牙狼外伝~赤金の魔戒騎士~   作:神山人海

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奇術・漆

魔導火をマジシャンの目の前で灯す。

通常であれば憑依された人間が魔導火を見ると目が白くなり魔戒文字が浮かび上がる。

だが、この男の目は変わらなかった。

 

「ホラーではないのか!?」

 

「臭いはホラーのはずだぜ?」

 

迅とゲルバが疑問を口にする。

男は不気味な笑顔を張り付けた顔で迅達を見て、

 

「種も仕掛けもございません!」

 

手に持ったナイフで斬りかかってきた。

瞬時に飛びのき避ける。

迅は魔法衣に隠してある剣を取り出し鞘から抜く。

 

「おいおい、相手は人間かもしれないんだぞ?」

 

「わかっている!牽制しつつ逃げる!」

 

切っ先を男に向け少しずつ後ろに下がる。

相手も逃がさないといったようににじり寄ってくる。

すると迅の足に何かが当たった。

 

「ちょっと!何なのよあれ!」

 

笹山だった。

先ほど後ろに飛ばし倒れたままだったようだ。

 

「つくづく変なのに好かれるお嬢ちゃんだな。」

 

「なによ、私のせいだっていうの!?」

 

「うるさい!さっさと立て、逃げるぞ!」

 

三人が騒いでいるとその隙に男が斬りかかってきた。

迅の対応が遅れその刃が腕を掠める。

 

「くっ、この動きただの人間じゃない。」

 

「どう嗅いでもホラーなんだがなあ、なんで魔導火が反応しないんだ?」

 

「もうどうでもいいから逃げようよ!」

 

三人ともこの状況に混乱している。

すると一発の銃弾が彼らの横を走り男に当たり弾けた。

三人が後ろを向くとそこには一人の女性が銃を向けて立っていた。

 

「見つけた!こんなところに逃げ込んでたのね。」

 

ギャルのようなメイクをした顔に肌の露出の多い魔法衣を着ているカジュアルな魔戒法師だ。

そしてその後ろからショートカットの髪を右に分け赤いインナーに黒い魔法衣を着た男が現れた。

 

「莉杏、あいつが魔導ホラー?」

 

「そうよ流牙。この時代の騎士と戦闘中だから手を貸すわよ。」

 

「分かった!」

 

三人に向き直り流牙と呼ばれた騎士は魔法衣から剣を出した。

 

「あれは、赤鞘!?」

 

「何?黄金騎士は冴島鋼牙さんのはずだ、そんなはずは・・・。」

 

迅とゲルバが驚く。

騎士が手にしている剣の鞘が赤鞘だったのだ。

黄金騎士の象徴とも言える赤鞘、それが何故この男の手にあるのか、二人は驚きを隠せず声に出していた。

 

「あれ?この時代の黄金騎士と面識あるんだ!あとで話を聞かせてよ、とりあえずこいつを倒してからね!」

 

赤鞘の騎士は剣を抜き三人の前に走り出た。

マジシャンは顔を抑えていたのだが迫る騎士を見て後ろへ飛びのいた。

押さえている手の中を見ると顔に赤い亀裂が入っている。

 

「なんだありゃあ?」

 

「あれは魔導ホラー、陰我ホラーとは異なる存在だ。ゼドムの種子が体内に入った者は意思とは関係なくホラーになっちまう。この次元には存在しないホラーのようだな。」

 

騎士の指から声が聞こえる。

迅はこの声に聞き覚えがあり目を凝らすとまるで西洋兜のようなカバーのついた魔導輪が喋っていた。

 

「ザルバ!黄金騎士の魔導輪じゃないか!」

 

「この時空の黄金騎士も俺様と契約しているのか、一安心したぜ。」

 

そうその魔導輪は黄金騎士の象徴の一つであるザルバだったのだ。

 

「へえ、こっちの牙狼もザルバと契約してるんだ。」

 

「そのようだ。俺様が二人も居るというのはどうも受け付けないがな。」

 

二人は笑いながら話している。

目の前に魔導ホラー居るにも関わらず。

危機感が薄いのか、それとも余裕の表れなのか。

その隙とも思える行為を敵は見逃しはしなかった。

 

「がああああああああああ!!!」

 

ナイフを流牙に向けて繰り出した。

 

「危ない!」

 

笹山が声を発した。

その時莉杏が肩を叩く。

 

「心配しないで?あれでも何回も世界を救ってるのよ。」

 

笑顔で笹山に話す。

その場に金属がぶつかる音が響いた。

 

「危ないなあ。まだ話してる途中だよ?でもこのままにしているのも可哀そうか。」

 

流牙の剣とマジシャンのナイフがぶつかった音だった。

笑顔で受け止めその上に軽口を叩ける余裕っぷりを見ると世界を救ったというのもあながち嘘ではないようだ。

 

「今、解放してあげるからね。」

 

流牙がそう言うとマジシャンが吹っ飛んだ。

矢継ぎ早に剣を天に突き立て円を描く。

すると円が割れそこから黄金の鎧が流牙に舞い降り、装着される。

全てが揃うとそこには黄金騎士が存在した。

 

「黄金騎士だが俺の知っている鎧とは違う?」

 

「俺様の記憶とも違うな。ありゃどういうことだ。」

 

迅とゲルバへの返答も無いまま見知らぬ黄金騎士は剣を構えマジシャンへと突き進む。

マジシャンは咆哮し器であった男の肉体が弾け、そこに二本角のホラーが誕生した。

ホラーは自らの皮を一枚剥ぎそれを剣へと変貌させる。

その刃で黄金騎士を迎え撃つつもりだ。

だがその目論見はかなうことはなかった。

そう、剣を創り出したときにはもう黄金騎士は奴を切り裂いていたのだ。

迅が加勢する暇も無く決着はついた。

 

「俺はただ、マジックが上手くなりたかっただけなのに・・・。」

 

ホラーは一瞬マジシャンになりそう呟き消滅した。

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