が近付いて見ていたんです。最初は手を叩いて喜んだり不思議がったりしてたんですが男が急に彼女の口を塞いでナイフで刺したんです。僕はその場で怖くなって少し離れて警察に通報しました。警察が到着した時には跡形も無く綺麗に片付けられていました。血の跡も肉片も何もなかったのです。僕はいたずらはしないように言われました。僕は見たんです、公園の場所と男の特徴を書きますので男を探してください。』

 

という内容だった。

 

「なんですかこれ?都市伝説っていうよりはめちゃくちゃ事件性高いんですけど?」

 

これはオカルト記者より警察案件な気がする。

それにナイフだって手品用の物で女が驚いて声を出さないように抑えただけなのではないだろうか?

それに投稿者の話を見る限り血が垂れていたとか凶器が落ちていたとかいう証拠も無く警察が確認できないようだ。

であればこの投稿が嘘かもしくは本当に跡形も無く殺人を犯したということになる。

 

「事件性高いより嘘だって目してるぜ?」

 

顔に出ていただろうか?少し目を背ける。

しかし編集長はにやりと笑って後ろから紙束を取り出した。

 

「実は似たような話がめちゃくちゃ来てるんだわ、それも複数人からな。」

 

「一人じゃないんですか!?」

 

私は編集長から紙束を引っ手繰った。

中身を見ると同じような内容のメールが何十枚もあった。

その時、一つの考えが頭を過った。

 

「これ全部同一人物からってことないですよね?名前を変えればいくらでも出来ますし。」

 

そう、アドレスを複数取れば一人で何人にもなれる。

そんないたずらが今までなかったわけでもない。

でも編集長は口角を上げ喋り始める。

 

「それは俺も考えた、だから確かめるんだよ。真偽がわからないからこそ地道に取材をするのさ。ってわけで行ってこい!」

 

「えー!まだ昨日の記事も纏めてないんですよ?それに出社してすぐ外出させるとか何考えてるんですか?」

 

「しょうがねえなあ、記事のデータ寄越せ。そっちは俺が纏めておいてやる。それに嘘でも本当でも終わったら直帰して構わねえ、明日にでも報告しろ。行かないで嘘でしたって報告だけは無しだからな。」

 

いつも思うが人使いが荒い。

ただ、彼が居るおかげで騎士と怪物の話を知り世界が変わった。

そのこともあり、この話が騎士達に繋がれば一石二鳥ということに思考を変えた。

 

「わかりましたよ!じゃあ戻らないので!行ってきます!」

 

データの入ったUSBメモリだけを渡しそのまま編集室を後にした。

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