魔導輪を含め六人はホラー討伐の後公園に留まっていた。
迅とゲルバは謎の騎士と法師に疑問をぶつける。
「あなた達は何者なんですか?黄金騎士は冴島鋼牙のはず、鎧は二つも存在しないと心得ております。」
迅は敬意を払いつつ率直に投げかける。
ゲルバもそれに頷き相手の返答を待つ。
すると騎士、流牙は笑顔で話す。
「この時代、時空の人間じゃないんだ俺たち。難しい話かもしれないけど別世界からやってきたって感じかな。」
「そう、この時空に居るかわからないけど時空ホラー・デヴァンクスっての追っていてね。その時デヴァンクスがここに逃げ込んだのよ。」
法師・莉杏はそう語った。
ゲルバは何かを察したかのように口を開いた。
「聞いたことがある、太古のホラーに時空を移動する奴が居たと。ただこっちの時空では居たという資料があるだけで討伐したとか封印したとかいう記述は見たことないな。」
「たぶん発見したけど時空を移動したんじゃないかな?詳しい情報が無いからこっちだと居たってだけになってるんだと思うよ。こっちだとまた出たって話で時空を移動する前に倒そうとしたら時空を移動されてしまったんだ。それについてきたのが俺たちってわけ。」
「もう、訳の分からない話しないでよ!置いてきぼりなんだけど!」
何も知らない笹山が声を上げた。
迅はため息をついて笹山へ近づく。
流牙と莉杏は笑っている。
「とりあえず今日は家に帰れ。何をしていたか知らないが危ないことだらけだ、危なくなったら助けに行くから・・・。」
「今回は来てくれたけどこの通信機になるっていたやつ何の役にも立たないじゃない!」
迅が宥めようとしたところ笹山は先日の指輪の件を引き合いに出してきた。
そのことにゲルバが笑う。
「ちゃんと聞こえてるぜ?それはあくまで俺様にだけ聞こえる。危なかったら迅に伝えて助けにいくさ。ただ、道端で急に話しかけるのはやめた方がいいな。変な奴に思われるぞ。」
「なんですって!こっちは命の危機を分かって取材してるけどそれにしたってひどい良いようじゃない!?」
ゲルバの煽りに笹山が食って掛かる。
そこに割って入ったのは流牙だった。
「お姉さんは記者さん?」
「そ、そうだけど。」
「俺も前に記者の仲間が居たんだ。短い間だったけど。でも俺のせいでホラーに喰われたんだ。あんまり危険なことに首を突っ込まない方が良いと思うよ?それでも突っ込むなら彼の言うことは聞いてほしいな。彼も君を死なせたくはないだろうからさ。」
「う、でも私にもいろいろ・・・。」
急に見知らぬ人間が止めに入ったためしどろもどろになる。
彼の言うことに納得したのか笹山は静かになった。
「一人で帰るのは危ないから送ってってよね。」
「ああ、人気のある場所まではちゃんと送る。だからこちらの話が終わるまで静かにしていてくれると助かる。」
「うん。」
「じゃあ私たちで女同士のお話をしましょ。こっちの情報も知りたいのよ。」
「わかりました。代わりにいろいろ教えてくださいね!ギブアンドテイクでお願いしますよ!」
「はいはい、じゃあこっちでね。」
迅と笹山が話した後に莉杏が彼女を離れた場所へ連れていく。
改めて流牙との問答に戻る。
「時空ホラーというのは理解しました。ですが、さっきのホラーの説明がつかない。何故、魔導火で見分けがつかないのか、発生原因はなんなのか、あなたなら詳しいのでは?」
「ああ、あいつは魔導ホラー。ゼドムっていうホラーが居たんだけどそいつの種子が人間に埋め込んでホラーにする。陰我ホラーと違ってゲートから出現するわけじゃないし憑依するわけじゃないから魔導火で判別不可能なんだ。」
「ゼドムはこっちの世界だと討伐済みだぜ?それにこっちのは人間に種子は埋め込んでない、ホラーに埋め込んで自分の兵隊を増やしてただけだ。」
ゲルバが話に割って入る。
すると流牙の魔導輪が口を開く。
「本来はそれが目的だが俺様達の世界だと当時、封印しかできてなくてな。種子を女の魔戒法師の体内に取り込んでプラントを作っていた。本来は魔戒騎士の鎧の原料となるソウルメタルの製造法だったんだが実はこれの扱いが厄介でな。プラントに自分の血を吸わせて人間に刺すと魔導ホラーへと変貌させ意のままに操ることが出来る。これを悪用する奴が現れて危うく世界が終わるとこだったが阻止したんだ。」
「ザルバの言う通り。その時ゼドムを倒して俺たちの世界を守った。でも厄介なことにゼドムの種子、魔導ホラーのプラントがまだ残っていた。それを持った人間がデヴァンクスと契約をしてこっちに飛んできたんだ。今は何を理由に世界を飛んだのか、何故プラントを持っているのかはわからないけどそいつを倒して俺たちの世界に戻るのが今のところの目的かな。」
迅とゲルバは静かに聞いてる。
難しい話ではない。
彼らの目的はデヴァンクスとそれに追従している者と魔導ホラーを倒し元の時空に戻ること。
「こっちの魔戒騎士の力を借りたいんだ。こっちで動きやすいように上へと話をしてくれないかな?」
流牙は迅に提案する。
こちらでの助力を得られれば彼らは動きやすくなるだろう。
管轄でない騎士が動いていればこちらの元老院や番犬所が黙ってはいない。
それが起こらないように先手を打ちたいということだ。
迅は考える。
先ほどの戦いと話を聞くに夢物語ではあるが人柄からすれば嘘はついていないはずだ。
だが、彼を中枢に招き入れることは危険をはらんでいる。
迅が悩んでいると先にゲルバが口を開いた。
「お前たちの目的はわかった。手を貸すのもかまわないが何故魔導ホラーの正体がわかる?魔導火で見分けがつかないならお前たちもわからないはずだろう?もしもお前たちがそのデヴァンクスの契約者だと仮定するとあれは仕込まれたホラーで俺様たちを誘い出して協力して倒しこの世界の元老院を牛耳ろうって考えている。なんて思ってもおかしくないよな?」
迅が聞くのを躊躇っていた質問を彼らに述べる。
確かに彼らが当事者でデヴァンクスに従っているのであればありえない話ではない。
すると流牙とザルバは笑い始めた。
「確かに怪しいね。これを渡しておくよ、魔導ホラーを見分けるものだ。」
流牙は魔法衣から振り子を取り出した。
顔が付いた振り子だ。
「怪しい人間が居て魔導火で反応しなかったらそっちを使ってみて、魔導ホラーならそれで見破れるから。今すぐは信用できないみたいだから信用できるようになったらこの公園に来てよ。情報を集めるとき以外はここに居るからさ。」
流牙は両手を広げ笑顔で話す。
迅とゲルバは顔を見合わせ振り子を見て彼に向き直った。
「先ほど助けてもらったのは感謝します。ただあの鎧を纏えるあなたなら信用できると思いますが一応、この装置が本物か確認できるまで元老院へ連れて行くのは保留にさせていただきます。」
迅の発言に流牙は頷く。
「じゃあまた。あと彼女には優しくした方がいいよ。女の子の扱いは難しいからね。」
流牙は迅に助言をしてウインクする。
そして笹山と話している莉杏に声をかけその場から立ち去って行った。
迅は少し思案し笹山に近づく。
「おい、送るぞ。」
「もうちょっと優しく言えないの?女の子の扱いは慣れた方が良いよ。」
「うるさい!送ってやるだけでもありがたいと思え。それと何を話していたんだ?」
「何よそれー!まあいいけど。話したのはこっちのファッションとか美味しいご飯が食べられるところとか・・・。」
二人の声が夜の街に響く。
彼らが本当に黄金騎士なのか、話していることは真実なのか。
魔導ホラーを使う敵の正体は?時空ホラー・デヴァンクスとはどういった存在なのか。
魔戒騎士・狼紅、梵迅はこの世界を数多の危機から救うことは出来るのだろうか。